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今週のひとこと

あなたは高い志と夢を持っているか。

目標に向かって力を尽くすあなたの姿勢

に部下は惹かれ、ともに働くことを喜び

とする。

☆ 正しさが、必ずしも人を動かすとは限らない

 「正しさが、必ずしも人を動かすとは限らない」。
 よく考えれば分かることなのですが、人はそんなに簡単な生き物ではありません。
 経営者や役員の立場で、正しいと判断し発信した内容であっても、それを受けて、必ずしも働く従業員が動くとは限りません。

 筆者は、最近のコンサルティングの現場で、このようなシーンに遭遇することが多いです。例えば、経営者や役員の立場で、Aという戦略が正しいのだから進めていこうと発信をしても、従業員は表面上では理解したふりをして、実際は全く納得していない、または納得しようとすらしていないケースは多々あります。

「なぜ、このようなことが起こるのか」。
「なぜ、正しいことが受け入れられないのか」。

 それは、人間が感情の生き物であるからです。従業員自身が本当に納得していなければ、最大限のパフォーマンスを発揮することは無いと言っても過言ではありません。それくらいにメンバーの同意・納得を引き出すことが大切なのです。
 これまで、組織は"命令"と"服従"で繋がっていたかもしれませんが、これからは"発信"と"共感"が重要です。

 皆さまも、今の立場で何かを発信する際に、正しさが必ずしも人を動かすわけではないということを、頭の片隅に入れながら、推進していきましょう。

経営コンサルティング本部
ステージアップコンサルティング部
浜西 健太

デジタル時代経営に適応せよ


今、急成長している企業の8割がWeb・デジタル技術を何らかの形で活用しているといわれている。2017年上半期IPO(新規株式公開)企業41社を見ても、インターネット関連企業の多さが目立つ。

私は4年前の2014年に「Web・通販イノベーション研究会」を立ち上げ、メンバーと共に同ドメインにおける先端企業を研究してきた。そのモデルは2つに大別できる。1つは、EC事業やプラットフォームビジネスを新たに立ち上げた新興企業、もう1つは既存の事業にWeb・デジタル技術を加え、事業モデルを変革した企業だ。いずれも顧客とダイレクトに繋がる、「攻め」のスタイル構築およびその支援により、高成長・高収益を実現している。

2018年2月より同研究会を「Web・デジタルビジネス研究会」に改称した。いよいよ中堅・中小企業も、IoTやAIへの投資を現実のものとして検討すべき時代に入ったと感じたからだ。日本企業のAIに関する認識は【図表】の通り、米国と比較して低い。デジタルテクノロジーを攻めだけではなく守りへ、戦術・戦闘だけではなく戦略へ。経営モデル、ビジネスモデルレベルで検討すべきだ。

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一方で日本企業の生産性は、OECD加盟国中20位前後と世界的に見れば低い。今後、労働人口が減少していく中で生産性の向上は経営の喫緊のテーマである。「生産性=アウトプット÷インプット」。インプットの削減と、アウトプット(付加価値)の増大の両面から手を打っていかねばならない。その攻守にわたる武器になり得るのがデジタルテクノロジーだ。

携帯電話が世に出て30年、アップル社のiPhoneが発売されて10年。劇的に私たちの生活が変化してきたように、デジタルテクノロジーはこれからの10年で働き方、企業経営の在り方を変えていくであろう。2018年はその転換点といえる。遅れは命取りである。まずは研究だ。先行企業に学ぶ、そして自社のモデルをキュレーション※する。未来投資の決断も必要である。デジタルテクノロジー格差が経営格差に繋がる時代の到来だ。

※ 情報を収集・分類・編集し、つなぎ合わせて新しい価値をつくること

タナベ経営 常務取締役/Web・デジタルビジネス研究会 アドバイザー 南川 典大
    タナベ経営 常務取締役/Web・デジタルビジネス研究会 アドバイザー
    南川 典大 Norihito Minamikawa

    1993年タナベ経営に入社。西部本部長、取締役を経て2014年より現職。上場企業から中小企業まで数百社のコンサルティング・教育などに従事し、数多くの実績を誇る。経営の視点から、仕組みと人の問題解決を行う"ソリューションコンサルタント"として定評がある。著書に『問題解決の5S』(ダイヤモンド社)ほか。

Web・デジタルは高収益・生産性向上の切り札

経営コンサルティング本部
Web・デジタルビジネス研究会 リーダー

川谷 昇平 Shohei Kawatani
早稲田大学理工学部卒業。組織戦略を中心に、組織構造改革・システム改革・人事制度改革を主なテーマとして展開。特に、Web・デジタルビジネス研究会のリーダーとして、Web・デジタルによる新規事業開発、マーケティング、業務改革をテーマとしたコンサルティング活動で活躍中。

Web担当者任せにしていないか

アベノミクスや東京オリンピック・パラリンピック開催など、日本経済の基調は明るい。だが、実際の中堅・中小企業を取り巻く環境は厳しい。従来の顧客や商品・サービスに固執して収益が上がらない、また労働法規の規制強化による生産性向上など、課題は山積みである。(【図表1】)

このような経営環境において、Web・デジタルの活用は有効である。Web・デジタルの活用方法は主に攻めと守りに分けられるが、それぞれを有効に活用することで自社のビジネスモデルを変え、収益を改革することが可能となる。

「攻めのデジタル」の目的は顧客を創造すること(顧客接点)である。有効な理由としては、「卸売業者がWebにより利益率の高い直販チャネルを構築することができる」「卸売業者がWebによりプッシュ型からプル型の新規開拓体制を構築することができる」「製造業者がWebにより営業担当者ゼロで売り上げ目標を達成することができる」などが挙げられる。

