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今週のひとこと

勝てる条件をつくろう。

決め手は何か。それを見抜き、

実行しよう。

☆ 自社の強みに気づいていますか?

 筆者がコンサルティングをしている、ホテル業のクライアントのことです。
 そのクライアントが保有する施設は、建物自体が古く、経年劣化をしているため、他の新しい宿泊施設の方が良く見えるのですが、その施設は広大な土地を所有しており、四季折々の周辺の自然を満喫できます。
 加えて、その自然を感じることができる宿泊設備も多数保有しています。競合となる都市部にあるシティホテルや旅館は、もちろん自然を感じられるような環境にはありません。

 「自社の強みをライバルの弱みにぶつける」という経営の原則に従えば、競争優位性を高めるには、この「自然」や「宿泊設備」を活用するべきです。
 しかし、その環境に慣れてしまっていると、自社の強みである「自然」には目が行かず、他社との差別化が難しい「料理」や「温泉」などの一般的なことで競争優位性をつくろうとしてしまいます。
 これでは、競合とレッドオーシャンで戦うことになるため、厳しい競争が待っているのは言うまでもありません。

 人が自分の強みに気づきにくいように、企業も自社の強みには案外気づきにくいものです。環境への慣れによって狭くなってしまった視野を、客観的な立場からアドバイスさせていただくことで、新たな気づきを差し上げることが、私たちコンサルタントの重要な役割の一つであると感じます。

コンサルティング戦略本部
アソシエイト
井上 裕介

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インナーブランディングで採用と定着のリズムを維持


新卒入社3年以内の離職率は3割超

コンサルティングの現場で近年よく聞く悩みは、「採用難、人材不足、定着難」だ。特に新卒入社3年以内の離職率がなかなか低下しないとの嘆きを耳にする。厚生労働省の「新規学卒者の離職状況」に関する調査結果を見ると、2012年の3年以内離職率は大卒者で32.3%、高卒者が40.0%と、確かに入社3年以内で3~4割が辞めている。(【図表】)

期待と夢を膨らませて入社した新卒者10人のうち3~4人が、わずか3年でその企業を去る選択をする。こうした残念な結果をもたらさないように、企業はいま一度、「確保した人材に対し適切な育成・指導ができているか」「個人に自社の期待値をきちんと伝えられているか」を省みる必要があるだろう。

併せて見つめ直すべきは、自社の風土である。「経営理念が全社に共有され、理解されているか」「現在の社風に活力があるか」「育成に前向きな環境か」などを点検し、課題があれば、その解決に目を向けなければならない。

【図表】学歴別卒業後3年以内離職率の推移
【図表】学歴別卒業後3年以内離職率の推移

経営理念は浸透しているか

社員が定着する風土の第1条件は、経営理念が社内に浸透していること。すなわちインナーブランディングが確立されていることだ。

経営理念がなくても機能している企業はたくさんあり、「経営理念やインナーブランディングなんて必要ない」と言う経営トップもいる。しかし、先行きが見通しにくい現在の経営環境において、社員の心を1つにし、持てる力を発揮してもらうには、自社が向かう方向性を経営理念で示す必要がある。なぜ自分がその仕事をしているのか、社員が最も理解しやすいからだ。

私がコンサルティングで支援している「人材が定着する企業」の共通点も、インナーブランディングに取り組んでいることである。取り組む動機は次の3点に集約できる。

①自社が目指す方向性を示し、社員へきちんと発信したい

②生まれも育ちも、考え方も価値観も異なる社員たちを引っ張っていくには、進む方向性を示す「よりどころ」が必要

③経営トップ・幹部が不在でも、社員が価値判断の基準を誤らないようにしたい

タナベ経営は、経営理念を掲げ、それに向かってまい進することが、企業のあるべき姿だと提言している。経営理念がなければ、社員は自社がどうなっていくのか分からず(将来性や夢の喪失)、何のためにここで働いているのか分からず(存在意義の喪失)、何を基準に判断すれば良いのか分からない(判断基準の喪失)からだ。企業の存在価値は、社員という経営資源によってしか発揮できない以上、社員のベクトルをそろえるインナーブランディングは必須といえよう。

また経営理念の明示は、社外に自社の存在意義を示すことにもつながる。これにより、社員一人一人の社会的使命感が高められ、経営理念の実現に向けて自律的に業務を行えるようになる。自分の仕事に意義を感じ、前向きに働けるため、必然的に人材も定着する。この善循環をつくった上で採用を行うことが、採用と定着のリズムを維持できる理想の姿である。


