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今週のひとこと

未来を信じる人にこそ、

栄光を手にする資格がある。





☆ ナンバーワンを実現する「ABC」

私は大学時代に、クラブ活動として競技ダンスをはじめました。このスポーツは運動量や優雅さを含め、フロア上で男女が織り成す個性を競うものですが、私自身がナンバーワンを目指して実践していた「ABC」が、日々の仕事においても非常に重要であると感じています。

1つ目の「A」は「Absorb(吸収)」。先輩・同期・後輩と関係なく、上手な選手には謙虚に教えを請い、良い部分を吸収し、自身のものにすることです。

2つ目の「B」は「Broad(広さ)」。フロア上で目立つステップや技に多く取り組み、できることの幅を広げることです。

最後、3つ目の「C」は「Challenge(挑戦)」。試合では勝つこともあれば、負けることもあります。負けた時には何が悪かったのか反省はしますが、試合のたびに落ち込んでいる暇はありません。常に前向きに挑戦するだけです。

仕事においても、
 【A】上司や先輩・同僚・部下や後輩と関係なく、「できる人」のノウハウを謙虚に吸収し、自身のものにする。
 【B】選り好みせずに多くの業務に携わり、業務の幅を広げる。
 【C】失敗を恐れず、常に前向きに新しいことに挑戦する。
―という「ABC」を実践することで、職場でも競技ダンスでも大きく成長できると確信しています。


皆さんもこの「ABC」を実践し、ビジネスというフロアの上でナンバーワンを目指していただきたい。

経営管理本部 経営企画室
課長代理
林 一雄





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変化へ大胆に投資し「持続的成長モデル」を創る

「変化と向き合い結果を出す1年」。2016年を私はそう位置付けている。食品業界は少なくとも3つのテーマと向き合う必要に迫られ続けているからだ。

第一が、円安化した原材料費、そして人件費に代表されるコスト増との対峙。第二は、越境環境と向き合うことである。M&Aの半分近くが異業種というデータもある。TPP(環太平洋経済連携協定)の大筋合意への目配りも欠かせない。そして第三が、「ダブルの顧客減」。2009年から始まった人口減に加え、2019年には世帯数の減少も始まると推計されている。

これらの環境変化は「食に関わる企業」に構造改革を要求する。合言葉は「変化へ大胆に投資し、持続的成長モデルを創る」だ。

「変化への投資」。その着眼をいくつか紹介しよう。1つ目は、課題マーケットを中心に自社をつくり変えることである。キーワードは「4K」。高齢者、子育て世代、健康、絆である。65歳以上の高齢者がいる世帯は40%を超え、働く子育て世代の負担軽減サポートなどの社会課題マーケットを捉えた宅配市場や、商品でなく物語を売るパーソナルギフト市場が確実に伸びている。

2つ目が、サービスモデルへの転進だ。サービスの事業化と言い換えてもよい。食品ファブレスメーカーA社は「小売店の繁盛サポート」を旗印に、売り場づくりと食材調達のプロチーム編成で小売店を元気にする活動を通じ、自社の業績を伸ばしている。買い物弱者をサポートする移動スーパーマーケットなどの新業態も始動しつつある。

3つ目が、「ローカル&グローバル」である。外食業B社のキーワードは、「マス・カスタマイズ」。エリア特性に応じた一業態少数店舗モデルの多業態化で、成長を加速させている。「1業態1店舗が理想」と言う同社は、「究極のローカルチェーン化に挑戦する」と語る。同じく、食品メーカーC社は5つの地域ブランド品を立ち上げ、連続増収増益、経常利益率10%の好業績をつくり上げている。

一方、グローバル展開も視野に入れておきたい。あるデータを紹介しよう。日本「31%・5.6%」、米国「43%・15%」、欧州「60%・21.5%」。これは日米欧の主要食品メーカーの海外売上高比率と営業利益率の平均(2010年度)※である。海外売上高比率が高くなれば、営業利益率が高くなる相関が一目瞭然だ。海外市場にもチャンスはある。変化への投資を大胆に。そして確実に持続的成長へとつなげていただきたい。

※ 三井物産戦略研究所『戦略研レポート「世界市場を目指す日本食品産業」』(2013 年5 月22 日発行)

中村 敏之 Toshiyuki Nakamura
「次代の経営者育成なくして企業なし」をコンサルティングの信条とし、100年発展モデルへチャレンジする企業の戦略パートナー。豊富な現場経験に基づく「ビジョンマネジメント型コンサルティング(VM経営)」は具体的で、クライアント企業から分かりやすいと大きな信頼を得ている。関西学院大学卒。






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顧客を魅了する価値提供でナンバーワンブランドを確立

小山田 眞哉 Shinya Oyamada
開拓、製品開発による事業戦略構築に定評があり、食品メーカーの垂直統合戦略など、多くの中堅・中小企業の未来を共に創ってきた。人事・営業・財務・購買・生産などの経営管理機能のコンサルティングも手掛け、多くのクライアント先を成長に導いている。特に食品ビジネスを中心としたコンサルティングにはタナベ経営随一の実績を持つ。現在、食品ドメインチームリーダーとして食品・フードサービス成長戦略研究会を推進しながら、全国企業へコンサルティングを実施している。



