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今週のひとこと

目先の利益のために将来を犠牲にしてはいけない。

将来のための発展経費を投資しよう。

☆ M&Aで生産性が向上する?!

  最近、新聞を読んでいると「M&A」の文字を目にしない日は無いと言っても過言ではありません。
 しかしながら、M&Aにあまり馴染みがない人にとっては、それは大企業が行うもので、中堅・中小企業には関係が無いとお考えになるかもしれません。また、一昔前に多く見られた企業価値を高めた後に、上場や転売を通じて投資利益を得ることを目的とするファンドが行う敵対的な買収など、いわゆるマネーゲームといったネガティブな印象をお持ちかもしれません。

 実態はどうでしょうか。
 中小企業庁が公表した「2018年版中小企業白書・小規模企業白書」によりますと、「事業承継を背景に、中小企業のM&Aは増加し、生産性向上に寄与」とあります。そして、M&A実施企業と非実施企業の労働生産性を比較した結果なども記載されており、中堅・中小企業にとって友好的なM&Aを行っていることが伺えます。

 M&Aのメリットは買収サイドの視点で見ると、経営資源の補完や新分野への進出が時間をかけずに可能になるということです。
 例えば、自社の成長戦略を考えるときに、足りない部分を他社が持っている場合、その会社を買収することでノウハウを得られるといったメリットがあります。また、新分野への進出においても、一から戦略を練り、マーケティングを行い、人材を採用していると、莫大な時間がかかります。変化のスピードが速い今の経営環境では、時間がかかるということは大きなデメリットです。進出しようとする新分野において既に事業展開している会社があれば、買収することで、あまり時間をかけなくても新分野への進出が可能となります。

 会社を買うということは相当な投資ですので、当然リスクもありますが、中堅・中小企業の成長戦略にとって欠かせない手法の一つとなってきているのは間違いありません。
 今後の事業展開を考える上で、自社内の経営資源を増やししていくことも重要ですが、生産性向上の一つの手段としてM&Aも考えてみてはいかがでしょうか。

経営コンサルティング本部
M&Aアライアンスコンサルティング部
日坂 登紀広

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徹底することの迫力


ライバルとの差別化は難しい。世の中があっと驚くような商品やサービスを投入できればそれに越したことはないが、できたとしても、それを継続していくのは極めて困難である。

私はそれよりも、「1つのことに徹底する」活動を推奨したい。

社員育成を経営計画の中心に置くA社では、経営幹部が人材育成に投資する時間を「全投入時間の30%以上」と決めている。(成長を支援するための)個別面談を毎月行い、日報を詳細に読み込み、一つ一つ返信するということを、同社の経営幹部は何十年も継続しているのだ。

またB社は、社員1人当たりの生産性にこだわり続けている。一例を挙げると、会議時間短縮の手段として、資料は全てA3用紙1枚にまとめるというルールを設けている。「ページをめくる時間がもったいないから」というのがその理由だ。

地域密着を社是としている住宅メーカーのC社は、施主が住宅を建てる時に、同社の社員をはじめ協力会社の職人までもが現場周辺の家々にあいさつへ出向く。工事期間中、あいさつの回数は5回にも及ぶという。それ以外にも毎日、周辺住民の誰かとすれ違えば必ずあいさつをすることを徹底している。営業担当者のみならず、設計担当者や現場監督など、技術系の社員にまでマナーが行き届いてる企業は珍しいといえる。特に礼儀・礼節は、中途半端だと大した強みにはならないが、徹底すれば必ず差別化につながるのだ。

では、徹底する項目が決まらない企業では、何を徹底すればよいだろうか? 私は、すでにコモディティー化してしまっているようなことでも、その余地がまだまだあると思っている。例えば、「高品質」「顧客満足」「人材育成」「業務の効率化」「5S」などである。こうして並べてみると、どの企業でも一通りやっていることばかりのように見えるが、「そこまでやりますか!?」とライバルが驚くほど徹底して初めて、差別化と呼べるのだ。

