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今週のひとこと

常に第二、第三の手を準備しておこう。

全天候型リスクマネジメントができてこそ、

プロのリーダーである。

☆ 常に複数の選択肢を持っていますか?

 2018 FIFAワールドカップで連日熱戦が繰り広げられています。
 日本チームは決勝トーナメント進出がかかったポーランド戦で、状況が目まぐるしく変化する中、西野監督は判断の連続でした。

 タナベ経営では、リーダーシップの本質は「的確な判断」であると提唱しています。この場合、西野監督自身が指揮をとっていた、対ポーランド戦に加え、同じ時間に行われていたセネガル対コロンビア戦の試合状況に応じて、西野監督が選手に対して、攻め続けるのか、もしくは守りを固めるのか。どのような戦い方の指示をするかは難しい判断だったはずです。

 厳しい状況の中で、西野監督が迅速に判断をし続けることができた理由は、状況に応じた選択肢(オプション)を事前に数多く考え抜いていたからであると、筆者は考えています。選択肢は、決勝トーナメント進出という目的をかなえるための手段であり、限られた試合時間の中で、目的を実現させるために最適な手段を選び続けなければいけません。そして、一度判断を下したら、そのことをメンバーに正しく周知徹底させることが必要でした。実際に西野監督は選択肢の中から守ることを選び、そのことをメンバーに正しく周知させることに適任だったキャプテンの長谷部選手を投入、後半の残り10分間を耐え抜きました。この戦い方に一部批判の声はあがりましたが、日本チームは決勝進出を果たすことができました。

 リーダーの皆さん、常に複数の選択肢を持っているでしょうか。そして、最適な選択をするために、チームの現状を的確に把握しているでしょうか。さらには、自分自身の選択肢や判断の幅を広げてくれる部下を育てていますか。下した判断によっては批判を受ける覚悟ができていますか。リーダーの方は、自問自答していただきたい。

経営コンサルティング本部
チーフコンサルタント
田上 智則

ビジネスモデル・クオリティー
「選ばれ続ける」価値をつくる3つの戦略投資


「モノ余りのコト不足」「事業のサービス化とデジタル革命」が進む環境下、ビジネスモデル競争が加速化し、同質化の様相すら見せ始めている。「独自のビジネスモデル」を作り上げることは無論だが、「選ばれ続けるビジネスモデル・クオリティー」を確立する「戦略投資」が必要となってきた。3つのポイントを提唱したい。

まず、専門サービスへ投資し、ブランド化することだ。A社は、健康食の高齢者宅配事業で成長している。理由は、「味」に加え、栄養士資格を持つオペレーターによる適切なアドバイスが受けられるからだ。実に社員の6割が栄養士資格を持ち、顧客へ「プロフェッショナルサービス」を提供。この取り組みのブランド化により、顧客数は毎年120%以上の伸びを示している。

2つ目は、デジタルテクノロジーへ投資することだ。食材の流通市場は7兆円前後あるといわれている。その3割に達する2兆円超の規模で、取引社数も優に10万社を超える取引に関わるのがB社。理由は「デジタル」を活用した「プラットフォームモデル」を構築しているからである。日本有数の食品流通企業の売上高が2兆円強。つまり、同社はデジタルテクノロジーを活用した食材受発注サイトを通じ、日本を代表する食材取引会社へと進化しているのだ。デジタルテクノロジー革命といわれる現在、効率化でなく、顧客創造に直結するくらいの視点で戦略投資が必要なのではないだろうか。

3つ目は、「働きがい」へ投資をすることだ。食品メーカーのC社は事業拡大に伴って新工場を建設。自動化・無菌化などの最新設備の導入はもちろんのこと、トップが最も力を入れたのが、「働きがいある職場」への環境投資である。「会議室を壊してでも保育スペースを確保」「山と湖を見ながら落ち着ける休憩室の設置」など、「働く人のモチベーション」を高めるさまざまな工夫を通して「人を大切にする企業」として認知されている。大企業が多数進出する地区に立地しながら、抜群の採用力を発揮している。