構造転換を迎える食品マーケット

1.食品の国内市場はピークアウト

若年層の未婚率上昇に伴う少子化と、高齢化による独居老人の増加から、日本の全世帯に占める単身世帯の割合が年々上昇している。従来、国内消費は「親と子」のファミリー世帯が支えてきたが、今や全世帯の半数を割り込み、二人世帯や単身世帯が多くを占める。

国土交通省の推計(2011年2月)によると、「夫婦と子」世帯が2050年には少数派となり、単身世帯が約4割と最も多くなる。また、単身世帯のうち高齢者の割合は5割を超え、2050年まで増加し続けるという(【図表1】)。GDP(国内総生産)の6割を握る国内消費の主役が、家族から単身者にシフトするということである。

人口のピークアウト、少子高齢社会を迎えたことで、これまで拡大してきた食品マーケットは、長期衰退マーケットに大転換したと見て取れる。

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【図表1】世帯類型別世帯数の推移

2.成長力格差と収益力格差が強烈に拡大

今、儲かる企業と儲からない企業の二極化が進んでいる。儲かる企業は成長性・収益性ともに高く、儲からない企業はその逆だ。食品分野においても同様であり、各社の成長力格差と収益力格差が強烈に広がっている。原因を挙げると、大きく次の4点がある。

(1)量販店の最終決戦、優勝劣敗

地域の利便性と商品の安売りで展開してきた量販店は、今ではディスカウンターやドラッグストアなどの後発業態に市場を奪われつつある。地域トップクラスのリージョナルスーパーマーケットも最終決戦を強いられており、一強しか生き残れなくなっている。いわゆる優勝劣敗の争いが全国規模で展開され、その影響から食品企業の成長力・収益力の格差拡大が加速している。

(2)SPA(製造小売業)、コンビニの全国席巻

ナショナルブランドの仕入れによる品ぞろえや、メーカー商品の名前だけを変えたプライベートブランドの提供だけにとどまっている食品流通企業は、市場からの退出を余儀なくされようとしている。従来の商品ではカバーし切れなかった消費者ニーズを捉え、素材仕入れ・商品設計から携わり、メーカーと共に商品を開発できる流通業が顧客を創造している。また、店内調理による出来たてサービスを展開するコンビニエンスストアも、全国を席巻している。

(3)個別宅配事業の台頭

店舗を構えて顧客が来るのを待つ広域集客型の小売業から、商いの原点である行商人のように、個人客のもとに出向いていく個別宅配型の小売業が伸長している。生活協同組合をはじめ、食品スーパーやコンビニなどの宅配事業が台頭しているほか、最近はアマゾンが食品メーカーと共同開発した限定商品の販売を始めた。個別宅配は、食品企業にとっても目が離せない、流通構造の変化だ。

(4)コンビニ・通販の勢力拡大

百貨店とスーパーは小売業界の中心業態として長らく君臨してきたが、これらの業態に依存している食品企業は今後、伸び悩む可能性が高い。一方、コンビニや通販などに顧客をシフトしている食品企業は業績が伸びているところが多く、将来の成長余地も大きい。

3.自社の価値を「魅せる化」する

では、成長力と収益力を高めるには、どうすればよいか。それは「いかに変化を経営するか」にかかっている。前述したような経営環境の変化を見据え、それに合わせて、自社を変えるのである。

決め手は「価値の魅せる化」だ。マーケットのニーズやウオンツから「顧客価値」を発見し、魅力ある商品・サービスを創造する。顧客価値の内容に照らし、価値の魅せる化を図ることが重要になる。


6つの顧客価値

顧客価値とは、「顧客から見た価値」を指す。「顧客が『価値がある』と魅力を感じる価値」を追求することが、今の企業には求められている。

では現在、消費者が食品関連企業に求めている価値とは何だろうか。食品に対する消費者の嗜好が広く専門化していることから、次の6つの顧客価値があると定義したい。(【図表2】)

【図表2】6 つの顧客価値
【図表2】6つの顧客価値

(1)機能価値

健康増進や安全・安心、栄養補給、美容効果など、食品・飲料を摂ることによって得られる効果、期待できる効用といった価値だ。

例えば「健康増進」なら、「脂質ゼロ」「ノンカフェイン」「カロリーオフ」「シュガーレス」などの制限食品、また糖分の吸収速度を緩慢にさせる食物繊維といった、健康維持に関する価値である。

(2)感性価値

視覚・触覚などの感覚や、ワクワク・ドキドキさせるといった人の感情に訴える価値である。人間は喜怒哀楽を表せる動物だ。感動・感激・感心という三感で、購買行動を起こすことが多い。

例えば、「面白い」。人を楽しませたり、意外性を打ち出したり、笑ってしまいたくなるような商品だ。今までにない食材の組み合わせ、ユニークなパッケージ、珍しい形状、異業種とのコラボレーションなど、既存商品・サービスを異なる視点で見直せば、意外な面白さが見えてくる。

