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今週のひとこと

業績不振を不況のせいにしてはいけない。

原因他人論の会社は経営環境が回復しても

業績は回復しない。





◆高い収益力は、経営者の意志で実現する

◆売上高経常利益率が0.1% → 8%に

年商5億円、売上高経常利益率8%、総資産経常利益率7%を実現しているB社は、タナベ経営が掲げる「売上高経常利益率10%」を目指す企業だ。「収益力を高めるには、どうしたら良いか」を考え、前向きに実践している。

さて、読者の皆さんは、B社についてどのように感じるだろうか?

「以前から高い収益力を持ち、維持しているのだろう」「成長業界の企業であり、環境が良いのでは」などと想像をされるかもしれない。実はB社は、3年前までは売上高経常利益率 0.1%前後を推移し、黒字を出すのがやっとの状態だった。時には赤字になってしまうこともあり、収益力は非常に低い状態であったのだ。

ところが現在では、冒頭に紹介したように非常に好調な状態を保っている。つまり、業界や外部環境が良い・悪いといった理由は、収益力が高い・低いの理由にはなり得ない。

タナベ経営では、業績が悪くなるのは、外部環境の影響ではなく、内部環境からであると提言している。社内のほころびや異常から、経営状態は悪くなっていくのである。

アパレル小売業を営む同社は 当時厳しい経営環境の中にあり、これ以上の収益悪化は企業生命を脅かすという状況であった。 日々の資金繰りに追われ、今日・明日といった目先の視点で経営のかじ取りをしていた。

従業員は、経営者の売掛金回収指示の対応に追われ、接客サービスを通して顧客に喜んでもらうという、当たり前の行動も失われつつあった。

このような中、「再建」をテーマに、筆者が支援することになったのである。

◆再建を実現するモデル損益をつくる

この企業の最大の問題点は、多角経営にあった。

当時B社では、本業の「服を売る」こと以外にも、3つの事業を手掛けていた。当時は年商6億円、経常利益は400万円を切る状態で、期によっては赤字を計上していた。資金捻出のため安売りセールを実施し、業績をさらに悪化させる悪循環へと陥っていた。

コンサルティングを開始するとまず、事業ごとの損益を算出し、黒字事業・赤字事業を仕分けしていった。その結果、本業と1つの事業を除いた、残り2つの事業は慢性赤字の状態であることが分かった。それでも、新たな希望を見いだすために、新しい事業に企業生命を懸ける。 そのようなことが日々行われていた。

黒字である事業も、減収傾向が続いており、いつ赤字に転じてもおかしくないような状況であった。

従業員数は、社員・パートを 合わせて45名。服を売る以外に「あれもこれも」とさまざまな業務に追われる状態が続き、何に全力を注いでいくのかが不明確で、貴重な人材力が分散していた。従業員は資金繰りが悪いことに不安を抱きながら日々働き、先の見えない暗闇の中にいた。

B社がどのように再建に至ったかに関しては、ポイントのみ紹介する。まずは、事業・組織・財務の3つの観点に立ち、B社のあるべき姿を描くところから始めた。その中で最も重要なのが、どのような収益モデルになるのかという、モデル損益の設計である。

B社は再建段階でありながら、売上高経常利益率を5%と設定し、モデル損益をつくり上げた。そして、その実現に向けて何をすべきかを考え抜いた。当時のモデル損益を掲載する。(【図表】 参照)

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◆外部環境を言い訳にしていては始まらない

本業に特化するため、1つの事業は撤退することに決定。残り2つの事業は本業の付加価値サービスとして位置付け、規模を縮小した。その結果、年商6億円から5億円に減収する計画を立てた。

【図表】の数字からも分かるように、年商に対して借入金が多く、支払利息が重く収益を圧迫している。それを踏まえた上で、経常利益率を5%にするためには、人件費を含めた固定費を1億9500万円に抑える必要があることが分かった。

もちろん、変動費を減らして、限界利益を増やすという考え方もある。だがB社の現状として、これ以上、仕入価格を下げること、値上げをすることは難しいと判断した。

このモデル損益を「実現する」と、強い意志を持つことが肝要である。自社でも、まずは目標利益率を設定した上で、モデル損益をつくってみてほしい。固定費の削減目標が算出され、「何を」「どこまで」やればよいかが明確になる。

