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今週のひとこと

わが社の真の強みは何か、真の顧客は

誰か、顧客に評価される真の貢献とは

何か。その正体をつかんでこそ、会社

は伸びる。

☆ あっ!こんなところに思わぬ強みが...

 「ここには、きれいな景色や美味しい料理など、これといった特長は無いので、観光客なんて来るわけがない...」。そのような声ばかりが聞こえていた地域が、そこに住む人々にとっての「当たり前の暮らし」を売りにして、インバウンド需要を取り込むことに成功した。最近、このような話をよく耳にします。自分たちが当たり前だと思っていたことが、実は貴重な観光資源であったという話ですが、こうした事例は、あらゆるビジネスにおいてヒントになります。

 例えば、あるサービス業が、本業で培った「おもてなしの心」を、企業向けの研修メニューとして提供したり、もともとは自社の業務効率化のために構築したシステムを、同業他社に販売・提供したりすることは、珍しいことではありません。どのような企業にも、独自に培ってきたノウハウがあるものです。営業機能を持つ会社の「営業・顧客管理・営業戦略立案手法」、工場や建設現場における「カイゼン方法」、学校や保育園の「運営ノウハウ」、学習塾の「人に教えるスキル」、農家の「美味しい野菜の作り方」など、自社にとっての当たり前が、他社の課題を解決できることもあるのです。

 このような隠れた経営資源を発掘する足掛かりとして、筆者は次の3点が有効だと考えます。

1.日常業務の棚卸をしてみる。
2.外部に触れる機会を増やす。
3.自社を積極的に発信する。

 自社を客観的に見つめ、周囲と積極的に関わることで、思わぬ強みを発見するきっかけが生まれます。まずは、今一度、自社のヒト・モノ・カネ・情報・ノウハウなどの経営資源を見直してみてはいかがでしょうか。

経営コンサルティング本部
コンサルタント
峰村 和磨

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「マネジャー」と「リーダー」の違い

これからの時代に必要な幹部とは

企業にとって幹部教育は永遠のテーマである。幹部のリーダーとしての力が企業の生産性や成長性に直結することは言うまでもないだろう。幹部教育の在り方は時代とともに変化する。時代の変化に気付かず旧態依然とした教育を施したり、教育すること自体が目的となって中身に何の工夫もなければ、その成果は限定されたものとなる。

では今の時代、あるいはこれからの時代に必要な幹部とはどんな人材か。また、幹部教育はどうあるべきかを考察してみたい。

幹部には2つの役割がある。「マネジャー」としての役割と「リーダー」としての役割である。この2つを明確に区分しておかなければ、今の時代に求められる幹部像は思い描けない。

マネジャーに求められる価値判断力

マネジャーとは、つまり「管理者」である。管理する対象は、人、ルール、業績、方針など多岐にわたる。あるべき姿や方向性に対し常に的確な現状認識をしながら、正しく状況判断をすることが求められる。マネジャー教育の目的は、「幹部が正しく判断する能力を養うこと」と言ってよいだろう。

正しく判断するためには、その人なりの価値判断基準がなければならない。借り物の価値判断基準では説得力に欠け、他人の意見(場合によっては部下の意見)に左右されてしまうからだ。

物事には常に二面性がある。しかもその両方とも重要であるというケースがほとんどだろう。その上、一方を立てれば他方が立たないという矛盾の構造でもある。このとき安易に割り切って一方の側面で判断すると、すぐに他方から反対意見が飛んでくる。それを権力で抑え付けるのは簡単であるが、それでは真の問題解決にはならない。

幹部はそれら矛盾する意見の真ん中に自らの価値判断基準の軸を据え、誰もが納得する判断を下さなければならないのだ。


本質に迫ること

では、誰もが納得する価値判断基準とは何か? その鍵は「本質に迫ること」にある。本質とは「頭で理解する」ものではなく、「体で覚える」感覚と言ってよい。本を読んだだけでは分からないし、表面的な理解だけでも得られない。本質に迫る唯一の方法は、仮説と検証のアプローチである。言い換えれば、熟慮と経験の繰り返しなのである。

経験とは、自らがチャレンジしたことに限定される。指示されたことやモノマネは有効な経験とは言えない。まず成果を出すために何をするかを考える。つまり仮説を持つこと。次にそれを自分で実行してみる。

