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今週のひとこと

社長の器は2つの力で決まる。

それは、時流を見抜き、詳細を見通す

先見力と、トップリーダーたる決断力である。

☆ 部下をよく知るための3つの配慮

 人材の多様化が進み、どの職場でも様々な特長を持ったメンバーが増えてきていると思います。人材の幅が広がれば育成の場面でも、従来の常識が通用しないケースが増えるため、部下育成の悩みは尽きないことでしょう。

 タナベ経営では、「部下育成には愛情と厳しさを忘れないように」とお伝えしていますが、相手によっても使い分けが必要です。そのためには部下をよく観察しなければいけません。観察のポイントは次にご紹介する3つの配慮です。

 1つ目は「目配り」です。細かい部分まで注意して部下の様子を確認しているでしょうか。例えば、何度もまばたきをしているなら目が疲れているのか、頻繁にあくびをしているなら睡眠不足なのか、といったように外見だけでも多くのことを読み取ることができるはずです。

 2つ目は「気配り」です。目配りで見つけたことがあれば、相手を思いやって気をつけることがないか考えることが大切です。例えば、暗い表情でため息をついていたのを見たとき、「何かあったなら話を聞くよ」という一言を言えているでしょうか。

 最後3つ目は「心配り」です。気配りと心配りは似ていますが、気配りは自分の立場から相手を思った配慮、心配りは相手の立場に立った配慮です。タイミングよく気の利いた一言を掛けてあげると、相手は愛情を感じてくれるでしょう。

 3つの配慮で部下と接することができれば、部下の不安や悩みにいち早く気づくことができます。企業における部下育成は業績に貢献できる能力を身につけさせることですが、部下を正しく知ることで初めて、そのスタートラインに立てるのではないでしょうか。

コンサルティング戦略本部
コンサルタント
堀部 諒太

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事業のライフサイクルに合わせた戦略を


新規事業の開発やビジネスモデル変革の相談を受けることが多くなっている。これは、マーケティングの理論においてプロダクト・ライフサイクル(製品やサービスには寿命がある)が存在するように(【図表1】)、事業にもライフサイクル(=寿命)があることの表れだろう。企業が成長・発展していくためには、製品・サービスだけでなく事業内容も、時期や時代に応じて進化し続ける必要があるのだ。

事業のライフサイクルに合った戦略を立てるために、まず、自社の事業が「導入期」または「成長期」にあるのか、「成熟期」もしくは「衰退期」にあるのか、現状をしっかり見極める必要がある。それぞれの事業がどのタイミングにあるかによって、打つ手は変わってくる。

【図表1】プロダクト・ライフサイクル
【図表1】プロダクト・ライフサイクル

導入期

まず「導入期」は、潜在的な顧客を選定し、事業としての顧客価値を認知、展開するところから始まる。事業とは、「固有技術×マーケット」の接点である。自社の固有技術(強み)は何か。また、それは顧客(マーケット)が求めているものであるかどうかについて検討しなければいけない。

そのケーススタディーとして、スーパーゼネコンなどの大手がひしめき合う土壌改良事業の業界で、後発でありながら新たな事業を立ち上げたA社が取った戦略を考えてみよう。

A社は、土壌改良のための薬剤開発ノウハウを自社の技術として保有していた。このノウハウに、大手が実施していない工法を合わせて新しい薬剤を開発し、徹底的に磨いて展開することでライバルとの差別化を図りつつ、マーケットへのアプローチを行った。

ただし導入期においては、どの市場がターゲットになるかは手探りの状態にあった。そこでA社は、あらゆる市場へ広く展開し、可能性を探っていった。

成長期

「成長期」は、売り上げが少しずつ伸びて市場規模が大きくなり、競争関係が急速に激しくなってくるタイミングでもある。ライバルとの差別化ポイントをどこに置くか。また、絞り込んだ分野でいかにシェアを確保するかがポイントとなる。

先述のA社は、自社が勝てる場はどこにあるのかの絞り込みを行った。その結果、①薬剤・工法の特性、②顧客数を含めたマーケット規模、③これからの市場の成長性という3点を考慮し、自社が勝てる場は「ガソリンスタンド跡地の土壌改良マーケット」であると判断。これを基に、ターゲットの絞り込みを行った。

