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今週のひとこと

一人ひとりの長所と短所を整理し、徹底的

に長所が伸びるようアドバイスしよう。

そうすれば、本人、チーム、会社にとって

大きなプラスとなる。

☆ 若手社員の活躍が会社を変える

 どの業界においても人手不足や採用難など、人に関する課題が絶えない状況の中、企業が抱える若手社員に対する課題は様々です。
 経営者との会話の中でも、若手社員が定着しない、もしくは定着はしてきたが活躍するまでには至っていない、といったことをよく耳にします。

なぜ、定着・活躍に至らないのでしょうか。若手社員が抱える課題として次の3点が挙げられます。

1.仕事での目標が定まっておらず、目指す姿が不明確
2.日々の業務に慣れてくる一方で、作業化し仕事がマンネリ化する
3.自分自身で積極的に改善しようとする姿勢が乏しくなり、主体性が低下する

 皆さんの会社の若手社員には、これらの傾向はありませんしょうか。新卒で入社後3年目から5年目ぐらいの時期に、このような停滞期が訪れ、宝の「人財」となるか、ただ在籍しているだけの「人罪」になるのかのターニングポイントになります。
 若手社員が活躍するためには、キャリアビジョンを描くことが重要です。それは、会社の方針やビジョンといった目指すべき方向と、自分自身の思いや、やりたいことのベクトルを合わせることです。
 言い換えると、自社は何で社会へ貢献していくのかを押さえた上で、自身は何のために働くのかを考え、今後どうなっていきたいかというキャリアビジョンを確立することが活躍する社員の必須条件になるでしょう。
 若手社員にキャリアビジョンを考える機会を与えてみてください。
 若手社員の活躍が会社を変えます。

経営コンサルティング本部
コンサルタント
小菅 大貴

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「見える化」の手法を活用し、実行力ある組織を構築


会社の実行力は"冷蔵庫"で分かる

唐突だが、自社の冷蔵庫を開けてほしい。中に「飲みかけのペットボトル飲料」が何本あるだろうか。仮に複数本あれば、あなたはどれに手を伸ばすだろうか。開封されたペットボトルが何本もあると、あなたはどれを飲んでよいのか判断に迷うに違いない。

最も残り少ないものを選ぶ人もいれば、「古いのは嫌だ」と考えて残量が多いものを選ぶ人もいる。「新品がいい」といって、真新しいペットボトルのふたを開ける人もいる。

どのボトルから優先的に飲むべきかのルールがなければ、飲みかけのボトル飲料はたまる一方だ。もし自社の冷蔵庫がそんな状態であれば、実行力なき組織体質に陥っている可能性が高い。ルールなき企業は、いざというときに全社がまとまって動くこともできないからだ。たかがペットボトル、されどペットボトルである。

「戦略二流」でも「実行一流」を目指せ

企業を取り巻く現在の環境を総括すると、変化が速く、「現状維持では衰退する」状態といえる。勝ち負けがはっきりする環境だけに、「変化への対応力」が求められる。

そこで各企業は、生き残りをかけて競争力強化を図り、厳しい環境下において勝ち残るための戦略を描こうと努力している。だが、どんなに優れた事業戦略を描いても、トップ以下全社員が決められたことを当たり前に実行できなくては、その戦略は絵に描いた餅となる。これは決して珍しいことではない。

私は常々、「戦略は一流」でも「実行が二流」であっては、この厳しい環境下を生き残れないと考えている。トップや幹部が腐心して検討した事業戦略は、魂を込めて実行して、初めて成果が出る。もっと極端に言えば、たとえ戦略が二流であろうとも、愚直に当たり前のことを実行できる企業の方が強い。すなわち「戦略二流、実行一流」の企業が勝ち残れるのだ。


実行力ある組織とは

何が問題かが分からなければ、人は改善に動けない。これが、実行力不足企業の本質である。働いている一人一人は目の前のことに愚直に取り組んでいても、問題が見えない状態では成果格差、企業間格差が生まれてしまう。努力の方向が分散してしまうからである。

では、実行力のある組織とは何か。実行力のある組織は全て、何が問題かが分かり、各人が自発的に気付き、改善へ動いている。問題が見えているからこそ、社員が考えて自律的に働くことができるのだ。つまり「実行力の源泉」は、「問題点の顕在化」にあるといえる。