自社独自の「優秀さ」を設定する

「採用学」を提唱する服部泰宏氏(横浜国立大学大学院准教授)が、企業の人材採用を、米メジャー球団オークランド・アスレチックスの選手獲得方法に見立てて論じているのが興味深いので紹介したい。

従来、メジャーリーガーのスカウトは、選手の過去の実績から「優秀さ」(足が速い、肩が強い、守備がうまい、長打が打てるなど)を見て、目利きで選手を獲得していた。だがアスレチックスは、データ解析という新たな手法を用いた「優秀さ」(打者なら打率よりも出塁率)を指標に選手をそろえた結果、ニューヨーク・ヤンキースやボストン・レッドソックスといった強豪チームと優勝争いができる球団へ変身した。

これを採用の現場に置き換えると、採用する人材の「優秀さ」を、企業側がきちんと定義してから採用に臨まなければならないということだ。本当に欲しい人材像を明確にせず、慣例に基づいて「コミュニケーション力」「協調性」「主体性」といった評価要素で採用を行ってはいないだろうか。この要素が一般的であるほど、他社との人材獲得競争は激しくなり、採用と定着の成功率を低くしてしまう。

理念経営を標榜し、理念に共感する人しか採用しないとの考えを貫くA社は、経営者自らが面接に積極的に関わり、求職者1人当たりの面接回数は5回を超える。採用前に接触頻度を上げ、理念への理解と共感を促してミスマッチを防ぐため、離職率は極めて低い。

また中堅企業B社は、採用スタッフが理念や経営者の考えを忠実に代弁して求職者を共感させ、毎年有能な人材を確保している。これは、インナーブランディングが確立されているからこそできることだ。

タナベ経営が主催する「人を活かし、育てる会社の研究会」(2016年9月~17年7月、計6回の参加型研究会)では、こうした成功企業の講話や視察を通して、人材の採用・育成・活用・定着という4つの課題解決のヒントをつかむことができる。ぜひ参考にしていただきたい。

人が活躍し、人が伸びる企業には、採用の前に理解と共感があり、定着の下に人が育つ風土がある。インナーブランディングによる社内ベクトルの統一を出発点に、人が活躍し、成長することによって顧客に選ばれ続ける企業になっていただきたい。

  • タナベ経営
  • コンサルティング戦略本部 部長 戦略コンサルタント
  • 松本 宗家
  • Muneya Matsumoto
  • クライアントの立場に立った現場優先のコンサルティングを実践。組織戦略や評価連動型人材育成システムの構築など、人材に携わるコンサルティングに定評がある。「企業は人なり」をクライアント企業とともに体現することに心血を注いでいる。中小企業診断士。

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子どもを育む豊かな暮らしを提案
"人づくり"に尽力し、家具インテリア業界のトップランナーを目指す

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兵庫県加西市に本社を構え、地場産業のそろばん製造を祖業とする市場。
時代の流れとともに、木珠のれん、家具インテリア用品へ主力商品を移し、2019年には設立60周年を迎える。
代表取締役の市場博幸氏は人材育成に並々ならぬ力を注ぎ、次代のリーダーを集めた"ビジョンボード"メンバーに社長方針「FCC宣言」の具現化や「2020年度のあるべき姿」の作成を一任。
経営に参画させることで、リーダー陣の教育に徹している。


100年先も一番に選ばれるには

塩澤 日ごろからタナベ経営をご活用いただき、ありがとうございます。市場は先代の市場積氏が1959年に設立、2019年に60周年を迎える家具インテリア用品の製造・卸売り企業です。まず、会社の歩みをお聞かせください。

市場 1950年、父の積がそろばんを製造して、全国の文房具店へ卸したのが事業の始まりです。1959年には株式会社に改組して右肩上がりの成長を続けますが、需要の変遷とともに徐々にそろばんの売り上げは減少。窮地の中、そろばんづくりの技術を使って「木珠のれん」の製造を始めると、一世を風靡する大ヒット商品になりました。

しかし、好調は長く続かないとみた父は、取り扱う商材を家具インテリアへ変更することを決意。商品の使いやすさに加えて美しさが重要になると読み、優れたデザインを買い取って協力工場へ製造を依頼するスタイルを確立し、スリッパ立てや傘立て、マガジンラックなどの新商品を次々に開発しました。私が入社したのは、このころです。より良いものを廉価で提供するため、同規模の企業の中でいち早く海外拠点の開拓に取り組み、1986年に本格的な海外生産を開始します。

