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今週のひとこと

儲かっているときに次の手を打とう。
赤字になってからでは遅すぎる。
正しい危機意識が会社を救う。

  我々コンサルタントの仕事は出張が非常に多く、先日も東京のホテルに宿泊する機会がありました。その際、フロントでは東南アジア出身の外国人男性が働いており、非常に流暢(りゅうちょう)な日本語と素敵な笑顔でチェックインの手続きをしてくれました。
 「毛布を借りたい」というこちらの申し出に対しても、迅速に対応してくれて、社員教育の素晴らしさに感動すると共に、サービスの提供に国籍は関係なく、一人ひとりの心遣いが重要なのだと、当たり前のことを再認識させられました。
 ホテル運営においては、清掃係に外国人女性を雇用するケースは少なくありません。しかし、今回はホテルの顔ともいえるフロントにも外国人が雇用されていて、さらに、日本人の特徴でもある、おもてなしを提供してくれるという体験でした。今後、このようなことは、ますます増えていくことでしょう。

 2018年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2018」で、単純労働を行なう外国人労働者を受け入れる政策が盛り込まれました。これを機に、都市部以外でも外国人労働者の増加が見込まれます。
 しかし、この法案は、日本の生産年齢人口の減少を外国人労働者で補填する、という誤ったニュアンスで伝わっていることが多いと感じます。会社側が外国人労働者の位置づけを、採用難の解決策や、増加する人件費への対策としてしまっては、それ以上の効果を見込むことはできないでしょう。

 人材や労働力を国籍で区別するなど、事業においては何のメリットもありません。企業側は外国人労働者を受け入れると決めたら、言語学習やメンタルサポートも含めたサポート体制、外国人労働者に長期にわたって活躍してもらえるようなキャリアパス、そして将来的には日本人従業員と差のない待遇を構築していくべきでしょう。
 ダイバーシティは我々が思っているよりも身近にあります。真のダイバーシティとは、国籍はもちろん、性別・年齢・障害の有無など全ての垣根を越えて、全員が認め合い、全員が活躍することを意味します。外国人労働者の雇用を、問題解決の手段としてだけではなく、会社の新たな価値観の創造、新たな可能性の模索のために検討してみてはいかがでしょうか。

経営コンサルティング本部
コンサルタント
太田 力

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重要度が増している「心の健康」と「やる気」

 近年の日本は、人口減少に伴った生産年齢人口の減少が顕著である。一方、景気は拡大局面にあるため、慢性的に現場は人手不足だ。そこへ「働き方改革」やダイバーシティー、オープンイノベーションなど、新しい取り組みや考え方が次々押し寄せ、企業を取り巻く環境は目まぐるしく変化している。

 そんな中、働く人たちの「メンタル・モチベーション」が重要度を増している。これは私の造語であり、メンタルヘルス(心の健康)とモチベーション(やる気)を組み合わせた概念である。

 私は、これまで実施してきたコンサルティングや教育研修において、「売り上げと利益は継続的に出ているのに、働く人たちが健全とは言えない」ケースをさまざま見てきた。ストレスに悩まされている経営者、疲弊し切った経営幹部、精神疾患で出社もままならない従業員など深刻なケースもあった。

 このような社内の症状は、放置すると大変なことになる。だが「社長なのだから、つらいのは当然」「仕事なのだから、ストレスがあって当たり前」という社内の暗黙の了解で、経営者や従業員が自ら思考停止してしまっている。私は、そのことに危機感を持っている。

 「このままでは危ない」と薄々気付きながら、なぜ、このような状態が生まれるのか。私は、「会社を経営する社長も、雇用される従業員も、『個人』と『組織』の2軸からメンタルヘルスやモチベーションについて考える時間が圧倒的に不足している」と考えている。