実行力強化のための「見える化」活用

「見える化」とは、「問題点を顕在化し、課題を解決する」手法である。問題点が見えているからこそ自らが「気付き」、「改善する」ことで自律型組織を構築することができる。まず、誰もが取り組める5S活動により、全員参加型経営を醸成することから始める。進め方のポイントとしては、大きく次の3点が挙げられる。

1点目は、「基準を作る」ことだ。基準なくしてマネジメントなし、である。冒頭のペットボトルの例え話の通り、基準を作ることによって守るべきルールが明確になる。このとき、全員参加で基準を作ることが強い組織づくりの秘訣(ひけつ)である。皆の意見で定めた基準だからこそ、社員も納得することができ、守ろうという意思が醸成されることにつながるのだ。

2点目は、「考えさせる」こと。基準を守ると同時に、基準について考えさせることが重要である。基準策定段階において、この作業は何のためにやるのかという「目的」の検討を行うとともに、基準策定後も問題意識・改善意識から常にアップデートを考えさせることが、それぞれの自発性向上につながるのだ。

また「職場のミッション(役割・使命)」や、そこから導き出される「リーダーのミッション(役割・使命)」を全員で考えることで、一人一人の働く意義が見える化される。

3点目は、「日常行動へ落とし込む」こと。中期ビジョン・計画、年度方針・計画など、それぞれの企業ごとに進むべき方向がある。大事なことは、お題目で終わらせないことだ。

そのために、目標、進捗、課題・問題点、要因、対策および成果を見える化し、マネジメントしていくことが重要である。いわゆるPDCAサイクルの見える化だ。マネジメントシステムとして、実行力を確かなものにしていくことを意味する。


実行力ある組織に共通すること

本稿のまとめとして、日々のコンサルティングにおける経験からみた、実行力ある組織に共通することを5点挙げたい。

1点目は、有言実行の社風。基準・ルールがあることはもちろんのこと、それを守る(守り切らせる)社風であること。5Sのしつけと同義である。

2点目は、トップ自らの発信と行動。社風を醸成するのは、経営者自身である。新しい行動を起こすと全社に発信しても、トップの行動が変わらなければ、現場は絶対に変わらない。

3点目は、全員参加での活動とすること。社内に「お客さま」状態の社員がいては、活動は変わらない。役職に例外をつくらず、取り組むことが重要である。

4点目は、取り組み自体を「承認」すること。自由闊達(かったつ)に議論する組織風土を醸成している企業は総じて、下からの意見具申を頭ごなしに否定したりはしない。まずは承認する社風なのである。

最後に5点目は、リーダー自らが何事も「楽しんで」活動すること。実は、ここが一番重要ではないだろうか。トップの方針を理解し、ボトムアップのためのミドルアップ、やらされ感ではなく、自ら主体的に行動するリーダーが必要である。

見える化はあくまで"手法"であり、生かすも殺すも運用する「人」次第。全員参加によって魂を入れ、運用できる企業こそが実行力ある企業である。そうした企業は、どんな大企業にもまねのできない、突き抜けた差別化が可能になるのではないだろうか。

タナベ経営 経営コンサルティング本部 東京本部 部長 武政 大貴
  • タナベ経営
  • 経営コンサルティング本部 部長 チーフコンサルタント
  • 武政 大貴
  • Hirotaka Takemasa
  • 中央大学法学部卒業。財務省関東財務局で金融機関の監督業務を経験後、企業経営に従事。タナベ経営入社後は、主に中期経営計画策定、企業再生・再建支援を行い、企業の収益体質改善に寄与。また5S・VM活動支援では、財務の視点による体質改善を行っている。現実・現場・現品主義を信条とする行動派コンサルタント。

経営の見える化研究会

経営の見える化研究会

経営者の企業経営に懸ける想いや、やりたいことを可視化し、全社一丸となるための手法やノウハウを学ぶ

「経営の見える化」とは、問題を社員一人ひとりが認識し、改善する土壌を作り、組織を自立集団へと変革させる経営手法です。この「見える化」を現場一体となって実践している企業を視察し、経営現場のイノベーションの要諦を学びます。5S活動や「見える化」のポイントを押さえ、「現場力」の向上を図りましょう。

