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今週のひとこと

ブランドとは、顧客と企業の長期的な

信頼関係を築くことである。

☆ インナーブランディングが人と組織を成長させる

 インナーブランディングとは、社員に企業ブランドの価値や目指す方向を理解させる啓蒙活動のことで、最近、社内プロジェクトを組成して取り組む企業が増えています。
 業種や規模に関係なく、社員の行動や顧客対応は企業イメージに大きく影響します。消費者に対して自社のブランド価値を啓蒙するアウターブランディングと共に、企業のブランドを構築する重要な要素のひとつとなるため、インナーブランディングを怠ってはいけません。

 インナーブランディング活動で期待できる効果としては、次のようなことが挙げられます。

・社員の仕事への誇りとやりがい向上
・ブランド価値の社外発信
・社員の顧客志向の向上
・若手、中途採用社員の離職率低減
・顧客満足度の向上
・顧客視点の新製品、新サービスの開発
・目指す方向の一本化による社内およびグループ一体感の醸成
・経営方針の社内浸透と業務活動での実践

 さらに、インナーブランディング活動の成果物として、ブランドブックやビジョンブックなどのツールを制作し、全社員に配付。それを用いて教育研修を実施することが重要です。そうすることで、経営層の「より良い会社にしたい」という情熱が浸透し、社員の価値観や行動の変化を促しますし、ツール制作の過程そのものがインナーブランディング活動ともなります。

 ツールの制作手法は多岐にわたりますが、単なるマニュアルにならないよう、ビジュアルや事例を盛り込み、見やすく・分かりやすくする工夫が必要です。
 皆さんの会社でも、周年事業や中期経営計画策定などの節目の際に、インナーブランディング活動を検討されてみてはいかがでしょうか。

SPコンサルティング本部
部長代理
木下 光晴

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「この街に、あってよかった。」といわれる存在を目指して Vol.34 フジ

創業50周年 サンクスパーティーは、感謝を伝え、絆を深める機会に
創業50周年 サンクスパーティーは、感謝を伝え、絆を深める機会に(左)
スローガンと併せてロゴを刷新(右)


地域に密着し、普段のくらしを支える

中国、四国地方でスーパーを展開するフジが設立されたのは1967年。母体は、広島県広島市の繊維問屋「十和織物」(現アスティ)だ。

戦後間もなく設立(1950年)された十和織物の初代社長・尾山悦造氏(フジの2代目社長)は、米国の流通視察を経て「これからは小売りの時代」と確信し、小売店のチェーン展開を決意。その後、実弟の尾山謙造氏を初代社長に任命して愛媛県松山市にフジを設立し、67年10月、宇和島市に1号店を出店した。1981年には念願だった広島県へ出店。今では四国と広島、山口の中四国地方6県に96店舗を展開する。

商圏内の少子高齢化や人口減少が進む中、2012年には「中四国くらし密着ドミナント」を経営ビジョンに策定した。店舗規模や店舗数を拡大する戦略から重点をシフトし、食品スーパーを中核事業と位置付け、地域に密着して消費者の普段のくらしを支える事業展開を推進している。

50周年を機に新たなCI、VIを策定

フジは2015年、創業50周年の節目(2017年)に向け、プロジェクトを始動させた。目的は、自社の歴史やブランド価値を全従業員で再認識して意識変革を行うこと、全てのステークホルダーに感謝を伝えること、そして、これからの新しいフジをつくることだ。

この一連のプロジェクトにおいて、CI(コーポレート・アイデンティティー)、VI(ビジュアル・アイデンティティー)の検討・刷新を実施した。今後のフジを担う30~40代の次期リーダーが検討メンバーとなり、彼らとトップの意見を合わせ、フジの目指す姿を描いていった。

その検討プロセスの中で、メンバー20名による計3日間の"合宿"を実施し、会社の強みやこれからのフジについて集中的に討議を重ねたという。その話し合いの末に導き出したのは、「地域のお客さまに『この街に、あってよかった。』と思われる存在になりたい」という思いだった。同社はこの言葉を新たなスローガンとして採用し、併せてロゴも刷新することとなった。

また、スローガンを実践するため、「まじめに、たのしく、あたらしく。」という新たな行動指針を策定。これも同メンバーが導き出した言葉である。創業時から続く「まじめ」な企業風土を受け継ぎつつ、「仕事を楽しみながら、新たなチャレンジを推進し、成長やお客さま満足につなげていこう」というあるべき企業文化を、分かりやすい言葉で表現した。

