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今週のひとこと

意識格差が行動格差。行動格差が業績格差
である。部門別・個人別目標を明確に設定
し、高い生産性を追求しよう。

☆ 働き方を変える「タイムマネジメント思考」

 「Time is money(=時は金なり)」。

 ほとんどの方が、この言葉を耳にしたことがあるでしょう。働き方の見直しが急がれる今、筆者は再度この言葉の意味を考えてみる必要性を感じています。
 この言葉の語源は、アメリカの政治家、ベンジャミン・フランクリンが若いビジネスパーソン向けに著した中の一節、「Remember that time is  money(=時間はお金であることを忘れるな)」であるとされています。また、フランクリンが教訓として残した十三徳の一つに「勤勉:時間を空費するなかれ。つねに何か益あることに従うべし。無用の行いはすべて断つべし。」という言葉があります。

 こうした言葉から、今、何を感じることができるでしょうか。日本のビジネスの現場では、時間の無駄遣いが非常に多いのではないかと感じます。1時間の予定の会議が2時間に伸び、ミーティングという名の雑談が始まり、17時まで終わらせようとしていた仕事は深夜まで持ち越し・・・」。こういったことが散見されるからです。

 私が多くの現場を見てきて思うのは、残業は業種特有の問題ではなく、その企業の時間意識であるということです。もし、業種特性で全く残業が無くならず、一切効率化ができないような仕事があるとするならば、そういった仕事は今後、世の中から無くなっていくでしょう。その理由は、そういった仕事では、イノベーションは生まれず、また、人材の採用ができなくなっていくからです。

 では、どうすればよいのか。その答えの一つは、社員一人ひとりが、タイムマネジメント思考を持つことです。今、求められるタイムマネジメントは、決して上司が部下の時間を管理するといったことではなく、各人が自分の時間に責任を持ち、どのようにして自分の時間を使っていくかが大切です。

 自分のお金(給料)を、どのように(何に)使うかを、会社に管理してもらう人はいないでしょう。同様に、時間というものをお金と捉えるのであれば、いかにして、その時間を自分自身で管理できるかが大切です。効率化によって生まれた時間は、仕事の付加価値向上のための自己啓発に使ったり、趣味に使ったりするとよいでしょう。結果、そういった生活の充実が、仕事にも生かされ、ワークライフシナジー(仕事と生活の相乗効果)を生み出します。

 Time is money(=時は金なり)。あなたは、今日という"お金"をどのように、何に使っていきますか?

戦略総合研究所
新島 泰久也

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今こそ物流のプロとしてノウハウを見直す

タナベ経営 コンサルティング戦略本部 本部長代理 戦略ロジスティクス研究会 リーダー 土井 大輔 Daisuke Doi

大手システム機器商社を経てタナベ経営に入社。製造業、卸売業、小売業、サービス業、建設業など幅広い業種に対し、事業戦略立案や新規事業開発などの戦略テーマから営業力強化、マニュアル整備などの戦闘テーマまで対応する。2020年までには各業界において「物流・ロジスティクス」が企業競争力を高めると確信し、「戦略ロジスティクス研究会」のリーダーとして活躍中。

"モノを運ぶ"から「価値を運ぶ」物流へ

物流が価値を運ぶ――といわれて久しい。「モノを運ぶ」だけの従来のビジネスモデルでは、今後の物流業の成長は見込めない。
東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年は、ヒトとモノが大きく動くため、短期的に見れば物流業は成長するチャンスを迎えることになる。しかし2021年以降は、市場環境の変化と業種・業界におけるボーダーレス化が進み、他社と同じビジネスモデルでは勝ち残れない優勝劣敗の競争環境に突入すると考えられる。
加速していく人口減少に加えて、世帯数も減少に転じるとみられており、モノを買う「消費マーケット」は確実に縮小する。また、それと並行してトラックの完全自動運転や、倉庫ロボット導入による無人倉庫の普及に伴い、物流業界とは全く異なるプレーヤーの参入も想定される。
今後5年間は物流企業にとって、自社が発揮すべきノウハウ、注力すべきノウハウを明確にして、一段と成長するための資源配分を行うタイミングだと言えよう。