経験不足であれば最初は失敗に終わるだろう。その失敗から学び、再度チャレンジする。それを繰り返し、諦めなければやがて成功する。成功した段階で、当初立てた仮説や失敗経験は全て「成功の原理原則」になる。諦めてしまえば、それで終わり。何の学びも得られない。「このやり方はダメだ」とレッテルを貼ると、その人の可能性を狭めてしまう。逆に早い段階で成功してしまうことも、ある意味で不幸だ。ノウハウの蓄積が不十分であり、次にチャレンジしたときに再現性がなく失敗に終わるのである。そういった自らの原理原則を、実践を通じて体得していかなければならないのだ。

自らの原理原則とともに成功体験を実感したとき、目の前が開けた感覚を味わえるだろう。またこれまで経験したことが必然に思え、全ての事象が線でつながっているように見えるだろう。それがモノの本質にたどり着いた瞬間である。このとき、その人は幹部としての段階を1つ上がったと言える。その状態を得たらもうそれまでの段階に戻ることはない。自らの価値判断基準の軸も備わっており、間違った判断をすることもなくなるのだ。

この本質的な判断は平時ではなく、有事の際にこそ求められるだろう。上意下達の指示や決まり切ったルーティンワークを回しているときの判断は、一定の知識と経験があれば誰でもできる。不測の事態や前代未聞の事故が生じたときなどに幹部としての真の力量が問われる。高度なマネジメント能力とは有事の際に発揮されるのである。


リーダーとしての成長過程

リーダーとは、文字通り「先導者」である。マネジャーが決められた方向性の実行を管理する役割であるのに対し、リーダーは方向性そのものを決める役割となる。その発想もマネジャーが演繹的であるのに対し、リーダーには帰納的なものが求められる。

言い換えれば、マネジャーは与えられたミッションを具現化し、効率よく成果を出すための組織や計画を作り実行させるが、リーダーはミッションそのものを決めることが求められ、そのための現状認識として多角的に事実を押さえていく。「道なきところに道をつくる」ための創造性が必要とされるのである。

そういった戦略判断力というべきものはどのように鍛えたらよいのか?その鍵は自らの成長過程にあると言えよう。リーダーとしての成長段階は、孔子の残した言葉になぞらえることができる。

「十有五にして学を志す」

企業人としては学生を卒業して、社会人として道を歩み始めた段階と言えよう。この段階の価値判断基準は文字通り「学ぶ」ことであり、仕事の基本を身に付けるとともに幅広い知識を吸収し、多様な経験を積むことが肝要であると言える。まだ何かに絞らずに、何事にも旺盛な好奇心で臨むことが大切である。

「三十にして立つ」

一通りの経験を身に付けたら、自らが立つ道を決めるのがこの段階であろう。つまり自身の専門性を決めることである。富士登山に例えるなら、河口湖ルートで登るのか、御殿場ルートを行くのか、または富士宮ルートなのかを選ぶことである。道を選んだら30代のうちは、その道のナンバーワンを極めるために努力を重ねなければならない。

「四十にして惑わず」

自身の専門性を高めていくと、あるレベルから物事の本質や全体像が見えてくるだろう。富士登山に例えれば、8合目くらいから眺望が開けてきて山の全貌が見えてくる。

つまり専門性を極めるというのは、視野を狭めることではなく、視点が高くなることによって、逆に視野が開けてくることなのである。山頂を極めることができれば、河口湖ルートだろうが、御殿場ルートだろうがゴールは共通であることに気付くはずだ。

「一芸に徹すれば、万般に通じる」

富士登山の例えとは逆に、井戸を掘り続けていくとやがて地下水脈にたどり着き、その水脈は地中で果てしなくつながっている。全体像が見える瞬間である。

この領域は、経営全体を見通せるゼネラルリーダーの領域だ。専門性を極めた結果が、他のあらゆる専門性と高度なレベルでつながり、ダイナミックな仕事ができ、かつ的確なマネジメントが可能になる。自分自身の仕事に迷いがなく、自信と誇りを持ち、いかなる難問であろうと、未知の領域であろうと的確に判断ができるであろう。

