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今週のひとこと

未来のための投資を惜しんではいけない。
顧客創造、商品開発、人材開発に
先行投資しよう。

☆ ホームページはあるけど成果につながらない。そんな時には...

 最近、「"モノ"から"コト"の消費に変わった」という言葉をよく耳にします。昔のように、単純にモノを作るだけでは売れなくなってきたということで、今は商品自体にストーリーを付加してPRしている企業が増えています。商品・サービスは似たようなものが多いにも関わらず、顧客のニーズは多様化しているため、PRのやり方を工夫し商品・サービスの差別化をせざるを得ない状況にあるからです

 Webの世界でも同様のことがおこっています。ホームページに商品やサービスを掲載するだけでは、アクセス数は増えず、問い合わせや販売にもつながりません。皆さんの会社のホームページはいかがでしょうか。

 Webの世界に、「コンテンツSEO」という言葉があります。コンテンツSEOとは、いかにしてGoogleやYahooでの検索結果を上位に表示させるかという、SEO(Search Engine Optimization:検索エンジン最適化)対策の一種です。顧客ニーズ(=興味のあるキーワード)に応じて、商品・サービスと関連したストーリーコンテンツを多く作成することで、アクセス数や、その後の問い合わせ・販売を増加させる方法です。現状のGoogleやYahooで上位に表示されるロジックも、顧客ニーズに合わせたコンテンツを多く持っているホームページが上位になるような仕組みです。

 コンテンツSEOを採用している企業は、ホームページのアクセス・問い合わせ・販売数が増加するだけでなく、次のようなメリットもあります。

  1.ホームぺージ自体が営業メンバーの役割を果たす。
  2.ホームページが充実することで、企業ブランディングにもつながり、顧客からの信頼感が高まる。
  3.広告のような一過性のものではなく、一度作成したコンテンツは永続的にPR効果を発揮する。
  4.コンテンツの数が増えるほど、それら1つひとつがアクセスにつながるページとなり、ページ自体が財産となる。
  5.作成したコンテンツはホームページだけでなく、プレゼン資料やSNS、メールマガジンのコンテンツとしても流用できる。

 コンテンツSEOの取り組みは、多くの時間がかかり、継続的にコンテンツを作成するための人材や製作費の確保といった体制構築が必要です。また、始めてもすぐには効果につながるわけではなく、長期的に取り組むことも必要です。そうした苦労を乗り越えることで、将来的に手に入れることができる価値は、とても大きなものになるでしょう。

SPコンサルティング本部
部長代理
山本 紘士

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現代ファミリーの生活実態

 1986年に「男女雇用機会均等法」が施行されて32年が経過した。これまで3度の改正が行われ、目まぐるしく変化する生活環境に応じて整えられてきたことを示している。 バブル崩壊以降(1997年ごろ~)、専業主婦であることがステータスだった時代は終わり、リーマン・ショック(2009年ごろ~)で節約志向に拍車がかかった。その後、アベノミクス(2012年~)がスタート。景気は上向きに転じたが、実質賃金が低下し、企業の人手不足もあって共働き世帯が増加した。(【図表】)

【図表】共働き世帯と出生数の推移

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出典:厚生労働省「人口動態統計」、労働政策研究・研修機構「早わかりグラフでみる長期労働統計」
※「男性雇用者と無業の妻からなる世帯」とは、夫が非農林業雇用者で、妻が非就業者(非労働力人口及び完全失業者)の世帯
※「雇用者の共働き世帯」とは、夫婦ともに非農林業雇用者の世帯
※2011年は岩手県、宮城県及び福島県を除く全国の結果

一方、2016年の年間出生数が初めて100万人を切った。が、共働き世帯の増加で待機児童問題が持ち上がった。また、最近の新しい傾向として、働き方の多様性を認めるワーク・ライフ・バランスへの理解も広がるようになった。


「今どきママ」のニーズと価値観

 共働き世帯が増えたとはいえ、いまだ家庭における母親の割合は大きい。ファミリーマーケットを顧客ターゲットとする企業は、決定権者である「ママ」たちを押さえる必要がある。   しかし、先述した環境変化に付随して家族の在り方が多様化し、ママの趣味・趣向やトレンドにも変化が生じている。従来の単純な年齢マーケティングは通用しない時代に入ってきており、求められるニーズも多様化しているのだ。 「今どきママ」たちは、業種も働き方も細分化している。また自ら働いて収入を得ているため、「お金で解決できる手段」が選択肢の一つとして増えた。さらに、「頑張り過ぎない」というライフスタイルに加え、"ママタレ"(結婚・出産後も芸能活動を続ける女性タレント)の露出増加で「自己実現したい」「所帯じみたくない」など、いつまでもキラキラ輝いていたいという価値観を持つようになった。
 社会進出に伴って仕事での承認欲求を持つ女性が増え、初婚・初産年齢も右肩上がりだ。母親といっても、専業主婦で子どもを幼稚園に通わせている人と、働いて子どもを保育園に預けている人では、ライフスタイルも子育てに関する考え方も異なる。従って、母親という一つのカテゴリーにはめた画一的なプロモーションではなく、個々に合わせた訴求が必要である。



