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今週のひとこと

ブランドとは、顧客と企業の長期的な
信頼関係を築くことである。

☆ ノベルティの活用で企業ブランドの認知度を高めましょう

 販促戦略の一環として、「ノベルティ」を活用したことはありますか。「企業・ブランド・商品の認知度を高めたい」。このように思う企業は多いでしょう。この課題を解決する方法の一つとして、ノベルティが使われます。
 展示会やイベントなどでの配布、営業パーソンが顧客にアプローチする際のきっかけとしてお渡しするなど、ノベルティが使われる場面はさまざまです。
 顧客との接点がメールや、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)などデジタルツールが中心になっている今の時代、ノベルティを渡すというリアルなコミュニケーションはアナログ的な行動と思われるかもしれません。ただ、そのことによって、顧客とのリアルな関係性が築かれ、企業やブランドの価値向上に繋がる有効な手法になるのです。

 しかし、そのノベルティも"なんとなく配ろう""とりあえず作ろう"では、時間と予算の無駄になりかねません。目的やターゲットを明確にした上で取り組む必要があります。
 もらった人の印象に残るノベルティとは、企業の伝えたい思いが感じられ、ターゲットが求めているデザイン性や質感、自分では買わないがもらうとうれしいもの、といった条件がそろっているものです。
 そして、ノベルティそのものは、企業ブランド、商品イメージにも直結します。
 例えば、もらったノベルティがすぐに壊れてしまうと、簡単に壊れるノベルティを配っている企業の販売している商品も、すぐに壊れるのではないかと顧客は感じてしまう可能性があるからです。
 逆に、ターゲットのニーズにマッチし、伝えたいメッセージが表現されたノベルティであれば、もらった顧客の企業ブランドや商品イメージを向上させ、そのことをきっかけに大きなビジネスチャンスにつなげることができるかもしれません。

 まずは、しっかりと時間をかけて、自社の伝えていきたいメッセージやイメージを明確にし、そのストーリーにあったアイテムを時代のトレンドや実用性なども踏まえて、考えてみましょう。そうした思いで作られたノベルティには、大きな可能性が秘められているはずです。

SPコンサルティング本部
部長
竹綱 一浩

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グループの全体最適化と経営人財の育成で未来へつなぐ

TDK協力工場として創業

 平昌冬季五輪フィギュアスケート女子金メダリスト、アリーナ・ザギトワ選手(ロシア)に贈られた秋田犬「マサル」。今夏の第100回全国高校野球選手権記念大会での金足農業高校の快進撃、バドミントン世界選手権女子ダブルスで日本勢として41年ぶりの金メダルを獲得した"ナガマツペア"(永原和可那選手、松本麻佑選手)など、スポーツ界の話題が続き注目されている秋田県は、電子部品・デバイス産業の集積地でもある。

 同県の由利本荘市で、秀峰・鳥海山の麓に本社を構えるのが電子部品、装置製造、基板実装メーカー・YURIホールディングス(以降、YURI HD)だ。同社は2015年、由利工業、秋田精工、横手精工などで設立された持ち株会社。中核事業会社の由利工業の礎を築いたのが、須田哲生社長の祖父・須田浩氏である。

 浩氏は地元銀行を退職後、大手電子部品メーカーのTDK(当時は東京電気化学工業)に入社。そして1955年、TDKの協力工場として由利工業を創業した。その後を継いだ須田精一氏は、携帯電話やパソコン(PC)に使われる「積層セラミックチップコンデンサ」の量産開始を機に成長を遂げ、2000年代には世界有数の規模を誇るほどの量産体制を整えた。

 現在は、スマホやPC、自動車などに使われる電子部品の製造、自動化・省力化機械の設計・製造をはじめ、基板実装、表面処理(アノダイズ処理※1)などを手掛けている。2015年からはソリューション事業(半導体製造装置の精密洗浄や2次電池受託試験など)を展開するほか、近年は航空機事業にも参入し、2017年には航空宇宙産業界の国際的な工程認証プログラム「Nadcap(ナドキャップ)」を取得(秋田精工、由利工業)。今後の事業拡大を見込んでいる。

※1 アルミニウム合金の耐食性や耐摩耗性を向上させる表面処理方法

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YURIホールディングス 代表取締役社長 須田 哲生氏


顧客の"インナー化

 YURI HDの強みは、電子部品製造にとどまらず基板実装や機器組み立て、保守・メンテナンスまでワンストップで担えることだ。その同社は現在、創業70周年を迎える2025年にグループ全体の売上高700億円、営業利益70億円、営業利益率10%の達成を目指す長期ビジョン「トライセブンプロジェクト」を掲げている。須田氏によると、ビジョン達成の鍵は2つあるという。

