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2018年の年頭にあたり、謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
本年も「FCCマネジメントレター」を、よろしくお願いいたします。

今週のひとこと

「自分がモデル」という覚悟を持とう。

部下はあなたを見て育つ。

率先垂範を心がけよう。

☆ 面倒なことを部下に任せていませんか?

 筆者がコンサルティングをしている企業で、全社員と個別面談を実施した時のことです。「あのリーダーは信用できない」、「あのリーダーのもとでは働けない」、「違う部署に異動させてほしい」。これらのコメントは、すべて工場のリーダーAさんに対するものです。Aさんは若くして課長になり、問題意識が高く、工場内の様々な問題を改善していこうと努力していました。しかし、Aさんは部下から信頼されておらず改善は進みませんでした。

 なぜ、そのような状態になってしまったのか。改革・改善を進めていこうとすると、様々な新しい業務が生まれたり、時には面倒なものも出てきたりします。Aさんは、それらの業務を部下に割り振り、自分は指示をすることに徹していた状態に、部下は不満を感じていたのです。
 何もリーダーが全ての業務をプレーヤーとして行う必要はありません。ただ、人は理屈ではなく感情で動く生き物であり、変化を嫌う生き物でもあります。そうした中で、Aさんは指示を出すだけで、それまでの業務と何も変化がなかったのが、部下からすると面白くなかったのです。


 リーダーの役割は問題を発見し、解決していくことですが、同時に部下が前向きに問題解決に取り組むことができる環境をつくることも重要です。そのためには、まずはリーダーが率先垂範し、部下の心を動かすことから始めることをお勧めします。

 さて、Aさんには面談結果を伝え、まずはAさん自身が現場で実践することから始めています。メンバーもその変化を敏感にとらえ、少しずつですが一緒に改善していこうという雰囲気が出てきています。リーダーの方々には、「部下が嫌がることこそ、率先してやってみせる」という心構えで改善に取り組んでいただきたい。

コンサルティング戦略本部
チーフコンサルタント
内田 佑

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自動車部品の100年オンリーワン企業
さらなる持続的成長へ挑む
SPK 轟 富和氏 × タナベ経営 若松 孝彦


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1917年創業のSPK(東証1部上場)は、自動車部品・用品の専門商社として100年にわたり実績と信頼を積み重ねてきた。
自動車が主な交通手段となる地方都市に営業拠点を構え、人々の生活を支える一方、20期連続増配(2018年3月期、予定)という優良企業としても各方面から熱い視線を集めている。
連続増配を可能とする経営体質はどのように生み出されているのか。
同社の代表取締役社長・轟富和氏に100年企業の要諦を伺った。


創業100周年を迎え理念経営で新たな時代を拓く

若松 創業100周年を迎えるSPKは、自動車部品・用品や産業車両部品の専門商社として実績と信頼を積み重ねてこられました。その歴史の中で当社とも長いご縁をいただいていることに感謝します。2018年3月期(連結)の業績予想は売上高400億円(前期比5.5%増)、経常利益は18億6000万円(同6.5%増)、また20期連続の増配を見込まれるなど、優良企業として国内外から注目を集めていますね。

轟 今期も順調に業績が推移しており、8年連続増益、4年連続過去最高益、20期連続増配という、良い数字が重なる100周年を迎えられそうです。
当社の創業は1917年。伊藤忠商事の機械部より分社した系列会社として、外車・外車部品の販売を行う大阪自動車としてスタートしました。戦後は社名を大同自動車興業に改め、自動車部品に特化した専門商社として全国に営業所を拡大。現在のSPKに社名を変更したのは1992年です。

若松 社名を変えるのは会社にとって重大な決断です。「SPK」にはどのような意味が込められているのでしょうか?