塩澤 そろばんから木珠のれん、家具インテリアへ主力製品が移っていったのですね。そうした中、自社の強みはどこにあるとお考えですか。

市場 企画開発部を有し、常に自社オリジナルの新しい商品をマーケットへ提供できる点です。また、数年前から開発している子ども向けの家具も強みになっています。

塩澤 今回まとめたビジョンブックの中でも、FCC宣言として「インテリアを通して、子どもを育む豊かな暮らしを提案する業界のトップランナーを目指す」と表明していますね。

市場 2016年の仕事始めの際、「何であれば、100年先もお客さまから一番に選ばれる会社になれるのか?」というアンケート調査を全社員に向けて実施しました。すると「子ども」をキーワードに挙げた社員が多かったため、FCC宣言の内容が前述のように決まりました。

社員たちで構成されたビジョンボードメンバーが、FCC宣言を「メーカーとして夢のあるモノづくり、コトづくりへ挑戦」「ICHIBAライフスタイルの提案」「お客様目線の安心・安全を届ける」「社員一人ひとりの成長による人材のブランド化」という4つの要旨に落とし込んでいきました。

さらに、FCC宣言を検討する過程で、「家族×子ども×成長」をテーマにした新ブランド『Berceau(ベルソー)』が誕生しました。フランス語で「ゆりかご」を意味するベルソーは、一つ一つのアイテムに子育てのエッセンスを盛り込み、いつもそばで子どもを見守り、親と子どもが一緒になって成長していく環境をつくり出すブランドです。単品訴求ではなくブランドのトータルな世界観を重視しながら、当社の基幹ブランドに育て上げるという強い決意で取り組んでいます。

市場 代表取締役 市場 博幸氏
市場 代表取締役
市場 博幸氏
1957年兵庫県加西市生まれ。1980年市場入社。営業開発を経て、1985年専務取締役、1999年に代表取締役就任。播州算盤工芸品協同組合副理事長。

市場 海外EC 事業部 部長 谷勝 一文氏
市場 海外EC 事業部 部長
谷勝 一文氏
1974年兵庫県加西市生まれ。甲南大学経営学部経営学科卒業後、税理士事務所勤務を経て、2008年市場入社、海外EC事業部部長。

次世代リーダーが自らビジョンをつくる

岩﨑 FCC宣言はコンパクトな「ICHIBA VISION」( 以降、ビジョンブック)に掲載されています。ビジョンブックは社員が常に携帯して、物事を決める際の指針にできるようになっていますね。

谷勝 社長の思いや今後の方向性を示した、ここまで分かりやすい冊子はこれまでになく、全員に配布したことも画期的で、大きな成果だと思います。

塩澤 ビジョンブックの特徴としては、まず企業のビジョンは経営理念から始まることを体現するため、巻頭に経営理念を明記しました。次に、ビジョン実現のためにチームとして何をやるべきかを明確にしています。そして「作って終わり」にならないよう、KPI(重要業績評価指標)に基づいた管理ができるよう工夫を施しています。

岩﨑 FCC宣言をまとめ上げ、ビジョンブックを作成したのは、30代、40代の若手・中堅メンバーで構成するビジョンボードのメンバーです。谷勝部長をリーダーとして2016年7月に発足し、8カ月でビジョンブックを完成させました。ビジョンボード発足の経緯をお聞かせください。

谷勝 組織の規模が大きくなると、社長がワンマンで指揮する体制では細部まで目が届かなくなるため、現場の判断に委ねるケースが増えていきますよね。こうした状況を踏まえ、社長が社内を見回したところ、マネジメント人材の不足が浮き彫りになり、危機感を抱いてビジョンボードを設立したと認識しています。

リーダーに任命されて最初に取り組んだのは、メンバーの"目線合わせ"です。「社長の考えはこうだ」と推察する能力の差をなくすことが、マネジメント強化の第一歩になると考えました。

岩﨑 目線合わせについて、より具体的にお聞かせください。

谷勝 例えば、社長が一言発した時、解釈の違いが生じて社長の真意を測り切れず、深く悩む人もいますし、社長の真意とズレが生じたまま部下へ伝達してしまう人もいるわけです。目線合わせはこうした状況をなくすために行うもので、共通した推察力・翻訳力により、同じ解釈ができるようにしていきます。ボードメンバーの解釈が正しいとは限らないので、ことあるごとに社長に確認していただきました。