 そこで今回は、個人と組織の2軸で考えるべきメンタル・モチベーションについて述べていきたい。

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個人におけるメンタル・モチベーション

 個人で考えるべきメンタル・モチベーションについて、大切なポイントを3点挙げたい。

(1)自分を心底、大切にする

 自分のことを最も大切にできるのは、他の誰でもなく、自分自身である。これは当たり前のことなのだが、意外に忘れられがちである。もちろん、仲間の同僚や後輩、顧客や上司も大切なのだが、自分の身を犠牲にしてまで、それらの人たちを支え続けようとしないことである。

(2)適度な情動発散を心掛ける

 私たちは、本能という強いエネルギーを、理性によって抑圧している。それは大人であるがゆえに、理性で我慢できている。ただ、理性の受け皿には限界がある。受け止め切れなくなった本能のエネルギーは、生命活動を維持する上で大切な脳幹へと向かっていく。その結果、脳幹が傷ついてしまう現象が「自律神経失調症」と呼ばれるものだ。

 これを避けるため、適度に本能のエネルギーを開放するすべを身に付けておく必要がある。例えば、ジョギングや体操、ヨガ、スポーツなど、主に全身を使う運動が効果的であると考えられる。

(3)起きた出来事の"受け取り方"を変える

 米国の臨床心理学者アルバート・エリスが、論理療法という心理療法の中で「ABC理論」を提唱している。これは、私たちの感情(C)は出来事(A)が決めているのではなく、出来事に対する受け取り方(B)が私たちの感情をつくっているという理論である。

 当たり前だが、すでに起こった出来事を変えることは不可能だ。しかし、起きた出来事に対する受け取り方は、いくらでも変えることができる。

組織におけるメンタル・モチベーション

 次に、組織で考えるべきメンタル・モチベーションについて大切な3点を述べたい。

(1)自発的動機付けを促す

 これは働く従業員一人一人が、各自の仕事にどんな意味を見いだせるかということだ。経営者・経営幹部が中心となり、従業員に気づきを与えていくわけだが、最終的には従業員自身が「自分はこんな思いがあって今の仕事に取り組んでいる」と自覚することが重要である。

(2)一番ワクワクする瞬間を最初に共有する

 仕事で一番ワクワクする瞬間(営業→成約の瞬間、接客→顧客に感謝された瞬間)を従業員と最初に共有し、そのイメージを強く焼き付けた状態で指示出しや教育を行うとよい。

 例えば、営業担当者に指導する場合、電話のかけ方→提案の仕方→ニーズの聞き出し→訪問日の取り付けなど、順番通りに教えるだけだと担当者のモチベーションが上がらない。初めの2、3件の電話で断られるとすぐ諦めてしまうだろう。ただし成功するイメージがあれば、電話を切られてもモチベーションは簡単に切れない。

(3)傾聴を大切にする

 「人はよく話をする相手よりも、よく話を聴いてくれる相手を信頼する」といわれる。これは間違いない。あなたは部下や後輩が相談に来たとき、きちんと話に耳を傾けているだろうか。パソコンを操作しながら、スマートフォンを見ながらなど、「ながら」で応じていないだろうか。また、相手の話を遮って「要は何なの、結論は?」など、論理的に振る舞うかのようにプレッシャーをかけてはいないだろうか。

 「聴く」という行為は、自分の頭の中を一度真っ白にし、相手に姿勢も心も傾けて、意をくみ取ることなのである。

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自分が楽と感じる状態の基準を徐々に引き上げる

 最後にお伝えしたいことは、モチベーションのメカニズムである。つまり、人のモチベーション(やる気)は、上がり続けることがないということだ。

 生物が内部・外部環境の変化に対し、体温や血糖値など生理的状態を一定に保つ性質を「恒常性」(ホメオスタシス)と呼ぶ。人にも必ず恒常性が作用しているため、自分自身が楽だと感じる状態(コンフォートゾーン)を自然に維持しようとする。

 この性質を知らずに、「○○さんはやる気がないようだから駄目だ」とか、「私は昨日までやる気があったのに、今日はやる気がない。情けない」......と考えるのは危険である。人のモチベーションは上がりもするし、下がりもする。どんなに優れた人でも、やる気が常に上がり続けているということはあり得ない。

