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今週のひとこと

「自分がモデル」という覚悟を持とう。

部下はあなたを見て育つ。

率先垂範を心がけよう。

☆ 「俺の背中を見て覚えろ」は、本当に不要ですか?

 「俺の背中を見て覚えろ」「仕事を教わるなんて10年早い」「仕事は教わるものじゃない。盗むものだ」...。最近の職場では、あまり聞かれなくなった言葉ではないでしょうか。

 筆者のコンサルタントとしての経験を振り返って見ても、近年は上司のOJT中心の指導から、新入社員・若手社員の価値観に合わせた業務のマニュアル化や、人材育成システムの整備に取り組む企業が増加しているように感じます。

 しかし、「背中を見て覚えろ方式」をビジネスの現場から無くしてしまって本当によいのでしょうか?
 柔道、剣道、弓道、合気道といった武道の世界には「見取り稽古」という言葉があります。師匠が弟子に指導するときに、手取り足取り教えるのではなく、師匠の技や、他の人が行っている稽古や試合を見て学ばせる指導方法のことです。これは職場で見られる「背中を見て覚えろ方式」ではありません。

 見取り稽古のポイントは、一瞬の動きを捉える「集中力」と、細かな違いを見抜く「観察力」であり、自分の身体を動かしたときの「想像力」、実践したときの「模倣力」が必要になります。そして、これらの能力は、マニュアルやシステム化では身に付けることが難しい、近年の新入社員・若手社員に不足している能力ではないでしょうか。

 ビジネスの現場での指導の仕方を見取り稽古に置き換えると、上司の仕事を見て覚えろと放置するのではなく、部下には何を見て学び取って欲しいのか目的を伝えること、期待する行動を明確にすることが必要ではないでしょうか。
 部下を成長させる最も効果的な方法は、上司自らが成長することです。あなたの職場には背中を見せて教えることができる上司は何人いますか。

経営コンサルティング本部
チーフコンサルタント
水本 伸明

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多様化する顧客ニーズに現場のチーム力で対応する

タナベ経営 経営コンサルティング本部 副本部長 小売・サービスのビジネスモデル改革研究会 リーダー 福原 啓祐
    タナベ経営
    経営コンサルティング本部 副本部長
    小売・サービスのビジネスモデル改革研究会 リーダー

    福原 啓祐 Keisuke Fukuhara

    人事、営業、財務戦略のコンサルティングを中心に、上場企業から中小企業まで幅広い臨床経験を持つ。また、企業再建の経験も豊富で、万年赤字のホテルを1年で黒字化。破綻懸念のあった企業を正常化するなど、企業変革の実績も多数。


小売業を取り巻くマーケットの変化

日本経済は現在、景気回復局面が高度成長期の「いざなぎ景気」を超えて戦後2番目の長さとなるなど好調を持続している。経済産業省の「商業動態統計」によると、日本国内の小売市場規模(2017年)は前年比1.9%増の142兆5140億円となり、2年連続で減少した前年からプラスに転じた。だが、内訳を見ると、百貨店とホームセンターが前年を下回り、スーパーマーケットもほぼ横ばいで推移するなど、業態によって業績格差が見られる。(【図表1】)

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ようやく盛り上がりつつある小売業であるが、今後の先行きを考えると安穏としていられない。小売業は、人口規模・世帯構造・購買行動の影響を直接的に受ける業種であり、これらの因子がこれから大きく変化していくからである。次に、この3つの因子の現状と先行きを押さえてみたい。

(1)加速する人口減少

国内人口の減少に歯止めがかかっていない。国立社会保障・人口問題研究所(社人研)の将来予測によると、日本の総人口は2015年の約1億2710万人から、東京オリンピック・パラリンピック開催年の2020年には1億2533万人と177万人減少し、2055年までに1億人を割り込む見通しである。

これに伴い、高齢化率(全人口に占める65歳以上人口の割合)が25%を突破し、2025年には「団塊の世代」(1947~49年生まれ)が後期高齢者(75歳以上)となり、2040年には高齢化率は35%を突破することが見込まれている。日本は世界でも類を見ない超高齢化社会となることが確実視されている。

(2)単独世帯の増加

社人研の国内世帯数の将来予測を見ると、日本の世帯総数は2015年の5333万世帯から増加を続け、2023年には5419万世帯とピークに達する。しかし、平均世帯人員は減少を続け、2015年の2.33人から40年には2.08人となる見通しという。

この世帯数の増加の要因は、単独世帯の増加である。総世帯数に占める家族類型別の割合を見ると、単独世帯が2015年の34.5%から、2040年には39.3%と約4割に達する一方、これまで消費の主役であった「核家族」世帯の割合は56.0%から54.1%に低下する。