轟 前会長である中嶋功が、誠実(Sincerity)、情熱(Passion)、親切(Kindness)を柱とする経営理念を作り、その頭文字を採りました。まだ英語の社名が珍しく、反対する声もありましたが、そこまでの思い切った改革が必要でした。
当時は業績が低迷しており、1989年に初めて赤字に転落しました。赤字となったのは、その1度だけです。中嶋はこうした状況を打開しようと、1989年から1997年にかけて新創業運動を展開。社外にも協力を求め、タナベ経営創業者の田辺昇一先生にご指導いただきました。

若松 私は日ごろから「経営理念そのものが企業の戦略」であり、「戦略は理念に従う」と言っていますが、SPKは会社名、経営理念、会社の戦略・方向性が一致しています。新創業運動以来の活動が今のSPKをつくっているのですね。

轟 経営理念は何よりも大切にしています。社名とリンクしていますから、社員全員が経営理念を知っている。言葉の力はすごいですよ。2007年の社長就任直後にリーマン・ショックに見舞われるなど厳しい環境に立たされましたが、経営理念がしっかりとしていたから乗り越えることができたと思っています。

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考え方次第でマーケットは変わる。
私から見れば、国内はまだまだ宝の山

ピンチはチャンス思い切った改革を進める

若松 1995年にジャスダック上場後、2000年に東証2部へ市場変更し、2003年に東証1部に昇格されました。とりわけ19期連続増配(2017年3月期)によってSPKの名前が広く知れ渡りました。轟社長は就任されたのが2007年でしたが、その成果方針を承継されています。

轟 上場のメリットはいくつかあります。例えば、お付き合いのなかった海外企業や日本のOEMメーカーなどからの問い合わせが増えていますし、連続増配が注目を集めたことで社員のモチベーションが高まり、新卒採用にも良い影響が出ています。配当については、私が社長に就任してから毎年2円ずつ計画的に上げています。当社の業態は外から分かりづらい部分もありますが、連続増配によって社会的な信用が高まっている。これまでの配当を合わせると約40億円以上に達します。しかし、経営品質が上がるなど金額に換えられない価値を実感しています。

若松 連続増配がブランドとなり、社員のロイヤルティーが高まっています。社員の成長という点で見れば、轟社長は就任直後から時代に合わせた社員の処遇・待遇に高い関心を持たれていました。

轟 処遇については、首脳陣が率先して改革しました。私が入社した年に役員の退職金制度が廃止されたのをはじめ、役員専用車もありませんし、飛行機もビジネスクラスは原則禁止、接待もほとんどありません。リーマン・ショックの影響も大きかったですが、これをきっかけに時代遅れになっていた習慣を見直す機会にもなりました。社員の処遇を見直したことで離職率も大幅に改善しています。かつては入社から数年以内に辞める社員が少なくありませんでしたが、現在は入社6年以内の離職率は約10%まで下がりました。

若松 ピンチはチャンスです。危機に直面したからこそ、必要なものとそうでないものを整理できた。トップの行動を見習って社員にも誠実、情熱、親切が浸透しており、それがSPKのカルチャーとなって競争力を高めているように思います。

轟 お客さまからは「SPKの人間は真面目だ」と言っていただけます。人が育ってきたことが、ライバル会社との差別化につながっているのではないでしょうか。前会長の中嶋は、「SPKがつぶれる時は、SPKらしさを失った時だ」と言いましたが、まさにその通りだと感心します。

若松 「らしさ」という言葉はよく耳にしますが、ぼんやりしていて空気のように捉えどころがありません。らしさを追求できるのは、振り返る歴史があるからです。100年企業だから語れることであり、重みがあります。

成熟市場はアフター市場を創造できる逆転の戦略

若松 戦略ドメインとしている自動車部品は、創業から続く事業です。これを軸に国内外にエリアを広げていらっしゃいます。

轟 当社が勝負するのは自動車のアフターマーケットです。主な顧客は地域の自動車部品商であり、国内、海外、工機を3本柱として展開しています。中でも売上高の6割を占める国内市場は、持続的に成長しています。特に商品開発が好調です。国内市場が伸びている要因はいくつかありますが、1つは自動車の耐用年数の延長。従来は9年、10年といわれていましたが、最近は12年超に延びたことで、足回りなど新しい需要が生まれています。また、PM2.5対策用クリーンフィルター、高品質オイル、アイドリングストップ車用バッテリーなど環境に配慮した商品も好調です。

