FCCマネジメントレター:2017年02月24日
今週のひとこと 昨日の現実から脱却し、新しい現実を 直視しよう。そして、新しいビジネス 創造の機会としよう。 |
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☆ 経営者 2,500名 アンケート
2017年度は「かつてない3年」の始まり・・・?!
昨年末に開催いたしました「2017年度 経営戦略セミナー」のサマリー&アンケートレポートを公開しました。
テーマは、『ビジネスモデル戦略 ―あと3年。突き抜ける価値をデザインしよう』。
今回は、レポートの一部をご紹介いたします。
◆ 2020年東京オリンピック・パラリンピックによる経済効果のピーク
◆ 世帯数のピーク
◆ 消費税再増税前の駆け込み需要
― これら「3つのヤマ」が同時に訪れる2019年を、企業にとっての転換期ととらえ、それまでの「あと3年」で、いかにビジネスモデルを変革してゆけるかが、その後の成長を左右すると言っても過言ではありません。
アンケートでは、「3つのヤマ」が業績に与える影響や、ビジネスモデル戦略を推進していく上での課題などをお聞きしています。
戦略総合研究所
藤坂 賢年
日本には「チーム」がない
「日本には『チーム』がない」。齋藤ウィリアム浩幸氏の講演を聴いて、私の心に残った言葉である。齋藤氏は米国生まれ、米国育ちの日系2世で、高校時代に起業し、指紋認証など生体認証暗号システムの開発で成功。1998年に27歳で「アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー(※)」を受賞し、2004年に事業をマイクロソフトへ売却後、ベンチャー支援を手掛ける「インテカー」を設立した人物だ。
※ アーンスト・アンド・ヤング、ナスダックおよびUSAトゥデイ主催の起業家表彰制度
齋藤氏いわく、「生産性を上げたり、コストを下げたりするのは『グループ』で、日本はこれが素晴らしい。しかし、日本には『チーム』が不足している。新しいものを生み出すのがチームであり、企業でいえば2人以上で創業したアップルやフェイスブックなどが該当する」とのことだった。
合点がいく分析である。では、日本にチームが少ない理由は何だろうか。
1つ目は、日本には失敗を恐れ、責め、認めない風土があることだ。だから挑戦ができず、イノベーションも生まれない。2つ目は、日本人は助けを求めることが苦手で、悩んだときに助けてもらう方法を知らない人が多いことである。3つ目は、失敗を体験した人をリーダーに選ばないこと。成功体験しか持たないリーダーは、助力を得る方法が分からないまま、ますます失敗できなくなる。故に、問題が発覚したときに取り返しがつかなくなってしまうことが多々あるのだ。
では、どうすればチームを増やせるのか。まず、「失敗はするもの」と認識し、相手と自分の弱点を知る。次に、挫折した経験が多いリーダーを選ぶ。最後に、「飲みニケーション」。日本のバブル期に世界から注目されていたという、この濃密なコミュニケーションの取り方を活用し、フラットな人間関係を構築する。
失敗を認めなければ、イノベーションなど生まれない。失敗を許し、助け合い、挑戦し続けるからこそ、さまざまなアイデアを融合し、新しいものを創出する「チーム」となれるのだ。
皆さんの会社や組織はチームとして機能しているだろうか。いま一度、自社を分析していただきたい。
■筆者プロフィール
タナベ経営
コンサルティング戦略本部 沖縄支社長
比嘉 純弥 Masami Higa
クライアント視点での情熱的なコンサルティングが持ち味。「企業と人の成長が何よりの喜び」という信条のもと、さまざまな企業の人材成長を実現。また、成長戦略から営業マネジメント、管理会計システム、業務先行管理、人事制度、教育体系づくりまで、幅広い分野でも実績を上げている。観光ツーリズム成長戦略研究会のサブリーダーとしても活躍中。
オープン経営と独自戦略で「社員が主役の会社」を追求
トーケン 代表取締役社長 根上 健正 氏
社員の意識を変えれば会社は伸びる
金沢市に本社を置き、地域建設業界で躍進を続けるトーケン。「建設総合サービス業」を掲げる同社の立役者が、代表取締役社長の根上健正氏だ。大手ゼネコンから2006年、招聘(しょうへい)に応じて社長に就任した根上氏はその責を全うすべく、変化を恐れず未来に向かう企業理念「未来への胎動」を打ち出した。本業の建設と、幅広い関連事業をワンストップサービスで行う「多柱経営」、大手ゼネコンと一線を画しつつ高品質を追求する「地域スーパーゼネコン」の標榜・実践など、独自の戦略を次々と実行に移した。同時に、絶え間なく業務と組織の変革を推し進め、今日の確かな成長へと社員を導いてきた。
