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今週のひとこと

先輩社員が新入社員を指導・アドバイス

する習慣を根付かせよう。そして、新入

社員の成果が上がったら、先輩も評価

しよう。





☆ 新入社員活躍の鍵は、受入れ準備にあり!

今年も新入社員が入社し、仲間となる時期が近づいてきました。
筆者も4月に入社してくるメンバーの受入れや、3月下旬から4月上旬にかけて実施するクライアント企業の新入社員研修の準備の真っ最中です。


日頃、クライアント企業の経営者や採用責任者の方々とのディスカッションの中で、「採用説明会に集まった学生が想定の半数程で、採用できていないんです」「内定辞退が多くて...」といった、お困りの声をよく耳にします。

そして、そうした声をお聞きした際、筆者はこう質問します。
「新人社員を迎えるための受入体制や、教育計画は十分に整っていますか?」と。


 1.新入社員を計画的に育成(その後の年次研修も)をしていますか?
 2.定期的な新入社員と先輩・上司との面談を実施していますか?
 3.厳しくするとすぐに辞めてしまう、若い人たちとの接し方や教え方が分からない、といった理由で、新入社員のことをお客様扱いしていませんか?


採用も大切ですが、苦労して採用できた新入社員たちです。入社後に活躍できる環境を整えるために、これら項目に少しでも心当たりがある場合は、今一度新入社員の受入体制を見直してみてください。

コンサルティング戦略本部
人材開発部 アソシエイト
渡邉 雄太





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トラスコ中山 東京本社にて
トラスコ中山 東京本社にて

「問屋を極める、究める」。業界の常識を変革し続ける独創経営

約27万8000点のアイテムをオリジナルカタログ『トラスコ オレンジブック』に掲載、即納体制の物流網を整備し、ドライバー1本から無料配送。年商約1665億円、総資産経常利益率11.5%、売上高営業利益率7.8%という業績(2015年12月期)を誇るトラスコ中山。同社は、「使命」と「善悪」を戦略判断の基準とした独創的な経営スタイルを貫いている。「業界の常識は世間の非常識」の実践で広がった"未見の景色"はどのようなものか。代表取締役社長・中山哲也氏に話を伺った。



損得で選択しても良い結果は得られない

若松 1959年に「中山機工商会」として創業し、1964年に「中山機工株式会社」を設立。その後、現在の社名へ変更した1994年に中山社長は就任されました。
それからしばらくして「モノづくり支援業」を宣言し、「問屋を極める、究める」をキーワードとして顧客価値に徹底的に寄り添われています。
独創的なビジネスモデルは、どのようにして組み上がっていったのでしょう。

中山 どんな事業もまず「志ありき」だと思います。「儲(も)うかりゃいい」ではなく、人や社会のお役に立ってこそ事業といえます。しかし、私の入社当時を振り返ると、父が創業した会社になんとなく入って、なんとなく仕事をしていました。
恵まれていたのは、父の決断をすぐ横で見てこれたことです。経営者というのは、その時々で厳しい判断をしなければならないが、3年、5年、10年と時を経ると、「儲かりゃいい」で選択しても良い結果にはならないということを、実地で学ばせてもらいました。そこから、物事の判断は損得勘定ではなく善悪で判断する「取捨択」の考えが生まれたのです。
もう1つ感謝しているのは、社長を交代してから、父が一言も「ああしろ、こうしろ」と私に言わなかったことです。事業承継後の創業者にありがちな千手観音のような干渉やコントロールはゼロ。その代わり私も、一言も父親に相談したことはありません。どうしたものかと悩んだ時は、自社の意義や存在価値を考えるようになり、日本の製造業を支援するのが当社の役割だということをあらためて認識したのです。
その思いを言葉にしたのが、企業メッセージ「がんばれ!!日本のモノづくり」。ただ、言葉だけで会社は良くなりませんから、施策を1つずつ具現化して今があります。