 繰り返しになるが、精神状態の浮き沈みは、一個人の甘えや怠け癖に起因しているのではなく、そもそも人が持っている生来の性質に起因する。自分にも恒常性が働いていることを前提に、自分が楽だと感じるコンフォートゾーンの基準を徐々に引き上げることが大切だ(高いレベルの仕事が面白くなってくる=コンフォートゾーンが上がる)。

 そのために、私たちがすぐに取り組めることは、次の2点である。1点目は、人には恒常性が働いていることをまず理解する。その上で、自分が違和感を覚えること、少しだけ負荷のかかることに挑戦してみることが大切である。

 2点目は、自分の口から出る言葉を、「プラスのストローク」に置き換えるということだ。ストロークとは、対人コミュニケーションにおいて、その人の存在や価値を認める言葉や働き掛けをいい、プラスとは快適な気持ちになることを指す。つまり、自己を肯定する言葉を口にする。マイナス(否定的)の言葉は、自分の耳を通り、脳まで伝達される。その結果、マイナスの暗示を自分自身にかけることにつながってしまう。

 このメカニズムを押さえつつ、個人と組織の2軸からメンタル・モチベーションについて考えていただきたい。

タナベ経営 経営コンサルティング本部 チーフコンサルタント 浜西 健太 Kenta Hamanishi
  • タナベ経営
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  • 浜西 健太
  • Kenta Hamanishi
  • 経営者の思いを受け止める「経営相談パートナー」として、人材成長支援を軸に、数多くの企業を支援している。ビジョン実現に向けた社風改革、社員のモチベーションアップからメンタルへルス支援まで幅広い経験を持ち、人材成長への熱い思いとポジティブパワーで多くのファンから信頼を得ている。
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企業の進む道は存続、廃業、売却、倒産の4つしかない。その判断を下す絶好のタイミングが事業承継だ。多くの企業が事業承継に直面する中、タナベ経営とのチームコンサルティングで財政面から企業の存続・発展を支援しているのが、テントゥーワングループである。

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さまざまな専門家と連携し最良の打ち手を提供

北東 まず、創業の経緯をお聞かせください。

前田 私の父は税理士で会計事務所を経営していましたが、私は父の仕事に興味がなく、大学を卒業したら会社勤めをしようと考えていました。ところが私が19歳の時、交通事故で父が急死。トップ不在となった会計事務所は、事業承継もできないまま解散となってしまいました。その中で「会計事務所を再興したい」という思いが強まり、税理士を目指す勉強を始め、大学を卒業した年に税理士試験に合格。2つの会計事務所に勤務した後、2003年に前田直樹税理士事務所を地元の和歌山市で創業しました。

それから神戸、大阪へと事業を拡大し、2009年に税理士法人化。税理士法人を軸に中小企業診断士事務所、社会保険労務士事務所、行政書士事務所で構成するテントゥーワングループに組織変更しました。現在、グループ全体で34名のスタッフを有し、その中には税理士5名(ほか税理士有資格者1名)、公認会計士1名、中小企業診断士1名、社会保険労務士2名、行政書士2名が含まれます。拠点としては和歌山事務所と新大阪事務所に加え、2018年10月に姫路事務所(兵庫県)を開設したばかりです。

北東 グループ名「テントゥーワン」の由来は何ですか?

前田 テン(10)は「たくさん」を、ワン(1)は「真に重要なもの」を意味します。「お客さまから寄せられるさまざまなニーズに対し、私たちはあらゆる可能性や方法論の検証を重ねて最良の打ち手で応える」という"私達の誓"(経営理念)を表現したものです。

北東 テントゥーワングループの強みを教えてください。

前田 グループ内の有資格者だけでなく、弁護士や司法書士、不動産鑑定士、弁理士といった外部のプロフェッショナルと連携して、お客さまの多様なニーズに多角的かつ複層的に応えることができる点です。