(3)価格価値

「価格による価値」というと、単なる低価格だと思うかもしれないが、ここでいう価格価値は「安い」だけでなく、お得感や節約、お値打ちといった価値である。

例えば「お値打ち」とは、値段は安くないが、それを上回る品質を打ち出すことだ。最高級で新鮮な食材を提供するスーパー、一つ一つの具材が大きなレトルト商品、顧客の期待値を大きく上回るサービスをするレストラン、トラブルに対し迅速かつ丁寧なアフターサービスを行う食品機械メーカーなどが挙げられる。

(4)時間価値

「早(速)い・短い」「タイミングが良い」「手間いらず」など、時間的コストを感じさせない、または時間という切り口でメリットを打ち出す価値である。

例えば、昨今は単身者や共働き世帯の増加に伴い、調理・片付けや買い物などにかかる手間を減らしたいとのニーズが高まっている。そのため食品メーカーや小売店では、即食系商品の品ぞろえを強化する動きが顕著だ。この"半手抜き"を支援する食品を「MS(ミールソリューション、食事問題の解決)/HMR(ホーム・ミール・リプレースメント、家庭料理の代行)」と呼ぶ。こうした価値が「手間いらず」といえよう。

(5)希少価値

おいしいのに足が早いため漁港周辺でしか流通していない希少魚、特定地域やその店でしか食べられない特産料理、収穫量が極めて少ない高級農産品や肉の希少部位といった、数が少なく珍しいというプレミア価値である。

例えば、入手困難な食材のみを扱う専門店、牛1頭やマグロ1匹からわずかな量しか取れない希少部位、人気が高く手に入るまでに長い期間を要する日本酒、「お取り寄せ商品」のインターネット通販などが挙げられる。

(6)社会価値

地球温暖化などにより、環境保護を重視する消費者意識がますます高まっている。また、消費活動を通じて途上国の恵まれない子どもたちや被災地の支援を行うなど、社会貢献を果たそうという動きも強まっている。社会価値とは、こうした環境保護・社会貢献という価値を打ち出すものである。

例えば、「フェアトレード」商品というものがある。フェアトレードとは、発展途上国の手工芸品や農産物を"公正な価格"で取引し、現地の企業や農場の地主などから不当な搾取を受けている人々の経済的・社会的な自立を支援する運動のこと。つまり、児童労働や人権侵害によって利益を上げている企業の商品・サービスを購入せず、途上国への寄付や支援付きの商品などを積極的に継続して購入、消費するといった考え方だ。

以上が6つの顧客価値である。単独で価値を出していくより、いずれか2つ以上の価値を自社の強みと組み合わせていくことが望ましい。また、【図表3】の方程式のように、品質(機能・効用)とサービス・システムの掛け算で価値を高め、さらに人的価値を掛けることにより、顧客価値は大きく増大する。


【図表3】顧客価値の方程式


消費者の価値観は「低価格」「こだわり」に二極化

価値の魅せる化の推進方法として、次の7点が挙げられる。

①マーケット調査
②モニター制度
③定点観測
④会員制度
⑤アンケート調査
⑥パイロット店舗
⑦購入動機・頻度調査


いずれも目新しい手法ではないが、地道に顧客の声を集め、行動を観察することからしか、消費トレンドは見えてこない。

近年の傾向として、消費構造は「低価格」「こだわり」に二極化した価値観へ変化している。例を挙げると、カジュアルギフト(パーソナルギフト)である。生活シーンを豊かにしてくれると実感する消費者が増えている。中元・歳暮など儀礼やしきたりで贈るフォーマルギフトとは別に、個人的にお世話になっている人々へプレゼントを贈るもので、母の日やバレンタインデー、あるいは誕生日などがその代表例である。

そのギフト商品を探し、かつ自分も気に入った商品について、最近は生産者自体をぜひ応援したいという価値観が生まれている。気に入った商品は、気が置けない仲間や、大切な人への季節の贈り物としてだけでなく、「自分へのご褒美」として自家消費する。そこでは、手間暇をかけてでも自分の食シーンに取り入れる努力がなされる。

現在、食品をめぐる消費者の価値観は、出費を抑えるために低価格なものを求めるという抑制の価値観と、高い価格でも食の本物、本来の姿にこだわり、おいしさを求めるという情熱の価値観に二極化しており、こうした変化を捉え直す必要が生じている。

儲からない販売先に、儲からない商品を、儲からない生産(仕入れ)方式によって、儲からない流通経路で提供している限り、会社を長く存続させることはできない。この構造を自ら変化させる企業だけが、100年先も顧客から一番に選ばれる会社「ファーストコールカンパニー」になる挑戦権を手にすることができる。

その変化を起こすために、価値の魅せる化は最良の一手である。顧客を魅了する価値提供で、他社と競合しないホワイトスペースにおいてナンバーワンブランドを確立することが、コモディティー化に陥りがちな食品企業に欠かせない戦略となるだろう。



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