(3)進む電子購買

一方、オムニチャネルや電子マネーを使いこなすデジタル世代を中心に、Webでの購買が増え続けている。経済産業省の調べによると、消費者向け電子商取引(BtoC-EC)の国内市場規模は、2016年時点で15.1兆円(前年比9.9%増)。2010年(7.8兆円)から6年で約2倍の規模に拡大した(【図表2】)。とはいえ、EC化率(全商取引に占める電子商取引の割合)は5.43%(前年比0.68ポイント増)にすぎず、個人消費市場全体から見れば、まだまだ実店舗(リアル店舗)での買い物が主流である。

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実店舗とネット販売の特徴は【図表3】の通りだ。従来、この2つの業態はすみ分けが明確であったが、近年は実店舗を展開する企業がEC拡大戦略をとり始めており、EC化率をKPI(重要業績評価指標)としているところも増えている。他方、EC事業者の間では、米Amazonのように実店舗を出店する事例が現れている。インターネット通販事業を通じて構築したブランド価値を、リアルの場でも生かしつつ、ネットの売り上げにつなげていく相乗効果が狙いである。

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いずれにせよ、実店舗とネット販売の融合型企業が増える中、顧客ニーズはさらに専門化・細分化していくことが考えられる。

徹底したデータ分析と顧客との接点づくり

好調なECとは裏腹に、実店舗(リアル)の売り上げは年々、厳しさを増している。もっとも、これはまだ"入り口"にすぎない。ECの市場規模は今後も右肩上がりに増加していく。しかも消費者のニーズは専門化・細分化している。実店舗は売り場面積の制約があるため、従来のマーケティング手法では太刀打ちできなくなってきている。

ただ、実店舗の強みは、人による接客と地域ニーズに密着した品ぞろえができることである。そこで消費者(顧客)に会社(店舗)や商品の「ファン」になってもらう、「ファンマーケティング」が重要になってくる。店舗を介して顧客とつながりを持ち、業績基盤を安定させていくには、顧客をファン化していくことが必要不可欠である。

顧客をファン化し、好業績を挙げている企業を見ると、次の2つを実践しているという共通点がある。1つ目は、データを徹底的に分析・活用していることだ。スーパーマーケットであれば、POSデータとポイントカードの顧客情報を連動させ、ニーズや嗜好、購買頻度、購買品目などを分析し、いまの顧客は何を求めているのかをつかんでいる。

そして優良顧客を明らかにし、重点顧客を選定する。ECならまだしも、実店舗が全ての顧客ニーズに対応することは困難であるため、自社(店舗)における「真の顧客」は誰かを見極めることが重要である。そして顧客管理、商品管理、仕入れ先管理に反映させて無駄を排除する。

また、現在の個人消費の約4分の1はすでに高齢者層が占めている。将来の超高齢化も見据えると、小売業(またはサービス業)は今後、「高齢者マーケットや単身者ニーズをいかに取り込んでいくか」という視点も忘れてはならない。

2つ目は、「ファンコミュニティー」を大事にし、うまく活用していることである。特に、顧客との接点(コミュニケーション)づくりの方法として、Facebook、YouTube、TwitterなどのSNSを積極的に利用している。その際は、いかに「自社(店舗)が発見されやすいか」が重要であるため、他社にない個性を打ち出すなどして「見つかりやすさ」に重点を置いて日々工夫を重ねることだ。「正しい情報を的確に伝え、魅力的に見せること」が大切である。

チェリー・ピッカー(セール時にだけやって来て、特売品ばかり買う客のこと)でも、店やサービスを気に入ればファンになってくれる。ファンになれば、自社の店舗や商品の情報を自ら取得したり、商品を何度も購入したり、周りにクチコミで広めてくれるようになる。

徹底したデータ分析と、顧客との接点(コミュニケーション)が実店舗経営の成功の鍵を握る。それはスーパーまるまつやレクサス星が丘の事例から見ても明らかである。もちろん、これらの取り組みは今日始めて明日に成果が出るというものではない。時間が必要だ。地道に努力を日々続ける。そういったプロセスが顧客満足の向上につながり、顧客がファンになる仕組みにつながっていくのである。

小売・サービスのビジネスモデル改革研究会

小売・サービスのビジネスモデル改革研究会

IT×リアル+人材で新たな価値を生み出す。

小売業においては、人口・世帯数が減少、消費者の価値観多様化、ITサービスの更なる進化等、小売業の戦略は大きな方向転換を迫られている。
当研究会では、「高収益ビジネスモデルの構築」「人材育成・採用力の強化」「顧客生涯価値(リピート)の最大化」「オムニチャネルの構築」「販売促進の強化」といったテーマで、激化する小売業界においてビジネスモデルの変革に挑戦している、成長企業・特徴のある企業からビジネスモデルの要諦を学ぶ。