こうして第一ステップとしては、トップの方針や思いを翻訳して、ボードメンバーの腹に落とし込むことができました。それを部下へ落とし込むのが次のステップです。

塩澤 目線を合わせてトップの方針や思いを翻訳・共有し、ボードメンバーの腹に落とし込んだのですね。そうした取り組みの結晶が、FCC 宣言やビジョンブックといえます。

市場 従来、ビジョンや事業戦略、中期経営計画などは経営陣で策定していました。いわばトップダウンが主流だったわけです。それに対して、今回は次代のリーダー陣の教育を兼ね、全社員の思いが反映されたFCC宣言、中期経営計画や2020年度のあるべき姿を明確に記したビジョンブックが完成しました。

今回関わったボードメンバーは大きく成長しましたし、FCC宣言や中期経営計画を実行する際の、強靭な推進力となるはずです。

谷勝 以前は、策定に絡まない間接部門などは「上が決めたことに従えばよい」というスタンスに陥りがちでした。しかし、今回は間接部門を含めたボードメンバーも会議に参加してもらうことで、彼らの意見をビジョンに反映できるようになりました。こうして上層部と多様なコミュニケーションが取れるようになり、社員の自主性も育まれたと感じます。

FCC宣言
インテリアを通して、子どもを育む豊かな暮らしを提案する業界のトップランナーを目指す。
1.メーカーとして夢のあるモノづくり、コトづくりへ挑戦
2.ICHIBAライフスタイルの提案
3.お客様目線の安心・安全を届ける
4.社員一人ひとりの成長による人材のブランド化

人が育たないと企業は育たない

岩﨑 谷勝部長がタナベ経営の「戦略リーダースクール」を受講されたことも、ビジョンボード発足のきっかけになったと思います。受講された際に「当社には戦略と呼べるものが不足している」と言われたのを聞いて、終了報告時に「谷勝部長を中心に、次の中期経営計画のビジョンを作るようなプロジェクトを立ち上げませんか」と社長に提案しました。

以前から社長は人づくりに熱心に取り組んでいらっしゃいますが、その思いをお聞かせください。

市場 当社の社員構成を見ると、60歳の私と年齢の近い層は非常に数が少ないのが現状で、かねてより30代から40代の人材を育成・強化すべきだと考えていました。経営のバトンタッチの際も、この層が中心になって事業を進めなければ、会社は存続できないでしょう。

塩澤 自ら作り上げた計画、ビジョンだとその推進力も変わってくると思います。これらの取り組みは「人材育成」がキーワードになります。

市場 新入社員から次世代リーダーに至るまでの人材教育は、タナベ経営に一貫して依頼しています。これによってブレのない教育体制を整えることができました。

塩澤 ありがとうございます。タナベ経営の階層別教育を活用することで、各階層の考え方や価値観、判断基準などは一本筋の通ったものが養成されます。これにより"共通言語"を持つ層の厚みが増せば、強靭な企業体質づくりにつながります。

市場 一貫した教育ができるのは大変有意義なことです。あとは受講した本人の頑張り次第。当社では研修で学び取ったことを社内に持ち帰って、報告する場を設けています。単に発表をするだけでなく、社内で内容を共有し具体的にどのように生かせるのかを、考える機会になっています。

岩﨑 「受けて終わり」にならない仕組みを設けているのですね。

谷勝 受講した本人は「受けて終わり」になりがちですから、「インプットした後にアウトプットさせる機会を設けよう」と市場社長が発案して実現させました。

市場 皆の前で報告することが分かっているので、本人の集中力と学習意欲が高まりますし、要約力が磨かれ、プレゼンテーションの訓練にもなります。

塩澤 人がボトルネックになって、目標を達成できない企業は多々ありますが、市場にとって人は、非常に重要な経営資産なのですね。

市場 過去を振り返っても、当社は人の力で成長してきました。人が育たないと、企業は成長できません。どのような経営環境であっても、人材育成は不可欠だと考えています。

タナベ経営 コンサルティング戦略本部 チーフコンサルタント 塩澤 啓
タナベ経営 コンサルティング戦略本部 チーフコンサルタント
塩澤 啓
大手卸売業にて、グループ企業の事業戦略構築や取引先企業の営業企画策定などに従事。「経営力=戦略構築力×戦略実行力」のポリシーで、戦略策定にとどまらず、クライアントの現場での戦略実行を支援。現場に入り込んだ実践的なコンサルティングで、クライアント企業の成果創出に貢献している。