成長期において、徹底的にガソリンスタンドマーケットを攻略した結果、A社はガソリンスタンド跡地の土壌改良分野において、ナンバーワンのポジションを築くことに成功した。


成熟期

「成熟期」は、一般的に市場の売り上げの伸びが止まる時期である。成長期にガソリンスタンド市場のファーストコールカンパニーとなったA社は、この段階(成熟期)においてはボーリングマシンの販売や汚染除去薬剤の総代理店業務など、資材販売事業の展開や土壌汚染関連機器の取り扱いを開始することにより、事業の拡大に成功。最終的には上場にまで至っている。

しかし、段階を踏まずにいきなり事業拡大を実行するのはハードルが高い。先述したように、まず事業の「選択と集中」で一点突破すること。そして成長期から成熟期にかけて周辺事業に拡大して、トータルソリューションを実現することである。

中堅・中小企業において事業を展開する上で、この"一点突破全面展開"は大切なポイントである。何に特化してアプローチするかを視野に入れ、自社でも検討を進めていただきたい。

もう1点、大切なポイントは、いかに成熟期、もしくは成長期を長く続けることができるかである。例えば、車のモデルチェンジやデザイン変更などは、その対策の1つといえる。20年以上売れ続けるようなヒット商品も、度重なるデザイン変更や改良を経て、成長期・成熟期を繰り返し、高い水準をキープしているのだ。

衰退期

「衰退期」は、売り上げが減少し、利益やキャッシュフローがマイナスに向かい始める段階だ。通常、衰退期に入ると収益構造を見直したり、既存事業に代わる成長エンジン(新たな事業)を立ち上げる必要がある。

B社は、口中清涼剤の製造でこれまで培ってきたマイクロカプセル化技術を、食品や医薬品以外の新たな分野(建築、資源、生活、農業など)に活用。多方面の分野へ応用し、新たな柱づくりを行っている。

しかし、一般的には、「固有技術はあるがイノベーションを起こすことができない」というケースが多くある。新たな分野への展開を模索するも、うまくいかずにそのまま衰退してしまうのだ。

ポジショニングを意識する

企業が成長・発展していくためには、先述したように事業のライフサイクルの中で、自社は現在どこにポジショニングされているかを把握しなければならない。それにより、取るべき対策が変わってくるためである。

企業のライフサイクルにおいては、事業の成長性と収益性が非常に大切な要素として挙げられる。事業の成長性と収益性をポートフォリオに展開した場合、そのポジショニングは【図表2】のようになる。

【図表2】にあるように、収益性は、売上高経常利益率(5%、10%)、成長性は売上高前年比伸長率(5%、10%)の2段階でポジショニングし、事業力を判断していく。

例えば、成長力が重点課題であれば、①成長ドメインへの参入・シフト、②ソリューションの多角化、③M&Aによる事業買収などの対策などが考えられる。また、収益力が重点課題である場合は、①投資後の早期黒字化、②セールス・プロダクトミックス再設計、③独自のビジネスモデル設計などの対策が必要となる。

成長している企業や、創業100年以上の企業は、その歴史の中でライフサイクルに応じたイノベーションを起こしているものだ。自社においても、これを機会に事業のライフサイクルの観点からポートフォリオを作成し、取るべき対策が的確かどうかを中長期的な視点から検討いただきたい。

【図表2】事業の成長性と収益性を表すポートフォリオ
【図表2】事業の成長性と収益性を表すポートフォリオ

  • タナベ経営
  • コンサルティング戦略本部 副本部長
  • 竹内 建一郎
  • Kenichiro Takeuchi
  • 大手メーカーで商品開発の生産マネジメントに携わった経験を生かし、経営的視点による開発・生産戦略構築から現場改善まで、多くの実績を挙げている。モットーは現場・現実・現品の「三現主義」。

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決断
顧客価値×全員活躍×成長意志

自動ドアの販売・設計・施工・アフターサービスの全てを社内一貫体制で行い、業界をリードするフルテック。2017年3月には東証2部上場を果たし、2020年からは全国展開を見据える。
メーカー代理店から脱却を果たした同社は、建物のエントランス空間のトータル・リニューアルを強化し、さらなる事業拡大を目指す。