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100年企業に学ぶハナマルキの成長戦略

2018年に創業100周年を迎えるハナマルキ。
原材料にこだわりながらみそ造りを続ける同社は近年、オリジナリティーの高い商品開発に注力し、新たなマーケットでも存在感を強めている。
こうした新分野への挑戦を可能にするのが、変化へ柔軟に対応できる同社の組織体制である。

『液体塩こうじ』は2012 年の発売以来着々と販売を伸ばし、4年間で売り上げが2.5 倍へ伸長(左)。海外展開も進めている(右)
『液体塩こうじ』は2012 年の発売以来着々と販売を伸ばし、4年間で売り上げが2.5 倍へ伸長(左)。海外展開も進めている(右)


2018年に創業100周年みそ一筋で会社を拡大

長尾 ハナマルキは2018年11月に創業100周年を迎えられます。日本には創業100年以上の企業が3万4394社※1ありますが、そのうち、年商5億円以上の企業は約3割にすぎません。そう考えると、100年を超えて企業が成長し続けることがいかに困難な道であるかが分かります。まずは、創業の経緯についてお聞かせください。

花岡 本社がある長野県は、かつて製糸業が盛んな地域でした。創業者である祖父・花岡金春は蚕の種(卵)を培養して近隣の農家に販売していましたが、実弟2人が富岡製糸場の経営母体であった会社へ入社し、1人は婿養子に入った関係から、製糸工場で働く女性従業員の食事に使うみそやしょうゆの醸造・販売を開始しました。
当時は20万人もの女性従業員がこの地域をはじめとして全国の製糸業に従事していましたから、製糸工場向けの取引だけで十分に事業が成り立ちました。創業からの決算書が今も残っていますが、創業3年目には黒字化しており、その後は売上高利益率が30~40%に達していました。

長尾 約100年も前の決算書が残っているとはすごいですね。創業5年目には東京に事務所を構えています。本格的な販路拡大を見据えた積極展開だったのでしょうか?

花岡 そうではありません。1923年の関東大震災で東京のみそ店が大きな被害を受けたために、東京のみその味に近い長野のメーカーに要請があったようです。

長尾 戦後は、みそメーカーとして関東、関西へと販路を広げてこられました。企業理念に「素材とモノ作りを大切にしていく」とあるように、原材料や品質に対する強いこだわりが感じられます。

花岡 企業理念は1983年のCI(コーポレート・アイデンティティー)導入の際、2代目社長だった父(花岡金郎氏)が作成しました。みその原料は大豆と塩と米ですが、父は大豆へのこだわりを特に強く持っていました。例えば大豆には1万以上の品種がありますが、それぞれ性質が異なるため数種類の大豆を一緒に使用すると品質にばらつきが出てしまいます。
そこで、父は商社の協力を得て米国やカナダの農場へ出向き、契約栽培をスタート。大豆の種を同一品種にそろえ、栽培条件も指定し、みその品質を均一に保っています。徐々に栽培面積を広げ、現在は約5000万坪で大豆を生産しており、使用する大豆全体の8割以上を賄っています。

長尾 直接農場へ行き、原料の選別から徹底することで、安定した品質につなげる。そのこだわりが、長年にわたってハナマルキ製品を購入し続けるロイヤルカスタマーを生み出しています。

※1 東京商工リサーチ「2018年(平成30年)に周年記念を迎える企業」(2017年11月27日)

ハナマルキ代表取締役社長花岡俊夫氏 1951年生まれ。74年ハナマルキ味噌(現ハナマルキ)入社。84年常務取締役、87年専務取締役、88年代表取締役社長。1990年長野県味噌工業協同組合連合会理事、93年同常務理事、96年同副理事長、2013年同理事顧問。また、90年全国味噌工業協同組合連合会理事、2007年同副会長、12年同評議員。
ハナマルキ 代表取締役社長 花岡 俊夫 氏
1951年生まれ。74年ハナマルキ味噌(現ハナマルキ)入社。84年常務取締役、87年専務取締役、88年代表取締役社長。1990年長野県味噌工業協同組合連合会理事、93年同常務理事、96年同副理事長、2013年同理事顧問。また、90年全国味噌工業協同組合連合会理事、2007年同副会長、12年同評議員。

