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今週のひとこと

成り行き任せの教育は効果がない。

わが社の方針に基づいた教育計画を

作成し、成長目標をクリアするよう

指導・アドバイスをしよう

☆ 学生に選ばれる会社とは?!
   ―採用を成功させるための教育体系づくり

 1.88倍。
 この数字は、リクルートワークス研究所が発表した、来春2019年卒業予定の大卒求人倍率で、求職者に対して約2倍の求人があることを示しています。求人数より求職者数の方が少ない。いわゆる、採用できない会社が発生するという状態です。

 筆者が経営者や人事担当者にお会いすると、「どんな人でも採用するというわけじゃないけれど、選べるほど人が集まらない」「採用活動で、中小企業は大手には勝てないね」といった、採用についての課題や悩みを聞く場面が多々あります。
 ところで、学生が「ぜひ、この会社に入社したい」と思うのは、どのような会社なのでしょうか。タナベ経営主催の、今年3月から4月にかけて開催した「新入社員教育実践セミナー」の参加者にお聞きしたアンケートでは、その会社への入社理由として、「社風・職場の雰囲気や、仕事内容がイメージできたから」という回答が、給料などの処遇面と比べると、圧倒的に多いという結果でした。また、他にも注目すべきは「入社後の成長がイメージできたから」という回答が、年々増えている点です。つまり、学生に入社後、どのような環境で、どのような仕事をするのか。そして、2、3年後に自分がどのように活躍しているのかをイメージしてもらうことが最大のアピールになると言えます。

 そのために重要なのが、社員教育を体系的に行うことです。場当たり的に行うのではなく、いつまでに、どのような力を身につけ、仕事で生かすのかを明確にすることです。
 また、それを就職説明会や採用面接などの場面で、経営者や人事担当者から分かりやすく伝えることも必要です。実際に、キャリアステップを自社の採用ページで示している会社や、採用活動に社長自らが参加し、社員に活躍して欲しいという思いを伝えている会社は、採用が比較的上手くいっている傾向があります。

 来春の入社に向けて採用活動中、2020年春入社の採用活動を開始したなど、各社状況は様々だと思いますが、優秀な人材を採用したいとお考えなら、まずは自社の教育体系を見直してみてはいかがでしょうか。

経営コンサルティング本部
アソシエイト
永易 杏菜

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社員が持つポテンシャルの最大化は会社の責任

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世界最大のヘルスケア企業であるジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人グループは、多様な人材を生かすダイバーシティー先進企業としても多方面から高い評価を受けている。2012年よりジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社の社長を務める日色保氏に、組織と社員のポテンシャルを引き出すリーダーシップについて伺った。


14の業務・役職を経験し46歳で社長に就任

若松 ジョンソン・エンド・ジョンソン(以降、J&J)は世界60カ国に250以上のグループ会社を有する世界最大級のヘルスケアカンパニーです。2012年、46歳で社長に就任された日色社長は、新卒入社の生え抜き社員だとお聞きしました。なぜ、J&Jを選ばれたのでしょうか。

日色 理由はいろいろとありますが、実はJ&Jは一番に内定をいただいたのです。ラブレターをもらった途端に相手のことが気になってくるように、内定をいただいてからJ&Jの話を聞くうちに「良い会社だな」と思うようになりました。すでにJ&Jは世界中で事業を展開していましたが、日本ではまだ小さな会社で、知名度も低かった。そこにポテンシャルを感じましたし、ヘルスケアという人間の暮らしにとって必要不可欠な事業領域に興味を持ったことも理由です。

若松 一番に内定が出たということにも縁を感じます。社長に就任するまでさまざまな部署で仕事をされてきたそうですね。

日色 入社してすぐに医療機器の営業を担当しました。大学を出たばかりの社員が研修を受けて、大学病院などの手術室で外科医に対して医療機器の使い方を教える仕事でしたが、配属先の静岡市は支店がなく自宅をオフィスにして1人で営業に回っていました。近くに上司はおらず、病院の先生や取引先に育てていただいたといった感じでしたね。振り返ると、良い上司や縁、運に恵まれてここまできたことを実感しています。