60周年でリ・スタートさらなる高みを目指す

子どもは学習のしやすさ、母親は動きやすさなど、家族それぞれに合わせた設計のダイニングテーブル&チェア
子どもは学習のしやすさ、母親は動きやすさなど、家族それぞれに合わせた設計のダイニングテーブル&チェア

塩澤 ビジョン実現のために、今期(第59期)取り組んでいるプロジェクトについてお聞かせください。

谷勝 1つ目は、インナーブランディングの強化です。企業経営や事業運営上の根本であり、これができていないと「思いがこもっていない」状態に陥るので、どうしてもやらなければいけない部分です。

実施に当たり、ボードメンバーが社長に対して質問を投げ掛ける場を設定し、社訓や企業理念などを掘り下げ、社長の言葉で語ってもらう取り組みを始めました。この取り組みは大変好感触で、社長の言葉を聞いて感動するメンバーもおり、社長の思いがメンバー全員に伝わったと思います。

2つ目は商品開発です。当社はモノづくりを行う"メーカー"であり、その柱となるのが商品開発。FCC宣言のテーマに合致した商品を作り、市場へ提供することに努めます。

3つ目はBtoC(企業対消費者間取引)事業の強化です。というのも、100年先も一番に選ばれるためには企業体力が重要で、体力をつけるには十分な利益を上げていかなければなりません。現在はBtoB(企業間取引)事業が主力ですが、利益を確保するにはSPA(製造小売業)などのスタイルでBtoC事業の拡充を図ることが不可欠です。その一環として2015 年、「MARCHÉ petit(マルシェ・プチ)」という子ども家具専門の直営店を大阪・南堀江に出店しました。

塩澤 これからはボードメンバー以外の社員を巻き込んで、全社一丸となってプロジェクトを推進するリーダーシップがポイントになりますね。

谷勝 その通りで、現在ビジョンボードから派生し、他の社員を巻き込んだプロジェクトも始動しています。具体的には、ボードメンバーによる3つのプロジェクト以外に「業務改善」「品質管理」「5S」というテーマに着手しており、合計6つのプロジェクトが進行しています。その際も、ビジョンブックがバイブル的な役割を果たします。

岩﨑 今後の展望についてお聞かせください。

谷勝 来期は設立60周年を迎えます。人間だと還暦を迎える年であり、企業をリ・スタートする絶好の機会です。それまでに、現在取り組んでいる事項の多くを着地させないといけませんので、時間的なプレッシャーをひしひしと感じます。

市場 ビジョンブックで表明した目標達成に向けて、確実に進めていくことが大きな課題です。特に、FCC宣言で掲げる「子どもを育む豊かな暮らしを提案」とは、単に子どもの家具だけでなく、もっと幅広い商品を世へ送り出すことにつながりますから、そこに磨きをかけ、子どものいる家庭のインテリアや暮らしをトータルにデザインしていく所存です。

塩澤 FCC宣言を実現するための人づくりが一気通貫していると感じました。市場のさらなる発展を祈念いたします。

タナベ経営 コンサルティング戦略本部 人材開発部 コンサルタント 岩﨑 直人
タナベ経営 コンサルティング戦略本部 人材開発部 コンサルタント
岩﨑 直人
タナベ経営入社後、人材開発部門で企画から集客・運営業務まで一貫して従事。現在は、「人材育成なくしてビジョンの実現なし」を信条に、全国の人材開発部門のリーダーとしてメンバーの成長を支援。「成果を上げ続ける強いチームづくり」に向け、業績マネジメントの仕組みづくりと部下育成を実践している。

PROFILE

  • 市場㈱
  • 所在地:〒675-2102 兵庫県加西市中野町1309-3
  • TEL:0790-49-0034
  • 設立:1959年(1950年創業)
  • 資本金:2000万円
  • 売上高:19億円(2017年5月期)
  • 従業員数:86名(2017年5月現在)
  • 事業内容:家具インテリア用品の企画・デザイン、売り場プランニング、家具インテリア用品の製造・卸売業
  • http://ichiba-web.com/
  • 会員制ネットショップ
    http://www.ichiba-net.com/

「子どもを育む豊かな暮らしを提案する」ことを体現した直営店 「MARCHÉ petit(マルシェ・プチ)」(大阪・南堀江)
「子どもを育む豊かな暮らしを提案する」ことを体現した直営店
「MARCHÉ petit(マルシェ・プチ)」(大阪・南堀江)

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    担当:タナベコンサルティング 戦略総合研究所