リーダーとして成長するためには20 代、30 代の過ごし方が重要である。経験年数は勤続年数に比例しない。前向きなチャレンジを重ね、視野が開けるまで諦めなかった者だけが、真のゼネラルリーダーの領域にたどり着けるであろう。

マネジャーとリーダー。その特性は基本的に違うが、幹部人材たる者はその両方を併せ持つ必要があろう。

結果としてマネジャータイプ人材、リーダータイプ人材という分かれ方はあっても、どちらかを目指すというものではなく、両方をバランスさせることが重要なのである。

タナベ経営 経営コンサルティング本部 副本部長 中須 悟
  • タナベ経営
  • 経営コンサルティング本部 副本部長
  • 中須 悟
  • Satoru Nakasu
  • 「経営者をリードする」ことをモットーに、経営環境が構造転換する中、中堅・中小企業の収益構造や組織体制を全社最適の見地から戦略的に改革するコンサルティングに実績がある。CFP® 認定者。

事業承継時代に知っておきたい「ホールディング経営」という選択

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事業承継を機にホールディング経営体制にシフトする中堅・中小企業が増えているが、その判断基準は経済的なメリット・デメリットではなく、企業が長期的に存続するための総合的な戦略であることを一貫して主張。実務家ではなく、経営者に目線を合わせ、原理原則と事例を織り交ぜながら、わかりやすく解説。

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■定 価 1,600円+税(送料別)
■著 者 タナベ経営 ファミリービジネスコンサルティングチーム リーダー 中須 悟
■編 者 タナベ経営 ファミリービジネスコンサルティングチーム
■仕 様 四六判、上製 224頁
■発行元 ダイヤモンド社

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出版記念講演会のご案内

【出版記念講演会】ホールディング経営はなぜ事業承継の最強メソッドなのか

ホールディング経営は、なぜ事業承継最強メソッドなのか

事業承継には、経営者の思いの数だけドラマがあります。
そしてホールディング経営モデルは、いわばそのドラマを演じるステージと言えるのでないでしょうか。
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"「住む」より「楽しむ」"家を提案し、日本の住宅を変える

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新世代ログハウス『G-LOG(ジーログ)』

機能が重視されるハード中心の住宅産業において、「暮らし」というソフトに着眼して業界に新風を起こしたアールシーコア。
住宅の購入がゴールという日本の住宅事業に一石を投じ、住むことの楽しさを提供する同社が手掛けるログハウス「BESS」シリーズは多くの共感を呼び、日本中にコアなファンを広げている。


何のための家か?それが一番大事なこと

中村 アールシーコアの「BESS」の家は、日本のログハウス市場を切り開いたパイオニア的な存在です。保養地などにある別荘というイメージが強かったログハウスですが、BESSの家は日常生活を営む自宅向けに新たなマーケットを切り開いてこられました。国内の新設住宅着工戸数は縮小傾向にある中で、BESS事業が成長を続けている秘訣はどこにあるのでしょうか。

二木 BESS事業は、ログハウス「ビッグフット」として1986年にスタートしました。私にとって住宅事業自体が未知の分野でしたが、まず考えたのは「何のための家か?」ということ。当時はバブル全盛期でしたが、日本の住宅は海外から「ウサギ小屋」と揶揄されるような狭くて画一的な家が一般的で、同じ生活必需品である衣食と比べても住宅の後進性は明らかでした。土地価格の高騰に加えて、住宅の施工費用も海外と比べて高額ですから、立派な家を建てると立派な借金も残る。それでは家族は幸せになりませんよね。

中村 暮らしを楽しむために家を買うのに、希望通りの家を買うと借金の返済に追われて暮らしを楽しむことができない。国土の狭い日本では土地価格が高くなるのはある程度仕方のないことですが、施工費用も海外と比べて高額となれば、必然的に家は狭くなってしまいます。

二木 実際に、全く同じ設計・仕様の住宅をカナダや米国、日本で造る実験を当社で実施したところ、カナダや米国が1000万円だったのに対して、日本では2630万円もかかりました。同じ家なのに日本で買うと海外の2.6倍になるのは変ですよね。しかも、住宅の寿命は英国が100年なのに対して日本は25年といわれるほど短い。ただ、当時は土地価格が異常に高騰する中で資産価値としての住宅がもてはやされていましたし、今よりも「家を買って一人前」という意識が強い時代でしたから、多くの人にとって家を買うことがゴールになってしまっていた。手段が目的になっていることに私は疑問を感じました。