若松 常識的には国内自動車需要は減少していますが、その裏返しで耐用年数が延びる。それは同時にアフターパーツの需要が拡大することを意味しています。その需要を先取りして商品開発に努めることで、シェア拡大に成功されています。

轟 商品開発はSPKらしさの1つです。リーマン・ショック後、業績もドン底でしたが、原点に立ち戻って、今までにない商品や良い商品の開発に注力してきたことが、ここへきて成長の原動力になっています。なかなか実績に結び付かない時期もありましたが、社員の真剣な姿に当時「絶対に良くなる」という確かな手応えを感じていました。

若松 新車販売台数が伸び悩むなど国内需要は低迷しています。そうした中、社員が「SPK としてより高みを目指せる」戦略をどのようにデザインされますか。

轟 社員には「マクロは見るな」と言っています。自動車部品・用品の市場規模は約3000億~4000億円といわれていますが、顧客が必要とする商品を開発すればシェアは必ず上がるもの。SPKが取り組むのは、純正品ではなく、優良部品という本当に地味な分野ですが、そこが強みでもある。通常、5年間は純正部品が独占。SPKが得意とするアフターマーケットはそこからスタートします。裏を返せば、5年間かけてとことん良い商品を開発できるということです。また、大手国内メーカーが中心となる普通車は販売台数を減らす一方、軽自動車や外車は伸びています。ここはSPKの得意分野です。

若松 国内の新車登録台数の約10%近くが外国車であり、軽自動車も伸びていることを考えるとマーケットは縮小していない。どこで戦うかは非常に大事です。商品開発におけるこだわりのポイントはどこにありますか。

轟 何より品質ありきで開発に取り組んできました。新商品開発においては専門家の協力を得て勉強会や品質チェックを行っています。部品に欠陥があれば大事故につながりますから、品質には全面的に責任を持つ姿勢で開発に取り組んでいます。

若松 時代の流れを捉えた製品開発によって川上の機能を強化する一方、M&A や海外事務所の設立などチャネル開拓を進めていらっしゃいます。

轟 2003年に丸安商会、2014年に谷川油化興業、2016年にNippon Trans Pacific Corp(米国・カリフォルニア州)をSPKグループに迎えました。現在、国内においては全国19の営業拠点を構え、1000社の自動車部品商に供給する体制を整えています。また、海外は80カ国・350社以上へ商品・サービス供給を行っています。これまでシンガポール、マレーシア、タイ、中国、オランダに現地法人がありましたが、さらに2015 年にアラブ首長国連邦のドバイに駐在員事務所を開設。また、同年に米国・ヒューストンに工機の現地法人を立ち上げました。かつて米国からは撤退していますから、25年ぶりの再進出ということになります。ますますグローバル化が進む商売に適応する必要があったわけですが、真の動機は徐々に人材がそろってきたことです。

1000億円企業を目指し市場を掘り起こす

若松 今後のビジョンをお聞かせください。

轟 SPKグループとして売上高1000億円が1つの目標です。現在は約400億円ですから簡単に達成できる数字ではありませんが、人材も育ってきましたから十分に目指せると思います。

若松 1000億円を目指す上で、海外展開をスピードアップさせていくのでしょうか?

轟 まずは国内で断トツの企業になることが不可欠です。国内企業には「国内市場が伸びない」といって海外に出ていくところが多くありますが、私から見れば国内はまだまだ宝の山です。考え方次第でマーケットは変わります。現在、国内の売上高は200億円強ですが、商品開発力の強化とM&Aによって400億~500億円規模まで引き上げていくことができると思います。

若松 国内市場が宝の山という言葉に非常に共感します。従来の視点では頭打ちに見える市場でも、捉え方次第で深耕する余地は十分にあるはずです。一方、海外は日本車の需要が広がっており、今後もマーケットの拡大が期待できます。

轟 海外需要は伸びていますが、海外の販売網を自前で構築する大手企業が増えていますから、SPKとしては川下となる販売店を育てていくことが必要です。今後の戦略としては、短中期的にはアジアを重点に置いています。2017年、タイ支店を独資会社としました。今後は、今まで以上に積極的な投資を行っていく予定ですし、シンガポール、カンボジア、ミャンマーなどにおいても日本製の品質への評価が高まっており拡大が見込まれるマーケットです。ただ、価格は中国製よりも高いですから、少し時間をかけてシェア拡大に取り組んでいこうと考えています。