「人手不足倒産は4年で3倍」という時代。働きがいある企業として選ばれる視点も、大切な戦略投資である。「ブランディング、デジタル、そしてヒト」。この3つの戦略投資が、新たな価値を生み出す鍵である。

タナベ経営 常務取締役/食品・フードサービス成長戦略研究会 アドバイザー 中村 敏之
    タナベ経営 常務取締役/食品・フードサービス成長戦略研究会 アドバイザー
    中村 敏之  Toshiyuki Nakamura

    「次代の経営者育成なくして企業なし」をコンサルティングの信条とし、100年発展モデルへチャレンジする企業の戦略パートナー。豊富な現場経験に基づく「ビジョンマネジメント型コンサルティング(VM経営)」は具体的で、クライアント企業から分かりやすいと大きな信頼を得ている。関西学院大学卒。

食品・フードサービスコンサルティング

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100年先も一番に選ばれる食ビジネス企業を目指す

成熟と変化の加速への対応とは、顧客から一番に選ばれるための「突き抜ける価値」を身につけ、ロイヤルカスタマーという顧客を増やしてゆくことです。
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トータルコミュニケーション戦略

東京本部 食品・フードサービス 本部長代理
食品・フードサービス成長戦略研究会 リーダー

原 泰彦 Yasuhiko Hara
外食業界で統括業務、新規事業・業務開発に従事後、タナベ経営入社。新規事業立ち上げ、マーケティング戦略立案、人材育成を得意とする。信条は、「サービス産業のポジティブカタリスト(触媒)」。サービス業で働く人が、さらに輝き続けられるよう、変化と成長を支援する情熱的なコンサルティングを展開中。上場・中堅外食企業のコンサルティング事例多数。

情報爆発社会と「3つのM」

ITの進化を背景とした急激な情報量の増加、いわゆる「情報爆発(Info-plosion)」により、消費者は無意識のうちに毎日4000~5000社の企業からのメッセージに触れているといわれる。もはや単発の販売促進がほぼ無意味な状態に陥っており、市場や消費者とのコミュニケーションの在り方が大きく問われ始めている。

「コミュニケーション」という言葉はいまや日本語として定着しているが、その意味を説明しようとすると意外に難しい。ここでは、人と人、あるいは企業と消費者が、考えや感情・情報を交換し、ある情報が何かの「意図」を持って「伝達」されたと、相手が「理解」した状態と定義する。

このように定義してみると、企業は本当に消費者とコミュニケーションが取れているのか、疑問に思えるような広告や販売促進も多いのではないだろうか。

昨今の食品・フードサービス業界における企業間競争は、品質・サービスの良しあしというよりも、過剰な販促合戦で競り合っている印象が否めない。従って、情報爆発社会においてはマーケット(≒対象者)、メディア(媒体)、メッセージ(訴求内容)という「3つのM」をつなぐ、「トータルコミュニケーション」(【図表1】)が必須になっている。

ここでいう"メディア"とは、テレビや新聞・雑誌・ラジオなど「4大マスメディア」だけでなく、企業と顧客の接点にある全てのものをいう。例えば、企業ホームページや会社案内、名刺、請求書、商品やサービス自体はもちろんのこと、営業担当者やコールセンター、営業車両や商品パッケージに至るまでを包含する。

商品やサービス自体には経営者も十分に関与していたにせよ、ホームページやその他のものは担当者任せになっている企業がほとんどであろう。一般的に食品・フードサービス業の販促費用は、対売上高構成比で3~5%程度が適正値とされている(ただし大量のテレビCMを出稿している企業は例外である)。社外の人の目に触れる媒体の全ての制作費や、従業員の人件費までを合計すると、かなりの金額に上る。

また、卸を経由して量販店に販売している食品メーカーなどは、卸に対するリベートの他、値引きや取引条件・慣行による出費(センターフィー・協賛金など)まで含めると、売上高に占める総販促コストの大きさにため息が出てくるのではないだろうか。