若松 まさに「たたき上げ」ですね。20代でマネジャーになったそうですが、リーダーシップをどのように学ばれたのでしょうか。

日色 入社から3年後に名古屋支店のマネジャー(課長)になりました。新分野の成長を見込んで大量採用した結果、会社の規模が3倍になり管理職が足りなくなったため最後の1枠に私が選ばれたのです。よく分からないまま管理職として試行錯誤していました。転機となったのは28歳の時。それまで、日本のJ&Jには体系的な人材育成や会社全体としてスキルを上げていく仕組みはありませんでしたが、米国から赴任していたリーダーの提言で、私が2カ月ほど米国へ勉強に行くことになったのです。帰国後は東京勤務となり、学んだことを生かしてゼロから営業のトレーニングプログラムを開発。この時期は朝から晩まで必死に働きましたが、自分の作った仕組みが会社全体に大きな影響を与える経験を通して仕事の面白さを知りました。これがリーダーシップを磨く上で貴重な経験だったことは確かです。その後、米国赴任やグループ会社の社長など、現在までに14の業務・役職を経験してきました。

実行するための経営理念

若松 J&Jの「我が信条(Our Credo)」(以降、クレドー)は世界で最も有名な経営理念です。第一に顧客、第二に社員、第三に地域社会、第四に株主への責任が明記されていて、社員の行動を支える倫理規定でもあります。私は、経営理念は会社のカルチャーの基礎になるものだと考えています。

日色 当社が非常にオープンなのはクレドーのおかげです。私自身、新入社員時代は上司の目の届かないところで思うように仕事をさせてもらいました。型にはめることはなく、新入社員の意見でもきちんと耳を傾けるカルチャーがあります。

若松 1982年に起きたタイレノール毒物混入事件におけるJ&Jの迅速な商品回収などは、経営史上に残る優れた危機対応として語り継がれています。このような行動が可能だったのは、やはりクレドーの存在が大きかったように感じます。

※1982年、第三者によって『タイレノール』にシアン化合物が違法に混入された事件。J&Jはクレドーに基づいた迅速・誠実・公正な対応で、消費者の信頼を取り戻した

日色 当時のジェームズ・E・バーク会長は本当に良い判断をしました。クレドーで大事なのは、壁に掛けておくことではなく、生きたものにする取り組みです。実際に、同じような理念を掲げている会社はあると思いますが、J&JのCEOは本当に多くの時間をクレドーに使っています。CEOはメディアの前でも社員の前であっても、クレドーについて話さないことはほぼありません。

若松 経営理念に向き合う経営者の本気度が伝わってきます。私自身が社長であり、コンサルタントという立場からも、経営者が経営理念を浸透させる鍵を握っているというご指摘は非常に共感します。

日色 経営者の立場になると大切さがよく分かります。クレドーは、あれこれと議論しなくても社員が共通認識を持つ求心力の源。「クレドーを守らない人はJ&Jで働かなくてもよい」とされていることを社員は知っていますから、コンプライアンスに違反することなく、その手前で踏みとどまれます。経営者になってみて本当に「クレドーがあって良かった」と痛感しますし、同時に「これが一度腐ってしまったら二度と戻らない」という気持ちになる。だから、"水と栄養"を与え続けているのです。

ヘルスケア領域の生命線はイノベーションにある

若松 クレドーでは、責任の優先順位が明確にされています。第一は顧客に対する責任ですが、顧客のニーズに応えるための研究開発、いわゆるイノベーションにも力を入れていらっしゃいます。

日色 ヘルスケアを事業領域とする当社の開発テーマは、"unmet needs(まだ満たされていないニーズ)"。薬や医療機器には、まだ満たされていないニーズがたくさん存在します。また、市場に大きなインパクトを与えるには、イノベーションが必要です。J&Jグループでは年間1兆円の研究開発費を投入していますが、投資基準は「より大きなインパクトを与えられる領域」であること。どの企業が開発しても同じような商品となるような分野は対象になりません。ヘルスケアの生命線はイノベーションです。研究開発には10年かかりますから、どの領域に投資すべきかを踏まえてコーポレート・ポートフォリオの入れ替えを行っています。

若松 ポートフォリオそのものがイノベーションを生み出す方程式になっているわけですね。その成果として業績面では34期増収が続いています。経営者として数字にはどのように向き合っていらっしゃいますか。