若松 「SPKらしさ」を磨くことによって、創業から100年たってもなお、持続的成長を求め続ける姿に共感を覚えます。これからも、経営理念を起点に、次の100年も成長されることを祈念しております。本日はありがとうございました。

SPK 代表取締役社長 轟 富和(とどろき とみかず)氏
東京大学卒業後、1974年丸紅に入社。1982年シドニー、1997年シカゴ支店長、2000年建設機械部長を経て、2002年丸紅ベルギー会社社長。2006年にSPK入社。専務執行役員を経て、2007年より代表取締役社長。

タナベ経営 代表取締役社長 若松 孝彦(わかまつ・たかひこ)
タナベ経営のトップとしてその使命を追求しながら、経営コンサルタントとして指導してきた会社は、業種を問わず上場企業から中小企業まで約1000社に及ぶ。独自の経営理論で全国のファーストコールカンパニーはもちろん金融機関からも多くの支持を得ている。関西学院大学大学院 (経営学修士)修了。1989年タナベ経営入社、2009年より専務取締役コンサルティング統轄本部長、副社長を経て現職。『100年経営』『戦略をつくる力』『甦る経営』(共にダイヤモンド社)ほか著書多数。

PROFILE

  • SPK㈱
  • 所在地 :〒553-0003 大阪府大阪市福島区福島5-5-4
  • TEL : 06-6454-2531
  • 設立 : 1917年
  • 資本金 : 8億9800万円
  • 売上高 : 379億円(連結、2017年3月期)
  • 従業員数 : 335名(2017年3月現在、グループ計)
  • http://www.spk.co.jp/




新たな価値を創造し、提供する航空会社へ
Peach × タナベ経営 SPコンサルティング本部


日本初のLCCとして、2012年3月に就航したPeach。
関西国際空港を拠点に独自の経営モデルで躍進し、日本のLCC市場を席巻してきた。
就航5周年を迎えた同社は今、新たなステージへ飛躍しようとしている。


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日本初のLCCとして市場を席巻

鮮やかな"フーシアピンク"で彩られたPeachの機体は、滑走路でも一際目立つ。同社が運航するのは、国内線12路線、国際線13路線の計25路線(2017年6月時点)。就航以来、搭乗者数は増え続け、2017年3月末時点で累計搭乗者数は1800万人を突破した。

Peachが就航した2012年は「LCC元年」と呼ばれるほど、LCCの新規就航が相次いだ。当初こそ「日本でLCCは根付かない」「関空(関西国際空港)を拠点にした航空会社など成功するわけがない」という声が聞かれたものの、同社は今や日本で広く認知され、日本のLCC業界をけん引。関空の総旅客数は"Peach 効果" で2016年に過去最高(2523万人)となった。

「海外のLCC のモノマネではなく、日本ブランドの新しい航空会社として、日本のマーケットにイノベーションを起こすにはどうすればいいのかを徹底し続けたのが、Peachです」。そう話すのは、Peach のコーポレートコミュニケーション部広報グループ・射手矢和晃氏だ。

コンセプトは「空飛ぶ電車」手頃な価格で旅を提供

Peachは就航当初より、「一般的な航空会社とまったく異なる、新しい概念の航空会社」(射手矢氏)という独自性を追求。身近で気軽に利用してもらうため、従来の飛行機とは違う乗り物、「空飛ぶ電車」というコンセプトを打ち出した。

そこで同社は、安全運航を含む運航品質にこだわりながら、手頃な価格設定を実現するため、綿密なコストマネジメントも同時に追求している。コストマネジメントといっても、単に会社の利益を増やすためだけの"コストカット"ではない。安全面や顧客との接点に関することにはお金をかけるが、それ以外のことは徹底的に節約する。そんなメリハリを重視している。

