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今週のひとこと

ポジティブに考え、明るい言葉で
部下と話そう。前向きな上司は、
ゴールを目指してチームの総力を
結集する。

☆ 消費者自身も気づいていないニーズが見つかる?!「SNSプロモーション」

 最近、「消費者インサイト」という言葉をよく耳にします。マーケティングに関する言葉で、「顧客理解」という意味で使われます。企業がいかにして消費者の立場で、消費者自身が気づいていないニーズを見つけることができるかが、ヒット商品を生み出す鍵となります。

 ヒット商品を生み出すメーカーは、どのようにして顧客の声を拾い、ニーズを見つけ、市場をつくり出しているのでしょうか。答えはズバリ、消費者自らが発信しているSNS上の声に耳を傾けることです。そこで飛び交う彼・彼女たちのコミュニケーションは、消費者インサイトを知る上での宝庫です。流行りの言葉で置き換えるなら、「ソーシャルリスニング」です。自社で設計した枠の中で顧客とつながるオウンドメディアもありますが、顧客を囲い込み、離脱を防ぐためには定期的かつ、魅力的な配信が欠かせません。つまり、顧客を維持するためには、莫大な時間と労力が必要なのです。

 一方、SNSを活用するコミュニケーションは顧客が従来から行ってきたアプリケーションであり、もともと利用されているため、企業との繋がりにもストレスを感じることなく、接点を持ちやすいことが大きなメリットです。

 企業は、このSNSを使い、何をすべきなのでしょうか。SNS上に溢れる声をいかに拾い上げ、自社が提供する価値でどのようにして解決できるのかを顧客へ発信していく必要があります。

 SNSをWEBプロモーションとして活用していく上での、5つのステップは次のとおりです。

  1.顧客が気づいていないニーズを、SNSを活用したソーシャルリスニングで発見する。

  2.話題・テーマをもとに顧客とSNS上の接点を持ち、自社で価値提供できるヒントを探る。

  3.ヒントをもとに、新商品・サービスの解決策を開発する。

  4.新商品・サービスの案内をSNS上で発信する。

  5.SNS上でのコミュニケーションを継続する。

 SNSプロモーションとは企業側の一方的な発信ではなく、顧客との双方向のコミュニケーションです。旬の話題・テーマから、消費者が求めているニーズや、企業が導き出す価値へのヒントを見つけていく手段の一つとして利用すべきではないでしょうか。

SPコンサルティング本部
部長  筒井 美帆

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事業を取り巻く環境

 

顧客ニーズの多様化、IT技術の革新的な進化、オープンイノベーション、働き方改革、異業種からの参入など、企業を取り巻く経営環境は日々目まぐるしく変化している。その中で新たな収益の柱となる事業の創造は、企業にとって常に考えなければならない経営課題の一つと言える。

経済産業省の調査によると、主力事業におけるライフサイクルは、GNT(グローバルニッチトップ)企業であっても、10年以内との回答が66.7%と大半を占めている(【図表1】)。その他の企業に関して言えば、73.8%と7割を超えている状況である。つまり、顧客ニーズの多様化、技術の進化、モノ余りの現代において、ライフサイクルはどんどん短縮化しており、既存事業に固執した現状維持は近い将来の衰退を意味すると言っても過言ではない。

※ニッチ分野で高い世界シェアを有する中堅・中小企業

【図表1】主力事業におけるライフサイクル

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出所:経済産業省「2016年版 ものづくり白書」

そこで、適切なライフサイクルを確保するために、多くの企業がさまざまな取り組みを行っている。前述した経済産業省の調査では、大企業、中小企業ともに「価格競争に陥らない事業領域へのシフト」を実施している企業が多い(【図表2】)。そして、そうした取り組みを行っている企業の過去3年間の売上高を見ると、減少している企業は少ない傾向が見られたという。

【図表2】 適切な製品ライフサイクルの確保の取り組み(複数回答)

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出所:経済産業省「2016年版 ものづくり白書」

 

 

事業開発の着眼

 

新規事業のアイデアを考える時、よくマーケットインによる開発か、プロダクトアウトによる開発かが検討される。現代においてはどちらの考えが重要となるか。答えは両方だ。高度経済成長期までの日本は、モノ不足であったため2番煎じだろうが3番煎じだろうが、企業は「作れば売れる」時代であった。この時代においてはプロダクトアウト中心であったが、その後、顧客ニーズが多様化するに伴い、顧客の要望に応える製品・サービスを提供する(もっと言えば顧客の言いなり)マーケットインの傾向が高まった。