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「1T4M+C」

これまでタナベ経営は、「1T4M」という企業経営のフレームワークを発信してきた。これは、固有技術(Technology)と市場(Market)が合致すれば事業として成立し、管理(Management)・財務(Money)・人材(Man)という経営機能でそれを支えるというものだ。そして現在、ブランディングやプロモーションを進める上で市場や顧客との対話が重要度を増しており、どのような企業においてもコミュニケーションが必要不可欠な経営技術となっている。そのため、私は1T4M にコミュニケーションのC を加えた「1T4M+C」モデルを提唱している。(【図表2】)

このように考えてみると、対消費者・対取引先はもちろんのこと、顧客接点や商品・サービスをつくる従業員、協力事業者などに対する自社のコミュニケーションは、万全だといえるだろうか。前例主義的に継続している、いわゆるお付き合いや経費の使い方を全て見直す時期が来ているのではないか。

例えば、直接の広告ではないが、古く日焼けした看板のまま営業しているレストランや外食店を見かけることがある。こういったものは、消費者に対するメッセージとして適切とはいえない。

そこで、ここから「トータルコミュニケーション戦略」という言葉を使って解説していきたい。この戦略の手法はさまざまであり、消費者と直接つながる、消費者の声を聞く、消費者に体験してもらうといったことや、個別に発注していた販促物のイメージを統一させる、従来通りの販促から脱却する、などが考えられる。

いずれせよ、まず「値引き」「リベート」「付帯条件」「販促費」「拡販費」「交際費」として計上していた項目の費用対効果を検証する。その上で、それらの費用の再分配を行い、高収益路線への戦略を構築していかなければ、「ポスト2020」の企業間競争に勝ち抜くことはもちろん、情報爆発社会で生き残ってさえいけないのではないかと私は考えている。

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トータルコミュニケーション戦略の進め方

トータルコミュニケーション戦略の進め方は、次の4つのステップで行う。

STEP1:現状・実態分析

まず現状・実態分析を行い、販促・プロモーションの実態を明らかにする。経営陣は、商品の販売スケジュールや社内行事については把握していても、実際の年間マーケティングカレンダーや広告宣伝費、販促費の明細まで把握していることはまれである。ここで確認しておきたいことは、費用対効果や"苦労対効果"(手間をかけた割に効果が出にくいもの、または効果を測定できないもの)が不明なものや、そもそも不適切な科目で計上している費用の仕分けを優先する。昔からの付き合いや、「なぜこのような支出が始まったのか、社内の誰も経緯を知らない」という費用が出てくることも多い。

ある食品メーカーでは、商談相手先の店舗視察時に、自社商品をその店舗で定価購入する慣習があり、この費用を全て「販売促進費」で計上していた。この額が年間数百万円に及んでいた。社内ルールでは、倉庫からの商品サンプルとして振り替える手続きをすれば、原価で付け替えができることになっていた。

また、経営者の個人的な付き合いがある団体・法人の広報誌や記念誌への広告掲載など、売り上げには直接関係がない費用も散見された。さらにこの企業では、卸へのリベートの他に値引きやその他取引条件に対応するため、売り上げの数十%もの費用を計上していた。私はこれらを経営者と一緒に一つ一つ確認することで、いかに無駄な現金が流出していたかを認識してもらった。

そして、年間のマーケティングカレンダーにも着目したい。ある外食企業は業績悪化により何年も減収減益が続き、ついに赤字に転落してしまった。もちろん、経営陣は何も手を打たなかったわけではなく、年間60もの新商品を投入し続けていた。しかし、結果は減収減益、赤字転落である。

店舗のスタッフは度重なる値下げのキャンペーンと多くの新商品でオペレーションが乱れ、疲弊していた。当然ながら、店舗のQSC(Quality、Service、Cleanliness)は低下し、顧客の離反を一層早める結果となった。結局、投資ファンドが入り非上場化、創業経営者は退場した。投資ファンドの傘下に入り、商品の徹底的な見直しを行いコア商品を定め、これに特化したメニュー展開と業態フォーマットへ移行した。その結果、現在では業績が好転し、再上場を果たしている。