若松 「志定まれば、気盛んなり」。吉田松陰の言葉ですが、まさしくそうなっていったのですね。並の経営者であれば、取り扱うモノの価値を高めようとするところです。そこを「モノづくりを支援する」というコトの価値、本質的価値をビジネスの先にあるものとして設定したが故に、簡単にはまねできないモデルとなったのでしょう。
そうした努力を重ねた結果が、創業以来の無借金経営、自己資本比率81.4%(2015年12月期)という強い企業体質の実現につながっているのだと考えます。

中山 志を持てば、やるべきことと進むべき方向が見えてきます。そして、進むべき方向が見えた後に大事なことは、本質を見極める目を持つことです。例えば、売り上げを増やすには、誰しも「販売店さまと人対人のつながりが大事」と考えますが、私はこれが違うと思っています。
最初の頃、当社の営業社員は「大手企業には勝てない。使っている交際費の額が違うから」と言っていました。確かに接待をすれば喜ばれるでしょうが、ビジネスをしている以上、必要な商品をいち早く届ける方が大事じゃないか。それで物流システムを整え、在庫をそろえる方向に脇目もふらず進んでいきました。当然、経営効率や在庫回転率がどうのといった声が当時は出ましたが、気にせず徹底的に在庫を置きました。すると、見えてくる景色が全く違ってきたのです。

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トラスコ中山㈱ 代表取締役社長
中山 哲也(なかやま てつや)氏
1958年生まれ。近畿大学商経学部卒業後、1981年に中山機工(現 トラスコ中山)入社。常務取締役、専務取締役を経て1994年より現職。「取捨善択」「唯一無似」「自覚に勝る教育無し」など、独自の経営哲学で経営に当たる。また視覚障害者を支援する公益財団法人中山視覚障害者福祉財団を設立。現在、理事長を務め社会貢献活動にも取り組む。

顧客にメリットのない在庫回転率
本質を見極めた「やめる経営戦略」


若松 注文に対してどれだけ在庫から出荷(ヒット)できたかを表す「在庫ヒット率」が88.2%(2015年12月期)とのことですが、在庫回転率ではなく在庫ヒット率を指標にされている理由を教えてください。

中山 在庫回転率にこだわらない理由は簡単。お客さまにとって何のメリットもない指標だからです。当社にとってお客さまへのサービスのバロメーターは、在庫ヒット率をどこまで引き上げ、いかに即納できるかということ。ナンバーワンの利便性を提供することが使命であり本質的なことであって、それが一番の競争力になるのです。

若松 一番に選ばれるには理由があり、その理由を何にするかは、会社によって違います。ロングテールのビジネスモデルを創ったアマゾンの創業が1994年。中山社長の就任と同年です。BtoBとBtoCの違いはありますが、違う国、違う地域で同じものを目指して進んでこられたのですね。
ところで、「景色が違ってきた」とは、どのように変わったのでしょうか。

中山 機械工具の卸売業界は、大小さまざまな企業がありますが、大手卸企業は「細かい工具や消耗品などの品ぞろえはトラスコにかなわない」ということで、機械や設備、家電製品へ重心を移していきました。その結果、今では相互補完的な関係になってきています。中小卸企業はというと、やはり在庫数や即納体制ではかなわないということで、次第に当社のお客さまになってきました。これが第1の変化です。
第2の変化は、ネット通販会社との取引が増えてきたこと。トラスコ中山に"コンセントをつなぐ"と、約27万8000アイテムの中から欲しいものが即日届くため、利便性が高いということで当社に声を掛けてくださる。今までやってきた問屋業をいかに掘り下げて強くするかというところが、ネットビジネスが強くなってきた今の時代においても、ちゃんと生きているなと思います。
第3の変化は、メーカーの代理店から注文が来るようになったこと。1つのメーカーには複数の代理店があり、代理店同士はコンペティター(競合)です。在庫していない注文が来た場合、代理店はメーカーにその商品を発注します。しかし、メーカーの出荷は商品ロットが決まっていたり、運賃を負担しなければならなかったりと、条件が多いことがある。結果的にトラスコ中山から買った方が便利で安いという訳で、代理店から当社に注文が来るようになりました。目先の在庫回転率にとらわれていたら、こんな景色は見えなかったでしょうね。