キーワードは「工夫=イノベーション」。顧客と直接関係しないコストを抑えつつ、顧客サービスを向上させる。その結果として、顧客が得る便益を増やす。それが同社の考える「コストマネジメント」だ。拠点を関空に置いたのもその一例である。関空は首都圏よりもアジアに1時間近く、顧客にとってはメリットになる。かつ関空は24時間空港のため、限られた機材を効率よく運航できる。

中央左側がPeach 射手矢氏、右側が中野氏
中央左側がPeach 射手矢氏、右側が中野氏

世界初の"段ボール"製自動チェックイン機を開発

コストマネジメントの最たる例が、関空内にある同社の自動チェックイン機「KIOSK」だろう。これは液晶モニターを大型化した一方、筐体の素材を簡素化することで、顧客の利便性向上と製造コストの抑制を両立させている。

具体的には、液晶モニターの表示画面を32インチに拡大させた。従来機(15インチ)に比べ表示できる情報量は約2倍となった。さらに画面が大きくなったことで、後列の人に「チェックイン受付中」や「旅程表とパスポートをご用意ください」などの案内を提示し、待つ間に準備を促す。これにより空港到着からチェックイン完了までの時間圧縮を図る。

ただ、従来の仕様で表示画面を拡大すると、多額の製造コストがかかる。そこで同社はコストを抑えるため、顧客の利便性と関係がない筐体の素材に、世界で初めて段ボールとスポンジを採用。同サイズ機種の製造コストの約5 分の1 に抑えることに成功した。外装の段ボールは取り外しができ、広告媒体としての活用も可能という。

また電車と同じく、自由席(通常運賃)と指定席(割増運賃)を備えた座席や、運賃が一律ではない空席連動型の割引運賃システム、さらには機内食の有料化などによって手頃な価格設定を実現、「気軽な旅」を提供している。

自社開発のチェックイン機「KIOSK」
自社開発のチェックイン機「KIOSK」

ターゲットは女性客新たなライフスタイルが定着

大手航空会社の場合、航空券単価が高く、出張などで飛行機の利用機会も多いビジネス客をメインターゲットとしている。だがPeachは、そうした層をあえて狙わず、これまで飛行機とあまりなじみのなかった若い女性層にターゲットを絞った。「Peach」というブランド名称もフーシアピンクの機体も、女性にアピールするための材料である。

そうして若い女性層を中心にブランディングを進めた結果、現在は20代~ 30代の女性客が搭乗客全体の3 割近くを占めるまでになっている。

若い女性層をターゲットに設定しているため、ビジネス用途ではなく「レジャー用途」を想定して利用シーンを提案している。例えば、仕事終わりに気軽に海外旅行へ出かけたり、食事や買い物を楽しむために国内の遠隔地へ飛ぶ、といった具合だ。「当社では『もっと旅を日常に』をテーマに掲げており、旅のきっかけを提供していきたいという思いがあります」と、同社広報グループの中野知子氏は話す。

Peachの興味深い点は、乗客自身が新しい飛行機の使い方を発見し、利用していることだ。

「20代の女性グループが浴衣姿で搭乗され、福岡の花火大会の見物に行ったり、台湾のお客さまが沖縄の美容室に髪を切りに行ったりなど、お客さまが主体となり、Peachの気軽な使い方を編み出している。『女性のための航空会社』といえるのは、Peachだけではないでしょうか」(中野氏)

Peach Aviation株式会社 コーポレートコミュニケーション部 広報グループ 射手矢 和晃氏
Peach Aviation株式会社
コーポレートコミュニケーション部
広報グループ 射手矢 和晃氏

企業・自治体との連携強化地方とアジアのかけ橋へ

20代~30代の若い女性層に、Peachを使った新たなライフスタイルを――。そうした同社の価値観・世界観に共感する企業や団体とのコラボレーションが今、多数実現している。アーティストのケツメイシや、ドイツの自動車メーカー・フォルクスワーゲンとの取り組みがその一例である。

ケツメイシによるPeachのイメージソングが機内で流れ、搭乗者の気分を盛り上げる。また2016年、フォルクスワーゲンの人気車種『ビートル』を、コラボ企画として機内販売した。機内で自動車を販売したのは、日本の航空会社で初の試みだ。

