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今週のひとこと

強い者が生き残るのではない。
環境に合わせ、変化する者のみが
生き残る。

☆ ただ組むだけの「コラボ」は成功しない?!

 皆さんは、「コラボプロモーション」という言葉を聞かれたことはあるでしょうか。ほんの一例ですが、飛行機や新幹線の車体にアニメや映画のキャラクターなどをデザインして運行されているものも、このコラボプロモーションにあたります。企業は話題づくりや、イメージアップを通じて売上拡大につなげるために行うわけです。

 また、コラボプロモーションの上位には、「コンテンツマーケティング」と「コンテンツプロモーション」という考え方も存在します。コンテンツマーケティングとは、一貫性のある価値の高いコンテンツをつくり、それを伝達することにフォーカスした、戦略的なマーケティングの考え方のことです。見込客として明確に定義された消費者を引き寄せ、関係性を維持し、最終的には企業の利益に結びつく行動を促すことを目的としています。

 ところが、皆さんもご存知のとおり、良いコンテンツをつくり、ウェブサイトに掲載するだけでは、見込客は集まりません。コンテンツの価値を発揮させるためには、その存在を見込客に知っていただく必要があるのです。
 コンテンツプロモーションを成功させるには、「既にその企業と関係性が構築できている層」、「インターネット上で影響力のあるインフルエンサー層」、そして、「まだ関係性は無いが潜在的な見込客である層」という、3つの層に対してコンテンツを届け、それらをシェアしてもらうことが重要となってきます。

 プロモーションを取り巻く今の環境は、新たな顧客層を獲得するための、コラボプロモーションの重要性が増しています。コンテンツに限ったことではないかもしれませんが、新たな取り組みを行う際に大切なことは、「本当にそのコンテンツとコラボすることで売上が伸びるのか?」という懐疑的な社内メンバーを説得するための根拠を提示できるように、情報のアンテナの精度を常に高めておくといったことや、その分野の専門家・外部のブレーンと連携するということが必要となってくるでしょう。

SPコンサルティング本部
部長代理
植田 晃正

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プラスチックの可能性を提案するファーストコールカンパニーへ

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大和合成 代表取締役社長 奥野 健太郎氏

経営理念
私たちは、世界のモノづくりを支える中小企業としての誇りを持ち、プラスチックの可能性を拡げて、社会の発展に貢献し続けます。
また、感謝の心を持って、ダイワグループに関係する全ての人が明るく、元気で前向きな人生を送れるよう、会社の成長を希求します。
2039ビジョン
プラスチックの"可能性を提案する"ファーストコールカンパニーになる。

プラスチックで世界のモノづくりを支える

ベトナムに進出した日系製造業の成功事例として、大和合成が注目を浴びている。同社は大阪府堺市に本社を構える樹脂成形加工メーカー。2019年には創業80周年を迎える老舗企業だ。

同社の製造品目は、自動車部品をはじめ医療機器、光学機器、電子機器部品など多岐にわたる。寸法精度と生産工程保証が求められる重要保安部品を得意とし、特に自動車エンジン補機(エンジンを稼働させる周辺装置)用プーリーは、国内の全自動車メーカーに納入実績がある。

「製品になったとき、われわれの部品は目に見えないが、1つでもなければ自動車やさまざまな製品を作ることはできない。いわば『縁の下の力持ち』として世界のモノづくりを支える仕事です」

そう語る同社社長の奥野健太郎氏は、創業者のひ孫にあたる4代目。2013年10月、当時社長だった父(奥野拓司氏)の急逝に伴い社長へ就任。引き継ぎもないまま手探りで経営者としての実務にあたる中、「最終的な責任を負うのは自分自身」という心構えが次第に醸成されていったという。

奥野氏は程なくして、経営理念と、100周年(2039年)を見据えたビジョン策定に取り組んだ。「父の時代から策定の意向はあったが、具体的に進められていなかった。会社をどうしていきたいのか、方向性を示して全員で共有することが必要でした」

こうした思いから奥野氏は経営理念を策定。ビジョンはタナベ経営の提案もあり、幹部社員が月1回集まり、合宿形式で3カ月かけて構想を練った。そして2015年に生まれたのが、「プラスチックの"可能性を提案する"ファーストコールカンパニーになる。」という、創業100周年を見据えた「2039ビジョン」だ。