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アールシーコア 代表取締役社長
二木 浩三氏
1947年生まれ、石川県出身。1985年アールシーコア設立、代表取締役に就任。1986年、BESSの前身であるビッグフット事業を開始。

顧客の主観に響く感性マーケティング

中村 「何のための家か」を考えることで、住宅を取り巻く問題点が明らかになったわけですが、バブル経済で家が売れている中、業界の常識を覆すのは簡単なことではありません。

二木 もちろん簡単なことではありませんが、「消費者の潜在的ニーズを掘り起こすような新たなブランドを投入することで、マーケットを創れるのではないか」という思いはありました。当時、社会は大きく変化していました。技術の普及と平準化によって大量生産・大量消費の時代が続いていましたが、人々の生活水準が向上する中で消費は成熟し、嗜好の多様化・個性化が進んでいました。いわゆる、マス・マーケティングの終焉です。

例えば、衣料品では作り手の衣類に対する思想、つまりブランドのテイストに共感して服を選ぶ人が増えていました。ブランドの服を着ることを通して、個性を表現する消費行動であり、あらゆる分野で感性マーケティングが広がりつつありました。私は、住宅においてもそうした感性を満たす新たなブランドを投入する意味があると考えました。

中村 衣食ではすでに、機能を超えて感性に重点を置く感性マーケティングが顕在化しており、その中心を担っていたのがブランドでした。タナベ経営ではブランドを「顧客との約束」と捉えていますが、BESSの家における顧客との約束とは何ですか?

二木 消費者から見れば、ブランドは「納得の証し」だと考えていますが、モノ余りの今の時代、「納得」に共通の定義はありません。客観的価値の比較は無意味になっており、重要なのは主観です。消費者はそれぞれの主観に基づいて好みの商品を選びますが、納得できるテイストを保証するものこそがブランドではないでしょうか。

二木 BESSの場合、発信するのは自然体で自分らしい暮らし。"「住む」より「楽しむ」"というブランドスローガンのもと、機能や性能を打ち出すハード志向の一般住宅とは一線を画す、ソフト志向の住宅を提案してきました。これは当初から掲げる価値であり、BESSの前身であるビッグフットは「自然派個性住宅」がキャッチコピーでした。当時は珍しい存在でしたが、感性マーケティングでは100人中99人が「ノー」と言っても残りの1人が「おもしろい!」と言う家であることが大事だと考え、「1%マーケティング」で行くと宣言しました。

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BESSの暮らしを体感できる1社単独展示場

時代は変化するもの チャレンジが明日をつくる

中村 社会の課題と消費者の変化を的確に捉えたところに、BESSの家が成長する要因を見ることができます。時代に合わせて新シリーズを投入されましたが、「何のための家か」という根源的な思想に支えられているため商品イメージにまったくブレが生じていません。

二木 家に大事なのは活用価値です。誤解を恐れずに言うなら、家は生活を楽しむための「道具」だと私は考えています。以前、BESSシリーズの『ワンダーデバイス』を購入されたお客さまの話ですが、その方は当社のログハウスを建てようと7年間、貯金を続けていました。しかし、展示場に来てワンダーデバイスに入ったとたんに「欲しかったのはこの家だ!」と即決されました。ワンダーデバイスの外装はトタン張りで、見た目は丸太組みのログハウスとまったく異なりますが、ログハウスに比べて室内面積を広くとれますし、建築上の制約が少なく室内設計の自由度が増す特徴がある。つまり、その方が求めていたのはログハウスではなく、自分をウキウキさせてくれる暮らし方だったのです。それを実現してくれる家を求めていたのです。

石川 面白い事例です。理想の商品に出会って初めて、お客さま自身が本当のニーズに気付かれたわけですね。夢をかなえる商品を提供できるかどうかは、強いブランドを確立する上でも重要なポイントといえます。商品を企画する上で、何か特別に取り組まれていることはあるのでしょうか?