さらに、具体的な行動基準をまとめた「7つの習慣」を策定。行動指針や7つの習慣により、スローガンを具体的行動へ落とし込み、習慣化しやすいようにしたのだ。

「この街にフジがあってよかった、と話すのはあくまでお客さま。スローガンを実践するには、従業員一人一人がお客さまの目線で考え、行動することが必要」「CI、VIの刷新で従業員の意識・行動が変われば、ステークホルダーのフジに対する意識が変わり、フジの新しいブランド価値が育まれる」(フジ上席執行役員営業関連統括部長の大西文和氏)

同社はさらに2017年11月、従業員対象の日帰りイベント「創業50周年サンクスパーティー」を実施した。仲間へ感謝し絆を深めるとともに、フジの歴史を振り返り、未来のビジョンを共有することが目的だ。

役員も従業員も一緒になって盛り上がるライブ、フジの歴史をたどる劇、会社や顧客から従業員への感謝のメッセージ紹介、新しいCI、VIの紹介など盛りだくさんの内容で、5日間の実施期間中、合計6000人が参加する一大イベントとなった。

実行委員長を務めた大西氏は「"手作り"感の強い企画・運営だったが、その分得られた成果は大きく、まさに『まじめに、たのしく、あたらしく。』を体現するものになった。イベントを通じ、自分たちの仕事は単に商品を売ることではなく、その先にあるお客さま満足の追求であると実感できた。何より、一緒に働く仲間の大切さをあらためて感じた」と語る。

フジ 上席執行役員 営業関連統括部長 大西 文和氏
フジ 上席執行役員 営業関連統括部長 大西 文和氏

「個々の強みを伸ばし、活かせる会社」へ

「事業は人にある」という創業社長・尾山謙造氏の言葉にも表れる通り、フジは創業時から一貫して「人」を事業の中心に据え、人材育成に力を注いできた企業だ。

2018年からの中期経営計画では「人の強みを伸ばす、活かす」を人事のテーマに掲げる。ビジネス環境が多様化する中、一人一人の顧客にフィットするには多様な人材が必要であり、従業員個々の強みを伸ばせる組織風土や仕組みづくりが重要との考えからである。

こうした中、タナベ経営は2015年から係長・主任(初級管理者)の活性化教育を担当。成果を上げるための習慣化行動や、部下育成などの研修を通じて同社の人材育成を支援している。大西氏はこれらの研修も活用しながら、人材育成へさらに力を入れるという。

小売業を取り巻く事業環境は厳しいが、これからも「地域のお客さまのくらしを支え、地域を元気にする企業でありたい」と大西氏。創業時からの「人を大切にする経営」を受け継ぎ、「この街に、あってよかった。」といわれる存在を目指して、同社の挑戦は続く。

PROFILE

  • ㈱フジ
  • 所在地 :〒790-8567 愛媛県松山市宮西1-2-1
  • TEL : 089-926-7111(代)
  • 設立:1967年
  • 資本金:194億700万円
  • 営業収益:3166億3800万円(連結、2018年2月期)
  • 従業員数:4865人(2018年2月末現在)
  • 事業内容:総合小売業(食料品、衣料品、日用雑貨品等の小売販売)
  • https://www.the-fuji.com/

 タナベ経営より  
創業50周年を迎えたフジは、顧客の期待や要望に素早く的確に応え、喜び・楽しみ・新鮮な驚きを届けながら、フジの従業員も地域や顧客とつながり、成長していくことができる企業を目指している。『この街に、あってよかった。』という新スローガンの思いは新しいロゴにも込められている。地域の住民が集い、地域で愛されるブランド企業を目指す取り組みに期待せずにはいられない。

経営コンサルティング本部 部長戦略コンサルタント 影本 陽一
経営コンサルティング本部 部長
戦略コンサルタント
影本 陽一

激動する映画プロモーション
Web動画とSNSの活用に注目

SNSによって口コミを広げるプロモーション手法「バイラル・マーケティング」が注目を浴びる中、米映画大手ワーナー・ブラザースの日本法人であるワーナー ブラザース ジャパン合同会社が積極的にWeb動画やSNSを活用し、成果を上げている。同社ワーナー・ブラザース映画マーケティング本部の金子涼氏と森本麗花氏に、そのプロモーション展開について話を伺った。

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Web動画やSNSが映画プロモーションの主流に

2016年6月、米調査会社が発表したあるランキングに注目が集まった。TwitterなどのSNS上で話題になった長編映画ランキングで、『ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー』(ディズニー)や『スター・トレック BEYOND』(パラマウント)などを抑えて、ワーナー・ブラザースの『スーサイド・スクワッド』が1位になったのだ。