若松 業界の常識を覆した結果なのですね。ただ、常識をおかしいと考えても、志と信念がないと戦略的投資も含めて勝負をかけられません。

中山 もう1つ「やめる経営戦略」も大事です。これまでやめてきた中で一番大きなものは手形取引。今では貸し倒れもほぼありません。物品受領書もやめました。これにより業務の効率が上がり、紙も保管スペースもいらなくなりました。
取扱商品ではコメ、背広、貴金属などをやめました。年商1000億円前後の頃は100億円近い売り上げがあった商品でしたが、本業と関係ないことをしていては競争力が付かないと気付いてやめました。
ただ「これ、やめたらどう?」と言うと、決まって社内から100ほど、やめられない理由が出てくるんですよ。

若松 私たちは変化のステップを「捨てる、改める、新しく」と提言していて、まずは捨てるものがないか考えます。でも捨てるのは怖い。故に、組織はなかなか変化を受け入れないものです。

中山 だから、手形取引を全廃した時、私は社内でほとんど相談しませんでした。だが、いろんなものをやめ、本筋のところに集中した結果、さまざまな良い効果が表れてきました。特に労働時間の短縮にかなり役立っています。その一番の理由は「在庫があるから」。注文の処理はWebで自動的にできるため、余計な仕事をしなくてよいのです。

約27 万8000 点のアイテムを掲載している 『トラスコ オレンジブック』(2016 年版)
約27 万8000 点のアイテムを掲載している
『トラスコ オレンジブック』(2016年版)

オープンジャッジで360度評価
アイデア湧かなくなれば社長は交代


若松 組織や人に対する制度にもオリジナリティーがありますが、いつごろから積み上げてこられたのですか?

中山 古い体質を一朝一夕には変えられない中で、仕組みや設備を先行させつつ、徐々に進めてきました。特に、わだかまりなく働ける職場が大事と考え、2001年にオープンジャッジシステム(OJS)を人事制度へ導入しました。皆の仕事ぶりは皆が見ているのだから、全員に投票させて評価しようと考えたのです。より正確な評価に近づけるには、情報の管理が大事です。誰が誰に対してどう評価したかは、社長でも見ることができません。

若松 試行錯誤してこられた故に、さまざまなノウハウをお持ちです。

中山 新しい施策を思い付かなくなったら社長交代のときです。もう1つお勧めしたいアイデアが、顔写真入り社員名簿。社員の顔が分からなくては良い会社づくりはできません。社員同士で電話するときに名簿を見る。転勤のときも行く先にどんな社員がいるか分かる。私は出張時に必ず持っていき、それを見て話し掛けます。
来年の名簿のコメント欄には、どんなときに人に尊敬の念を抱くか、もしくはガッカリするかという項目を入れたい。名簿といえども、人を動かすきっかけになるものでなければいけません。

若松 変化や新しい価値を組織の中に入れるのがトップの役割ということですね。

中山 経営者に必要なのは独創力。いかに他人が思い付かないことを考え、やらないことをやるかが成功の鉄則。だから僕は"民主的独裁者"なんです。多数決で出てくる答えはライバルの会社でも同じ。それでは競争に勝てません。

若松 タナベ経営ではそれを「衆知独裁」と呼んでいます。衆知を集めて最後は独裁で決める。そうでなければ、社長が経営判断を下すことはできません。
ところで、人を評価するときの基準で大事にされていることはありますか。

中山 まずはOJSの360度評価で皆に信任されていることが大事です。ある段階では信任されていたけれど、次の段階で不信任ということもあります。そこから先は独創性があるか、人を引っ張っていく力があるかを見ていきます。