社外の人材を起用し変化に対応する組織を構築

長尾 社長に就任されたのは1988年で、37歳の時だったとお聞きしました。100年、200年続くような老舗の多いみそ業界では随分と若い経営者だったと思いますが、事業承継のきっかけをお聞かせください。

花岡 父が68歳だった時、「あと2年で社長を譲る」と告げられました。父は38歳で会社を継ぎましたが、大学時代に結核を患って生死の境をさまようなど、もともと体の丈夫な方ではありませんでした。「30年経営したから、もうそろそろいいだろう」という気持ちもあったのでしょう。70歳で社長を退いて会長になった後は、取締役会など重要な会議以外で会社に来ることはありませんでした。

長尾 就任して間もなくバブルが崩壊しますから、大変厳しい環境からの船出だったことが想像されます。どのような手を打ってこられたのでしょうか?

花岡 社長に就任した時、まずは組織内を総点検しました。営業や工場、研究開発などの現場にどんな人材がいるのか自分の目で確認して回ったところ、どうしても人材が5人足りないことが判明しました。しかし、人はすぐに育つものではありませんから、外部から5人の人材を招き入れる決断をしました。

長尾 組織の分析力と決断力に驚かされます。会社を変えるタイミングは、不景気の時、赤字の時、事業承継時の3つ。これを逃すとなかなか変わりません。とはいうものの、就任したばかりの若い社長が外部人材を採用することに反対する声もあったのではないでしょうか?

花岡 反発はあったと思いますが、そんなことを気にしている場合ではありませんでした。ずっと同じ環境にいる仲間だけが集まるとどうしても発想が偏ってしまいますから、組織を活性化させるために外の風を入れることは必要不可欠です。その後も必要に応じて外部の人材を採用し、組織の修正・補強を重ねてきました。

長尾 「流水は腐らず」という中国のことわざがあるように、常に変化している会社は腐りませんが、よどんでくると濁ってしまう。新しい風を吹き込まないとブランドや組織も陳腐化します。100年企業を目指すことは、よどみへの挑戦ともいえます。

花岡 野中郁次郎氏(一橋大学名誉教授)らの著書『失敗の本質』(中央公論新社)にもありますが、日本の組織は情緒的に動く特徴があり、場の空気に流されがちです。だからこそ外部の人材を起用して変化を起こし、変化に対応することが、組織づくりのポイントだと思います。こうした考えは、私自身の危機感の強い性格とも関係しているでしょう。常に「これでいいのか?」と自問しています。

ハナマルキ 常務執行役員 マーケティング部長 兼 広報宣伝室長 平田 伸行氏 1990年リクルート入社。人材採用広報の制作ディレクターを経て、新組織の立ち上げや自社の宣伝を担う。2010年、アパレル企業のクロスカンパニー(現ストライプインターナショナル)に移り、宣伝広報部門の立ち上げを担った後、執行役員社長室長に就任。人事・システム・CS窓口など、急成長期にあった同社組織体制の見直し・強化を行う。2013年6月よりハナマルキに参画。
ハナマルキ 常務執行役員 マーケティング部長 兼 広報宣伝室長 平田 伸行氏
1990年リクルート入社。人材採用広報の制作ディレクターを経て、新組織の立ち上げや自社の宣伝を担う。2010年、アパレル企業のクロスカンパニー(現ストライプインターナショナル)に移り、宣伝広報部門の立ち上げを担った後、執行役員社長室長に就任。人事・システム・CS窓口など、急成長期にあった同社組織体制の見直し・強化を行う。2013年6月よりハナマルキに参画。

他社にない商品を作るそれが生き残る道

長尾 私は年間1000人近くの経営者と会いますが、経営者の危機感が強い会社ほど成長している印象を受けます。ハナマルキは約100年分の決算書を残しているところから、数字に非常にシビアな体質だと感じます。バランスシート(貸借対照表)には経営者の性格がにじみ出るものですが、拝見したところ総資本回転率が高いですね。効率的な経営を心掛けていらっしゃる証しです。

花岡 私以上に、父は非常に合理的な考え方を持っていました。死線をさまよった経験がそうさせたのかもしれませんが、自宅には必要最低限のモノしかありませんでしたし、工場に不要なモノが置かれていたりするととても嫌がりました。父ほどではありませんが、私もそうした性格を受け継いでいます。