仙台進出が最大の転機に

長尾 このたびは東証2部への上場、誠におめでとうございます。フルテックは自動ドアの販売・設計・施工・保守までを社内一貫体制で行い、北海道に8カ所、東北に16カ所、関東に11カ所の拠点を展開しています。まずは会社の沿革と、これまでの成長の節目についてお聞かせください。

古野 当社は1963年、自動ドアメーカー・寺岡オートドアの北海道地区代理店として創業しました。
最大の転機は1970年、宮城県仙台市に進出したことです。当時は札幌で基盤を築いたら、次は釧路や旭川、函館といった道内主要都市に拠点を設けるのが定石で、先代社長と専務以外は猛反対でした。それを押し切って進出し、社名も北海道寺岡オートドアから東日本寺岡オートドアに変更したのです。しかし、後から見ればこの判断は大正解で、北海道と東北地区に強力なネットワークを築くことができました。

長尾 いわゆる"売りっ放し"ではなく、販売に施工とアフターサービスが付随するフルテックのビジネスモデルの場合、遠く離れた大都市で「点」として展開するのではなく、事業エリアを徐々に「面」で拡大する戦略が最適です。その意味で、会社を成長軌道に乗せた仙台進出は英断でしたね。

古野 それともう1つ、1991年にモノづくりへ参入したことも、大きな転機になりました。同年、自動ドアの周辺部材となるステンレスサッシ自社工場を完成させ、生産を開始。ところがバブル崩壊の影響で受注は激減し、10年も赤字が続くという大誤算を招きました。
しかし、高品質、コスト競争力、短納期を実現できる工場を早くから構えて自社生産体制を整えていたことは、後々自動ドアの販売でも大きなプラスになりました。

長尾 自動ドア、ステンレスサッシに次ぐ新たな事業を始めたことも、成長を加速させました。

古野 「自動ドアだけではゆくゆく頭打ちになる」という危機感を抱き、第3の事業の柱を探していたところ、『トルネックス』という喫煙所システムにたどり着きました。トルネックスは自動ドアの販売先にプラスアルファで販売することができ、既存の経営資源を生かせる新たな収益源として業績に貢献しています。

フルテック 代表取締役社長 古野 重幸氏 1958年北海道夕張郡栗山町生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。トヨタ自動車工業(当時)での社外調達部門勤務を経て、1988年3月、東日本寺岡オートドア(現フルテック)入社。1990年10月代表取締役社長に就任。札幌商工会議所常議員、全国自動ドア協会副会長、在札幌フランス共和国名誉領事。趣味は読書、ゴルフ。
フルテック 代表取締役社長
古野 重幸氏
1958年北海道夕張郡栗山町生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。トヨタ自動車工業(当時)での社外調達部門勤務を経て、1988年3月、東日本寺岡オートドア(現フルテック)入社。1990年10月代表取締役社長に就任。札幌商工会議所常議員、全国自動ドア協会副会長、在札幌フランス共和国名誉領事。趣味は読書、ゴルフ。

メーカー代理店から脱却し購買代理業へシフト

長尾 2001年には「寺岡ファシリティーズ」へ社名を変更されています。この変更には、どのような意味合いがありますか?

古野 建設不況が長引いていた1998年、『プロフィット・ゾーン経営戦略』(エイドリアン・J・スライウォツキー他著、ダイヤモンド社)と出合い、真の顧客は誰かを見極める重要性に気付かされました。
そして、当社の「お客さま」は自動ドアのエンドユーザーであり、当社は自動ドアというハードを売る会社ではなく、「安全で快適なアクセスとアメニティー作りをサポートする企業」であると再定義しました。その実現のために、単なる客数の追求ではなく、1件のお客さまのバリューを最大にする深耕戦略を重視するようになりました。