若松 個性的で多様な能力を持った社員の方が多いのではないでしょうか。

中山 いろいろ仕掛けをつくって独創性を発揮できるようにしています。月1回の経営会議では、数字の話はしません。経営の方向性や日頃感じていることなどについて話し、考えるベクトルや発想の基準が多様化するようにしています。
数字に厳しい人が名経営者、名管理者ではありません。なぜなら、数字で詰めていくのが一番簡単だから。つまり能力のない証拠なんです。

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㈱タナベ経営 代表取締役社長
若松 孝彦(わかまつ たかひこ)
タナベ経営のトップとしてその使命を追求しながら、経営コンサルタントとして指導してきた会社は、業種を問わず上場企業から中小企業まで約1000社に及ぶ。独自の経営理論で全国のファーストコールカンパニーはもちろん金融機関からも多くの支持を得ている。関西学院大学大学院(経営学修士)修了。1989年タナベ経営入社、2009年より専務取締役コンサルティング統轄本部長、副社長を経て現職。
『100年経営』『戦略をつくる力』『甦る経営』(共に ダイヤモンド社)ほか著書多数。

買いたくないが買わざるを得ない
究極の卸をこれからも目指す


若松 独創性といえば、トラスコ中山はPB(プライベートブランド)商品もたくさん開発されています。

中山 工具業界はブランド指定のない商品が結構多い。ならば、ブランド指定のないものは当社のブランドで売っていこうということです。

若松 メーカー、仕入れ、卸、流通、自社ブランドと、さまざまな"コンセント"をお持ちで、どこから差し込んでもすぐにつながるのですね。

中山 販売企業の究極の在り方は、お客さまから見て「できればあの会社からは買いたくないが、買わざるを得ない」と言われる会社になること。顧客企業の経営者からしたら面白くないが、在庫があって即納だから、顧客企業の社員の支持率は高いような会社です。

若松 そう言えるのは、他社によってつくられた業界の商習慣を変えてきたという自負があるからなんでしょうね。トラスコ中山はこれからどこを目指していくのでしょうか。

中山 モノづくり現場にとって利便性の高い会社を今後も目指します。企業規模の拡大よりも企業の質を高めていくためにやらなければならないことがたくさんあります。
例えば今、配送の自社便化を進めていく中で、派遣社員ではなく正社員を雇用しています。間違いなくコストアップするが、お客さまへのサービス向上を考えたら、それでもやろうと思います。在庫をたくさん持って良い結果になったように、配達先のお客さまとの接し方も正社員だと違ってくるのではないでしょうか。

若松 「モノづくり支援業」というコンセプトを貫き、ビジネスモデルも含め自分たちで創ってこられた自前主義を徹底されているのですね。本日はありがとうございました。

PROFILE

  • トラスコ中山㈱
  • 所在地:〒105-0004 東京都港区新橋4-28-1 トラスコ フィオリートビル
  • TEL:03-3433-9830(代)
  • 創業:1959年
  • 資本金:50億2237万円
  • 売上高:1665億6500万円(2015年12月期)
  • 従業員数:2154名(パートタイマー含む、2016年3月末現在)
  • 東証1部上場
  • http://www.trusco.co.jp/








キャラクターコラボで新たな客層を開拓

音楽文化の最新情報を発信し続けているタワーレコード。同社は現在、音楽・映像のソフト販売にとどまらず、イベントスペースやカフェも展開し、新たな顧客層にアプローチをしている。



タワーレコードが、「スヌーピー™」や「リラックマ™」といったキャラクターとのコラボレーションを展開し、話題を呼んでいる。これまでに数多くのオリジナルグッズを世に送り出してきたが、"タワレコらしさ"を保ちながら、新鮮さや意外性のあるグッズを生み出し続けるのは容易なことではない。同社商品本部の新保(しんぼ) 純也氏に、その取り組みの背景を聞いた。

音楽文化の発信基地が新しい業態を模索

主要都市を中心に全国で84店舗(2016年8月1日現在)を展開し、音楽文化の発信基地として大きな役割を担っているのが、「NO MUSIC, NO LIFE.」のコーポレート・ボイスでおなじみのタワーレコードだ。