日色 当然、営業や利益には目標があり世界中で伸ばしていこうと取り組んでいますが、ヘルスケアは商品を押し売りするような分野ではありません。例えば、より効く他社の薬があるのに自社商品を押し売りするのは、クレドーにある顧客に対する責任と照らし合わせても間違っています。イノベーションで負けたのなら仕方のないこと。ですから、研究開発におけるポートフォリオの質はとても重視しています。5年後、10年後を見据えてポートフォリオを構築しています。

若松 そのような視点から、日本のマーケットをどう捉えていますか?

日色 マーケットサイズが大きいだけでなく、少子高齢化など課題先進国である日本のソリューションは海外にも影響を与えるはずです。イノベーションの領域でも、技術開発力があってシーズも豊富。顕在化している課題と開発の種が豊富にある有望な市場と捉えています。

ボトムアップでダイバーシティーを推進

若松 イノベーションを起こす観点からも、ダイバーシティーの推進は日本企業の喫緊の課題です。J&Jは、日本経済新聞と日経ウーマンがまとめた2018年版「女性が活躍する会社BEST100」の第1位に選ばれたほか、ダイバーシティー関連の賞を数多く受賞されています。クレドーの第二に社員への責任が明記されていますが、ダイバーシティーにはどのような価値観と方針で取り組まれているのでしょうか。

日色 J&Jに"ダイバーシティー推進部"はありません。そもそも創業時にいた社員14名のうち8名が女性だったこともあって、女性活躍の歴史は長いですよ。ダイバーシティーを推進してきたのは、ERG(エンプロイー・リソース・グループ)という社員による自発的なボランティア活動であり、1907年に最初にできたグループが女性の会でした。日本でも15年以上前にWLI(ウィメンズ・リーダーシップ・アンド・インクルージョン)が誕生。WLIは経営陣に活動内容を報告し、われわれは予算を出しますが「KPIはどうなっているの?」などと活動に口出しをしてはいけません(笑)。こうした社員の草の根活動によって、ほとんどの制度がつくられています。

若松 上からの押し付けでなく、ボトムアップでダイバーシティーが推進されてきたことが、大きな成果につながった背景と言えそうです。

日色 これもクレドーに基づいています。クレドーに掲げられている社員への責任を一言で言うなら、「持っているポテンシャルを最大限発揮してもらう」こと。われわれはそのための環境づくりやトレーニングなどについて常に考えています。社員と会社との間での確固たる信頼関係を「エンゲージメント」(深い結び付き)と呼んでいますが、エンゲージメントレベルが高い人材が集まると会社は成長します。また、イノベーションを生むのは新しいアイデアですから、一人一人が自由な発想で挑戦できる環境でないとイノベーションは起こりません。女性が活躍できる環境づくりは、一人一人のポテンシャルを最大限引き出す意味においても大事なことです。

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J&J東京本社のエントランスに掲げられた「我が信条(Our Credo)」の全文。企業理念・倫理規定として、世界各国の企業における事業運営の中核となっている

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一人一人が自由な発想で挑戦できる環境でないとイノベーションは起こりません。

経験が人を伸ばしリーダーシップを育む

若松 社員のエンゲージメントのレベルを高めるために、日色社長が心掛けていることは何ですか。

日色 私の仕事は部門長やリーダーにエンパワーする(権限を与える)ことで、指示・指導することではありません。すでにリーダーはいますから、彼ら・彼女らが仕事をしやすいように環境を整えたり、アドバイスしたりするのが私の仕事。また、クレドーに意識付けをし続けることも経営者の重要な仕事だと考えています。

若松 J&Jがリーダーに求める資質とはどのようなものなのでしょうか。

日色 そもそも、マネジャーとリーダーは似て非なるもの。成り立ちからしても、マネジメントが「管理」なのに対して、リーダーシップは「責任」です。つまり、マネジャーは管理が仕事ですが、リーダーに求められるのは変化をドライブすること。特に、前提条件さえ変わる今の時代は、過去の経験に捉われずにドライブできるリーダーが必要です。人を育てる観点で言えば、従来の「What(何を)」「How(どのように)」だけでなく、「Why(なぜ)」がリーダーには必要です。部下のエンゲージメントを高めるには、目標や手段だけでなく「なぜ、この仕事に取り組むのか」という理由を伝えることが必要です。また、リーダーは部下を個人として気に掛けて感謝し、認めることが大事。インスピレーション(気づき)を与えて部下の成長を促すインスピレーショナル・リーダーシップによって、個人のモチベーションが上がればチームとしても成果が上がっていきます。

若松 人材を育てる上で日色社長が導入した仕組みはありますか?