市場参入の糸口

 ファミリー市場を、これまでマーケットとして捉えていなかった企業は、一度考えてみてほしい。大人向け商品を子ども向けに改良するなどの「新規市場開拓」「商品開発」、ファミリー層向けのにぎやかなイベント企画を通じた「集客強化」、次世代の育成に向けて子どもの時から商品やサービスに触れさせる「認知向上」「ブランディング」など、自社の販路拡大の一手として検討する余地があるのではないだろうか。
 ファミリーマーケットへの新規参入を検討するに当たり、ニーズが自社商品の強みの中にあるのか、もしくは新たに創造することができるか、などを事前に調査することが重要である。その上で、市場規模や成長率、外部環境などを見極めながら、段階を進めていく。

(1)市場・現場の声から現状を分析する
 消費者ニーズを理解するためには、まず現状を把握する必要がある。調査方法としてはターゲット層(母親)へのアンケートやグループインタビューなどがあるが、とりわけグループインタビューを推奨する。 会話の中に出てくる余談も必要な要素であり、アンケートによる一問一答では得られない情報が手に入るケースがある。実際、対面式で母親たちの声が聞ける場は貴重で、この場から商品開発やモニター調査に発展することがある。母親を取り巻く環境や悩みとなる課題を抽出し、自社の商品・サービスの特徴が生きる使用シーンやメッセージの伝え方の模索などを行う。

(2)自社のコアコンピタンスを探る
 ニーズを踏まえ、自社が保有する経営資源をどのように活用することで課題解決がなされ、より際立つ特徴が生きてくるのか。現在実行している戦略において商品やサービス、ターゲットのミスマッチは起きていないか。外部環境を分析した上で見えてくる、差別化につながる強みは何か。これらの要素から、勝てる市場とコアコンピタンス(核となる強み)を的確に見極める必要がある。

(3)狙うべき参入ルート・手法などについて戦略を策定する
 ターゲット・目的・コアコンピタンスを明確にした後、その目的達成に向けたソリューションを戦略として体系化する。顧客とのタッチポイント(接点)をどの販路で構築していくのか。どのように商品特性を見せていくのか?顧客接点は1つである必要はないが、その際にあくまで顧客視点であることが重要である。「消費者がどのような状況下でその商品・サービスに触れるのか」に応じて受け手の解釈が異なる場合もあり、注意が必要だ。

 例えば、乳幼児を子育て中の母親が対象者であれば、子育てにかかりきりで外出する機会が少ない、外出しても着替えやおむつ、おやつなどの荷物が多く、子どもに手がかかるといったライフスタイル特性がある。そのような環境下で商品を訴求する場合、店頭がよいのか、ネットがよいのか。店頭を選んだ場合、じっくりパッケージ内容の説明文を読み込む余裕がないため、感覚的に商品特性が伝わるような設計にするなど、ニーズや課題といった前提条件を押さえた上で最適な戦略を構築する必要があるだろう。

  • タナベ経営
  • SPコンサルティング本部 部長代理
  • 筒井 美帆
  • Miho Tsutsui
  • こども・子育て・ファミリーマーケットの分野で、幅広い業種のクライアントに対して販促支援コンサルティングで活躍中。販売促進戦略の策定から実行推進までトータルで支援し、顧客ニーズを的確に捉えロイヤルカスタマーを育てていくことを大切にしている。子ども・子育て・ファミリーマーケット成長戦略研究会サブリーダー。

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創造性、ベンチャー精神あふれる社風で持続的なイノベーションを起こす

レコード製造からスタート環境変化を生き抜いた60年

 東京・銀座に本社を構えるアテネは1958年、レコード盤の製造会社として神奈川県藤沢市で創業した。当初は中古のプレス機2台を使い、6人でスタートした町工場だったが、高い技術力で次第に支持を集め、1962年には「フォノシート」(ソノシート)と呼ばれる薄型レコード盤製造の日本最大の工場を設立。量産体制を確立した同社は、レコード製造のトップに上り詰めていった。 しかし、時代の流れとともにレコード産業が衰退すると、1983年にはレコード事業からの撤退を決断。社名も「アテネレコード工業」から現社名の「アテネ」へ変更し、大胆な変革を実施していった。 主力事業からの撤退が可能だったのは、同社に新しい事業を生み出す風土が存在したからだ。実際、同社はレコード盤製造が全盛期だった時代にも常に研究開発の手を緩めず、新しい事業を模索してきた。 例えば、レコードの廃材を使い培った「樹脂メッキ技術」はその一例。石油ショックの影響を受け1970年代には陰りを見せるが、このとき育んだベンチャー精神や、新たな事業を会社全体で応援する風土は同社の財産となり定着していった。