当社では、精度の高い月次および決算事務手続きにより、税務調査において非違(申告漏れや処理上の誤り)の指摘を受けない率(申告是認率)は80%程度を維持しています。加えて、万が一税務係争が発生した折にもその対応を可能とするように、またその予防的見地からも、国税不服審判所に出向経験のある弁護士を顧問として、クライアントにおける不意・不当な、また過大な納税負担の予防および回避に努めています。

業務の特徴としては、税理士のみならず内外の専門家との連携のもと、事業承継や事業再生、そしてM&Aに関する案件をお受けするケースが多いことが挙げられます。

北東 知的資産経営の普及活動にも積極的に取り組まれており、「知的資産経営報告書」を日本で最初に作成されましたね。

前田 知的資産とは人材や技術力、特許、ブランド、経営理念、顧客とのネットワークといった従来の財務諸表には表現されにくい経営資源の総称と定義されています。また、そのような経営資源を「見える化」「魅せる化」して企業のステークホルダーへ分かりやすく伝え、将来の企業価値の向上を図るための資料が知的資産経営報告書です。この報告書は、経営のバトンを後継者へ渡す事業承継の際にも大きな効果が期待されます。

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テントゥーワングループ 代表社員税理士・中小企業診断士 前田 直樹氏
1976年、和歌山県和歌山市生まれ。税理士・中小企業診断士。2003年に独立開業後、2009年に税理士法人を設立。現在はテントゥーワングループの代表を務める。約20年間にわたる知見や知識と実務経験を裏付けとして、規模や業種を問わない多くのクライアントに対する実務の傍ら、税務、経営、財務、法務をはじめとする幅広い分野で数多くのセミナーや講演活動を行っている。

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タナベ経営
経営コンサルティング本部 ファンクションコンサルティング部 部長
戦略コンサルタント 北東 良之
経営理念やビジョン策定、中期経営計画策定を軸に、方針管理制度、予算管理システム、人事評価賃金制度構築など、中堅・中小企業を主なクライアントに経営システム構築を支援。事業承継案件も多数手掛け、「会社をつぶしてはならない」の信条のもと、持続的成長企業づくりを目指し、改革・改善に取り組んでいる。中小企業診断士。

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事業承継には客観的な視点が2つ以上必要

北東 タナベ経営とチームを組み、事業承継が絡んだ事業再編の支援に取り組んだ事例は多々あります。

前田 税理士事務所を開設した頃、タナベ経営からの最初の依頼を受けました。経営者の息子たちが事業をスムーズに引き継げるようなスキームをタナベ経営が立案し、実行段階で税理士を含む専門家チームが加わって事業承継を支援するプロジェクトでした。

北東 当時は事業承継などの経営課題に率先して取り組む税理士は希少でした。最近の事業承継に関する相談は、どのような内容が多いのですか?

前田 「承継する相手が見つからず、会社を売却するという判断もできずに、気が付いたら70代とか80代の高齢になった」と悩んでおられる経営者が増えています。息子は上場企業に勤務して家業を継ぐ気はさらさらなかったり、社員の中から後継者を探そうとしても「株式をただで譲ってくれたら引き受ける」と言われたり......。

浜岡 確かに、タナベ経営にも「会社を継ぐ人がいない」という悩みが数多く寄せられており、どうやって会社を承継・成長させるのかというスキームへのニーズは高まる一方ですね。

前田 70歳を超えた社長から「社内で後継者を育てる仕組みを作れないか」と相談されても、なすすべがありません。ある社歴100年を超える会社の社長は75歳で、後継者不在のまま資産と事業を分離してホールディングス化することを決めました。しかし、このままだと事業会社のトップも75歳の社長が兼任することになってしまいそうです。社長は「何かあったときは、従業員が考えてくれるかもしれない」といったファジーな期待を抱いている状況です。こうした事例にどう対処すべきだと思いますか。

浜岡 大変難しいですね。誰かをワンポイントにした第三者承継を行うか、会社を売却するしか手がないのでは?