その2カ月後に全米公開された同作品は、オープニング興行成績歴代1位を獲得して大ヒット。同年末に米Googleが発表した「検索で振り返る2016年」(年間を通じて最も検索された言葉のランキング)でも、『スーサイド・スクワッド』は米映画部門で1位となった。

従来の映画プロモーションと言えば劇場予告やテレビCMが主流だったが、近年はITの進展とモバイル通信データの需要拡大に伴い、大きな変化を遂げている。最大の変化は、スマートフォンやタブレット端末向けのプロモーションの増加だ。実際、TwitterやInstagram、YouTubeなどを使ったプロモーション比率は年々上昇し、そこから火が付いてヒット作になるケースも多い。

日本でのワーナー作品配給を手掛けるワーナー ブラザース ジャパン合同会社も、プロモーションをWeb動画やSNSなどで積極的に展開し、大きな成果を上げているという。

例えば、2017年に公開された米ホラー映画『IT/イット"それ"が見えたら、終わり。』が好例だ。同作品は1990年公開の『IT』のリメーク版だが、今の10代、20代の若年層は前作のリアルタイム世代ではなく、なじみが薄い。そこで同社は、YouTubeなどの動画サイトに印象的なシーンの予告編(ティザー映像)を投稿し、作品への関心をかき立てることで若年層を劇場へ呼び込むことに成功した。

同社がプロモーションの露出をSNSで増やしているのは、映画鑑賞率が高い世代は男女とも10代、20代※1であり、SNSの中心ユーザーと重なるからだ。特にTwitterは他のSNSよりも映画との親和性が高い。作品を見た人がすぐに感想をつぶやくと、他のファンが一緒に盛り上がることも多々あり、口コミが一気に広がりやすい。
※1 NTTコム リサーチ「第6回『映画館での映画鑑賞』に関する調査」(2017年6月28日)

そのため、同社では積極的にTwitterで情報を発信している。フォロワーからリツイート数を獲得し、ネットニュースで継続的に取り上げられて広告宣伝につながるよう、最新情報の配信やファンの心理をかき立てる巧みな投稿を行っている。

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ワーナー ブラザース ジャパン合同会社
ワーナー・ブラザース映画
マーケティング本部 タイトルマネージメント
マネージャー 金子 涼氏

「タッチポイント」をいかに増やすかが今後の鍵

WebやSNSを活用したプロモーションの重要性は増す一方だが、日本と米国では映画のプロモーション手法に違いがあるという。同社マーケティング本部の金子涼氏は「日本ではテレビの影響力がまだまだ大きい」と指摘する。

「インターネットは能動的なメディア。ユーザーは『○○を見たい』という目的意識が強く、CMはスキップされてしまうことが多い。広告を出す側もあらかじめターゲットを絞り込んで実施するので、幅広い層に届いているのかというと疑問があります。一方、テレビは受動的なメディアで、テレビをつければCMが目に入る。ネットが十分に浸透していない年齢層や地域もあり、不特定多数の人へ届けるには、テレビの優位性はいまだに大きい」(金子氏)

さらに、映画文化の違いもある。金子氏によると「例えば米国は、週末に映画館で映画を見る文化が根付いている。一方、日本は映画以外にもエンターテインメントの選択肢の幅が広い上、忙しい人が多いので映画館に行く時間をとりにくい。米国に比べて上映本数も多く、すぐに飽きられやすい」。だからこそ「プロモーションに関しては、米国以上に顧客とのタッチポイント(顧客との接点)を増やし、話題をさらっていくことが必要」(金子氏)だという。

こうした中、同社は企業とのタイアップを重視している。同社の映像コンテンツを使用してもらう代わりに、映画のビジュアルを露出してプロモーションにつなげる手法だ。

「見てほしい層に届くかどうかという、作品と掲載媒体との親和性はもちろん重要ですが、とにかく露出を増やして顧客とのタッチポイントを増やしていきたいですね。主要作品シリーズを中心に、幅広い分野の企業と取り組んでいきたい」(金子氏)

一方、「メディアなどで見聞きしたことよりも、自分がびっくりしたことや感動したことなど、自らが経験したことに重きを置く時代へ変わってきています」と森本麗花氏は話す。そのため、今後はプロモーションに体験共有型の要素を取り入れていく考えという。

映画館で過ごす時間の価値は高まっている

日本の映画市場規模は米国・中国・英国に次ぐ世界4位の規模を誇る。一般社団法人日本映画製作者連盟のデータによると、2017年の日本国内の映画年間興行収入は2285億7200万円。歴代最高だった前年から微減(2.9%減)となったものの、集計方法を変更した2000年以降では2番目に大きい。国内の映画産業は安定しているようにも映るが、今後の映画の在り方はどのように変化していくのだろうか。