「小売・サービスのビジネスモデル改革研究会」の詳細はこちら

「お客さま本位」を貫き20年
不動産のワンストップサービスを実践

東京都内の高級住宅地として知られる代々木上原(渋谷区)を地盤に、不動産売買・賃貸業を展開する「住新センター」。多くのメディアに出演することで知られる同社は、2018年7月に創業20周年を迎えた。その20年の軌跡と、これからの展望を聞いた。

住新センター本社(左) 売買営業部は代々木上原駅から徒歩すぐ(右上) 本社内の会議室(右下)
住新センター本社(左)
売買営業部は代々木上原駅から徒歩すぐ(右上)
本社内の会議室(右下)


代々木上原に根差した不動産会社

小田急電鉄小田原線と東京メトロ千代田線が乗り入れる代々木上原は、多くの財界人の邸宅が立ち並ぶ"お屋敷街"。賃貸は家賃20万円超、一戸建て住宅なら7000万円を超える物件が主流の高級住宅地区だ。都心部へのアクセスの良さから不動産ニーズが高く、富裕層を中心に住まいを求める人が後を絶たない。

そんな代々木上原で不動産業を営む住新センターは、賃貸仲介、一戸建て・マンションの売買仲介のほか、投資用物件の管理、不動産の企画開発を手掛ける。

創業者の田中章雄社長が不動産業界へ飛び込んだのは1990年。当時の不動産業界はバブルの恩恵を受け、若手の営業担当者でも容易に大型契約を取れる時代だった。当時23歳だった田中氏は不動産業界に魅力を感じ、友人の誘いもあって売買仲介の不動産会社へ入社を決意したのだった。

ところが、入社したころにはバブルも終盤。やがて不動産価格の高騰を抑える国の政策が開始されたかと思うと、同時期に湾岸戦争が勃発しバブルは崩壊。市場は急激に冷え込み、不動産業界を厳しい大不況が襲った。

潮目が変わる中で田中氏は気持ちを切り替え、宅建(宅地建物取引士)の資格や不動産知識、コンサルティングスキルを身に付けながら、仕事に日々励んだ。当時、米国から導入されたばかりだったFP(ファイナンシャルプランナー)の資格もいち早く取得したのだった。

その後も経済状況は好転せず、多くの不動産会社が倒産していった。田中氏の勤めた会社も例外ではなく、社員は年々減り続け、給与遅配に陥り、経営陣と銀行との間で交渉が続いた。入社6年で営業部長の立場にあったが、妻や2人の子ども、住宅ローンを抱える中で「会社がこんな状態ではやっていけない。何とかしなければ」との思いから一念発起。将来を見据え、独立を決意した。

開業場所に選んだのは代々木上原。前職の営業エリアで取引が多く、土地勘もあったことが理由という。しかし、青森出身で何のバックボーンも持たない田中氏に、すぐ店舗物件を貸す不動産会社はなかった。結局、同じ物件への入居を3回頼み込み、やっとの思いで入居許可をもらえたという。こうして1998年に住新センターを設立。独立を決意してから開業までに1年を要した。

設立して5年がたった2003年、不動産仲介ネットワーク大手のセンチュリー21・ジャパン(以降、センチュリー21)に加盟を決める。インターネット広告が出始めていた当時、センチュリー21本部がヤフーと提携し、無制限で物件を掲載できたことが大きな理由だ。加盟後、センチュリー21が優秀な加盟店企業を表彰する「センチュリオン」を14年連続で受賞するなど、その業績は高く評価されている。

住新センター 代表取締役 田中 章雄氏
住新センター 代表取締役
田中 章雄氏

自分の身内のように親身になって接客

住新センターの主な事業は不動産売買だが、センチュリー21加盟を機に賃貸事業にも本腰を入れてきた。売買がメインの不動産会社にとって賃貸は煩雑で細かい仕事が多く、割に合わない側面もあったが、「売買事業が主体でも、安定している不動産会社のベースには賃貸事業がある」という実感から、田中氏はその必要性を肌で感じてきたのだった。

また、賃貸事業をきっかけに、顧客のライフサイクル全体に関わる可能性も生まれる。例えば、一人暮らし用の賃貸マンションを紹介した新社会人の顧客が、次により広くて好立地の賃貸マンション、その次に家族で住めるマンションの購入、さらにアパートの購入などと、ライフステージに合わせて住み替えるケースは多い。その際、ずっと住新センターに依頼する顧客も少なくない。

さらに、「賃貸管理を始めてから地域密着の意識が強まり、地元からの信頼や密着度も強まっている」と田中氏。当初2人で始めた賃貸営業部は現在、20名体制へ拡大。代々木上原駅前にある賃貸営業部の店舗は2018年に増床工事を行い、7月にリニューアルオープンしている。