B社にとっても、当時は極めて高い目標であったが、強い意志を持って、1つずつ確実に実行していった。その結果、現在の売上高経常利益率8%、総資産経常利益率7%の経営を実現したのである。

決して楽な道のりではない。しかし、あれだけ資金繰りに苦しめられていたB社が、今は善循環で経営が回っているのである。現在は余裕資金を潤沢に持ち、前向きな投資に活用している。金融機関への返済にも追われることなく、毎月順調に償還が進んでいる。

「資金繰り」ばかりを重視していた経営判断が、「成長するための前向きな視点」に変わったのである。

最後に繰り返しとなるが、高い収益力を実現するのは、外部環境を言い訳にしない、経営者の意志である。経営者自らが強い意志を持ち、変革を実現させてほしい。


コンサルティング戦略本部 チーフコンサルタント
山口 秀樹





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大手機械メーカーの技術開発部門を経てタナベ経営に入社後、北陸支社長、取締役を経て2011 年より現職。企業の進化を支援するコンサルタントとして上場・中堅・中小企業の経営全般のコンサルに従事し、従来の発想にとらわれない独創的な手法で数多くの企業を優良企業に進化させている。信条は「進化の中に感動があり、感動こそが企業の若さを生む」「難しいことを分かりやすく言うのが本物のコンサルタントである」。著書に『企業進化への挑戦』(ダイヤモンド社)ほか。


「企業は人なり」「企業は人材の質と量の成長以上には成長しない」「良き人を止とどむる業を企業という」。これらは経営の原理原則である。

企業の栄枯盛衰の歴史をひもとくと、会社を大きく発展させているのは人だが、衰退、場合によっては消滅させているのも人だ。そのような中で、数多くの企業の中から顧客に選ばれ、継続的な成長を実現している「ファーストコールカンパニー」の共通点を見ると、「人材のブランド化」に積極的に取り組んでいることが挙げられる。人材を差別化のための最も重要な経営資源と考え、人づくりに積極的かつ体系的・継続的に取り組んでいる。

人は、普段の力を1 とすると、目的を理解して仕事に取り組むと1.6 倍の力を発揮でき、さらに自ら主体的に取り組むとその1.6 倍、つまり約2.6倍の力が発揮できるといわれる。ファーストコールカンパニーでは、これに加えて社員同士が互いを認め合い、ワイワイ・ガヤガヤと部門横断的に協力するチームパワーが掛け算され、それが他社との圧倒的な差につながっている。

米心理学者アブラハム・マズローの「欲求段階説」は有名だが、最上位である第5 段階「自己実現欲求」の上に、第6 段階「コミュニティー発展欲求」(自身の所属するコミュニティーがより高次にまで発展してほしいという利他的欲求)を想定していたとの説もある。ファーストコールカンパニーで先頭に立って活躍している人材を見ると、まさに第6 段階(利他の視点)で仕事をするブランド人材だと感じることが多々ある。

こうした人づくり、人材のブランド化には、まず経営者が「人材は自社の最も重要な経営資源だ」と再認識する必要がある。そして、従業員の考え方の根本である「価値観」を企業のミッションや顧客価値の視点で統一しつつ、一定の自由度を与え、従業員に「自分が主役」と感じさせる。これによって自ら考える人材をつくり、チームを生かす発想も身に付けさせる。この社風づくり、人材開発の仕組みづくりが大切である。

一朝一夕では実現しない。しかし、継続すれば必ず成果は出る。思いを持った組織には良い人材が加速度的に集まり、企業は大きく成長していく。

未来に向けて人材をどうブランド化し、企業を発展させるかは、経営者の思いと決断で決まる。次なる変革へ第一歩を踏み出していただきたい。





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株式会社ニシヤマ

所在地 / 〒 143-0016 東京都大田区大森北 4-11-11

TEL / 03-5767-5351(代)

資 本 金:4億8430万円 創 業 : 1916 年 設 立 : 1947 年

売 上 高 : 312 億円(2014 年度実績)