長尾 顧客は誰かを明確に定義し、顧客起点の「購買代理業」へと見事に転換されました。本の他にも、何かきっかけがあったのでしょうか。

古野 マーケティングの世界で権威のある慶応義塾大学の嶋口充輝名誉教授の言葉にも、大きな影響を受けました。
嶋口教授にお会いしたのは1992年。当時私は34歳で、社長になって3年目を迎えたばかりのころです。嶋口教授に会社の事業内容を聞かれ、「自動ドアのメーカー代理店です」と答えました。すると「古野さん、メーカー代理店という言葉は現在のマーケティングにおいては死語です」と指摘され、このままメーカー代理店を続ける限り、将来がないことを痛感しました。この一件で奮起し、翌1993年には企画開発室を設立。「お客さまのニーズに耳を傾け、自社でモノづくりをする会社に変わろう」と社員に宣言しました。

長尾 企業のミッションもシフトしたのですね。

古野 それらを明文化したのが、創立40周年を機に作成した「ミッションステイトメント」です。当社の使命と行動規範を「企業の社会的役割」「仕事に対する基本姿勢」「企業としての基本姿勢」「環境整備と信頼獲得」「発展継続のための基本戦略」に落とし込んだもので、朝礼で唱和したり、携帯サイズのノートにして全社員に配布し、常にミッションと向き合っています。

ミッションステイトメント
ミッションステイトメントは我社の使命であり、我々全ての行動規範です。
企業の社会的役割
我々は安全で快適なアクセスとアメニティー作りをサポートする企業として、建物や関連設備に対する顧客のニーズにきめ細かく応え、豊かな社会づくりに貢献する。
仕事に対する基本姿勢
我々は顧客第一主義のもと、一つひとつの現場一人ひとりのお客様に対し真摯で誠実に対応し、いかなる仕事も最後まで完全にやりとげお客様の満足を最大限に獲得する。
企業としての基本姿勢
我々は改善改革を不断に実行し、お客様の新しいニーズに応えるため、新商品新サービスの開拓に積極的に取り組み、常に攻めの姿勢で企業の拡大発展を目指す。
環境整備と信頼獲得
我々は環境整備を経営の原点と認識し、5S 活動を日常業務において不断に実行し、企業と仕事のクオリティーを高め社会とお客様双方からの支持と信頼を得る。
発展継続のための基本戦略
我々はあらゆる面でローコスト経営に徹し、ムダを排除し、高い収益力と強い財務体質を維持し、活力ある組織を構築して企業の永続を目指す。

タナベ経営 取締役副社長 長尾 吉邦 タナベ経営に入社後、北海道支社長、取締役/東京本部・北海道支社・新潟支社担当、2009年常務取締役、13年専務取締役を経て、現職。経営者とベストパートナーシップを組み、短中期の経営戦略構築を推進し、オリジナリティーあふれる増益企業へ導くコンサルティングが信条。クライアント先の特長を生かした高収益経営モデルの構築を得意とする。著書に『企業盛衰は「経営」で決まる』(ダイヤモンド社)ほか。
タナベ経営 取締役副社長
長尾 吉邦
タナベ経営に入社後、北海道支社長、取締役/東京本部・北海道支社・新潟支社担当、2009年常務取締役、13年専務取締役を経て、現職。経営者とベストパートナーシップを組み、短中期の経営戦略構築を推進し、オリジナリティーあふれる増益企業へ導くコンサルティングが信条。クライアント先の特長を生かした高収益経営モデルの構築を得意とする。著書に『企業盛衰は「経営」で決まる』(ダイヤモンド社)ほか。

顧客の「ありがとう」を喜びとするスピリットが重要

近藤 現在のフルテックは、常に顧客視点でサービスを磨かれている印象ですが、顧客の信頼を得るために磨いてきたポイントは何ですか?

古野 まだまだとは思いますが、ポイントを挙げるとすると、お客さまから「ありがとう」と言ってもらえることに喜びを感じる社員ばかりなら、お客さま第一主義を貫けるでしょうね。こうした社員一人一人のスピリットは、設備や仕組み、システム以上に大切です。