一方、「守りのデジタル」の目的は付加価値を高め、生産性を向上させること(バリューチェーン)。有効な理由としては、「サービス業者がCRM(顧客関係管理)により高付加価値サービスを提供することができる」「製造業者がSCM(サプライチェーン・マネジメント)により少人数で多品種小ロットの供給体制を構築することができる」「卸売業者がSCMによりコストパフォーマンスの高い商品を提供できる」などが挙げられる。

しかしながら、Web・デジタルの活用がうまくいっているという中堅・中小企業は多くない。その真因は、「Web・デジタルの活用は作業効率化の一環であるから、IT部門に任せておけばいい」と経営層が捉えているケースが圧倒的に多いことにある。

Web・デジタルは、いまや単なる作業効率を高める域を超え、ビジネスモデルそのものに大きなインパクトを与えるものであるため、経営者やラインの責任者が戦略的に考えていかねば成功し得ないのだ。

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ビジネスモデルを変える方法

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ここからは、具体的に、Web・デジタルでビジネスモデルを変える方法を示す。まず、【図表2】のような、ビジネスの全体を把握できる設計図を描くことが必要である。Web・デジタルの特性を理解して、それによって、どの要素がどのように変わり、最終的に収益としてどうなるのかを考える。

大きな設計図を描いたら、さらに詳細な内容を検討する。【図表3】は、先述の全体の図(【図表2】)から、ターゲットと提供価値にフォーカスしたものである。ターゲットではペルソナ(抽象的なターゲットではなく具体的な"人物像"を設定する)、提供価値では、"モノ"ではなく「コト」が重要となる。続いて、顧客接点にフォーカスする。顧客接点は、次に挙げるような顧客購買プロセスにおいて、Web・デジタルを使っていかに顧客とコミュニケーションをとるかについて設計を行う。

プロセス ① 探索・選択

Web広告(リスティング、リターゲティング、SEOなど)、メール、SNSを活用した認知率の向上。

プロセス② 来店・注文

Webサイトの開設、アクセス解析に基づくサイトの最適化、コンテンツの充実、コンバージョン率の向上。

プロセス③ 代金支払い

Webサイト上への決済機能の設置(EC:インターネットコマース)、問い合わせ型による営業担当者フォロー。

プロセス④ 使用・消費

Webサイト上のサービス提供、コールセンターの対応による満足度向上。

プロセス⑤ アフター

Webサイト・コールセンターでの問い合わせ・相談対応、修理・交換対応。

プロセス⑥ リピート・紹介

会員システム、紹介特典、SNS・ブログなどによる顧客体験の共有化、CRMによる顧客ロイヤルティーの向上。

そして、バリューチェーンは経営機能ごとに、Web・デジタルの活用によって変えるべきことを明確にする(【図表4】)。最後に、収益モデルは設計するビジネスモデルによって、目指すゴールとして「モデル損益」を設計し、逆算でKPI(重要業績評価指標)を設定する。

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ビジネスモデル革新のパターン

では、Web・デジタルを活用したビジネスモデル革新のパターンにはどのようなものがあるだろうか。

「攻めのデジタル」を実践した事例①
直販チャネルシフト

卸売業A社は、少品種の展開であったものを多品種に変更。営業担当者を置いていたのをWeb・リアル店舗の併用に変え、薄利体質だったのを適正利益が確保できる体制に見直した。また、法人のみを対象にしていたが個人向けに直販チャネルを設定。自社在庫からメーカー在庫へと変更し、営業が配送していたのを物流センター配送に見直した。

「攻めのデジタル」を実践した事例②
プル型新規開拓シフト

同じく卸売業B社は、商品情報の知識が個人にとどまっていた。そこでWebを活用し、誰でも詳細情報へアクセスできるように改善。また、足で稼ぐ営業担当者だけでなく、Web営業の担当者(Webからの問い合わせを電話やメールで対応)を新たに置いた。Webを活用し始めたことで、これまで地元顧客に限って展開していた範囲が広がり、全国の顧客とも取引が始まった。プッシュ型の営業からプル型になったことにより、新規の顧客も取りやすくなったという。

「守りのデジタル」を実践した事例
高付加価値シフト

サービス業を営むC社は、薄利多売に陥っており、現場のサービス力は低下していた。原因の1つは、顧客情報の未管理である。これを改善するため、CRMにより情報共有を図り、ITを活用して無駄な業務も効率化させた。また、広告をあちらこちらに出していたのを見直し、アフターサービスへ力を入れることにした。結果、サービスの質が上がり、提供商品の単価もアップ。生産性も大きく向上した。

最後に、Web・デジタルにより収益を改革するためのポイントをまとめる。

(1)Web・デジタル活用の目的は、作業の効率化ではなく、ビジネスモデルを変えて、収益を改革することと捉える

(2)Web・デジタル活用は、情報システム部の仕事ではなく、経営者・ライン責任者の仕事である

(3)Web・デジタル活用には、攻めのデジタル(顧客創造)と守りのデジタル(価値創造)の2つがある

(4)ビジネスモデルは、ターゲット・提供価値・顧客接点・バリューチェーン・収益モデルで構成され、Web・デジタルを使って再設計する

自社はWeb・デジタル活用で自社のビジネスモデルの何を変えるのか。価格競争激化、労働規制強化の厳しい経営環境の中、この難局を突破する最終手段は、Web・デジタル活用しかないのではないだろうか。「Web・デジタルは高収益・生産性向上の切り札」なのである。

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    担当:タナベコンサルティング 戦略総合研究所