長尾 その結果、健全な経営を続けていらっしゃいます。特にみそ汁は日本人のソウルフードですから、人口が減少してもみその需要がなくなることはないでしょう。そうした安定した商品を扱いながら危機感を持つ姿勢からは、花岡社長の強い責任感が伝わってきます。

花岡 売り上げは安定していますが、みそ市場は1982年の57万tをピークに出荷量が減り続け、今では40万tまで落ち込みました。ずっとデフレの中で経営してきましたから、不安は尽きません。

長尾 みそ市場の縮小が続く中、商品開発にはどのようなコンセプトで取り組まれているのでしょうか?

花岡 「他社にない商品をいかに作るか」。これが生き残りの第一条件です。例えば、30年ほど前から取り組んでいる大豆たんぱくシートは、用途が製菓材料などに広がり年々伸びている商品です。また、2012年に発売した『液体塩こうじ』は塩こうじを搾ったもので他社にはないオリジナリティーの高い商品であり、日本と米国で特許を取得しています。ほかにも、液体塩こうじと同じく甘酒を圧搾した『透きとおった甘酒』という新商品も発売しました。数量限定販売ですが、他社と差別化できる商品です。
結局、他社と同類のものを作れば価格競争に陥ることは避けられません。オリジナリティーの高い、ハナマルキらしい商品をいかに開発していくか。それしか会社を存続させていくすべはないように思います。

小山田 国立循環器病研究センター(国循)とのコラボレーションで商品化された「かるしおシリーズ」も差別化できる商品であり、ブランドも確立しつつある有望分野といえますね。

平田 健康志向が高まる中、減塩に対するニーズは高まっています。しかし、「減塩だからおいしくなくても仕方ない」では商品として販売できません。当社は既存商品と比べて塩分を30%カットした減塩みそを2015年に発売しましたが、その際、国循が実施する「かるしお認定」※2に挑戦し、認定されました。マーケティングの際の差別化要因となりましたし、シリーズ化することでブランド化にもつながっています。

小山田 2015年にテレビCMやWeb動画で放映された、子役が「ハナマルキの歌」を熱唱するプロモーションビデオも話題になりましたね。

平田 その「かるしおシリーズ」の新しいCMとして制作したもので、宣伝効率を高めるために「話題になるCM」を目指しました。
「おみそならハナマルキ」のサウンドロゴを使った歌を作ったわけですが、歌の上手な女の子の起用もあいまってネット上でも話題になりました。
「おみそならハナマルキ」のサウンドロゴは、2017年に特許庁より音商標として認可いただきました。今後、このブランド資産をさらに昇華させていきたいと考えています。

小山田 新しい価値を生み出し続ける上で鍵を握るのが人材育成です。社員教育に対する考えをお聞かせください。

花岡 人の成長において、若いうちに他部門を経験することが非常に大事です。ずっと同じ環境にいては新しい発想は生まれませんし、新しいことに対して腰が重くなってしまいます。そのため、技術職や営業として採用しても、まずは他部門へ配属して教育します。技術職採用の社員は初めに営業に出しますし、営業採用の社員は3カ月間、工場で研修を行います。そういった経験を積むことが成果につながると感じています。

平田 私は5年前に中途入社しましたが、2カ月間みそ工場で研修を受けました。モノ作りの現場は初めての経験で非常に勉強になりました。これまで知らなかった世界を見ることができ、マーケティングにおいてプラスになっています。

※2 循環器病予防を目的に塩を軽く使い、おいしさを引き出す減塩の新しい考え方を広めるための認定制度

渋谷の人気クレープ店とコラボレーションするなど、プロモーションも多彩に展開(左)。右は2017年秋の新商品。『トマみそ汁』など独創的な商品開発に力を入れる
渋谷の人気クレープ店とコラボレーションするなど、プロモーションも多彩に展開(左)。右は2017年秋の新商品。『トマみそ汁』など独創的な商品開発に力を入れる

ニーズを的確に捉えてさらなる成長を目指す

長尾 今後、食品業界を取り巻く環境は厳しさが増すと予想されます。人口減少や個食化の拡大、価格競争、人手不足などの向かい風が吹く一方、和食のユネスコ無形文化遺産登録やWebを含めた販売機会の拡大、健康志向の高まりといった追い風もある。こうした環境下において食品メーカーの生き残る条件についてはどうお考えですか?