日色 J&Jの経営は分権型です。特に、クレドーにおいて優先順位の高い部分、つまり現場に近いところはリーダーが判断すべきだと私は考えています。ただ、かつては完全な分権組織のために部門間の交流が少なかった点は変えました。私自身、さまざまな経験をしたおかげで力が付いたと考えていますから、同じように社員にも経験してもらいたい。特に、女性には結婚や出産などのライフイベントを迎える前に2つ、3つの仕事を経験してもらい、仕事の面白さを実感してほしいと思います。その経験があると、また仕事に戻ってきてくれますから。本社、人事、マーケティングなど、グループ会社を含めた複数領域で経験を積むことでキャリアを構築する「キャリア・ラティス」のコンセプトは、そのような思いから作りました。

若松 日本では会社の規模が大きくなるにつれて、下積みのような仕事をする期間が長くなりがちです。社員の力を最大化するための仕組みづくりは、人材不足の中で特に経営者が意識すべき部分です。最後に日色社長が目指す会社とはどのようなものか、お聞かせください。

日色 私はいつも「ファースト・チョイス」(一番に選ばれる)の会社でありたいと言っています。お客さまからもファースト・チョイス、社員からもファースト・チョイス、仕事を探している人や地域社会、投資家からも、一番に選んでいただける会社であり続けたいと考えています。

若松 最初に声を掛けられる企業でなければ、生き残ることはできません。共感します。ボトムアップで進化を遂げるJ&Jの経営は、多くの企業のモデルであり続けますね。本日はありがとうございました。

ジョンソン・エンド・ジョンソン㈱ 代表取締役社長 日色 保(ひいろ たもつ)氏
1988年静岡大学卒業後、ジョンソン・エンド・ジョンソンに入社。医療機器の営業、米国での勤務を経験し、マーケティング、トレーニングを担当。その後、外科用器材部門と糖尿病関連事業部門の事業部長を経て、2005年にグループ会社であるオーソ・クリニカル・ダイアグノスティックス社長に就任し、08年にはアジアパシフィックの事業も統括。10年にジョンソン・エンド・ジョンソン メディカル カンパニー成長戦略担当副社長を経て12年1月より現職。

タナベ経営 代表取締役社長 若松 孝彦(わかまつ・たかひこ)
タナベ経営のトップとしてその使命を追求しながら、経営コンサルタントとして指導してきた会社は、業種を問わず上場企業から中小企業まで約1000社に及ぶ。独自の経営理論で全国のファーストコールカンパニーはもちろん金融機関からも多くの支持を得ている。関西学院大学大学院 (経営学修士)修了。1989年タナベ経営入社、2009年より専務取締役コンサルティング統轄本部長、副社長を経て現職。『100年経営』『戦略をつくる力』『甦る経営』(共にダイヤモンド社)ほか著書多数。

PROFILE

  • ジョンソン・エンド・ジョンソン㈱
  • 所在地 :〒101-0065 東京都千代田区西神田3-5-2
  • TEL:
    コンシューマー カンパニー:03-4411-7100
    メディカル カンパニー:03-4411-7200
    ビジョンケア カンパニー:03-4411-7500
  • 創業:1961年
  • 資本金:80億円
  • 売上高:743億3100万ドル(2016年、米国本社)
  • 従業員数:2394名(2017年12月31日現在)
  • 事業内容:総合医療・健康関連用品の輸入・製造販売
  • https://www.jnj.co.jp/

アウトソーシングの"新常識"をつくるコムテックの挑戦

顧客企業のビジネス拡大を目指して、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)サービスを提供するコムテック。同社は今、従来のアウトソーシングの枠にとどまらない、新たな形のビジネスモデルを確立しつつある。
※企業が社内の業務処理の一部を専門企業に外部委託すること

