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「新しい挑戦が人を成長させる」多角化経営で
地域の発展に貢献

中和石油グループ

北海道札幌市に本社を置く中和石油は、1949年に昭和石油(現昭和シェル石油)の特約店として創業。
以降、石油卸やガソリンスタンドの運営、灯油やプロパンガスの販売といったエネルギー事業を中心に成長を続けてきた。

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取材先様のお役職は、取材当時のもの、タナベ経営社員の役職は、2020年現在のもの

石油製品を中心に地域密着で成長

中和石油グループ 代表取締役
杉澤 謙次郎 氏

ベトナム・ハノイにある日本語学校。日本での就業を見据えた意欲的な人材が集まる
北海道札幌市に本社を置く中和石油は、1949年に昭和石油(現昭和シェル石油)の特約店として創業。以降、石油卸やガソリンスタンドの運営、灯油やプロパンガスの販売といったエネルギー事業を中心に成長を続けてきた。一方、新車・中古車販売や車検整備を行うカーライフ事業、賃貸マンション・商業テナントビルなどを手掛ける不動産事業へとビジネスを拡大。積極的に事業の多角化を進めてきた。

特に、ここ数年はホテル開発やベトナム進出、人材紹介事業の立ち上げなど、新規事業に相次いで参入。国内経済が転換期を迎える中、先頭に立って変革を推進するのが2015年に代表取締役に就任した杉澤謙次郎氏だ。

「先代から引き継いだエネルギー事業は今でも会社の柱となる大事な事業と位置付けていますが、人口減少や省エネの流れの中、市場の縮小は避けられません。当社が生き残っていくには、成長しているマーケットに果敢にチャレンジし続けることが必要です」(杉澤氏)

既存の枠組みにとらわれず新領域を切り開く同社だが、事業開発においては大切にしている理念がある。それが、「生活に密着した『まちを作る企業』」であること。新規事業においても、この考えが貫かれている。

例えば、2018年11月に札幌市に開業した「東急ステイ」は、同社が建設したホテルを運営会社に賃貸する形で運営されている。中和石油にとっては培ってきた不動産事業のノウハウを生かすことができ、ホテル運営会社は初期投資を抑えられるWin-Winのビジネスモデルだ。

これが事業化に至った理由だが、加えて「これからの北海道経済を支えるのは食品と観光」と考える杉澤氏にとって、地域の発展に貢献できる事業であることが参入の決め手となった。開業以来、同ホテルは高い評価を集めており、2020年7月には2棟目が函館市で開業する予定だ。

海外人材の積極雇用で組織を活性化

積極的な多角化によって、中和石油グループ全体の社員数はいまや300名を超える。「新たな挑戦が人を成長させる」と杉澤氏が語る通り、同社においては新規事業が人材育成において重要な役割を果たしている。その一方で杉澤氏は、「計画的に人材育成ができているかと言えば、課題の残る部分もある」と指摘。そこを補うために積極的に活用しているのが、外部のプロフェッショナルの力だ。

加えて、同社が力を入れているのが外国人社員の育成である。2010年に初めて中国人研修生を受け入れて以降、積極的に採用を続けており、今では運営するガソリンスタンドや自動車整備工場、ビル管理の一環であるホテルのベッドメイキング、営業、経理など、幅広い業務を外国人社員が担当している。その数は全社員の約1割に迫るほど増えており、中には日本の国家資格である2級自動車整備士に合格して活躍するベトナム人社員も誕生している。

同社が外国人社員の雇用に成功したのには理由がある。一つ目は、福利厚生の充実だ。外国人社員に個室の社員寮を格安で提供するほか、会社や日本の生活に早くなじめるように頻繁に飲み会を開催したり、年に一度は社内スポーツ大会や社員旅行を実施したりと、自然とコミュニケーションが生まれる機会を意識的に提供。わずかな不安や疑問でも気軽に聞ける関係づくりを心掛けてきた。

二つ目が、募集から教育、採用までを一気通貫する仕組みの構築。ベトナムに自社が運営する日本語学校を設立したことで、半年間かけて日本語を教えながら人間性や企業との適性を見極めることが可能となった。これが優秀な人材の採用と定着につながっているのだ。

自社の経験を生かし人材紹介事業をスタート

日本企業の人手不足は深刻化しているものの、いざ外国人労働者を雇用するとなると不安を抱える経営者は少なくないだろう。中和石油でも当初は現場から不満や戸惑いの声も上がったというが、今では社員同士の仲間意識が生まれて良好な関係が築かれている。それだけでなく、「若い社員が笑顔であいさつしてくれたり、テキパキと働いてくれたりするので、現場が明るく元気になって活性化しました」と、杉澤氏は人手不足の解消以上のメリットを実感している。

こうした経験を踏まえて、同社は2019年に外国人労働者の紹介事業を新たにスタート。現在のところ日本で働く外国人のほとんどはブルーワーカーだが、数年以内に高度な知識・技術を持った人材紹介へも事業を広げていく考えだ。それが実現すれば、採用難に頭を抱える多くの国内企業にとって福音になることは間違いない。

多角化によって事業領域が広がる中、「将来は事業ごとに分社化し、スピードをもってそれぞれの事業を展開・拡大していきたい。今から経営者人材の育成を図っていく」と杉澤氏。多様な人材を生かして成長を遂げてきた同社は、今後も"新たなチャレンジ"を続けながら、北海道から全国、そして世界へと活躍の場を広げていくだろう。

タナベ コンサルタントEYE

タナベ経営 経営コンサルティング本部
支社長代理 戦略コンサルタント
細江 一樹
中和石油グループは、ガソリンスタンド事業を基盤として、既存の周辺事業だけではなく新規事業にも果敢にチャレンジし、将来を見据えて事業展開に邁進している。特にベトナムでの不動産事業、外国人労働者の紹介事業といった市場は今後も拡大が必至だ。実際、2019年9月に実施したベトナム視察では全国から約30名の経営者らが参加し、盛況となった。

こうしたチャレンジができるのは、同社が未来に対して"正しい危機感"を持っている証拠ではないか。未来を予測できず、口だけで行動を起こせない経営者が多くいる中で、杉澤氏は見習うべき実践家とも言えるだろう。

会社プロフィール

会社名
中和石油グループ
所在地
北海道札幌市中央区南4条西9-1008
創業
1949年
代表者
代表取締役 杉澤 謙次郎
売上高
117億円(グループ計、2019年3月期)
従業員数
309名(グループ計、2019年9月現在)

ABOUT TANABE CONSULTINGタナベコンサルティンググループとは

タナベコンサルティンググループは「日本には企業を救う仕事が必要だ」という志を掲げた1957年の創業以来
66年間で大企業から中堅企業まで約200業種、17,000社以上に経営コンサルティングを実施してまいりました。
企業を救い、元気にする。私たちが皆さまに提供する価値と貫き通す流儀をお伝えします。

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