「プラスチックには無限の可能性がある。受け身の姿勢ではなく、お客さんに喜んでもらい、価値を実感してもらえる提案をしよう。『プラスチックのことならダイワさんに』と一番に声を掛けてもらえるようにしよう」という社員の思いを込めたものだった。

理念やビジョンは、仕事で迷ったときの判断軸になる。策定以降、完成した理念とビジョンをグループ全社で共有し、全社員で同じ方向を見据えて歩みを進めている。

合宿の成果は、ビジョンの策定だけではなかった。本社をはじめ、国内生産拠点である宮崎工場(宮崎県小林市)、1995年に進出したベトナム(ハノイ、ホーチミン)など全拠点の幹部社員が一堂に会し、顔を合わせて話をする機会が生まれた。このときのコミュニケーションが、参加メンバーらの絆を深めるきっかけとなった。

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同社の製造品目は多岐にわたる

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宮崎、ホーチミン、ハノイとマザー機能を持つ本社の4拠点で工場を展開

次の世代に残したいのは「人」

奥野氏は100周年を迎える2039年に、社長職を退くことを決めている。それまでにやるべきことは「10年先、20年先の会社を背負っていく人財を育てること」。時間はかかっても、大和合成のDNAを受け継ぐプロパー社員を育てておきたいとの思いから、近年は継続的な新卒採用を実行。「採用ブランディングブック」という新たなツールも使い採用に注力するほか、新入社員の育成を見据え、体系的な教育プログラムも構築していく考えだ。

「人生は一度きりで、死んだら終わり。その貴重な人生のうち、3分の1の時間は仕事をしている。縁があって当社に入社し、大切な時間を費やしているわけだから、会社を舞台にして成長し、社会に貢献してほしい。自分自身の使命を果たし、生きた証しを残してもらえたら」

奥野氏が社員の人材育成を考える際、根底にはそんな思いがある。与えられた場所で、自分の使命を果たすため、社員個々が懸命に働くことで、会社の成長にもつながるという。

奥野氏が社員の人材育成を考える際、根底にはそんな思いがある。与えられた場所で、自分の使命を果たすため、社員個々が懸命に働くことで、会社の成長にもつながるという。

同社は人材育成の一環として、ユニークな取り組みを行っている。月1回、人間力を養う雑誌を読んで感想を発表し、互いの良い部分を褒め合うというものだ。同じ文章を読み、感じたことを話せば新しい発見があり、コミュニケーションの活性につながる。「人間力を学ぶことは極めて大切。継続することで社員の人間力が養われ、コミュニケーションの豊かな社風の醸成につながれば」(奥野氏)

奥野氏の口からは頻繁に「感謝」の言葉が出てくる。顧客や仕入れ先などの関係者、一生懸命に働く従業員、電気や水が自由に使えることや健康など、その対象は多岐にわたる。そんな現場や周囲、いまの環境に感謝を忘れない姿勢は、樹脂成形加工のファーストコールカンパニーとして、同社を大きく飛躍させるに違いない。

人材開発コンサルティング部 三浦 まほろ

経営コンサルティング本部 人材開発コンサルティング部 三浦 まほろ

大和合成では、「プラスチックの可能性を拡げて、社会の発展に貢献」し続けることを経営理念に掲げ、常にプラスチックの新たな可能性を研究している。また、2017年からは新卒採用に向けた取り組みを開始。現在、入社2年目のベトナム人女性社員も元気に活躍している。人種や国籍など関係なく誰もが活躍できる風土は、若い人たちにとって大きな魅力。若手社員がさらに活躍できる企業へ成長を続ける大和合成の今後が楽しみだ。

PROFILE

  • 大和合成㈱
  • 所在地 :〒591-8046 大阪府堺市北区東三国ケ丘町5-1-10
  • TEL : 072-252-1023(代)
  • 創業:1939年
  • 資本金:2400万円
  • 売上高:70億円(グループ全体、2017年12月期)
  • 従業員数:1200名(グループ全体、2018年6月現在)
  • 事業内容:各種合成樹脂成形品の製造ならびに販売 http://www.daiwa-pls.co.jp/

住友の事業精神を受け継ぎSDGsを積極的に推進

「われわれは、地球を救う機会を持つ最後の世代になるかもしれない」。2015年9月の国連サミットで宣言されたメッセージだ。このサミットで注目を集めたのが、SDGs(Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標)。今号では、いち早くSDGsを推進してきた住友化学の取り組みを紹介する。
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住友化学が実施する社員参加型のプロジェクト「サステナブルツリー」