花岡 こちらが教わりたいくらいです(苦笑)。ただ、マクロで見ればマーケット全体は縮小していくかもしれませんが、拡大する分野は残されている。廃業する同業他社もありますし、新たなニーズも生まれています。特に、他社がさじを投げる難しい加工食品の開発依頼をいただく機会は多々あり、当社の商品や技術を高く評価いただいていると感じます。そうした部分に磨きをかけることで販路を伸ばしていけると考えています。

長尾 現在のみそと加工食品の売上構成比はどのぐらいですか?

花岡 みそが約55%、加工食品は約45%でみそが上回っています。みそについては「ハナマルキ」の指名買いが多く、頻繁にブランドスイッチが起きない安定した分野ですね。
一方、加工食品の中でも特に即席みそ汁は需要が伸びている成長分野。新商品が次々と出ている段階でお客さまのこだわりもそれほど高くありませんから、ニーズに合ったオリジナリティーの高い商品を開発することでマーケットの拡大が見込め、チャンスはまだあるとみています。ただし、加工食品全体で見れば採算ぎりぎりの商品もありますから、利益率の高い商品の拡販を進めていくことが必要でしょう。

長尾 商品開発の方向性を、時代のトレンドだけではなく収益構造からも見極め、明確化されています。業界における自社のポジションも理解された上での戦略であり、持続的成長にはこうした視点は欠かせません。

これからも健全な危機感によって100周年、さらに次の200年に向けて成長を続けられることを心より祈念しております。本日はありがとうございました。

タナベ経営 取締役副社長 長尾 吉邦 タナベ経営に入社後、北海道支社長、取締役/東京本部・北海道支社・新潟支社担当、2009年常務取締役、13年専務取締役を経て、現職。経営者とベストパートナーシップを組み、短中期の経営戦略構築を推進し、オリジナリティーあふれる増益企業へ導くコンサルティングが信条。クライアント先の特長を生かした高収益経営モデルの構築を得意とする。著書に『企業盛衰は「経営」で決まる』(ダイヤモンド社)ほか。
タナベ経営 取締役副社長 長尾 吉邦
タナベ経営に入社後、北海道支社長、取締役/東京本部・北海道支社・新潟支社担当、2009年常務取締役、13年専務取締役を経て、現職。経営者とベストパートナーシップを組み、短中期の経営戦略構築を推進し、オリジナリティーあふれる増益企業へ導くコンサルティングが信条。クライアント先の特長を生かした高収益経営モデルの構築を得意とする。著書に『企業盛衰は「経営」で決まる』(ダイヤモンド社)ほか。

タナベ経営 経営コンサルティング本部 部長 小山田 眞哉 開拓、製品開発による事業戦略構築に定評があり、食品メーカーの垂直統合戦略など、多くの中堅・中小企業の未来を共に創ってきた。人事・営業・財務・購買・生産などの経営管理機能のコンサルティングも手掛け、多くのクライアント先を成長に導いている。特に食品ビジネスを中心としたコンサルティングにはタナベ経営随一の実績を持つ。
タナベ経営 経営コンサルティング本部 部長 小山田 眞哉
開拓、製品開発による事業戦略構築に定評があり、食品メーカーの垂直統合戦略など、多くの中堅・中小企業の未来を共に創ってきた。人事・営業・財務・購買・生産などの経営管理機能のコンサルティングも手掛け、多くのクライアント先を成長に導いている。特に食品ビジネスを中心としたコンサルティングにはタナベ経営随一の実績を持つ。

PROFILE

  • ハナマルキ㈱
  • 所在地:〒399-4501 長野県伊那市 西箕輪2701
  • TEL:03-5651-3131(東京本社事務所)
  • 創業:1918年
  • 資本金:1億円
  • 売上高:179億円(2017年5月期)
  • 従業員数:290名(2017年10月現在)
  • 事業内容:みそ醸造販売および加工食品製造販売
  • http://www.hanamaruki.co.jp/
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    担当:タナベコンサルティング 戦略総合研究所