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今週のひとこと

経営者の仕事のうちで一番大切なことは、

「後継者を得ること。そして仕事を引き

継ぐ時期を選ぶこと」である。

☆ 事業承継に経営者の年齢は関係ない?!

 この数年、団塊ジュニア世代への事業承継がピークを迎えていると言われます。そのため、経営者仲間に会えば自然とその話題になり、顧問税理士からは税務対策を促され、メインバンクからは承継準備の進捗を聞かれるといったことも珍しくはないのではないでしょうか。そうした状況に、「事業承継、またその話か」と、飽き飽きして嫌気が差している方もいらっしゃるかもしれません。
 特に、特別な事情があって着手できていない経営者の方は、そのようにお感じのことではないでしょうか。「うちにはうちの事情があるから進められないんだよ」と。

 さて、筆者はここ数年、事業承継に関するテーマで経営者と話をさせていただく機会が多いのですが、最近その内容が少し変わってきていると感じます。以前に比べ若い世代の経営者が既に手を打っていたり、対策を検討していたりするケースが増えています。既にご自身が次の世代に引き渡す時のことを考えているのです。
 ある40代の経営者は、ホールディングス体制を構築され、第三者への承継も円滑に行うことができよう準備しています。また、次の世代を見据えた人材育成へ着手している経営者、今後の対策検討に向け精力的に勉強している経営者など、地域を問わず、若手経営者の事業承継に対する動きが活発化しています。

 事業承継は簡単ではないからこそ、悩み、決断できず、進められないものです。そして、簡単ではないからこそ、早めに着手し、軌道修正をしながら進めることが必要です。突如発生してしまう社長交代は、事業承継とは呼べない状況がほとんどで、従業員や取引先が離れていき、最悪は倒産というケースも少なくありません。
 オーナー家の財産を守る、また、持続的成長を果たし従業員と、その家族の幸せを実現する意味でも、今一度自社の状況を見つめて事業承継を具体的な行動に移してみましょう。

経営コンサルティング本部
コンサルタント
小林 勝

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グローバル経営への挑戦


"国際化"のことを以前は「インターナショナル」といっていたが、最近では「グローバル」という。この2つは似て非なるものだ。インターナショナル(国際)は「~間の」という意味を持つinterと、「国、国家」の意味を持つnationalが連結した単語で"国家間"という意味合いになる。それに対して、グローバルは「地球」の意味を持つglobeからきている。つまり国境のないone world(世界は1つ)というニュアンスだ。

インターネットの発展や自由貿易の推進などにより国境という壁がなくなり、企業も人も1つの同じ土俵で戦わなければならないということである。日本は島国であるため、地政学上どうしても世界が遠く、閉鎖的で画一的な価値観が生まれやすい。ちなみに「島」を意味するislandには「孤立」という意味もある。

内需縮小の中、日本企業の経営戦略にグローバル化は必要不可欠だ。これは単に海外へ進出するということを意味するだけではない。海外の製品やライセンス、ビジネスモデルを輸入するという戦略もあれば、インバウンド需要もある。自社が海外に出なくても、海外勢が日本市場に参入してくれば必然的にグローバル競争に巻き込まれることになる。また、それらと全く無縁の業界だったとしても、人口減少で労働力が不足する中、外国人を戦力として雇用するケースは増え続けており、それに応じて国内での外国人マーケットも生まれている。

内需縮小・人口減少は確実な未来であるからこそ、業種・業界を問わず、グローバル経営を推進しなければならない。海外進出や外国人雇用を、「仕方なく」という受け身のレベルではなく、変化の機会と捉え、事業や経営に積極的に生かしていくべきであろう。

世界に冠たるイノベーションの聖地・シリコンバレーの強みの源泉はグローバリズムにある。全米だけにとどまらず、全世界から優秀な人材、革新的な技術、潤沢な資金が集まっており、切磋琢磨しながら世の中を動かしている。

「企業は環境適応業である」という経営の原理原則に即して考えれば、グローバル経営は必要不可欠であり、成長戦略の重要な鍵となる。さまざまな世界に視野を広げ、グローバル経営に挑戦していただきたい。


経営コンサルティング本部 副本部長 村上 幸一 Koichi Murakami

■筆者プロフィール
タナベ経営
経営コンサルティング本部 副本部長
ビジネスモデルイノベーション研究会 リーダー
村上 幸一 Koichi Murakami

ベンチャーキャピタルにおいて投資先企業の戦略立案・マーケティング・フィージビリティースタディーなど多角的な業務を経験。タナベ経営に入社後も豊富な経験をもとに、マーケティングを軸とした経営戦略の立案、ビジネスモデルの再設計、組織風土改革など、攻守のバランスを重視したコンサルティングを実施。高収益を誇る優秀企業の事例をもとにクライアントを指導している。中小企業診断士。

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若手社員を育てることで社風や意識が大きく変化
Vol.31 ハシモトグループ


企画、製造、販売まで行うランドセルメーカー

小学生のシンボル、「ランドセル」は日本独自の文化であり、発祥は明治時代にさかのぼる。そのランドセルを語る上で欠かせない企業が、自社ブランド「フィットちゃん」で知られるハシモトグループだ。

創業者の橋本啓氏は終戦後の1946年、出征先のパラオ島から復員すると、戦前まで従事していたかばんづくりの技術を生かし、地元の富山県富山市でかばん製造の橋本商店を創業。当時は配給品だった帆布やゴム布を使い、学生かばんやリュックサックなどを製造した。

その後、クラレの人工皮革「クラリーノ」を使い、中高生向けの手提げかばんへ進出。クラリーノ学生かばん専業メーカーとして順調に生産を拡大し、1990年には全国生産量の3分の1を占めるまでになる。