社会全体の利益を重んじる住友の事業精神

SDGs(エスディージーズ)は貧困や格差をなくし、持続可能な社会を実現するため、国連加盟193カ国が全会一致で採択した国際目標だ。2030年までに世界で取り組むべきアクションプランとして17の大きな目標と、それらを達成するための具体的な169のターゲットで構成される。

企業の環境・社会・ガバナンス(企業統治)への取り組みを重視するESG投資の広がりや、CSR(企業の社会的責任)の観点からも、SDGsに関心を寄せる日本企業は年々増加している。中でも住友化学は、SDGsの前身であるMDGs(ミレニアム開発目標)から取り組んできた経緯もあり、2016年からいち早くSDGsを推進してきた先駆的企業だ。

同社は1915年、住友総本店の直営事業として、愛媛県新居浜市で肥料製造を開始。その後は農薬、染料、医薬品、石油化学など、その時代に応じた事業を行いながら発展を遂げてきた。

肥料製造を始めたのには理由がある。住友家の商いは1630年ごろ、京都・烏丸の地で、住友政友が書籍と薬を売る「富士屋」を営んだのが発祥だ。その後は銅の製錬で事業を拡大。特に、1691年に開坑した別子銅山(愛媛県)は1973年までの282年間、地域の経済を支え、雇用を守ることで人々の暮らしを支えてきた。

ところが銅の製錬工程では亜硫酸ガスが発生し、採掘量が増えるにつれ、農地をはじめとする環境への影響が深刻化。そのため、有害な排出ガスを原料に肥料を製造する事業を立ち上げ、この問題を解決することになったのだ。

肥料製造を工業プロセス化し、事業として確立する過程は容易ではなかった。事業継続の観点では銅の鉱石を輸入し、別子銅山から撤退する選択肢も考えられたはずだが、環境問題を解決しながら別子銅山で採鉱を継続するという困難な道を選んだ背景には、住友の事業精神がある。

住友の事業精神とは、取引先や社会の信頼に応えることを最も大切にし、目先の利益のみにとらわれないというものだ。また成文化されてはいないが「自利利他公私一如(じりりたこうしいちにょ)」、つまり「住友の事業は住友自身を利するとともに、社会を利するものでなければならない」という、「公共との調和」を強く求める考えも受け継がれている。

この精神のもと、創業時から事業を通じて地域の経済成長と社会的課題の解決をともに実現しながら発展を遂げてきた同社にとって、SDGsへの取り組みは自然な流れとも言えるだろう。

社員が"自分ゴト"として取り組める仕組みをつくる

住友化学はSDGsへの取り組みとして、国内外グループ会社の役職員に専用Webサイトへの投稿を呼び掛ける「サステナブルツリー」を実施している。これは6月下旬から10月初旬の100日間、SDGsの17の目標に対して、「仕事や職場を通じて何ができるか」を投稿するプロジェクトだ。

この取り組みを通じて、SDGsへの理解が深まり、社員がSDGsを"自分ゴト"として考える機会になっているという。初年度の2016年には6005件、2017年は約1.5倍の9099件もの投稿が寄せられた。

2017年は、日本(3092件)だけでなく韓国(2677件)、米国(1035件)、ブラジル(881件)、台湾(775件)、中国(429件)など、世界中のグループ会社からも多数の投稿があった。「投稿内容を通じて、今まで見えなかった角度から当社グループが見えてくる。インターネットを使った取り組みなので全世界から同時に反応があり、グループのつながりや一体感も湧いてくる」と同社のCSR推進部長・福田加奈子氏は手応えを示す。

さらに「SDGsに貢献するため何をすればいいのか職場単位で考え、次のアクションにつなげてほしい」(福田氏)との考えから、2017年からは個人だけでなくグループでも投稿できるようにした。

住友化学 CSR推進部長 福田 加奈子氏

住友化学 CSR推進部長 福田 加奈子氏

事業を通じてSDGsへ貢献

住友化学グループでは、「T・S・P」、すなわちトップのリーダーシップのもと(Top)、事業を通じて(Solutions)、全社員が参加する(Participation)という三位一体の方針で、SDGsに取り組んでいる。サステナブルツリーは、まさに全社員参加型の取り組み事例と言えよう。

一方、経営陣はSDGsへの取り組み姿勢を率先して示すべく、社内外への発信を強化している。例えば、2017年の株主総会冒頭、十倉雅和社長がSDGsへの取り組みや意義を説明したのは好例だろう。取り組み内容そのものの周知もさることながら、SDGsがトップのコミットメントであり、会社を挙げた取り組みだというメッセージを株主に伝えたのだ。