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本社入り口には創業当時から掲げる企業理念が飾られている

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40周年の記念品として製作された革小物、社員証ケース、ネックストラップ


顧客企業のビジネス拡大を目指す

BPOサービスを提供するコムテックは、1976年に現会長の伊倉佳紀氏が設立。受託入力業務から始まり、システム運用管理、テレマーケティング、営業支援など徐々にサービスを拡大した。現在は、IT、マーケティング&セールス、オペレーションという3つの分野のツールやサービスを組み合わせ、顧客企業の課題をワンストップで解決している。

企業はBPOを活用することで、自社の競争力の中核となる重要業務に人材や資源を集中できるほか、非中核業務に従事していた人員や設備などのコストを変動費化し、企業規模や業績に応じて柔軟にコントロールできるようになる。また、業務の効率化や改善、コストの可視化、品質向上などメリットは多い。

ただ、近年のBPOサービス市場は成熟化が進み、成長が鈍化しているのが実情である。こうした中、同社は単純作業の請負ではなく、企業の課題解決や業務改善などを通じた、顧客企業の売り上げとビジネスの拡大に焦点を当てている。また、エンドユーザーである企業と直接取引を行い、近い距離感を維持することにもこだわりを持つ。これにより、現場のニーズに即したソリューションを提供できるようになり、顧客との関係が構築されれば取引の安定にもつながる。

さらに、クライアント常駐型のBPOを主業務とする同社は、長年の経験で培った「現場力」が、何よりの強みだ。社員は業務の精度や品質を向上させるために、改善や創意工夫を幾度も重ねた結果、それぞれの顧客企業の現場で課題を見つけ、何十通りもの改善策を提案する力が身に付いた。こうした自社の強みや優位性を発揮できる業務に特化することで他社と差別化し、社員の成長にもつなげるという考えが同社にはある。

例えば昨今、「働き方改革」で生産性向上に取り組む企業は多い。こうした企業のニーズに応えるため、同社は「営業担当者の働き方調査」を顧客企業(A社)で実施し、営業担当者の時間の使い方や行動の詳細について調査・分析を進めた。

コムテックが調査したところ、A社の営業担当者が顧客とフェース・ツー・フェースで商談する時間は、A社の想定していた時間より大幅に少ないことが判明。資料作成や事務作業といった商談以外の内勤業務の多さが原因だった。そこで、内勤業務のうち社員でなくてもできる業務を洗い出し、それらを請け負う改善策を提案している。

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3つの分野を組み合わせ最適な解決策を提案

コムテックでは、2016年からMSC(Marketing Support Center)を事業のコンセプトに掲げ、2018年には「MSC営業推進室」を発足した。

MSCとは、IT、マーケティング&セールス、オペレーションの3つの分野から最適なツールやサービスを組み合わせ、総合的なサービスを顧客企業の課題解決、売り上げアップにつなげていくという考え方である。

「自社のシステムや製品を購入してもらうことではなく、お客さまの売り上げを上げることが目的。そのため、自分の担当分野にこだわらず、総合的な視点で解決策を提案、実行していくことが重要」と語るのは、MSC営業推進室室長の井口公宏氏。

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コムテック MSC営業推進室室長
井口 公宏氏

あくまで顧客のビジネス拡大というスタンスで、具体的なソリューションを提案・運用する同社に対する、顧客の信頼は厚い。井口氏は「『そういえばコムテックって、あんなことできたよね』とお客さまに一番先に思い出してもらい、何でも相談されるパートナーでありたい」と話す。

「One day 3プレゼンテーションプログラム」を推進

同社は今、営業のパフォーマンス向上を目的とする「One day 3(ワンデースリー)プレゼンテーションプログラム」を推進している。営業担当者の1日当たりの訪問件数を増やし(1日3件と設定)、顧客との商談時間を増やしたり、その会話内容など営業の質を上げようというものだ。

