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未来の環境に適応できる自律したリーダーへの成長を支援

愛知海運産業株式会社

三河湾に面した渥美半島で、港湾運送を中心に複合サービス事業を展開する愛知海運産業。代表取締役社長・山田俊郎氏が「親父」と語るのは、創業者・山田一美氏のことだ。1933年、セメント材料や食料品を海上輸送する汽帆船団を組織して田原回漕店を開業し、戦時下の企業統合を経て1950年に新会社を設立。地元の田原町(現田原市)の町長を務め、三河港田原地区の埋め立て造成や愛知県重要港湾の指定をけん引した、地域のリーダーでもあった。

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「郷土の発展」を願う思いが原動力となって成長

愛知海運産業 代表取締役社長
山田 俊郎氏

「親父以外は誰一人、賛成者がいない。それでも郷土の発展を願い、豊饒の海を埋め立てることを決めた。社是に掲げるその願いを受け継ぐことが、わが社の使命なんですよ」

三河湾に面した渥美半島で、港湾運送を中心に複合サービス事業を展開する愛知海運産業。代表取締役社長・山田俊郎氏が「親父」と語るのは、創業者・山田一美氏のことだ。1933年、セメント材料や食料品を海上輸送する汽帆船団を組織して田原回漕店を開業し、戦時下の企業統合を経て1950年に新会社を設立。地元の田原町(現田原市)の町長を務め、三河港田原地区の埋め立て造成や愛知県重要港湾の指定をけん引した、地域のリーダーでもあった。

郷土の未来を見据えた決断には、海苔養殖や漁業で暮らす人々の「埋め立て反対」の声と交渉を重ねる苦労があったが、見事にチャンスを呼び寄せる。トヨタ自動車田原工場の誘致(1979年操業開始)を実現し、
800ha(ヘクタール)の工業地帯が生まれ、地元産業・経済の活性化へと結び付いていく。苦しかった漁業者の生計も、補償金を元手に畑を買い、トタンにかやを敷く草屋根から立派な瓦ぶきへと、豊かな暮らしに変わった。

郷土発展の原動力となることで、愛知海運産業も成長軌道を描き始める。港湾運送に建設、燃料、海洋レジャー、自動車整備などの事業で貢献し、グループ売上高(2019年3月期) は145億9200万円、社員数500名超の「地域ナンバーワン企業」へと発展を遂げている。その道程に、転機となる一つの出会いがあった。

「売上高が25億円、社員70名を超えたころ、組織化できていないのに気付き、タナベ経営に相談したのです。おかげで会社の骨格ができましたし、その時の経営診断書は、いまも当社の宝物です」

計画的な教育を推進し社内異業種交流の成果も

港湾運送を中心に複合サービス事業を展開する愛知海運産業。三河港の発展に大きく貢献

経営のバトンを俊郎氏が継承してから28年余り、赤字は一度もない超優良企業。

「勢いよく走り続け、狙った仕事は確実に取ってきました。ただ、社員教育がおろそかになってしまった」と振り返る俊郎氏。QC活動や交通安全、営業の研修に加え、3年前から計画的な社員教育を推進し、新たにチームリーダー育成研修や幹部研修がスタートしている。狙いはもちろん、経営幹部候補の育成だが、教育機会の少なかった社員に「研修とは何か」を知ってもらうことも目的だ。

「研修で会社のルールを学び、その通りにやれば、仕事が無駄なくスムーズに進み、楽しめるようにもなる。そこから先は、自分で考えて挑戦していくことも大事だぞ、と」(俊郎氏) 期待した成果は、着実に表れている。言われたことをやるだけでなく、次の一手のために何が必要で、どう展開すればいいのか。自ら情報をつかみ、生かそうとする姿がその証しだ。

さらに、「面白い変化」(俊郎氏)も生まれている。

「社名は『海運』ですが、当社は20業種を複合展開しています。各事業の社員が一堂に会することで、社内で異業種交流的に、互いにやっていること、考えていることを分かり合えるようになった。実はそれが一番、うれしいんですよ。タナベ経営の研修はディスカッションも多いし、そこで何か化学反応が生まれるんでしょうね」

常務取締役・八木祥綱氏も、手応えを感じている。

「グループ間の連携がしやすくなるのは、大きなメリット。1+1=『2+α』の相乗効果が生まれるのが、とても楽しみです」(八木氏)

人生のキャンバスになる「100年企業」を目指す

愛知海運産業 常務取締役
八木 祥綱氏

人材が育ちグループ力も高まる先に、100周年への道がある。海運事業では、三河湾田原地区に3万tクラスの大型船が入港可能な水深10mの埠頭整備も計画中である。大型船の入港をきっかけに、今後の港・地域の発展、そして200億円企業の仲間入りを果たすべく、一歩一歩着実に歩み始めている。

「社是の願いを受け継ぎ、次の世代もその使命を果たすために、『100年企業』を目指しています。人を育て、その感性に磨きをかけて、一人一人が自律して会社を強くしていくわけですが、これからはリーダーシップの在り方も変わっていくでしょう。

先代や私のようなトップダウンから、合議制になるのか、それとも新しい社長像が生まれるのか。先のことは分かりませんが、恐れることはありません。『企業は環境適応業』とタナベ経営の創業者・田辺昇一さんが言われたように、どう時流を先読みし、適応できるか。例えば、AIをどう使うかもその一つでしょう」

俊郎氏がいつも、社員に発信し続けているメッセージがある。「会社は人生のキャンバス」。それは、「全ての社員が多様な個性を発揮する集団になって、それぞれに楽しみながら、自分なりの彩りで幸せを描き出そう」ということ。「一色では、会社は経営できません」(俊郎氏)と笑顔で語る言葉も、多様化する未来を見通す道標になっている。

タナベ コンサルタントEYE

タナベ経営 経営コンサルティング本部
チーフコンサルタント 串田 時江

愛知海運産業の創業者・山田一美氏は、1963年から田原町長として地域の発展に貢献。1981年、企業経営の基本を学ぶために、当時のイーグルクラブ東三河支部(タナベ経営)に入会された。

3代目社長・山田俊郎氏は創業者の志を引き継ぐとともに、赤字を一期も出さず「地域№1企業」を目指し、実現してきた立役者。現在も地域の大きなプロジェクトを見据えながら、次世代幹部社員の育成に尽力されている。2020年で設立70周年を迎える同社は、「100年先もファーストコールカンパニー」を目指し、未来創造に挑んでいる。

会社プロフィール

会社名
愛知海運産業株式会社
所在地
愛知県田原市田原町柳町6
設立
1950年
代表者
代表取締役社長 山田 俊郎
売上高
145憶9200万円(グループ計、2019年3月期)
従業員数
500名(グループ計、2019年9月現在)

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タナベコンサルティンググループは「日本には企業を救う仕事が必要だ」という志を掲げた1957年の創業以来
66年間で大企業から中堅企業まで約200業種、17,000社以上に経営コンサルティングを実施してまいりました。
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