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今週のひとこと

ビジョンを示そう。

会社が成長してゆくのは、

夢を共有した人達の結束した力が

あるからだ。





☆ セールストークは学生の心に響かない?!

 中堅・中小企業においては、来春入社の新卒の採用活動中という企業も少なくないでしょう。また、昨年から今年にかけて有効求人倍率は高水準で推移しており、新卒・中途ともに「思うように採用できない」と耳にする機会が多く、事実、筆者自身も採用に関するコンサルティングの数が増えている状況です。

 コンサルティングをスタートするにあたり、筆者が最初に確認することは、採用活動において学生を顧客として認識しているかということです。御社では、会社案内と入社案内を別に用意していますか。

A社での実例です。同社の社員との採用強化に関するディスカッションの中で、「わが社の強みは?」という質問をしたところ、「施工だけに終わらないメンテナンス対応力」という意見が多かったのです。実際、取引先アンケートにはアフターフォローも手厚い良い会社だと書かれています。しかし、これでは「学生に対しての強み」と「取引先に対する強み」とが曖昧で、学生に真意が伝わっていないと言わざるを得ません。
 社会人経験がない学生からすれば、購入した後の保証は当然であり、強みの意味が理解できません。実際、若手社員の意見を聞いてみると、入社するまでは、そのことが強みだとはイメージできなかったとのことでした。


 採用活動は営業活動だと言われますが、取引先へのセールストークを、学生にそのまま説明しても、心には響きません。
 「この会社で働きたい」。そう思わせる、御社の強みは何ですか。


コンサルティング戦略本部
チーフコンサルタント
湯山 卓





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インナーブランディングで磨くスターバックスのホスピタリティー


昨年(2016年)8月に、コーヒーチェーンの「スターバックス・コーヒー」が日本上陸20周年を迎えたのは記憶に新しい。スターバックスは1号店「銀座松屋通り店」を皮切りに、現在は約1200店舗を展開。2015年には空白地だった鳥取県へ進出し、全国出店を果たした。

全国各地のどの店に行っても、高いホスピタリティーを体験できるというのがスターバックスの最大の強みである。しかも、接客マニュアルが存在しないというのだから驚く。短期間で店舗網を拡大させたにもかかわらず、なぜ全国一律に安定した品質・サービスを提供できるのだろうか。その秘訣は、ミッションと理念の浸透にある。

スターバックスのミッションは、「人々の心を豊かで活力あるものにするために――ひとりのお客様、一杯のコーヒー、そしてひとつのコミュニティから」(同社ホームページより)である。このミッションを達成するため、入社した社員にはまず「グリーンエプロンブック」という小冊子が渡される。インナーブランディング(社員にブランド価値や目指す姿を理解させる啓蒙活動)の一環である。

この小冊子の中には、「歓迎する」「心をこめて」「豊富な知識を蓄える」「思いやりを持つ」「参加する」という5つの言葉をはじめ、提供するサービスのベースとなる考え方が記載されている。スタッフはこれを常に携帯しているという。さらに、理念の実現のための行動規範として「サポーティングピラー」というものがある。具体的には、次の4項だ。

まず1つ目は、「察する」。つまり、顧客の一瞬一瞬に気を配るということである。例えば、支払い時の動作が遅れがちな高齢者や、プリペイドカードで早く決済したい若者など、それぞれの顧客のペースに合わせて対応する。2つ目は「つながる」。しっかりと相手の目を見て話し、温かい笑顔や心のこもったコミュニケーションを取ることで、相手とつながるということである。3つ目は「応える」。商品レシピに基づきながらも、一人一人の顧客のニーズに合わせて提供する。そして4つ目が「オーナーシップを持つ」。心豊かで活力をもたらす瞬間を創り出すために、一人一人が最良の判断を現場で実施する。

このように、ミッションと理念がスタッフに浸透しているからこそ、どの店へ行ってもスターバックス共通の雰囲気や安らぎを味わうことができるのである。

自社においては、ミッションや理念がどれだけ社員に浸透しているだろうか。


■筆者プロフィール
タナベ経営
コンサルティング戦略本部
副本部長
竹内 建一郎 Kenichiro Takeuchi
大手メーカーで商品開発の生産マネジメントに携わった経験を生かし、経営的視点による開発・生産戦略構築から現場改善まで、多くの実績を上げている。モットーは現場・現実・現品の「三現主義」。







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「全員経営」で第2創業期を切り開く

東日本大震災後に一致団結して事業拡大

2011年3月11日――東北地方を襲った東日本大震災。宮城県石巻市に本社を構える友善商事も、津波によって大きな被害を受けた。同社は大型トラックやトレーラーなどの自動車部品、機械工具の販売を行っているが、商品はほぼ全滅状態となった。

「社屋の悲惨な状況を見た直後は廃業を考えました。ところが、社員たちが『続けましょう』と励ましてくれたのです。その言葉や私を見つめる真剣な表情を見て、事業継続を決断しました」。同社の代表取締役・小笠原博美氏は当時をそう振り返る。