長尾 「魅力ある企業づくり」に取り組まれていますが、打ってきた手を教えてください。

古野 タナベ経営の「魅力ある会社の条件」をときどき思い返してチェックしています。これを見ると、「社会的に価値のある仕事」は達成できたと思いますが、「実力が正しく認められる人事制度」は未達。「若い人に任せる」「経営への参画」「プライドの持てる労働条件」もまだまだで、「魅力ある所属上長」にも挑戦中です。「会社の知名度」に関しては、上場したことで知名度が飛躍的に高まり、採用試験を受ける学生が急増しています。一番問題なのが「魅力ある経営者」(苦笑)。"このリーダーについて行く"と社員から思われるような経営者になりたいと思うものの、なかなか難しいものです。

長尾 確かに、魅力ある企業づくりには魅力ある経営者が欠かせません。「経営者品質が社員品質を決める」ともいえますよね。
ところで、全従業員が正社員というのもフルテックの大きな特徴ですが、これにはどのような意図があるのでしょうか。

古野 販売からアフターサービスまでの全業務を社内一貫体制で完遂できるのが当社の強みであり、そのためには全員が正社員である必要があるからです。

笠島 経営理念には「豊かになるための集団」を掲げていますね。

古野 社員の豊かさが商品・サービスの質を決め、それがお客さま満足につながり、返ってきた利益で社員の豊かさを高めるという循環を大切にしたいと考えています。豊かになるためには、働く中で経済的豊かさと人間性、つまり他を思いやる気持ちを高めていくことが必要です。

近藤 私がフルテックの社員の方々とミーティングをして印象深いのは、皆さんがプラス思考で「こうしたい」「こうありたい」といった意見を述べることです。自分の頑張りで周囲を豊かにしていこうという考えが根付いていると感じます。

古野 そう言われるとうれしいですね。「社長は社員に生かされ、企業はお客さまに生かされている」という言葉の通りで、当社の社員は、お客さまのために遅くまで現場で頑張り、絶対にギブアップしないので、「私も頑張らなくては」と日々奮起しています。

長尾 かつてのジュニアボードメンバーは、今や経営陣として活躍していらっしゃいます。先日、支店長研修を拝見した時も、本当に真面目な社員ぞろいだと感心しました。

魅力ある会社の条件 ・魅力ある経営者
・会社の将来性
・社会的に価値のある仕事
・実力が正しく認められること
・若い人に任せること
・国際感覚
・プライドの持てる労働条件
・経営に参画できる
・魅力ある所属上長
・会社の知名度

東急プラザ銀座など数々の物件がフルテックの自動ドアを採用
東急プラザ銀座など数々の物件がフルテックの自動ドアを採用

品質は社員で決まる
だからこそ社員教育に注力

笠島 古野社長は、しっかりした経営方針書を作成して現場に落とし込んでいます。作り方や落とし込み方のポイントは何でしょうか。

古野 私が「今期はこのような企業づくりを行う」と社長方針を明記した後、各部門長が最重点戦略を立て、拠点に落とし込みます。その下に部門別にブレークダウンした目標、そして個人の目標が続きます。社長方針から拠点、部門、社員一人一人の目標が可視化され、人事考課表に収まるという仕組みです。

近藤 人材教育にも力を注いでいらっしゃいますね。

古野 教育研修については階層別・部署別・職種別に、社内講習と社外講習を組み合わせて行っています。課題は部長以上の研修で、今後はこのクラスの研修をより充実させたいと考えています。というのも、拠点長の取り組みは業績に直結しますから。

長尾 相当な費用をかけていることからも、古野社長の社員教育への熱意が伝わります。

古野 当社は、画一的な製品やシステムを売るのではなく、 社員一人一人がお客さまと現場で対峙し、より良い商品・サービスを提供していくビジネスモデル。人が全てであり、現場力が支えているので、社員の教育に投資するのは当たり前だと思っています。

コンサルティング戦略本部 北海道支社長 笠島 雅人 1962年生まれ、北海道出身。IT企業勤務を経て1997年タナベ経営入社。2006年4月より現職。入社当初から、全国各地の企業診断にメンバーとして参加し、地域中小企業から1部上場企業まで、幅広いコンサルティング経験を持つ。戦略構築に伴う組織改革、業績コントロールシステムの構築、情報システムの再構築、人事処遇制度、人事評価制度、幹部人材育成などで実績を上げている。「成長するクライアント企業と共に成長するパートナーであり続けたい」が信条。
コンサルティング戦略本部 北海道支社長
笠島 雅人
1962年生まれ、北海道出身。IT企業勤務を経て1997年タナベ経営入社。2006年4月より現職。入社当初から、全国各地の企業診断にメンバーとして参加し、地域中小企業から1部上場企業まで、幅広いコンサルティング経験を持つ。戦略構築に伴う組織改革、業績コントロールシステムの構築、情報システムの再構築、人事処遇制度、人事評価制度、幹部人材育成などで実績を上げている。「成長するクライアント企業と共に成長するパートナーであり続けたい」が信条。