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アテネ 取締役 総務部 部長 小林 宏至氏

過去の実績にとらわれず「自社にしかない」事業を追求

 1980年代になり音楽市場でCDが登場すると、レコード製造会社は相次いでCD製造へ参入した。しかし、同社はCD事業には参入しないことを決断。レコードの製造技術と共通点がなく、何より他社がこぞって参入する事業への追従は得策ではないと考えたからだ。 さらに、リーマン・ショックが世界経済を襲った2009年、同社は銅メッキ事業から撤退。売上高全体の3分の1を占める柱事業であったが、自社の独自性や強みが発揮できないため見切りをつけたのだ。 現在はレコード製造時代から培ってきた、電鋳技術を生かしたメタルマスクが主力事業である。 この技術は、例えば高精細を求める有機ELディスプレーや、高い転写性を実現する印刷用凹版など、超微細電鋳加工を必要とする電子部品の製造に欠かせない。 他にも、製品の塗り分け塗装や蒸着時に必要な電鋳マスク治具、元来の音へのこだわりから派生した、映像・デジタルコンテンツを制作するメディア事業を展開。過去の実績に縛られず、市場ニーズに応じてコア技術に磨きを掛け、常に「社会に必要とされる存在」として、自社にしかできない事業を追求してきたのである。

経営理念

一.顧客の創造を目的とした経営を実践する
一.常に需要者の利益を尊重し共存共栄を目指す
一.創造的活動を通して事業の発展をはかり社会に貢献する
一.社の発展が社員の生活安定と向上につながる経営を行う

社員の人材育成に注力タナベの研修を有効に活用

 幾度も事業転換を重ね、時代に柔軟に対応してきた同社。その原動力について、アテネ取締役総務部部長の小林宏至氏はこう語る。
「トップの決断力に支えられてきたことは言うまでもありません。加えて、自社のDNAとしてベンチャー精神が根付いていること、さらに当社は中途入社社員が多く、彼らの発想や個性をうまく生かしてきたことも原動力と言えます」。あくなき技術開発への姿勢や、常に新たな事業を生み出すベンチャー精神といった同社のDNAの中に、中途入社社員の豊かな個性を融合させ、多様な価値観を受け入れることで、イノベーションを継続的に生み出す風土を培っていったのである。 こうした社風の中で活躍する人材を育成するため、同社は外部研修などを有効に活用し、社員に教育の機会を提供している。中でも、管理職に昇進する直前に受講する「幹部候補生スクール」(タナベ経営主催)は、現幹部社員のほぼ100%が受講。他にも新入社員向けや中堅社員、戦略リーダー(経営人材)向けなど、定期的にタナベ経営の研修を活用しているという。 社員には「自分で課題を見つけ、周囲を巻き込みながら問題解決を行える人になってほしい」と小林氏。こうしたビジネススキルを養う研修に、別途外部の人格研修なども組み合わせ、社員の人材育成に力を注いでいる。

社員の成長を促す人事制度へ刷新

 アテネは現在、人事制度自体が社員育成ツールになるよう、その見直しを図っている。人事制度改革のビジョンは「自発、尊重、創造」。社員が自発的に成長の機会をつくり、その成長が会社に還元され、評価に結び付く。そんな人事制度への改革である。 具体的には目標管理制度を導入し、評価結果のフィードバックも得られるようにして、何を改善すれば評価されるのかを"見える化"した。これらのPDCAを回すことで、評価される側、評価する側も共に成長できるような仕組みを整えていく。   「変化を恐れていたら、今のアテネは存在していない。今の社員にも『自らやる』というリーダーシップを持ち、発揮していってほしい。目標は自社のDNAを受け継ぐ仕組み、失敗してもとがめられないチャレンジしやすい文化をつくり、新しい価値を生み出していくこと」(小林氏)。今回の人事制度改革はそうした目標の実現に向けた第一歩である。 事業の寿命は10年といわれ、年々、短命化の様相を呈している。こうした中、非連続のイノベーションを起こし続ける仕組みや、社員が個性を発揮しながら事業を創造する風土を持つ同社が、これからも成長し続けることだろう。

PROFILE

  • アテネ㈱
  • 所在地:〒104-0061 東京都中央区銀座1-14-4
  • TEL:03-6856-1621(代)
  • 設立:1958年
  • 資本金:5400万円
  • 売上高:15億円(2018年9月期)
  • 従業員数:115名(2018年8月現在)
  • 事業内容:超微細電鋳加工製品の開発設計・製造と販売、電鋳マスク治具の製造または関連設備の開発設計・製造と販売、映像・音声コンテンツ、ソフトウエアの企画・制作およびそのパッケージ製造と販売など
  • http://www.e-athene.co.jp/

タナベ経営より
アテネはこれまで、幾度となく経営を揺るがす困難に直面してきた。しかしそのたびに、環境変化に対応しながら今日の発展に至っている。AI、IoT、ロボティクスといった技術革新が急速に進む今後は、社員がリーダーシップを発揮し、時代の変化に対応することが求められる。同社は今、人事制度を見直し、自社のDNAを継承しながら社員の潜在能力を引き出そうと挑戦している。これからも自社の固有技術を磨き、その存在価値を見極め、異質を認めて組み合わせながら、「新しい価値を生み出す組織」を構築していくことだろう。

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経営コンサルティング本部
人材開発コンサルティング部
コンサルタント
渡邉 雄太

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    担当:タナベコンサルティング 戦略総合研究所