米国で誕生したタワーレコードが日本に初上陸したのは1979年のこと。当初は米国法人の事業部の1つとして、輸入レコードの卸販売を行っていた。翌80年、札幌に日本第1号店をオープン。次いで渋谷に第2号店をオープンし、日本法人を設立した。

広々とした店内フロアに多彩なジャンルのレコードを整然と並べ、陳列棚にはスタッフのお薦めコメントが手書きされたPOPを飾る――。当時のレコード店の常識を覆す斬新な販売方法に人々はとりこになり、後に日本に上陸する多くのメガストアの先駆者となった。

1995年に渋谷店を宇田川町から神南1丁目へ移転すると、音楽ソフトの他に映像ソフトや書籍の取り扱いを開始。以来、新しい形の文化発信基地として大きな存在感を示した。

2008年には大型店舗だけでなく、さまざまな展開も始めた。例えば、駅ナカ・駅チカに小型店舗の「TOWERmini(タワーミニ)」を出店。大阪・高槻市の百貨店内にも店を構えるなど、これまでとはコンセプトの異なる店舗に挑戦して顧客の幅を広げていった。

また2012年には、旗艦店の渋谷店をフルリニューアル。「360°エンターテイメントストア」をコンセプトに、売り場面積の拡張はもちろん、イベントスペース、カフェ「TOWER RECORDS CAFE」なども新設した。これにより「音楽を軸に多角的なサービスを提供し、音楽と直に出会える場所を提供する」という、タワーレコードが目指してきたスタイルのショップが完成した。

タワーレコード 商品本部 新保 純也氏
タワーレコード 商品本部
新保 純也氏

アーティストやキャラクターとコラボレーションを展開

タワーレコードは、アーティスト(山下達郎、THE YELLOW MONKEY、LUNA SEAなど)やキャラクター(スヌーピー™、リラックマ™、『スーパーマリオブラザーズ』『名探偵コナン』など)とコラボレーションしたキャンペーンを継続して行っている。

店頭でコラボレーショングッズの販売やポスターの掲示を行うほか、TOWER RECORDS CAFEでは期間限定のコラボレーションメニューも提供する。従来の音楽ファンのみならず、キャラクターファンにも店頭へ足を運んでもらい、音楽との新たな出会いにつなげることが狙いだ。

また、2016年3月14日~5月8日にかけて、テレビアニメ『おそ松さん』(テレビ東京系列)とのコラボレーション企画を実施した。当初、『おそ松さん』はコラボレーションの候補に挙がっていなかったが、タナベ経営から同キャラクターを使ったコラボ企画を提案され、それを受け入れたという。

タワーレコード商品本部でグッズ製作を担当する新保純也氏は、「タワーレコードらしさを維持するために、今までは代理店を介さず、社内で企画・製作をしてきました。しかし、全てを内製していては世界が広がらないので、他社に力を借りたいと思ったのがきっかけです。アニメ化の第3弾が話題になっていた『おそ松さん』は、サブカルチャー層にも人気があります。タワーレコードの顧客層とも共通点があると感じ、面白そうだと思いました」と話す。

タワーレコードらしいコラボレーショングッズ

「タワーレコードが出すグッズである以上、うちのカラーが出ていないと意味がありません。他社が出したキャラクターグッズとの差別化が必要でした」(新保氏)

『おそ松さん』キャンペーンでは、コンサートチケットなどを保存できる「チケットファイル」や、野外音楽フェスティバルで活躍する「フード付きタオル」「ポンチョ」「ヘッドホン」といった、音楽文化を発信するタワーレコードならではのアイテムを製作することにした。

グッズの中でも、特に新保氏が「面白い」と感じたのは、CD・DVDソフトなどを保管する「収納BOX」だった。

「音楽とサブカルチャーの両方が好きだという層に刺さるよう工夫したことが、収納BOXの好調な売れ行きにつながりました。CDだけでなく、A5・B5サイズの同人誌も収納できるように設計されているため、汎用性が高いという点も、アニメやサブカルチャーのコアファン層に喜ばれたポイントだと考えます」(新保氏)