 1つは「ワンストップサービスを進化させ、顧客の"インナー化"を図る」こと。つまり、その会社がないと生産が成り立たないほど顧客に入り込み、強く必要とされる存在になることだ。もう1つは、「コア事業を基盤としたソリューションビジネスを確立・拡大展開する」ことである。

 IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)の普及により、今後、電子部品の需要がますます増えるだろう。それに伴い、FA(ファクトリーオートメーション)やEMS(電子機器の受託製造サービス)事業の伸びも期待される。また、複合事業を融合し、グループとしての強みを発揮することでさらなる成長が見込まれる。グループをホールディング体制へ移行した背景には、そんな狙いがあった。

 須田氏は新会社を設立して以降、「従業員のやりがいや働きがいなど、ES(従業員満足)の向上に注力する」と明言してきた。「ESなしに良いものづくり、優れた価値提供はできない」との考えからだ。

 長期ビジョンについても、「創造によって地域社会に貢献する」という企業理念の体現とES向上を優先しつつ、その結果として達成されるものでありたいと須田氏は語る。

1人当たり改善・提案件数全国第1位の120.2件

 YURI HDは、企業理念や「期待づくり」というフィロソフィー、会社の思いを社員と共有するため、社内に定着・浸透させる社内改革を進めている。

 共有ツールとして、今年(2018年)「カルチャーブック」を作成した。既存のクレドカードを基に作成したもので、オリジナルキャラクターの「リスタ※2」のイラストを多用しながら、伝わりやすい構成に仕上げている。

※2 名前の由来はユリの花の「Lily」と希望の星、期待の星「Star」をイメージしたもの

 また、会社の考えや将来のビジョンをまとめた動画も制作。これらを駆使して繰り返し、社員に伝えることで、「変化の激しい時代に社員のモチベ―ションを上げていきたい」(須田氏)との思いがある。

 由利工業は以前から、品質向上や改善活動に注力してきた。2005年からはQCサークルと改善提案の2つの活動を「QC愛活動」("愛"は「製品に愛情を」との思いと、改善:Improvementの頭文字をかけている)と命名して継続実施。16年度には1人当たり平均年間改善・提案提出件数が120.2件に上り全国第1位※3となったほか、日本科学技術連盟から職場サークルのギネス記録に認定された。

※3 一般社団法人日本経営協会と日本HR協会の調査

 こうした長年の取り組みが奏功し、社員には一つ一つの問題と向き合い、改善案を自分たちで考える力が身に付いているという。

 人財育成では、「若手社員育成道場」「経営幹部養成スクール」などタナベ経営を講師に迎え、独自の研修を通じて、グループの次世代を担う戦略リーダー(経営人財)の育成を進めている。「今後の成長は、これまでの方法論や価値観の延長線上にはない。過去にとらわれずゼロベースで思考し、未来をデザインできる人財に、次世代を担ってほしい」と須田氏は語る。

 さらに、全額出資の製造子会社があるベトナムをはじめ、海外事業を拡大することも今後の成長には欠かせない。創業以来、幾多のチャレンジを通じて業容を広げてきたYURI HD。活躍の場を世界に求めながら、今後もさらなる飛躍を続けていくことが期待される。

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企業理念やフィロソフィーをまとめた「カルチャーブック」

PROFILE

  • YURIホールディングス㈱
  • 所在地:〒018-0604 秋田県由利本荘市西目町沼田字新道下2-659
  • TEL:0184-33-2140
  • 設立:2015年
  • 資本金:9000万円
  • 売上高:240億円(グループ計、2018年3月期)
  • 従業員数:2000名(グループ計、2018年3月末現在)
  • 事業内容:電子部品製造、産業機械の設計・製造、基板実装や機器組み立て、航空機事業など

  • http://yuri-holdings.co.jp/

タナベ経営より

YURIホールディングスは、「創造によって地域社会に貢献する」との企業理念を掲げ、電子部品製造、基板実装、機器の組み立て、保守・メンテナンスまでワンストップで担う。「ESなしに良いモノづくり、優れた価値提供はできない」は須田社長の考えであり、「従業員のやりがい」や「ES向上を軸としたモノづくりにかける思い」は他社と一線を画している。「QC愛活動」「カルチャーブック」はその成果である。

7年後の2025年、同社はどのような姿で創業70周年を迎えるのだろうか。モチベーションの高い社員一人一人の力で、「トライセブンプロジェクト」の実現とさらなる成長を期待したい。