徹底への第一歩を踏み出していただきたい。


経営コンサルティング本部 副本部長 山本 剛史 Tsuyoshi Yamamoto

■筆者プロフィール
タナベ経営
経営コンサルティング本部 副本部長
住まいと暮らしビジネス成長戦略研究会 リーダー
山本 剛史 Tsuyoshi Yamamoto

企業の潜在能力を引き出すことを得意とする経営コンサルタント。事業戦略を業種・業態ではなく事業ドメインから捉え、企業の固有技術から顧客を再設定して事業モデル革新を行うことに定評がある。現場分散型の住宅・建築・物流事業や、多店舗展開型の小売・外食事業などで生産性を改善する実績を上げている。神戸大学大学院卒。

住まいと暮らしビジネス成長戦略研究会

住まいと暮らしビジネス成長戦略研究会

2019年消費税増税・2020年オリンピック開催後の"次の一手"

社会構造や家族構成の変化に伴い、住まいや暮らしに対する価値観がめまぐるしく変化しています。その潮流の中で、躍進し続ける企業はどのような成長戦略を推進しているのでしょうか?
「住まいと暮らしビジネス成長戦略研究会」では、ハウスメーカーやリフォームをはじめ、住まいと暮らしに関わる様々なビジネスを展開する、優秀企業の現場を視察し、成長モデルを学びます。

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全員参加の経営で「働き甲斐No1企業」を目指す
Vol.30 髙橋金属


数々のニッチトップ技術を確立

豊臣秀吉ゆかりの地、滋賀県長浜市に本社を置く髙橋金属は、1940年に髙橋文雄氏が創業。当時、板金加工場として神社仏閣の銅板藁葺きなどを手掛けていた。

1947年に山岡発動機工作所(現ヤンマー)長浜工場との取引を開始し、以降はプレス、板金、金型、パイプなどの金属塑性加工や関連製品の組み立てで成長を遂げた。

1995年には立命館大学や滋賀県立大学と産学共同研究を始め、工場排水から環境汚染物質を除去する自社製品の洗浄装置を開発。その後も洗浄・除菌などの機能を持つ電解イオン水、水陸両用観光バス、独自のリサイクルシステムなど多数のニッチトップ技術を確立してきた。その技術力は高く評価され、「第5回ものづくり日本大賞優秀賞」(経済産業省、2013年)や「MF技術大賞」(日本鍛圧機械工業会、同)などを受賞している。

そして2010年、髙橋康之氏が3代目社長へ就任したのを機に、同社は今後の持続的成長を見据えて運営体制を大きく変更した。髙橋金属を中心とするグループ経営体制へかじを切り、グループ経営理念を策定したのである。

そのきっかけとなったのが、社内組織の現状を把握するため実施(2009年)した「組織活力サーベイ」だった。

「(サーベイの報告書に書かれていたのは)組織に対する予想以上の辛辣な意見でした。その評価を上げることが、まずはやるべきことと認識しました」(髙橋氏)

会社の内部を見つめ直したグループ経営理念の策定は、それまで効率や受注を追求してきた同社にとって、大きな転換点となった。

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全員参加の改善で現場力向上

グループ経営理念では、「働き甲斐No1企業」への成長を掲げた。それを目指すに当たり、まず"働き甲斐"の定義を明確にし、全社員で共有した。具体的には、「互尊互敬」「自己実現」。つまり「会社や幹部に信頼があり、仕事に誇りとやり甲斐があり、仲間との連帯感を持てる」「自分に目を向け、なりたい自分を実現し、その特性を活かして生きる」ことだ。

その上で「働き甲斐委員会」をつくり、具体的な行動へ落とし込んだ。委員会は経営層だけでなく、社員も巻き込んだチームで構成。さらに、他の会議や委員会もボトムアップ構造へ変えていった。

社員主導型の組織へ変えるには、社員の力を引き上げることが不可欠だ。現場力向上のため、同社では全員参加型の改善活動「ZENKAI活動」を行っている。

"全員参加、全力、全開"を意味するZENKAI活動では、「意思ある全員参加」を重視。経営層はほぼ関与せず、社員同士で6S(整理・整頓・清掃・清潔・躾・習慣)、提案、QC(クオリティー・コントロール:品質管理)、VM(ビジュアル・マネジメント:見える管理)による改善を行い、切磋琢磨するという。