今こそ物流企業が主導権を握るべき

日本ロジスティクスシステム協会がまとめた「物流コスト調査報告書」によると、2017年度の売上高物流コスト比率(全業種)は前年度比0.31ポイント減の4.66%。労働力不足を背景に大きく上昇した前年度(0.34ポイント増の4.97%)から低下し、以前までの水準に戻した。
とはいえ、物流業界を取り巻く環境は、以前と比べて一気に状況が変わった感がある。ドライバーや作業員の人材不足が深刻化し、社会問題となっている。今後、運賃が下がる見込みはほぼない。倉庫内でピッキングや仕分け作業を行うパートやアルバイトの最低賃金も上昇した。場所によっては時給を上げても人の確保がままならないところも少なくない。
そのためメーカーや卸・小売企業などの荷主においては、トラック便不足への危機感から"安定輸送"への関心が高まっている。これは見方を変えれば、物流企業にとって大きなチャンスでもある。物流企業は、いまこそ荷主側の調達から販売までの流通機能を最適化するために、主導権を握るべきだ。元請け機能を生かして自社の"支配貨物"を増やすことで、いわば自社が荷主のような立場で共同物流などを提案していくことが必要である。
まず、荷主との関係を見直すために、物流企業は何をすればよいのか。1点目は「運賃と付帯作業料金の分離」である。荷物の積み込みや納品先での荷降ろしなどの荷役作業は、付帯業務として別途料金をもらうべき性質のものである。だが、多くの運送事業者は荷役作業を"サービス"として行う慣行が長く続いている。しかも「手積み・手降ろし」が多くドライバーに過度の負荷を強いるばかりか、業務を女性ドライバーに任せることができない一因にもなっている。
2点目は「適正価格の設定」である。運賃の在り方は運ぶ荷物の性質や形状、取引条件、地域性などによって千差万別であり、何をもって"適正"とするのかは難しい。物流業界は元請け・下請けの多層構造になっていることが、適正な価格設定をより難しくしている側面もある。一般的に荷主と言えば、メーカーや卸・小売企業などを指すことが多いが、下請けの運送会社からすると、元請けの大手物流会社が"荷主"となるだろう。
過去の取引履歴や物流経費に関わる帳票類、損益計算書、作業別のコストなどから自社に適切な料金を算出し、「契約の書面化」を進めるべきだ。これは自社だけでなく、業界全体での取り組みが必要。1社では何も始まらないが、1社から始めないと何も変わらないのである。


物流会社のノウハウは得意先の物流戦略支援

多くの荷主企業は、自社の物流業務をアウトソーシング(外部委託)の名の下、物流企業へ丸投げをしている。その結果、自社の物流担当が単なる"手配担当"となり、物流実態を自らが把握できないという情けない状態に陥っている例も少なくない。よって、物流は最も重要な機能の一つであるにもかかわらず、人材育成が遅れている。
これは委託を受ける物流企業にとって、得意先の自社への依存度が高まるため、一見すると理想的な状況のように映る。だが、物流業務の一括下請け会社という立ち位置のままだと、物流企業側が不利になることがある。より単価の安い他の一括物流企業へ簡単に"転注"(発注先を変える)されるリスクが高まるのだ。
物流オペレーションに関わる費用が上昇する中、メーカーや卸・小売りは調達から販売までのサプライチェーン再構築が迫られている。だからこそ物流企業は、下請けではなくパートナーという立ち位置から、"サプライチェーンの最適化支援"に資源配分すべきである。
従って、物流企業は「コスト意識」「守り中心」「自前主義」という3点を取っ払うことに注力していただきたい。


①コスト意識を取っ払う
メーカーや卸・小売企業を見ると、調達から販売までのサプライチェーン全体を見ることができず、人材も育っていない企業が多い。そのため、委託先の物流企業と価格交渉して、コストダウンをのませることが"成果"だと勘違いしている企業も少なくない。
荷主側において、運送費・梱包費・保管費・資材費などはコストとして計上されることがほとんどである。だが、「リードタイムの短縮が顧客満足を高める」「商品の鮮度がプロモーションになる」と考えれば、物流業務は広告宣伝あるいは販売促進と捉えることもできる。物流企業が提供しているサービスは、"コスト"ではない。顧客に届ける商品価値を高めるための投資であるということを訴え、荷主企業のコスト意識を取っ払うことが必要である。


②守り中心を取っ払う
物流企業は、得意先に依存したビジネスモデルになっている場合が多い。「出荷確定情報が前日の夕方にならないと分からない」「当日に必要車両台数の変更が入る」など、"急遽対応"が通常対応になっているケースだ。常に急遽対応の発生に備えて車両と人員を確保する。それ自体はよいが、外部の変化にとらわれるあまり、自社が変化することを避ける傾向が強い。物流企業はそうした"守り中心"の風土・意識を取っ払うことが必要である。


③自前主義を取っ払う
トラック車両と人材の確保が厳しい中、荷主企業が主導する共同物流や、モーダルシフト(貨物輸送をトラックから船・鉄道へ転換すること)が活発化している。大手GMS(総合スーパー)は食品・日用品メーカーとの共同で専用列車を運行し、国内食品メーカーも共同配送・共同による鉄道往復輸送などをスタートさせた。その他、ビール大手も鉄道コンテナを活用した共同輸送に着手するなど、"自前主義"を取っ払った効率化の取り組みが進んでいる。
ただ、これらは本来であれば、メーカーや卸・小売業のロジスティクスを担う物流企業が提案すべきことである。だからこそ、下請け物流ではなく、サプライチェーンを最適化するパートナーという考え方が必要なのだ。
現在、物流業界では、IoTやロボットの活用による自動化・省力化が進んでいる。ただ、輸送・保管・包装・荷役など個別機能は自動化できても、全体最適のマネジメントは自動化できない。物流企業は、物流のプロという立ち位置で、自社のノウハウを得意先の物流戦略支援に役立てていただきたい。