また、全役員が胸に社章とともにSDGsのバッジを着け、対外的な周知や社内への啓蒙を図っている。こうした積極的なPRの成果もあり、SDGsへの取り組みは着実に社内外へ浸透しつつある。

SDGsの取り組みを説明するプロモーションツールとして使用するのが、サステナブルツリーをプリントしたクリアファイルだ。

ファイルは毎年リニューアルしながら継続活用されている。2016年版は社内配布が中心で、SDGsの文字や社名は裏面に表記していたが、2017年版は社名やSDGsのロゴを表面に表示。株主総会や投資家説明会、展示会などでも積極的に配布し、SDGsへの取り組みを知ってもらうツールとして活用してきた。

一方、事業を通じたSDGsへの取り組みの代表例が、「スミカ・サステナブル・ソリューション」である。

これは、温暖化対策や環境負荷低減などに貢献する自社製品・技術を認定し、開発・普及を促進するもの。サステナブルな社会を構築するためのソリューションを提供し、SDGsの達成に貢献するのが狙いだ。長年培った技術基盤を活用することで、SDGsの目標達成を目指すという。

例えば、電気自動車の普及に貢献するリチウムイオン二次電池用セパレーター『ペルヴィオ®』、航空機の機体軽量化によって燃費向上に貢献するポリエーテルサルホン『スミカエクセル®』は、どちらも「ゴール7(エネルギー)」「ゴール13(気候変動)」該当製品として認定されている。現在の認定製品・技術数は44、売り上げ規模は3400億円(2017年度)に上る。
※ゴール7(エネルギー):すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する。 ゴール13(気候変動):気候変動およびその影響を軽減するための緊急対策を講じる。

さらに、2018年4月には「サステナビリティ推進委員会」を設置。住友化学グループのサステナビリティへの貢献を俯瞰的に検証することで、SDGsをはじめとする社会的課題の解決に向けた取り組みを加速させたい考えだ。

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顧客との出会いがイノベーションを生み出す

SDGsへの取り組みについて、「『できる』か『できない』かを考えるのではなく、掲げる理想に向けて『できる方法』を考えることが大切。ポジティブに取り組むことで、イノベーションは広がっていく」と福田氏は話す。

同社の取り組みは先進的だが、「まだまだスタートラインに立った段階。今後はSDGs達成に向け、取り組みを具体化していくことが課題」(福田氏)だそうだ。そのためにも、同社の製品・技術を幅広い顧客に知ってもらうことが欠かせないという。

「プロモーションを通じ、現時点でアプローチできていない企業や異分野の企業にも『この素材は面白そう、使ってみたい』と思ってもらい、自社では思い付かない方法でイノベーションや社会課題解決につなげてもらえたら」(福田氏)

事業精神を受け継ぎながら、化学の力を生かして、住友化学の取り組みは今後も加速していくに違いない。

いまや聞かない日がないほど、ビジネスシーンで使用されるようになりつつある「SDGs」という言葉。それをいち早く社内で推進してきたのが住友化学グループである。
ESG投資が広がりつつある中、企業は社会に「どれだけの価値を出せるか」を求められていると言っても過言ではない。指針が明確にされたSDGsという目標を自社に落とし込み、企業の活動目標として、さらに社員一人一人の活動目標として「自分ゴト」化していく取り組みは見習うべき好例だろう。
目まぐるしく社会環境が変わる今日において、社会における役割を積極的に果たしていく同社の活動に今後も注目していきたい。

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SPコンサルティング本部 主任 SPチーフコンサルタント 田付 航(左)
戦略総合研究所 デザインラボ 主任 吉岡 朝弘(右)

PROFILE

  • 住友化学㈱
  • 所在地:〒104-8260 東京都中央区新川2-27-1
  • TEL:03-5543-5500
  • 創業:1913年(営業開始は1915年)
  • 資本金:896億9900万円(単体、2018年3月現在)
  • 売上収益:2兆1905億円(IFRS連結、2018年3月期)
  • 従業員数:3万1837名(連結、2018年3月現在)
  • 事業内容:石油化学部門、エネルギー・機能材料部門、情報電子化学部門、健康・農業関連事業部門、医薬品部門、その他
  • https://www.sumitomo-chem.co.jp/
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    06-7177-4008
    担当:タナベコンサルティング 戦略総合研究所