二木 特別なことはありませんが、あえて言うなら挑戦することです。当社は変わった会社で、マーケットリサーチをしたことがありません。社会が変化する中、当然ながら消費者の価値観も変化していきますから、声なき声といいますか、顕在化していないニーズに向けて新たな価値を提案していくことが大事ではないでしょうか。

実は、ワンダーデバイスについてもニーズが存在するという確信はありませんでした。ただ、ログハウスに魅力を感じているお客さまであれば、外観こそ違いますが、ログハウス的な生活を実現するワンダーデバイスに興味を持っていただけるのではないかと。確かな販売予測などありませんから、発売当初は売れるたびに工場用のトタンを加工して外装材に利用していました。おかげさまで今では取引先に専用の部材を作ってもらえるほどの規模にまで成長しています。

石川 マーケットリサーチで見えるのは、すでに顕在化しているニーズや規模だけです。次の手を打つためには、社会や消費者の変化を予測して、企業の使命と重なる部分へ果敢にチャレンジをしていくしかありません。

二木 明日を誰も見たことがありませんが、必ず明日はやって来ます。「明日のことが分からないからやらない」ではなく、「チャレンジすることが明日につながる」と私は考えます。当社ではチャレンジマーケティングと言っていますが、本当のマーケティングとはマーケットを創ることです。昨日の延長線上で事業をしていては、組織規模の大きなところに負けてしまいますから。

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タナベ経営 経営コンサルティング本部 副本部長
山本 剛史
企業の潜在能力を引き出すことを得意とする経営コンサルタント。事業戦略を業種・業態ではなく事業ドメインから捉え、企業の固有技術から顧客を再設定して事業モデル革新を行うことに定評がある。現場分散型の住宅・建築・物流事業や、多店舗展開型の小売・外食事業などで生産性を改善する実績を上げている。神戸大学大学院卒。

必要なのは"幸せな生活"を支えるナビゲーター

木内 変化に合わせてブランドも変わっていかないと、生き残ることはできません。

二木 BESSのブランド価値は、ある程度柔軟でよいと考えています。ただ、変えてはいけないのが原理原則。BESS事業で言うなら、暮らしを楽しむためのソフト志向の住宅であることです。こうした活用価値がベースにあれば、同じような価値観の人に住み替え需要が生まれます。新居へ移る際、米国は住み替えが7割なのに対して日本は7割が建て替えだといわれていますが、家はライフスタイルの変化に合わせて変えていく方が自然だと思います。ただ、年月を経ても古びないために、デザインにはこだわっています。芸術品でも日用品でも、デザインが受け継がれてオーソドックスに収れんされていくような、優れたデザインを目指しています。

中村 BESSのブランドに共感する人であれば、家に生じる経年変化を味わいだと評価するでしょうね。30年以上前から感性マーケティングを取り入れることで、住み替えまでをビジネスモデルに組み込んでいる。「家を建てる」ではなく、「家で暮らす」ことに軸が置かれているから可能になる仕組みです。

二木 ブランドは触媒のようなものだと思います。触媒自体は変化しませんが、化学反応を起こす要素があるものを変化させます。お客さまが本当に求めている暮らし方を顕在化させるものだといえます。営業も同じです。当社は各家庭への訪問販売をしていません。お客さまが求めていないものを売っても幸せにはつながりません。

BESSの家に必要なのは、営業ではなくお客さまのお手伝いをするナビゲーターです。わざわざ展示場まで足を運んでくださったお客さまの内面にあるものを実現させる役割であり、ナビゲーターによってお客さまの幸せな生活がスタートするのです。家を買った時の満足感よりも、暮らしの中で生まれる幸福感=ハピネスが大切なのです。

木内 BESSの家を購入するのは、BESSを「好き」という感性で選んだお客さまですから、BESSでの暮らしの中で生まれる幸福感は高いと思います。実際、BESSは購入者からのクレーム率も低く、近年はSNSなどでその暮らしを発信する、ポジティブなユーザーも増加していると伺いました。

二木 そうですね。BESSは客層に恵まれており、それこそがブランドの証しと捉えています。また、BESSはフランチャイズで事業展開していますが、お客さまの展示場来場から成約までをサポートする営業システムを構築しており、過去に住宅事業経験のない方でもフランチャイズオーナーとして参入しやすいと思います。

さらに、4月からは施工、物流、設計、情報、購買の各分野を統括して革新させる取り組み「生産革新」をスタート。将来予測される職方不足を見据え、施工現場の負荷を軽減する取り組みを進めています。