この事例のように、前例を踏襲するだけの商品投下や、業績回復に向けたやみくもな販促・新商品投入を行うことは、かえって業績悪化につながってしまう。費用分析と同様に、各種販促や新商品の業績への寄与を分析した上で、やめるべき項目を見極めることだ。

STEP2:計画策定

事業や商品・サービスのコンセプトを再確認し、市場との最適なコミュニケーションを設計していく。STEP1の結果から、費用対効果や苦労対効果が芳しくない項目の中から、やめたいものをまず選ぶ。次に、やり方を変えるべきものと、続ける、またはテコ入れするものを特定していく。その上で販促戦略全体の見直しと数値目標(KPI:重要業績評価指標)の設定を行う。

このうちKPIは、単に数値で捉えやすい指標を安易に設定するのではなく、目的と効果を考えながら、数値目標へ落とし込むことが重要だ。特に、消費者やユーザーと直接、接点を持つことのできる施策を設計することである。卸を経由して量販店などに商品を流しているメーカーなどは、直接消費者と接点を持つことがほとんどできていない。販促費の見直しによって削減できた費用を、この施策に配分してほしい。

STEP3:実施

ここでは、徹底して行動のスピードを速めて実行することが求められる。留意点としては、本来の趣旨と目的が混同しないようにすることである。例えば、日報の本来の目的は日常行動を把握することだが、上司を含めて誰も読まず、結局、書くことが目的になってしまうケース。あるいは、商品購入につなげるための店内での試食販売において、マネキン(商品説明員)が試食提供に集中するあまり、商品PR を忘れて調理を続けてしまい、期待したほど売り上げが伸びないといったケースである。

また、日次・週次でのマネジメントは、行動実施の有無やKPIの推移などのモニタリングを常に行い、成功事例はすぐに水平展開することが重要だ。

STEP4:効果検証

各種取り組みの成果について、数値や実行状況から分析を行う。その上で、メンバー全員と結果を共有する。うまくいったものに関しては、今後の継続を前提に型決めを行う。また、うまくいかなかったものに関しては改善策を立案し、やり方を変えるか、実施自体をやめて新たな施策に資源を配分していく。

STEP1~4の取り組みを3年連続で実施すれば、会社の固有技術として定着する。

トータルコミュニケーション戦略プロジェクトチーム

最後に、プロジェクトチームを結成し、全社でトータルコミュニケーションに取り組んだ企業事例を紹介する。M&Aを繰り返して急成長している、業務用食品卸業のA社の事例である。

A社は寄り合い所帯である社内を統一するため、新たなビジョンのもとに社名変更を行った。こうしたCI(コーポレートアイデンティティー)を行う場合、コーポレートメッセージや新社名のロゴの作成は、専門のデザイン企業に外注するのが一般的である。

だが、それだとCI構築に至る過程や新ビジョンへの理解度が低いコピーライターやデザイナーが、メッセージとロゴを作成することになってしまう。結果、ビジョンの意図とかけ離れた、社内の一体感を得られないものが出来上がることも多い。

そこでA社では、社長を含めたプロジェクトメンバーで業界動向やベンチマーク企業、そして顧客へのヒアリングをもとに、新ビジョンを具現化するコーポレートメッセージとロゴのデザインを作成し、メンバー全員が納得できるものに仕上がった。そしてそのロゴをもとにWebページや営業車両から営業パーソンのジャンパー、名刺・封筒に至るまでリニューアルを実施し、新社名とともに新たなスタートを切った。

これによって取引先からのイメージも向上し、何より従業員の意思統一に役立つなど、大きな効果をもたらしたとのことである。

食品・フードサービス成長戦略研究会

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食の"あたらしい"を生み出す

「食の"あたらしい"を生み出す」をコンセプトにビジネスモデル革新、デジタルテクノロジー、IoT、働き方・生産性カイカクのテーマにスポットを当てた最新事例から企業成長発展のヒントを得ていただきます。

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