ところで、全国有数の人気高級住宅街であり、不動産会社間の競争も激しいこのエリアで、なぜ同社は20年も事業を継続・発展してこられたのか。その大きな要因について、田中氏は「自分の身内に薦めるように、お客さまの立場に立って親身になった接客をしてきたから」と話す。この20年の成長は、「お客さまには自分の親・兄弟・親友と同じように対応する」という同社の社訓を社員が貫き、会社への信頼を地道に培ってきた賜物なのだろう。

住新センター 総務部部長 佐藤 公幸氏
住新センター 総務部部長
佐藤 公幸氏

20周年を〝見える化〟地域密着をアピール

「20歳」は、人間で言えば成人という節目の年に当たる。2018年7月に20周年を迎える同社はプロモーションを展開し、対外的な広報活動としてはもちろんのこと、社内のモチベーションアップにもつなげていく考えだ。

具体的には、20周年のロゴやキービジュアル、特設Webサイトなどを展開。キービジュアルとなるポスターでは、代々木上原駅と直結する「上原銀座商店街」と、その道中に位置する同社の売買営業部をイラストタッチで描写した。「この街で歩いていない道はない」というキャッチフレーズを採用し、地域に密着した不動産会社であることを打ち出している。

制作を担当したのが、タナベ経営SPコンサルティング本部だ。SPコンサルティングの関わりは今回が初めてだが、田中氏とタナベ経営の出会いは今から約10年前にさかのぼる。田中氏はセンチュリー21主催(運営・タナベ経営)の加盟店経営者向けセミナーの受講経験があり、その際に講師を務めたタナベ経営社員の印象が残っていたという。

田中氏は「自分たちでは分からない、客観的なアドバイスをいただけたら」とタナベ経営との今後の関係に期待を寄せる。

「社員が成長できる会社」を目指して

インターネットを使えば、いまや個人でも簡単に物件を自動査定でき、しようと思えば個人間でも直接、物件を売買できる時代。物件情報などをあらかじめ調べた上で不動産店舗へ来店する客も多く、不動産会社を介する理由やその価値はこれまで以上に厳しく問われるようになる。

こうした中、住新センターは組織運営や人材教育の体制を見直した。組織運営に関しては「いままで個人商店的な部分もあったが、今後は従業員に権限を委譲し、社員個々の成長を促しながら着実な会社の成長を目指す」(田中氏)との考え。人事研修制度の整備など、同社がビジョンに掲げる「社員が成長できる会社」の具体化を進めている。

また、もともと不動産は個々の能力に依存しやすい業界だが、「(今後の企業成長を考えると)社員個人から組織、会社全体でスキルやノウハウを共有し、組織として社員成長をプログラミングしていくことが不可欠」と総務部部長の佐藤公幸氏。採用に関しては「現状は中途採用が中心だが、ゆくゆくは新卒採用中心に切り替え、企業の安定成長につなげていきたい」と語る。

さらには、システム構築などデジタル環境の整備にも力を入れる方針という。全ては顧客にとっての付加価値や自社への信頼を高めるためだ。

バブル崩壊後の激動期を駆け抜け、飛躍を遂げてきた住新センター。今後も代々木上原における不動産の"ファーストコールカンパニー"として、多くの顧客の人生を支えていくことだろう。

PROFILE

  • ㈱住新センター
  • 所在地:〒151-0064 東京都渋谷区上原1-25-1 J'sビル代々木上原3F
  • TEL:03-5790-6788(代)
  • 設立:1998年
  • 資本金:5900万円(グループ合計)
  • 売上高:15億円(グループ合計、2017年12月期)
  • 従業員数:43名(2018年5月現在)
  • 事業内容:賃貸仲介、一戸建て・マンションの売買仲介、投資用物件の管理、不動産の企画開発など
  • http://www.jushin.co.jp/


不動産に関するコンサルティングのプロ集団として、事業用物件の自社開発・販売・仲介・賃貸管理の一貫体制を確立している住新センター。20周年を機にさまざまな事業展開を行い、これまでの感謝の気持ちを伝えるとともに、ワンストップサービスを向上させている。将来ビジョンを社内外へ浸透させていく、そのプロセスを通じてお客さまに寄り添う企業姿勢をさらに昇華させている最中である。売上高50億円、社員50名体制を目指し、着々と成長を続ける同社の今後に注目である。

SPコンサルティング本部 副本部長 SPディレクション部長 脇阪 佳人
SPコンサルティング本部
副本部長 SPディレクション部長
脇阪 佳人

戦略総合研究所 デザインラボ 主任 吉岡 朝弘
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デザインラボ 主任
吉岡 朝弘


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    担当:タナベコンサルティング 戦略総合研究所