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経営コンサルティング本部
支社長代理 戦略コンサルタント
日下部 聡

ユーザーに寄り添い、難聴者の社会参加を支援 "聞こえ"のバリアを感じない世界の実現へ


JAPAN補聴器フォーラム2018に出展


世界100カ国以上で愛用されるソノヴァ・ホールディングス「フォナック」ブランドの補聴器


子どもの難聴に対して力を入れていることをアピールした。ブース内では動画になる塗り絵コーナーも設置

補聴器市場をけん引するソノヴァ・ホールディングス(本社・スイス)は、包括的な聴覚ケアを提供するリーディングカンパニー。日本では2003年から日本法人「フォナック・ジャパン」(現ソノヴァ・ジャパン)を構える。ユーザーに寄り添ったソリューションを導き出し、"聞こえ"のバリアを感じさせない世界の実現を目指す同社の取り組みを紹介しよう。

"Breaking the Barrier"の実現を目指して

 1947年にスイスで創業したソノヴァ・ホールディングス(以降、ソノヴァHD)は、補聴器市場で世界ナンバーワンのシェアを誇るグローバル企業。デジタル補聴器をはじめとする同社の製品は「フォナック」ブランドで知られ、世界100カ国以上で愛用されている。

 補聴器やワイヤレス通信機器において高い技術開発力を誇る同社は、スイスと米国に研究開発拠点を持ち、他社をはるかに上回るペースで新商品を継続投入している。顧客の声に耳を傾け、独創的なアイデアで新技術を開発。先進的な製品を市場へ真っ先に投入する、デジタル補聴器のパイオニア的存在である。

 同社は2003年、日本法人を設立。聞き取りにくい高音域の言語を識別しやすくする機能を高重度難聴者向け補聴器に初めて搭載するなど、世界初の先進機能や革新的製品をいち早く日本で発売してきた。

 現在は補聴器をはじめ、ワイヤレス通信機器や人工内耳、補聴援助システムなど、新しい分野にも積極的に進出している。そのため、社員の意識は決して「補聴器メーカーの社員」だけにとどまってはいない。

 「"Breaking the Barrier"を自社の理念に掲げている通り、私たちの仕事は単に補聴器を作ることではありません。"聞こえ"のバリアを取り除き、聞こえに困難がある方やその周囲の方々に、自由で豊かなコミュニケーションをつくり上げていくことが私たちのミッション」と話すのは、ソノヴァ・ジャパンマーケティング部ブランドマネージャーの郷司智子氏だ。同部メインストリームプロダクトマネージャーの平野幸生氏も、「現時点での補聴器は、完璧なものではありません。技術開発力で聞こえに関する課題を解決し、より良い生活ができるよう手助けし続けるのが会社の目標」と語る。

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"Breaking the Barrier"の文字を記したシリコンバンドを製作・配布。聞こえのバリアを感じない世界の実現へ向けて聴覚障害・難聴に関する啓発活動を進めている

難聴者の社会参加を支える補聴援助システム

 ロジャーは、話し手の装着するワイヤレスマイクがその声を集音し、聞き手の装着する受信機までデジタル無線で送信する仕組み。会議など複数の人が同時に話す場所、レストランなど音の反響しやすいにぎやかな場所、広い会場や離れた場所など、補聴器だけでは聞き取りの難しい場所でも、ロジャーを装着することで快適に聞こえやすくなる。

 いわば"小さなラジオ局"のような仕組みを持つこのシステムはソノヴァの特許技術だ。Bluetoothなど、同じ2.4GHz帯の電波を使用する他の通信手段に比べても、電波の安定性などにおいて優れているという。もともとは言語習得にとって重要な時期である子ども向けの補聴援助システムとして発売していたが、現在、社会人の間で急速に活用が広がっている。

 きっかけは2016年4月から施行された、「障害者差別解消法(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)」だ。これにより、企業や学校などさまざまな場所で「合理的配慮」、つまり、障がい者から何らかの助けを求める意思表明のあった場合、社会的障壁を取り除くために便宜を図る義務が生じている

 合理的配慮に関して具体的な対策を立てるには、障がい者が「どんな場面で、何が困難なのか」「何が必要で、何を用意すればよいのか」を知ることが重要になる。この法律がきっかけになり、難聴者が仕事や社会生活をする上でコミュニケーションをサポートするツールとして、特に大手企業や大学などの間でロジャーの導入や引き合いが相次いでいる。