こうした取り組みは企業だけでなく、自治体との間でも進んでいる。2016年7月からは就航地での注目エリアをピックアップし、リアリティーあふれる写真を中心に紹介する隔月フリーマガジン『PEACH LIVE』を発行。国内就航空港や機内、就航地の飲食店などで配布している。「『A part of community』をキーワードに、エリアの一員となって就航地やその周辺エリアを盛り上げていきたいという思いで展開しています」(中野氏)

その一環で、インバウンド需要の取り込みにも力を入れている。「訪日客の需要を掘り起こすキーワードは『爆買い』から『体験』へシフトしていますが、体験を楽しんでもらうためのコンテンツは、観光スポット化されていない日本の地方にまだまだ多く存在します。例えば、日本人にとっては当たり前の地方の光景も、訪日客には魅力あふれる観光スポット」と中野氏は話す。

地方観光では交通手段の利便性向上が鍵となる。Peachは就航以来培ってきた空港会社や自治体、公共交通機関との独自の連携体制に拍車を掛け、地方創生を目指すという。

価格競争のステージは終了新たな価値に磨きをかける

2017年3月で就航5周年を迎えたPeach。「価格競争のステージはすでに終わりを迎えました。これからは低運賃を維持しつつ、新たな価値を創造し提供する航空会社となることがテーマです」と射手矢氏。そのために、タナベ経営には「航空会社の枠を超えた、お客さまに新たなPeachのブランドを体現できるノベルティーの提案や開発を期待しています」と言う。

「飛行機を身近な乗り物にして、気軽に旅を楽しんでもらいたい」との思いで、数々のイノベーションを起こし、独自のビジネスモデルで突き進むPeach。新たなステージに向けて、同社の飛行はすでに始まっている。

Peach Aviation株式会社 コーポレートコミュニケーション部 広報グループ 中野 知子氏
Peach Aviation株式会社
コーポレートコミュニケーション部
広報グループ 中野 知子氏

「おもろい」かどうかが決め手!?

Peach には、物事を決める指標として「おもろいか、おもろくないか」(面白いか、面白くないか)という関西企業らしい基準がある。

例えば、機内食としてたこ焼きやお好み焼きを販売するが、そうしたにおいの強い機内食は従来、タブー視されていた。しかし、既存の常識にとらわれず、「おもろい」の判断で販売してみることに。すると「おいしいにおいが機内で循環し、『私も頼んでみたい』と注文が重なるようになった」という。

たこ焼きの他にも、各就航地のご当地メニューを独自の視点でアレンジした機内食を提供。こうした機内食により「機内に乗った瞬間から、旅を楽しめる」(中野氏)。ご当地メニューはPeach の独自色を打ち出すコンテンツとしても一役買っている。

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PROFILE

  • Peach Aviation㈱
  • 所在地 :〒549-0011 大阪府泉南郡田尻町泉州空港中1 関西国際空港エアロプラザビル3F
  • 設立 : 2011年
  • 資本金: 75億1505万円
  • 営業収入 : 517億円(2017年3月期)
  • 社員数: 926名(派遣社員・出向者を除く、2017年4月現在)
  • 事業内容 : 航空運送事業(国内線・国際線)
  • https://corporate.flypeach.com/




日本でなじみのなかったLCCがわずか5年で航空業界を席巻し、今では消費者にとって当たり前の存在になった。その先頭を走り続けているのがPeachだ。
低価格だけを強みにするのではなく、業界の常識を覆す数々の取り組みによって、新たな価値を提供してきた。こうしたチャレンジへの姿勢こそが、新たな顧客の取り込みに成功している理由だろう。今後も関西企業の代表として、「おもろいこと」を発信し続けてほしいと願うばかりである。
SPコンサルティング本部 副本部長 兼 大阪本部 副本部長 足田 悟史
SPコンサルティング本部
副本部長 兼 大阪本部 副本部長
足田 悟史
SPコンサルティング本部 大阪本部 課長代理 竹綱 一浩
SPコンサルティング本部
大阪本部 課長代理
竹綱 一浩
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    担当:タナベコンサルティング 戦略総合研究所