その他、「ビーチサンダル」や「お風呂セット」「エプロン」「箸置き」、写真に貼って楽しむ「髪型シール」などのユニークなアイテムも用意。また、『おそ松さん』に登場する6つ子には、それぞれイメージカラーが割り当てられているのだが、イメージカラーごとにグッズも6色展開するなど、「お気に入りのキャラのアイテムを集めたい」というファン心理をくすぐる工夫も施した。

「タナベ経営は扱うアイテムが幅広く、とても勉強になりました。売れ筋のTシャツなど定番商品はありますが、同じ商品ばかりだと売る方も買う方も飽きてしまいます。かといって、マニアックな方向に走り過ぎれば、消費者の"欲しい"という気持ちに直結しない。冷静な判断が求められるからこそ、外からの視点を持つタナベ経営のアドバイスは心強かった」と新保氏は振り返る。

エンディングテーマの映像を使った「収納BOX」は 大人気だった
エンディングテーマの映像を使った「収納BOX」は
大人気だった

SNSでキャンペーンが拡散キャラクターコラボの力

キャンペーンがスタートすると、コラボレーショングッズやカフェの特別メニューの写真がFacebookやInstagramなどのSNSに多数投稿され、拡散していった。

「大好きなキャラクターのグッズや料理に、付加価値を感じてもらえたからこそだと考えています」(新保氏)

「キャラクターにはそれぞれの音がある」と新保氏は言う。「キャラクターが持っているグルーブ感に合わせて企画を考えたり、カフェの空間を演出することで、タワーレコードに初めて来店したという方にも楽しんでいただけるよう、いつも工夫しています。反響はダイレクトにSNSで拡散され、そこに共感が生まれる。キャラクターコラボだからこそ実現できる広がりを感じます」(新保氏)

一方で、課題もあるという。こうした企画モノは消費者の関心に大きく左右されるため、興味や流行の対象は次々変化していく。スピード感を持って企画を展開することが重要だ。

「短期間での製作だったこともあり、準備を急がなければいけなかったのですが、タナベ経営は反応がとても早く、助かりました。常に新しいグッズを製作し続けるためにも、今後もスピード感と提案力を発揮していただきたいですね」と新保氏は期待を込める。

『おそ松さん』の主人公の6つ子には、それぞれイメージカラーがある
『おそ松さん』の主人公の6つ子には、それぞれイメージカラーがある

PROFILE

  • タワーレコード㈱
  • 本店所在地:〒150-0041 東京都渋谷区神南1-22-14
  • TEL:03-4332-0700(平和島オフィス)
  • 創立:1979年(設立1981年)
  • 資本金:65億円
  • 売上高:524億円(2016年2月期)
  • 従業員数:1835名(うち正社員413名、2016年2月15日現在)
  • 事業内容:音楽・映像ソフト、書籍、雑誌、雑貨などの販売。楽曲、著作物の著作権管理。雑貨、衣料品などの企画製造・販売。イベント、広告宣伝の企画制作・請負。飲食店運営など
  • http://tower.jp/


CDショップのタワーレコードと、テレビアニメの『おそ松さん』。両者の間に直接的な共通項はありません。それだけに、この2つの異色の取り合わせは大きな話題を呼ぶことにつながります。このように、自社の商品・サービスと直接関係がない異業種やキャラクターとのコラボレーション企画は、消費者の注目度を上げ、新たな顧客層を開拓する上で有効です。 例えば、日本商工会議所は2016年度の日商簿記検定の出題区分改定に伴い、特設ページを開設。そのナビゲーター役として人気ソーシャルゲーム「アイドルマスターシンデレラガールズ」のキャラクター「新田美波」を起用し、SNSで大きな話題となりました。 オリジナルグッズは注目を集めてこそ意味があります。意外な組み合わせによるコラボ企画に挑戦してみてはいかがでしょうか。


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    担当:タナベコンサルティング 戦略総合研究所