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物流業界の人手不足感、過去最悪水準に

【図表1】日銀短観:全産業および「運輸・郵便」の雇用人員判断DI(全規模合計)推移 雇用人員判断DI=「過剰」企業割合-「不足」企業割合出典:日本銀行「全国企業短期経済観測調査(短観)」 注1)1997年3月調査より調査月が変更(2・5・8・11月→3・6・9・12月)注2)2003年12月以前と04年3月以降の計数は連続しない(調査対象企業等の大幅な見直しによる)
雇用人員判断DI=「過剰」企業割合-「不足」企業割合
出典:日本銀行「全国企業短期経済観測調査(短観)」
注1)1997年3月調査より調査月が変更(2・5・8・11月→3・6・9・12月)
注2)2003年12月以前と04年3月以降の計数は連続しない(調査対象企業等の大幅な見直しによる)

今年春、運送会社の人手不足で希望時期に引っ越しできない、いわゆる「引っ越し難民」が全国で続出したのは記憶に新しい。業者を手配できなかった茨城県庁では、庁舎内の引っ越し作業を職員総出・休日返上で行ったことが話題となった。物流業界の人手不足が社会問題にまで発展している。

日本銀行が発表した2018年6月の「全国企業短期経済観測調査」(短観)によると、「運輸・郵便」(全規模)の雇用人員判断DI(人員が「過剰」企業の割合-「不足」企業の割合)は前期比横ばいのマイナス49と、人手不足が過去最悪の水準だった。全産業・全規模平均(マイナス32)を17ポイント下回り、産業別では「宿泊・飲食サービス」(マイナス62)に次ぐ水準だった。(【図表1】)

物流業界の人手不足感が、ついにバブル期の水準を突破した。その結果、労働市場では"人材争奪戦"が激しさを増している。物流関連の有効求人倍率(パートを含む常用、2018年6月時点)はトラックドライバーなどの「自動車運転の職業」が2.86倍、郵便集配や港湾荷役、倉庫作業などの「運搬の職業」が1.59倍、フィルム包装やラベル・シール貼付などの「包装の職業」は2.98倍。特に自動車運転と包装は1人の求職者に約3社の求人がある「超売り手市場」となっている。(次頁【図表2】)


【図表2】 物流関連職種/有効求人倍率(パートタイムを含む常用)

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出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」

人手が足りないのは、輸送量が増えているためか。そうではない。国内貨物輸送量(トンベース)の推移を見ると、バブル景気が崩壊した1992年から現在まで、ほぼ右肩下がりで減少している(【図表3】)。輸送量は減っているのに人が足りない要因は、インターネット通販の拡大に伴う宅配便取扱個数の急増と、企業間取引での多頻度小口輸送需要の高まりがある。輸送量は減っているが、負担が増しているのだ。


物流業界は、「拘束時間が長い」「休日が少ない」「重労働なのに低賃金」というイメージが先行し、新卒者の人気がなく、人が集まらない。そのため、人手不足を要因とした企業の倒産が増えている。帝国データバンクの調査結果によると、「運輸・通信業」の人手不足倒産件数(2017年度)は17件に上り、前年度(6件)から3倍近く増えた。業種別では建設業、サービス業に次いで3番目に多く(【図表4】)、業種細分類別(5年間累計)では「道路貨物運送」(26件)が最多だった。


景気回復とネット通販の拡大で人材が不足し、新規受注もできない中で固定費の負担が増し、倒産に至った企業が多かったという。とはいえ、物流企業の人手不足を一気に解消できる特効薬はない。荷主、運送業、消費者の3者が連携して実車率・実働率・積載率を向上する総合的な取り組みが必要だ。


ただ、当面をしのぐ人手を確保せねばならない。まずは運賃・料金の値上げ交渉を荷主と行い、値上げで得た原資を賃上げに回す待遇改善により人材の確保を図りたい。日本ロジスティクスシステム協会の調査結果によると、物流企業から運賃・料金の値上げ要請があった企業の割合は71.6%に上り、うち76.9%が値上げに応じたという(【図表5】)。「値上げやむなし」の機運が高まっているだけに、物流企業は値上げを荷主に働き掛けたい。


デフレが続く日本では、ワンコイン(500円)を払えば質の高いランチが食べられることから、海外で「Japanischeap(日本は安い)」と呼ばれているという。日本の商品やサービスは価値が高いのに価格が安い、すなわち価値に見合った対価を得ていない。物流企業は、いまこそ自らの価値に見合った対価を得るべきだ。



【図表3】国内貨物輸送トン数の推移
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出典:国土交通省「自動車輸送統計」「鉄道輸送統計」「内航船舶輸送統計」「航空輸送統計」ほか
資料:公益社団法人全日本トラック協会「日本のトラック輸送産業現状と課題2018」


【図表4】「人手不足」倒産件数の推移(単位:件)
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出典:帝国データバンク「『人手不足倒産』の動向調査」(2018年4月9日)


【図表5】物流企業→荷主企業への値上げ要請状況

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出典 : 公益社団法人日本ロジスティクス システム協会 「 2017年度 物流コスト調査報告書」(2018年4月6日)

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