その決断が、思わぬ展開を呼び込んだ。復興需要という追い風が吹いたのだ。復興工事に伴いトラック、ダンプ、トレーラーがフル稼働し、建設会社や自動車修理工場、運送業から部品を求める連絡が後を絶たなかった。

「創業以来、営業エリアは石巻周辺だけでしたが、緊急時における代替拠点の必要性とエリア拡大のため、県北エリア(古川)に拠点を設けました。もちろん、初めてのエリアですから、顧客は皆無。スピード対応で徐々に新規のお客さまを開拓していきました」

古川営業所の開設で陣頭指揮を執った相談役の小笠原政吉氏は、営業方針をそう説明する。一般的に部品の配達は定期便を利用する企業が多い中、注文を受けた後、即時配達を行う。同社がこだわってきたスピード対応を古川営業所でも実施したのである。長年培ってきた迅速な対応力によって顧客の信頼を獲得していった。

古川営業所の業績は、順調に伸びた。その後、仙台営業所も開設。友善商事は第2創業期を迎えることになる。

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友善商事 代表取締役 小笠原 博美氏

さらなる成長に向けて組織体制の強化を図る

石巻から古川、仙台へと事業を拡大した友善商事。事業拡大に伴って社員も増えていった。また東日本大震災により、社内は一体感が生まれていた。そこで同社は組織体制と人材育成の強化に着手した。それを、二人三脚でサポートしたのがタナベ経営だった。

「チームワークは格段に良くなっていましたが、社員一人一人のスキル向上や、目標や課題の共有を図る仕組みづくりが急務でした。その時、全面的に支援してくれたのがタナベ経営でした」(博美氏)

まず、経営理念や基本方針を策定し、社員の行動規範を定めた。そして目標や課題の共有を図るため、経営方針発表会や定期的に経営会議も開催。幹部社員たちがそれぞれの部門の課題を挙げ、経営陣とディスカッションをしながら、解決策を打ち出している。

さらにICT(情報通信技術)を活用した業務の効率化にも乗り出した。独自の配送システムを構築し、「誰が、どこに、何を届けたか」を報告することで、業務を一元管理できるようにした。いわゆる業務の「見える化」を推し進めたことで、社員に問題意識が芽生え、主体的な働き方が根付いていった。

友善商事 相談役 小笠原 政吉氏
友善商事 相談役 小笠原 政吉氏

ICTの活用や研修で社員全員のスキルを向上

ICTの活用は、業務の効率化だけにとどまらない。友善商事では事業拡大に伴って増加した社員の育成にもICT を活用する。タイヤチェーンの取り付け方やバッテリーのチェック方法などを、テレビ会議システムを利用して映像で伝え、社員のスキル向上を図っているのだ。

また2年に1度、最新のトラックやトレーラーの知識を得るための研修旅行として、全社員で東京モーターショーを見学する。

「全社員で行くのは、全員に最新の知識を持ってもらいたいという思いからです。当社では、女性も受注や部品出庫、配送まで一貫して覚えるので、トラック・トレーラー部品に対する深い知識を持ち合わせています。そんなスキルの均一化が、お客さまの信頼を獲得している要因の1つです」(政吉氏)

2016年には、タナベ経営の「幹部候補生スクール」に初めて営業次長を派遣した。将来の友善商事を担う人材だ。

「仕事に対する姿勢が、ずいぶん変化しました。自ら課題を見つけ、解決策を提示するようになりました。体系的に経営を学んだことと、他社の参加者と交流したことが刺激になったのでしょう」(博美氏)

社内の組織体制や人材育成を強化するため、次々と手を打つ友善商事。東日本大震災という悲劇をチャンスに変えて事業の拡大を図ってきた同社は、今後も宮城県内で営業エリアを拡大する方針を掲げる。社員一丸となった全員経営"チーム友善"の精神で仕事に取り組む、同社の躍進は続く。

PROFILE

  • ㈱友善商事
  • 所在地 : 〒986-0011 宮城県石巻市湊字大門崎135-3
  • TEL : 0225-93-0660
  • 設立 : 1973年
  • 資本金 : 1000万円
  • 売上高 : 7億2120万円(2016年3月期)
  • 従業員数 : 24名(2016年12月現在)
  • 事業内容:自動車部品・機械工具販売、機械修理サービス
  • http://yuzen-shouji.jp/


タナベ コンサルタントEYE
自動車部品販売で東北オンリーワンを目指す石巻市の友善商事。同社が提供する価値は、部品ではなくスピードである。東日本大震災における津波被害の経験から、全社員が「商品が早く届くありがたさ(コトの価値)」を理解しており、他社が部品配達に定期便を採用する中、即時配達にこだわっている。
即時配達のためには、顧客ごとの個別対応が求められるが、被災経験を共に乗り越えた強固な仲間意識で複雑な受注も迅速に対応している。業容が拡大する現在も、全員経営" チーム友善"の精神で成長を続けている。
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    担当:タナベコンサルティング 戦略総合研究所