例えば、売上高100億円の会社が来期に10%増の成長を目指す場合、110億円の売り上げが必要になる。ただし、企業を取り巻く状況は刻々と変わるため、既存売上高が来期も全額継続するとは限らない。活動量が変わらない場合、既存売上高が20%減少すると考えると、来期売上高は80億円になる。そのため110億円を目指すには、10億円ではなく30億円の増加が必要になる。

このように、売り上げアップのためには既存の減少分を考慮して計画する必要があり、既存顧客の取引拡大と新規顧客の獲得を同時に行う必要がある。しかも、新規顧客獲得には時間がかかるため、中長期を見据えた地道で継続的な営業が必須となる。

既存の減少を考慮した上で計画を達成するには、営業担当者が顧客と向き合う時間を増やさなければならない。同社の検証によると、某飲料メーカーの場合、ライバル社の売り上げを超えるためには、顧客との商談時間を営業担当者1人当たり22%増やす必要があったという。

しかし、商談時間を増やして売り上げアップにつなげるには、営業の事務作業の軽減、報告業務の効率化など営業支援体制の充実、モチベーションアップにつながる人事評価制度の構築など、営業活動に専念できる仕組みや支援が欠かせない。

また、営業活動の量だけでなく、訪問先で誰と、どのような会話をしているかなどの営業活動の質も高める必要がある。こうした営業を取り巻く環境ごと一緒に改善し、売り上げ拡大へつなげるためのパッケージプログラムがOne day 3プレゼンテーションプログラムだ。

具体的には、One day 3プレゼンテーションプログラムで、ターゲット選定、販売戦略の立案、行動計画・KPI(重要業績評価指標)の策定、活動管理をカバーできる。販売に先立ち、同社では2017年から同プログラムを自ら実践し、改善を重ねてきた。2018年3月からは顧客企業で試験的に導入・実施しており、7月から発売する予定である。

40周年の記念品を製作

2016年に設立40周年を迎えたコムテックは、記念品として手帳カバーや小銭入れなどの革小物、社員向けの社員証ケース&ネックストラップを製作した。それを担当したのが、タナベ経営のSPコンサルティング本部だ。

革小物は過去の周年記念品として製作した際、社内外で好評だったため、40周年の記念品でも製作することになった。また、同社の場合、顧客企業に常駐する社員が大半を占めるため、自社名のロゴが入ったネックストラップを身に付けることで、「『コムテックの社員』と周囲に認識してもらうとともに、身に付ける本人たちに帰属意識を高めてもらいたかった」(ライン統括本部の近藤央子氏)という。

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コムテック ライン統括本部 近藤 央子氏(左)
コムテック ライン統括本部 宮内 春菜氏(右)

同社は6年前、ストラップを自社システムの販促品として製作。それが好評を博し、同社の各部署や研修用などへ利用が広がった。この他にも、同社が開く企業向けセミナーの来場特典や社内行事用グッズの製作など、タナベ経営との関わりは年々拡大している。ライン統括本部の宮内春菜氏は「今後もいろいろな提案をいただき、販促品の製作を一緒に進めていきたい」と話す。

今後について、「まずはMSCの実践を全社員で徹底し、One day 3プレゼンテーションプログラムで結果を出すことが目先の課題」と井口氏。さらに、「お客さまの課題を解決し、ビジネスを拡大するという目的に向かい、タナベ経営は企画やコンサルティング、当社は実行部分を担うなど、お互いの強みを生かせる形での協業も見据えたい」と話す。

MSCで自社の強みを総合的に発揮し、自社にない領域はパートナー企業の協力を得て事業領域を広げる。もちろん、全ては顧客のビジネス拡大のためである。既存のアウトソーシングビジネスでは成し得ない、新しいアウトソーシングを確立しつつある同社の今後に注目したい。

PROFILE

  • コムテック㈱
  • 所在地:〒105-6791 東京都港区芝浦1-2-1 シーバンスN館10F
  • TEL:03-5419-5551(代)
  • 設立:1976年
  • 資本金:3億1000万円
  • 売上高:126億7500万円(連結、2017年3月期)
  • 従業員数:1023名※正社員(連結、2017年3月現在)
  • 事業内容:営業支援、マーケティング支援、コンサルティング・業務設計、システム開発・運用、オペレーション
  • http://www.ct-net.co.jp/

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    担当:タナベコンサルティング 戦略総合研究所