しかし、この過程で中高生のかばんは自由化が進行。そのため1984年にランドセルの製造を開始した。小学生にターゲットを広げることで事業を拡大したのだ。

また、同年には自社ブランド「ラリーちゃん」(後のフィットちゃん)を立ち上げ、商品に独自のアイデアを盛り込みながら、徐々に顧客の支持と知名度を獲得していった。

そして2001年、大きな転機が訪れる。ランドセルの圧倒的販売力を誇るイオンへのOEM供給が決まり、一気に量産が進んだ。この背景には、同社ならではの生産力や企画力がある。同社は職人の技術力に磨きをかける一方、製造ラインの効率化や自動化を進め、生産力を高めた。

一方、SPA(製造小売業)の台頭に伴い、同社もショッピングセンターなどへ出店を開始し、07年にはWeb通販にも参入。小売りを通して取り入れた顧客ニーズは、品質やデザインなどに生かされている。

さらに2011年には東京都渋谷区代官山でショールームを開設。現在、その数は全国9カ所にわたる。17年度からは都内ホテルなど全国10カ所で出張展示会も開催している。

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チャレンジし続ける風土でさらなる成長へ

同社は近年、若手社員の採用・育成に力を入れている。

例えば新卒採用は、2015年の黒崎工場(富山市)設立を機に"待ち"から「攻め」の姿勢へ転換した。
卸事業会社「ラ・ポンテ」取締役の橋本和加代氏は、「大手採用サイトへの掲載のほか、学生の企業訪問や工場見学の受け入れ、先輩社員との座談会などを通じて、入社後のギャップがないように努めています」と語る。

黒崎工場の様子
黒崎工場の様子
黒崎工場 1 階にあるショールーム。2階にはランドセルの機能性を体験できるスペースも併設
黒崎工場 1 階にあるショールーム。2 階にはランドセルの機能性を体験できるスペースも併設

若手社員のフォロー体制も手厚い。タナベ経営主催の入社前研修、フォローアップ研修の活用により、「面倒見のよい若手の先輩社員が増えた」(和加代氏)そうだ。先輩のフォローは若手の働きやすさに結び付き、定着率が高まる効果も期待できる。

さらに、社員の経営者視点の醸成に一役買っているのが、社内研修「ハシモト塾」だ。若手を対象に、自社の歴史やマーケット情報、今後のビジョンなどを学ぶ場として実施。ハシモトグループ代表取締役の橋本洋二氏が自ら講師を務め、質問にも気さくに答える。また、製造事業会社「ハシモトBaggage」の取締役・橋本昌樹氏と和加代氏の両取締役が運営に携わり、従業員との距離を近づけている。全社的な視点や発想を身に付ける機会になり、楽しみにしている社員も多いという。

また、生産・受注状況など経営情報を全社員で共有化し、社員の意識向上に結び付けている。さらに、決算賞与や社員持ち株会など「頑張った分、還元される」仕組みが、社員のやる気を駆り立てる。

業務改善提案の募集も行っており、現在の提案件数は以前の5倍(年間60件)へ増加。昌樹氏は「少しずつ社員の自発性が育まれ、『みんなで良くしよう』という動きが出てきている」と成果を語る。

「今後は与えられた仕事だけではなく、社員自身が『やりたい仕事』に取り組めるようにしたい」(昌樹氏)。日々の業務だけでなく、面白いと思える仕事、ワクワクする仕事に取り組める環境を整え、いま以上に楽しみながら働いてほしいとの思いがある。

一方で、次のステップを見据えた準備も欠かせない。「少子高齢化が進む中、今後、事業領域をどこへ広げていくのか、大局的な視点で展望を描くことが必要。自社の将来について、次世代を担う世代と共に見極めていきたい」(洋二氏)

ランドセル製造開始から34年、現在では業界トップ3の一角を占めるランドセルメーカーへ躍進を遂げた同社。数々の環境変化へ柔軟に対応し、常に新しいフィールドへチャレンジしてきたからこそ、成長を続けてきたのだ。

PROFILE

  • ハシモトグループ
  • 所在地 :〒930-0023 富山県富山市北新町1-2-25
  • TEL : 076-441-4556(代)
  • 創業: 1946年
  • 資本金 : 1300万円(㈱ハシモトBaggage)
  • 売上高 :74億8500万円(グループ全体、2017年9月期)
  • 従業員数 : 200人(グループ全体、2017年9月現在)
  • 事業内容 : ㈱ハシモトBaggage/ランドセル・学生カバン類・各種ビジネスバッグ製造
    ㈱ハシモト/各種カバン類の販売、アンテナショップ展開
    ㈱ラ・ポンテ/各種カバン類卸売・インターネット販売・ショールーム展開
  • http://www.hashimoto-web.jp/

 タナベ コンサルタントEYE  

経営コンサルティング本部 部長 チーフコンサルタント 森松 貞治
経営コンサルティング本部
部長 チーフコンサルタント
森松 貞治

ハシモトグループは1946年の創業以来、常に経済環境と顧客ニーズを先取りし、「入れ物文化の向上」に貢献してきた。また、積極的に設備投資や研究開発を重ねて高機能・高品質の維持に努め、「フィットちゃん」を著名ブランドに育て上げている。さらにグループ全体で製造から卸・小売・ネット通販へと垂直統合を行い、盤石の経営基盤を築いている。 そんな同グループも、さらなる成長とステージアップに向けて抜かりはない。特に優秀人材の確保・育成に注力し、次世代を担う人材育成への投資も積極的だ。同グループの今後の進化が楽しみである。

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    担当:タナベコンサルティング 戦略総合研究所