前田 初代であれば、そのような判断ができたかもしれません。しかし、2代目社長なので「初代のことを思うと会社は売れない」と言います。外から承継者を調達するのは難しい、内部で育成するにも時間が足りない。まさに八方塞がりの状況です。

浜岡 そういった状況に陥る事例は、急増しています。ある会社は従業員を社長に据えましたが、先代は「社長としての器がない」と気に入らない様子。「社長として成長できなかったら、もう会社を売却する」とまで言っています。深刻な"後継者難"に対して、誰を経営者にするか、いかに幹部を育てるのか、組織をどうするのかをトータルに見据えた設計図を描くことが求められていると感じます。

前田 後継者難の次に相談が多いのは、息子を会社に入れて社長にしたものの、先代が息子にものすごくつらく当たるケースです。せっかく後継者ができたのだから、もう少し温かい目で見守ってほしいと思いますね。

浜岡 後継者を支える組織や仕組みづくりが必要ですね。

前田 また、経営者が変わった途端に従業員が経営者に牙をむき始める事例もあります。鉛筆をなめながら社員の給与と賞与を決めていた先代が、人事考課制度を設けることなく、鉛筆のなめ方を教えただけで後継者へバトンタッチしたことに対する不満が、一気に吹き上がったのです。

浜岡 先代の重しが取れた途端、社員は言いたい放題になるものです。対処法は、幹部を仲間に巻き込んで同じビジョンを共有する関係性を築くことしかありません。代替わりする前に、後継者を支えるチームを作ることが肝要です。また、事業承継に関しては、外部の経営パートナーとタッグを組まないと順調に進行しないと思います。経営者は主観と客観をうまく融合させて、しがらみなく「こうすべきだ」という判断を行うべきです。

前田 「税金という支出を最小限にとどめる」という視点と、「経営の攻守を考える」という視点は、どちらも大切な視点です。しかしながら、税理士という立場からは、意識的に、または無意識に、前者の視点をフォーカスし、ここに優先順位を定めてしまうことも少なくないと感じています。それゆえに、視点が偏ることのないように、経営コンサルタントと税理士といった分野の異なるプロフェッショナル同士がチームを組んで、両方の視点から経営者に寄り添うような状態がベストではないでしょうか。特に、事業承継では客観的な視点が2つ以上必要だと思います。

私達の誓
お客様から寄せられる様々なニーズは、決して私達にとっての「one of them」ではない。私達は常に、あらゆる可能性や方法論の検証を重ね、最良の「打ち手」でそれに応える。この「誓」のもと、「エムズアソシエイト」という私達の前身であるグループから、現在の「テントゥーワン」グループへと変化を遂げ、いまなお、そしてこれからも「さらなるサービスの真価(>進化)」を目指します。

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テントゥーワングループに在籍する専門家の連携体制強化を目的とした「合同会議」の様子

チームコンサルティングで多様な経営課題を解決

北東 注目を集める「事業承継税制の特例措置」について概要をお聞かせください。

前田 2018年4月1日から2023年3月31日までに特例承継計画を提出した上で、2018年1月1日から2027年12月31日までに事業継承を行った場合の特例措置です。これによって事業継承にかかる一時的な税の金銭負担はゼロとなる(従前の制度では実際に猶予される税額は最大で全体の約66%)、親族外を含む複数の株主から最大3人の後継者への贈与が対象になる(従前の制度では1人の先代経営者から1人の後継者への贈与のみが対象)などのメリットを授受できます。特例承継計画を提出したものの結果的に贈与や相続が発生しなくても、罰則などはありません。

そこで、なかなか事業承継の準備に入れない社長の背中を押すために「メリットがあってデメリットはありませんから、2023年の3月末までに特例承継計画を提出しましょう」と声を掛けています。

北東 「これをきっかけに自社の事業承継を真剣に考えてください」とアプローチできますね。

前田 この特例承継計画は容易に作成できるため、考えるきっかけとしてはよいのですが、具体的に考える内容については不足感があります。対して、中小企業庁が公表している事業承継を促すための各種ツールのうち事業承継計画(事業承継カレンダー)を用意していますが、当事者自らが独力でこれを完成させるのは、一苦労すると思います。第三者である専門家の客観的なフォローが必要かもしれません。