上場によって自らを律し 変化への対応を促進

笠島 東証2部に上場された目的と、決断された背景をお聞かせください。

古野 経営者としての27年を振り返ると、先代が築いた経営基盤の上で商売を行い、仕事熱心な役員、真面目に働く社員たちに支えられ、非常に恵まれていたと思います。ただ、「このまま楽をしていたら3年後は危ない。自らを律し、さまざまな変化に対応しなければ」と考え、上場を決意しました。上場すると常に増収増益が求められる厳しい環境が待っています。そこに身を置き、全力を尽くして事業を伸ばし、社員やお客さまをはじめとするステークホルダーの期待に応えたい。それが上場を決断した率直な気持ちです。

笠島 2015年7月のフルテックへの社名変更と上場は、脱メーカー代理店の帰結点ともいえますね。

古野 嶋口教授に「メーカー代理店は死語」と言われてから25年、ようやく企業の体質を変革できつつあると感じています。

長尾 今後の戦略テーマをお聞かせください。

古野 東京オリンピックが開催される2020年までは関東でのシェア向上に重点を置き、それ以降は全国展開を図ります。M&A、業務提携、単独進出などの手法について熟考した上で、2020年には西日本に拠点を出す計画です。
ステンレスサッシに関しては、インドネシアをはじめとするアジア諸国で高品質・高意匠の建物が求められており、それに対応したステンレス建具の需要に応える形で、海外進出の可能性も検討します。
垂直展開については、自動ドアを完全に自社製造できるレベルまで自社開発力を高めていきたいと考えています。
また、ストック市場への対応も進めていきます。現在、自動ドアの総管理台数は26万台超に達しますが、当社の商品・サービスを生かし、この市場に対して建物の顔であるフロントの「トータル・リニューアル」を提案していくことで、売り上げはまだまだ伸ばせると考えています。さらにIoTなど先進技術を活用したメンテナンス体制の改革にも取り組んでいきます。

長尾 フルテックのさらなるご発を祈念いたします。本日はどうもありがとうございました。

フルテックスピリットなどをまとめた携帯用ノートと社内報、経営方針書。理念や考え方の共有を徹底している
フルテックスピリットなどをまとめた携帯用ノートと社内報、経営方針書。理念や考え方の共有を徹底している

コンサルティング戦略本部 部長 近藤 正晴 建材メーカーの営業部門、開発部門を経験後、タナベ経営入社。「全ては基本動作から」を信条に、人材育成や組織力を高めるマネジメントシステムを構築。社員のモチベーションアップや営業力強化を実現している。トップ・幹部と一体になって、常に進化し続ける企業づくりに定評がある。
コンサルティング戦略本部 部長
近藤 正晴
建材メーカーの営業部門、開発部門を経験後、タナベ経営入社。「全ては基本動作から」を信条に、人材育成や組織力を高めるマネジメントシステムを構築。社員のモチベーションアップや営業力強化を実現している。トップ・幹部と一体になって、常に進化し続ける企業づくりに定評がある。

PROFILE

  • フルテック(株)
  • 所在地:〒060-0051 北海道札幌市中央区 南1条東2-8-2 SRビル3F
  • TEL:011-222-3572
  • 設立:1963年
  • 資本金:3億2930万円
  • 売上高:104億2000万円(連結、2017年3月期)
  • 従業員数:646名(連結、2017年1月現在)
  • 事業内容:自動ドア装置の販売・施工・保守サービス、ステンレスサッシ・製作金物製造販売および付帯関連する事業、駐輪システムの販売・管理・運営、駐輪ラックの販売、喫煙所システム「トルネックス」の販売
  • http://www.fulltech1963.com/
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