さらに社員は毎月、「社員手帳」に目標と自己評価を書いて上司へ提出。上司はコメントを書き、目標への取り組みを評価・管理する。このやりとりが社員の能力向上、ひいては現場力の向上につながっている。

この他、同社では人材育成のための数々の取り組みを行っている。例えば、"縁の下の力持ち"などの項目で表彰する「ユニーク表彰」、社内報発行や社員誕生日会の実施などだ。社員が互いを知り、会社からの愛情を感じながら、働きがいにつなげてもらうのが狙いという。

髙橋氏は語る。「社員が能力を解放し、成長・活躍できる環境を整えることが大切。そういう場があれば、自ら"活躍できる人"へ成長していく」

同社はこうした取り組みに加え、長期にわたりタナベ経営の人材育成研修も活用してきた。「社員が自分の実力を知り、能力を引き上げるよい機会になる」と研修効果を感じているという。

グループ経営や人づくりの取り組みは、目に見える成果を上げている。15年前に比べ、経常利益と社員数が倍増。4社だったグループ会社は9社へ増え、時代の流れに合わせて事業が拡大中である。

そして何より、社員の変化が大きい。「社員から提案などの声が上がるようになった。自分の答えを持ち、全社目線で発言する姿勢に変わってきた」(髙橋氏)

髙橋金属 代表取締役社長 髙橋 康之氏
髙橋金属 代表取締役社長 髙橋 康之氏

自分の仕事や会社を誇れるように

現在、同社は理念などをまとめた「ビジョンブック」の作成に取り組んでいる。対外的なPRツールとしてもさることながら、「『お父さんはこんな会社で、こんな仕事をしている』と家族にも伝えられるもの、社員が自分の仕事や会社を誇りに思えるものにしたい」と髙橋氏。

また、人材育成の場として「ものづくり道場」の準備を進める。安全・品質・環境の基礎知識や製造業としてのスキル習得、人間力の醸成が目的。すでに実施している研修を集約し、発展させていく考えだ。

「人づくりの効果はずっと残るもの。100年企業をつくる上でも不可欠」「たとえ他社に行っても『髙橋金属で働いていたなら大丈夫』といわれる人づくりを通じて、地域に貢献できたら」(髙橋氏)

会社が人材を育て、その人材が社会課題解決のために事業を作り、事業を通じて会社が成長し、地域や社会に貢献する。髙橋氏は、そんな善循環を描いている。もちろん、その回転を加速させるのは「人づくりへの思い」だ。

PROFILE

  • 髙橋金属㈱
  • 所在地 :〒526-0105 滋賀県長浜市細江町864-4
  • TEL : 0749-72-3980
  • 設立: 1958年
  • 資本金 : 9832万円
  • 売上高 : 96億5000万円(グループ合計、2017年3月現在)
  • 従業員数 : 600名(グループ合計、2017年3月現在)
  • 事業内容 : 精密金属プレス部品製造、精密板金部品製造、電気機器、産業機械組立、プレス金型の設計・製作、金属パイプ加工、環境関連機器の開発・製造・販売
  • http://www.takahasi-k-group.jp/

 タナベ コンサルタントEYE  
髙橋金属の髙橋政之会長とタナベ経営創業者の故田辺昇一は旧知の間柄で、1960~80年代にかけて長浜市の地域発展を共に支えた。このほど設立60周年を迎えた同社は、いまやグループ会社が海外拠点(中国・タイ)を含めて9社、事業領域は運送業、極小ばね製造、リサイクル製品製造、部品加工、観光サービス業など多岐にわたる。同社が目指すのは、ニッチ分野で一番になる事業を多くつくる「ニッチトップ連邦企業」だ。その実現に向け、現社長の髙橋康之氏は「ものづくり道場」の開設で人材育成に注力し、次代の成長基盤づくりを着々と進める。同社の人材の今後の活躍が大いに楽しみである。

経営コンサルティング本部  チーフコンサルタント 岡田 牧子
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    担当:タナベコンサルティング 戦略総合研究所