金子氏は「"最新映画は必ず映画館で見るもの"という常識はなくなるかもしれません。映画館での公開と同時に、自宅のパソコンやテレビでも見られるようになるのでは。実際、米国ではそうした動きがすでに始まっています」と見通しを示す。

半面、モバイル端末が普及し、いつでも誰とでもつながる時代だからこそ、映画館で過ごす時間の価値は高まっていると森本氏は話す。「今の時代、起きている間は携帯の電源を切ることのない人がほとんどです。だからこそ、映画に集中して過ごせる時間は特別。映画館でしばらくの間、日常を忘れてぜいたくな気分になってもらえれば」(森本氏)

映画鑑賞から"映画体験"の時代へ─。同社は新たな映画の楽しみ方も提案してくれるに違いない。

日本のクリエーティブが世界をリードする未来へ

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映画『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』の前売り特典として制作されたコインポーチとマスキングテープ
©2018 WBEI Publishing Rights
©J.K.R

同社が近年、力を入れているのが『ウィザーディング・ワールド』※2や、『スーパーマン』『ワンダーウーマン』などDCコミックス(米漫画出版社)原作の映画作品だ(『スーサイド・スクワッド』もその一つ)。特に、ウィザーディング・ワールドは『ハリー・ポッター』シリーズと『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』(2016年公開)を含めて公開作品は全9本。興行収入の売り上げ合計は、シリーズ映画としては日本一を誇る。
※2 「ハリー・ポッター」シリーズの原作者J・K・ローリングが創造した魔法の世界

ただ、洋画の場合、日本人には伝わりにくいことが多い。そこで同社は、日本人向けに作品のタイトルや編集、伝えたいメッセージ、プロモーションなどを日本独自仕様へカスタマイズする、いわゆる「ローカライズ」(現地化)に注力している。

「日本では明るいタッチの作品が好まれるため、日本のマスマーケットに向けては明るく楽しそうな要素を取り入れて、ローカライズすることが重要です」(森本氏)。ローカライズによって客層の幅が広がり、ヒット作につながっていくことも少なくない。

また、映画チケットの前売り特典は、他国にはない日本独自の文化だ。特典のクオリティーは高く、世界でも評価が高い。その特典グッズの制作を担うタナベ経営SPコンサルティング本部について、森本氏は「ターゲット層に合ったものをデザインし、製作してくれる。これらのグッズが世界の映画ショップに並ぶ日が楽しみ」と期待を寄せる。

日本で開発された『ハリー・ポッター』のデフォルメ・キャラクターを使った商品が英国のワーナー・ブラザース・スタジオに並び、世界中から訪れるファンに購入されているそうだ。金子氏には、「日本のクリエーティブが、世界をリードするような未来を築きたい」との思いがある。

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PROFILE

  • ワーナー ブラザース ジャパン合同会社
  • 所在地:〒105-0003 東京都港区西新橋1-2-9 日比谷セントラルビル
  • TEL:03-5251-6431(代)
  • 設立:1992年
  • 資本金:2億7200万円
  • 従業員数:240名(2017年3月現在)
  • 事業内容:映画上映賃貸業、映画輸入配給等、映画ビデオ・DVDの企画制作・販売、テレビ放映権・ブロードバンド向け映像配信権のライセンス事業、キャラクター商品のライセンス管理、邦画/アニメ/オンライン/家庭用ソフト/モバイルコンテンツ事業、ワーナーブラザースプロパティーの利用許諾及び管理
  • https://warnerbros.co.jp/


現代の消費者はライフスタイルの変化に伴い、時間や場所を選ばずにあらゆる情報を得ることができる。タナベ経営では、ワーナー ブラザース ジャパン合同会社のプロモーションに際して作品の購買(視聴)層を十分理解し、その興味・関心を引いて購買につなげるよう、見栄え・デザインなど細部の再現性や親和性を重視し、感動を伝えるよう工夫している。今後も最新・最先端の手法を駆使し、さまざまな角度からきめ細かくプロモーションを行い、作品の価値を広く伝えていきたいと考えている。

SPコンサルティング本部 部長代理 SPチーフコンサルタント 小谷 将主
SPコンサルティング本部
部長代理 SPチーフコンサルタント
小谷 将主

SPコンサルティング本部 主任 SPチーフコンサルタント 松岡 彩
SPコンサルティング本部
主任 SPチーフコンサルタント
松岡 彩


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    担当:タナベコンサルティング 戦略総合研究所