これらの戦略と変革の実現に当たり、特に根上氏が注力したのが、社員の意識改革だ。地方の一工務店だった時代からずっと引きずってきた矮小(わいしょう)な意識を変え、社員が自信を持って一丸で事業に臨むことこそが自社の発展に不可欠と考えたのである。
「企業は社員が土台であり、主役です。一人一人が仕事に喜びややりがいを感じ、『自分たちの会社は自分たちで創り上げる』という思いを持てば絶対に会社は伸びる。そのために私は歩むべき道筋を明確に示し、できるだけ経営をオープンにして『社員皆の会社』と感じられる職場づくりに力を注いできました」と根上氏は話す。
やる気を引き出すユニークな取り組みを次々に考案
トーケンには社員の自主性と意欲向上を図る、根上氏発案のユニークな取り組みが数々ある。例えば、技術力を上げる鍵として導入された「技師長制度」。大手ゼネコンのOB技術者を指南役として招き、高度な建設ノウハウを社員に伝授する仕組みだ。これにより品質が格段にアップし、自社で手掛ける建築物の規模や種類が増大した。また、営業スタッフにノルマを課すことを禁じている。会社の売り上げダウンは社員の怠慢でなく、経営者の戦略ミスが原因と捉えているからだ。
ユニークな取り組みの中でも特に注目したいのが、「胎動塾」と名付けられた育成制度。月に2回、全社員が集まる例会で発表者に指名された社員が、仕事についてさまざまな発表を行う育成法である。新人・ベテランを問わず、社員には根上氏が定めたテーマが与えられ、入念な準備を行ってプレゼンテーションをする。形式や方法は自由。その成果について、取締役管理本部長兼総務部長の岡本広志氏は次のように語る。
「資料作成から発表の仕方まで一任されるので、各人が工夫を凝らし、仕事に対する意識がひときわ高まります。プレゼン力も磨かれ、部門を超えた仕事の相互理解と情報共有にも役立つ。一石何鳥もの効果があると思っています」
こうしたオリジナルの活動に加えて社外教育も積極的に採り入れ、マクロな視点から人材育成に取り組んでいるのも同社の特徴だ。タナベ経営の幹部候補生スクールを長年活用し、社員一人一人のスキルアップに役立てているという。
「計数の正しい知識、他業界の人材との交流を通じた視野の広がりなど、自社だけでは教え切れない部分をしっかりサポートしてもらっています」(岡本氏)
トーケン 取締役管理本部長 兼 総務部長
岡本 広志 氏
女性の積極活用を通した「適材適所」で次代へ臨む
社員を主役に置く根上氏の経営思想は、会社の運営に直結する分野にまで及んでいる。同族やオーナー企業でなかったことから持ち株会を制定し、現在、根上氏をはじめ社員が保有する株は、いまや46%。すでに自身の退任後をにらんで後継社長を指名しているが、その選出方法は、候補役員に対し社員が投票を行って決定したというから驚く。
そんな根上氏が今、最も期待を寄せるのが女性社員の活躍だ。
「当社は11名の女性社員がおり、そのうち6名が管理職です。従来、補助的な仕事しか担っていなかった女性も、責任を与えると男性以上の力を発揮してくれることを日々実感しています。故に当社は今後、年功や性別でなく個人を評価して登用する『適材適所』を徹底していきたいと考えています」(根上氏)
2020年の東京オリンピック・パラリンピック後、建設業界において組織力の弱い企業は淘汰(とうた)されると予測する根上氏。自社がオープン経営と社員第一の精神を貫く限り、その大波は必ず乗り切れると根上氏は確信している。
PROFILE
- 所在地: 〒921-8011 石川県金沢市入江3-25
- TEL : 076-291-8818(代)
- 設立: 1970年
- 資本金: 1億1000万円
- 売上高: 87億4393万円 (グループ計、2016年2月期)
- 従業員数: 79名(グループ計)
- http://www.token-web.com/
タナベ コンサルタントEYE
北陸3県における地域スーパーゼネコンを目指しているトーケン。その活躍を支えているのが、同社の人材と教育システムである。年齢や性別に関係なく、責任のある仕事を任せることで、社員一人一人の能力が向上。また、胎動塾や技師長制度などの社内教育システムと、タナベのセミナーをうまく組み合わせることで、社員の積極性と自信を育んでいる。個々人の高い能力が強固な組織力となり、同社は今後ますます躍進し続けていくだろう。
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06-7177-4008