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タナベ経営 経営コンサルティング本部 部長 チーフコンサルタント
木内 健介
大手メーカーにて商品の企画開発、ブランドマネジメントなどに携わった後、タナベ経営入社。主に新規事業展開、事業戦略設計などで活躍中。クライアントの強みを引き出し、生かすことを信条とし、地に足の着いた展開で成果につなげることを得意とする。

時代に合わせながら核となる価値を発信し続ける

木内 スローフードやロハスに代表されるように、近年はエコで自然なライフスタイルに注目が高まっています。こうした流れはBESSの家にも共通する価値ですが、一方で他社との差別化が難しくなっているともいえます。そうした中、差別化できるブランドを確立する秘訣は何でしょうか。

二木 私は、ブランドの確立には「創造性(クリエーティビティー)」「製品の完成度」「生活様式の変化に対する理解」の3つが特に重要だと考えています。どこかのまねでは規模の大きいライバルに負けてしまいます。核となる価値について、時代に合わせてその形を変化させながら常に発信し続けていく創造性こそ、世代を超えてブランドが認知される上で欠かせません。

製品の完成度はブランドの信頼を証明するもの。お客さまが夢を転化できるのは商品や企業に信頼があるからです。BESSの家だったら、楽しい暮らしができるはず。そういったお客さまの夢を実現するだけの完成度を備えることは、信頼を築く上で不可欠です。

そして、そのためには生活様式の変化に対する理解が欠かせません。BESS事業のスタートから30年がたち、30代の方は60代に、そのころに生まれたばかりの赤ちゃんは30代になっています。当然、育った環境は異なり、価値観も変化していますから、時代とともに家も変わるということです。

中村 創造性、製品の完成度、生活様式の変化に対する理解。この3つを常に高めていくことで確固たるブランドにつながっています。

二木 カッコ良い車でも、走らないものは車としてカッコ良くないように、家も暮らしというソフトが伴わないと単なる箱になってしまいます。そうならないために、経営において演繹法による思考を心掛けています。原理原則が正しければ自ずと正しい結論が導かれるもの。「何のために家はあるのか?」「家族が幸せになる家ならいいな」「どんな家なら幸せになれるか?」という理想を追求することです。当社はこれからも、家を買った時の満足度より、暮らしの中で感じた幸福感を大切にして、日本中にハピネスを拡散していきたいと考えています。

中村 アールシーコアが打ち出してこられた「暮らし」というソフト価値は、今や住宅産業における欠かせないキーワードとなっています。ハード中心の業界に一石を投じたBESSの家が、ごく普通の幸せを広げていくだろうと確信しております。本日はありがとうございました。

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タナベ経営 経営コンサルティング本部 コンサルタント
石川 一平
大手リフォーム会社の営業職、経営企画職を経てタナベ経営に入社。さまざまな事例をベースに、クライアント独自のビジネスモデル創りを推進。現場主義でのコンサルティングを信条とし、チャレンジ精神に基づく攻めのコンサルティングで、多くの企業のビジョン実現を支援している。

PROFILE

  • ㈱アールシーコア
  • 所在地:〒150-0045 東京都渋谷区神泉町22-2 神泉風來ビル
  • TEL:03-5790-6500(代)
  • 設立:1985年
  • 資本金:6億6076万円
  • 売上高:129億200万円(連結、2017年3月期)
  • 従業員数:196名(連結、2017年9月現在)
  • 事業内容:自然派個性住宅の企画・製造・販売、分譲住宅・宅地の企画・販売、別荘タイムシェアの販売および運営管理
  • https://www.rccore.co.jp/

住まいと暮らしビジネス成長戦略研究会

住まいと暮らしビジネス成長戦略研究会

2019年消費税増税・2020年オリンピック開催後の"次の一手"

社会構造や家族構成の変化に伴い、住まいや暮らしに対する価値観がめまぐるしく変化しています。その潮流の中で、躍進し続ける企業はどのような成長戦略を推進しているのでしょうか?
「住まいと暮らしビジネス成長戦略研究会」では、ハウスメーカーやリフォームをはじめ、住まいと暮らしに関わる様々なビジネスを展開する、優秀企業の現場を視察し、成長モデルを学びます。

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    担当:タナベコンサルティング 戦略総合研究所