※合理的配慮の提供に関して、国の行政機関、地方自治体などには法的義務、民間事業者には努力義務が課されている

難聴の現状を知り、サポートしてもらうために

 難聴の現状を知ってもらい、難聴者のサポーターになってもらう活動の一環として、2018年8月、ソノヴァ・ジャパンは"Breaking the Barrier"の文字を印字したシリコンバンドを製作・配布し、社員やユーザー、顧客に着用してもらう取り組みを実施した。

 「耳が聞こえないことによる行動の制約は意外に多く、例えば仕事をする上では、上司の指示を聞き取ったり、電話対応や顧客との折衝をすることが難しい。こうした"見えないバリア"を顕在化させることが重要」と平野氏は指摘する。

 さらに、2018年9月に東京・秋葉原で開催された「JAPAN補聴器フォーラム2018」にも出展。補聴器メーカーや周辺機器メーカーが出展する中、同社も自社ブースを構え、小児難聴への取り組みに力を入れていることをアピールした。

 実際、ソノヴァHDのスイス本社には、小児に特化した聴覚と補聴器の研究・開発チームがあり、子ども向けの補聴器や補聴援助システムを長年開発し続けてきた実績がある。同時に、聞こえに悩みを持つ子どもやその家族を支援する取り組みも世界規模で展開している。同社が小児難聴のサポートに力を入れるのは、幼少期の聞こえがその子の将来に大きく影響するためであり、言語を獲得するのに重要な幼少期こそ、できる限り聞こえやすい環境を整えることが肝要であるとの考えに基づく。

 補聴器フォーラムの出展ブースには「お絵かきコーナー」を設け、子どもたちの描いた絵(塗り絵)をブース内のスクリーンへ投影。すると、絵が動画となって映し出される仕掛けが施され、「子どもたちに大変喜んでもらえた」(平野氏)という。また、会場には同社のキャラクター「レオ」や聴導犬が登場。子どもたちの楽しむ姿が見られ、和やかな雰囲気の展示となった。

 これらの製作を担ったのが、タナベ経営SPコンサルティング本部だ。同社が日本におけるブランディングのパートナーにタナベ経営を選んだ理由として、ソノヴァ・ジャパンマーケティング部コンテンツマーケティングの井口珠美氏は「他社とは違い、こちらの要望に"プラスアルファ"の提案をしていただけたり、他の業界の情報もいただけるのでありがたいですね。イベント会場など現場での臨機応変な対応も大変助かっています」と語る。

 聞こえの問題の有無にかかわらず、優秀な人材は企業にとって必要不可欠であることに変わりはない。人手不足が深刻化する昨今、優秀な人材に定着してもらうための制度や環境の整備は企業にとって急務であり、そうした動きは各社で広がっている。前述の法律施行も追い風となり、難聴者の社会参加の機運が今、これまで以上に高まりを見せている。

 製品やサービスを通じて、難聴者の自由で豊かなコミュニケーションを支援してきたソノヴァ・ジャパン。"聞こえ"のバリアを取り除き、ユーザーに寄り添った解決策を示すことで、今後も多くのファンを獲得しながらブランド価値をよりいっそう高めていくことだろう。

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ソノヴァ・ジャパン マーケティング部 ブランドマネージャー 郷司 智子氏(左)
ソノヴァ・ジャパン マーケティング部 メインストリーム プロダクトマネージャー 平野 幸生氏(中央)
ソノヴァ・ジャパン マーケティング部 コンテンツマーケティング 井口 珠美氏(右)

PROFILE

  • ソノヴァ・ジャパン㈱
  • 所在地:〒141-0031 東京都品川区西五反田5‐2‐4 レキシントン・プラザ西五反田
  • 設立:2003年
  • 代表者:代表取締役 齋藤 広幸
  • 売上高:2634億円(グループ全体、2016年度)
  • 従業員数:113名(2018年10月現在)
  • https://www.sonova.com/japan/ja


「良い補聴器をつくり、販売していく」ことだけが同社の活動目的ではない。「Breaking the Barrier(ブレーキング・ザ・バリア)」の理念に基づき、世界中の「聞こえ」をサポートするために日々、商品開発、周辺環境整備を進めながら、潜在層も含めたユーザー本人やそ の親近者への啓発活動を実施している。

「一億総活躍」がうたわれる現在、難聴者が本来のパフォーマンスを発揮できる組織・環境を準備していくことが必要になる。そのような企業活動や社会整備をサポートしていく同社の活動に、今後も注目していきたい。

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SPコンサルティング本部 主任 SPチーフコンサルタント 田付 航(左)
SPコンサルティング本部 SPチーフコンサルタント 宮本 竜明(右)

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    担当:タナベコンサルティング 戦略総合研究所