従 業 員 数 : 299 名(2015 年 3 月末現在)

http://www.nishiyama.co.jp/



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技術開発型の専門商社

ガス分野におけるスマートメーター用部品や鉄道輸送の安心・安全・快適に配慮した商品、半導体製造装置向け計測器などの開発、海洋資源探索に関わるロボットアームといった高機能製品の輸入など、社会インフラ から先端分野まで「ニシヤマ」 が貢献した製品は数多い。1916 年に工業用ゴム製品の専門商社として創業して以来、顧客の要望に応える形で事業は広がり、 現在ではエネルギーからプラント、輸送、機械設備、情報通信、 半導体などの分野でも実績を重ねている。

これほど多様な製品を提供できるのは、99 年にわたって伝承されてきたノウハウと優れた提案営業力があるからこそ。案件 によっては設計段階から携わるケースもあるだけに、社員には豊富な知識とチャレンジ精神が求められる。

「お客さまに最適なご提案ができるかどうかは、営業担当者の裁量次第です」と管理本部の荒井秀俊氏(人事グループマネージャー)が語るように、事業の成長は顧客の課題を的確に捉え、解決策を導き出す自立した人材を確保できるかどうかに懸かっている。


学生から社会人へ

同社が人材採用・教育に取り組む上で指針とするのが「自立・ 向上・協調・大局・礼節」の5要素だ。2014年にタナベ経営と人事制度を見直した際、経営理念の実現に向けて求める人材像を明確化した。

教育制度も5要素に基づいて設計されており、階層別を基本にOJTと社内外の研修を組み合わせることで戦略的に人材を育成する。新卒を対象とする新入社員研修にも外部機関が主催する研修が含まれている。

「ここ数年はタナベ経営の新入社員研修に参加しています。社員が学生の顔から社会人の顔になって帰ってきますね。また、コーディネーターが付いており、 研修結果についても一人一人のコメントが詳細に記載されているので、その後の教育に役立っています」と荒井氏は言う。

新入社員研修が終わると約1 年間は配属先の先輩に同行して営業スキルを学ぶOJTが中心となるが、その間も7月と 10 月 に新人フォロー研修を実施。配属された環境によって生じるスキルのバラツキを小さくするのが主な目的だが、標準化しているわけではない。同社が目指すのは自立した人材の育成。そのために荒井氏は、一人一人の個性を見て長所を伸ばすようなフォローを心掛ける。

「女性や留学生など多様な人材を活用するには、従来のような一律の教育では対応しにくくなっています。会社の規模が小さいほど個々に目を向け、きめ細かく対応しながら会社が目指す方向にベクトルを合わせていくことが大切です」(荒井氏)

海外展開を進める同社は、昨年初めてタイとインドネシアからの留学生を採用した。海外の関連会社で働く現地社員を育てていくには、会社の歴史や経営理念などニシヤマスピリッツを持った社員を派遣する必要があるとの判断からだ。社員一人一人をフォローするには手間と時間がかかるが、そこをおろそかにしないことが今後の人材育成の鍵となりそうだ。


部署を超えたつながり

また、同社の特長である部署を超えた横のつながりが、人材 育成の良好な土壌となっている。「社員同士だけでなく役員との距離も近いと思います。社員食堂や部活動などの福利厚生を充実させることで自然とコミュニケーションが生まれる仕組みを大切にしています」(荒井氏)

この関係が人材の成長にもたらす影響は大きい。部署や階層を超えた周囲のサポートがあるからこそ、新しい領域にも思い切って挑戦できる。その挑戦が社員を成長させ、会社を強くしていく。一人一人に目を向ける教育が自立した人材を育て、技術開発型の専門商社としての飛躍を支えているのだ。


(左)タナベ経営 コンサルティング戦略本部 副本部長 川島 克也
(中央)タナベ経営 コンサルティング戦略本部 人材開発部 アソシエイト 真鍋 祐磨
(右)タナベ経営 コンサルティング戦略本部 人材開発部 アソシエイト 渡邉 雄太



タナベ コンサルタントEYE
営業担当者の裁量が大きいスペシャリスト集団。そのようなニシヤマの組織風土の中、社員の幸福を「最大公約数」にしたいと考える荒井氏。そのためには、全社員が同じベクトルを持ち、 経営理念に対する考えの共有が必要だ。 ニシヤマでは、 全社員が入社時に経営トップから「経営理念」「会社の歴史」について直接講話を受ける。 創業100年を迎える企業こそ、常にミッションを念頭に、自社のやるべきことを考えているのであろう。
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    担当:タナベコンサルティング 戦略総合研究所