北東 自社の発展を託すことができる後継者を明らかにし、やるべきことを整理して優先順位を付けた上で、事業承継を実施していかねばなりません。その行程を多様な専門家による複数の視点からフォローしていくのが、チームコンサルティングです。

タナベ経営とテントゥーワンがチームを組んで、事業承継をきっかけにホールディングス化を実現させた事例があります。事業の許認可に弊害を及ぼさずに、その会社の要望に沿ったスキームをどう構築するかがポイントでしたね。

前田 事業承継に関わる会社の全体像と後継者を支えるチームづくり、取り組むべき経営課題の優先事項の設定などをタナベ経営が行い、税制面でのホールディングス化の検証をテントゥーワンが担当しました。タナベ経営が事業継承に絡むプロジェクト全体の推進力となり、クライアントと一緒にひたむきに前進できたと実感しています。これを税理士だけでやろうとすると、途中で推進力を失ってしまいがちです。

北東 専門家同士が多方面でディスカッションを展開し、理論的で納得のいくアドバイスを経営者に提供できるのがチームコンサルティングのメリットです。それが推進力につながります。

社長は起業家精神が旺盛で次々に新規事業を立ち上げるものの、ある規模まで成長したら事業が停滞し、グループ全体が大赤字に陥った会社の再建に取り組んだ事例もありますね。再生計画を作成して銀行に提出し、資金繰りが改善して経営が回るようになりました。

また、事業承継後の体制づくりを支援した事例もあります。先代はオーナー経営者らしい"力技"で会社を引っ張ってきたために、経営の仕組みができておらず、継承者のための仕組みづくりに取り組みました。

前田 タナベ経営の立案・推進するビジョンに沿って、部門損益が精緻に分かる業績管理の仕組みづくりを当社が行い、その後の業績確認も毎月フォローしています。

事業承継においては、バトンタッチしたその後の在り方も重要です。そのため、このような徹底した事後のフォローは、事業承継を経た経営の存続という視点からは不可欠であると感じます。

北東 経営は多様化・国際化・業際化が加速し、労働環境や従業員の価値観も変化し、社会の仕組みや法律も目まぐるしく変わっています。それに加えて、後継経営者は自ら事業を切り開いてきた人物ではありません。もはや経営者一人で会社を運営するのは難しい状況と言えるでしょう。

前田 今は自前主義にこだわる時代ではありません。自社の幹部だけでなく、社外の多様な専門家を加えた"経営チーム"を作った方がはるかに効率的です。

北東 今後もタナベ経営とテントゥーワングループがチームを組んで価値ある支援を行い、ファーストコールカンパニーの創造にまい進したいと思います。引き続きご協力のほど、よろしくお願いします。

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タナベ経営
経営コンサルティング本部 ファンクションコンサルティング部 部長
戦略コンサルタント 浜岡 裕明
財務戦略から計画数字をやり切るための具体策を一般社員にまで落とし込む業績管理体制構築に定評がある。活躍は財務面にとどまらず、幹部社員への教育においてはタナベ屈指の高い評価を得ている。

PROFILE

    • テントゥーワングループ
    • 所在地:〒532-0003 大阪府大阪市淀川区宮原4-1-46 新大阪北ビル3F
    • TEL:06-6395-1115(代)
    • 創業:2003年(税理士法人化は2009年)
    • 資本金:500万円
    • 売上高:2億3000万円(グループ全体、2018年9月現在)
    • 従業員数:34名(グループ全体、2018年9月現在)
    • 事業内容:テントゥーワン税理士法人、テントゥーワン中小企業診断士事務所(株)、テントゥーワン社会保険労務士事務所、テントゥーワン行政書士事務所 http://www.1021.co.jp/
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    06-7177-4008
    担当:タナベコンサルティング 戦略総合研究所