しかし、あらゆるモノ・サービスがあふれるモノ余りの現代においては、顧客課題を解決し、他社と圧倒的な差別化ができる価値提供(製品・サービス)の開発、すなわちプロダクトアウトの考えに加え、まだ顕在化していない潜在的な顧客ニーズを創造するマーケットインの両方の考え方が重要となる。

 

 

戦略的アライアンス

 

事業ライフサイクルが短縮化していく現在とこれからの時代、新規事業を推進する上で欠かせないのが、外部リソースの活用、つまりアライアンス(提携)だ。従来のように、自前主義で全て完結させようとすると、そこにかけるヒト・モノ・カネのコストが大きくかかり、上市(市販)する時はすでに他社が先行している、という場合もあり得る。

アライアンスには、開発コストや時間を大幅に削減できるメリットがあり、スピーディーに開発を進めるためにも、自社にないノウハウ・技術は外部リソースの活用で補填し、自前主義から脱却しなければならない。また、オープンイノベーションで自社の技術を外部に発信することも、アライアンスや新規事業につながる大きなきっかけとなる。

自社の技術を外部に発信することによって、これまで自分たちでは気付かなかった分野への技術の応用を、外部から提案してもらうことができる。「競争」ではなく「共創」という考えで、アライアンス先とWin-Winの関係を築き、圧倒的な顧客価値を開発してほしい。

 

 

トップの判断

 

例えば、経営戦略室やプロジェクトチームから新規事業のアイデアや事業計画が提案されても、中堅・中小企業においては最終的にゴーサインを出すのは社長である場合が多いだろう。その際、投資費用の金額面における不安や、その事業案が本当に成功するかどうか確信が持てないなどの理由から、結局、お蔵入りになってしまったというケースをよく見かける。

リスク管理はもちろん重要だが、失敗ばかりを恐れず、むしろ「失敗してもオーケー」という気概と、適度なリスクテークでどんどんチャレンジしていく企業風土を築きたい。

また、「3年で黒字化しなければ撤退」というように、撤退基準も明確にし、その中でどのようにアクションを起こしていかねばならないか、徹底的に戦略を組み、やり切ることが大切である。

アイデアだけでは机上の空論だ。実行しなければ成功するものも成功しない。ぜひ、思い切ったトップの判断で積極的に推進してほしい。

 

 

新たな顧客価値を創造する

 

5年後、10年後の市場はどう変化していくか。自社の業界だけにとらわれず広く予測し、その市場にはどんな製品・サービスが必要となってくるのかを考える。そして、その製品・サービスを具現化するために自社のどんな技術が応用・展開できそうか。また、不足している技術・ノウハウがあればアライアンスで補えるか。将来の仮説から振り返って現在の自社は何をすべきか(バックキャスト)、誰と組むのかを検討してほしい。潜在ニーズを掘り起こし、新たな顧客価値を創造して、皆さんがニッチトップ企業となることを願っている。

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  • タナベ経営
  • 経営コンサルティング本部
    コンサルタント
  • 林 洸一
  • Kouichi Hayashi
  • メーカーにて研究開発業務に従事した経験をもとに、「技術を軸とした企業の存在価値向上」を信条としコンサルティング活動を展開。固有技術・強みを生かした新規事業開発から展開、コア・コンピタンスの確立を通じた企業の成長支援など、幅広く活躍中。

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若手社員の育成を強化
「200年企業」を見据えた人づくりへ

 

140周年を迎えた老舗企業 架線金物を主力に事業拡大

内田鍛工は1877年、内田洋一郎社長の曽祖父に当たる内田銀次郎氏が鍛造品製造工場を設立して創業。2017年に創業140周年を迎えた老舗企業だ。三重県四日市市に置く本社を中心に、北海道と九州に拠点を設け、それぞれのエリアの特性に合わせた製品を全国へ提供している。

同社は創業以来、鉄の加工技術をベースに発展を遂げ、特に電力会社向けの架線金物(配電用装柱用品)を主力商品として事業を拡大。現在は電力分野にとどまらず、情報通信、建築、交通、電気機器、農業・水産などへと事業のフィールドを広げる。太陽電池モジュール架台、フェンス、ガードパイプや牧柵、自走式駐車場、洞道内金物、照明柱、通信鉄塔やシステムポールなど多岐にわたる鉄製品で、私たちの暮らしを支えているのだ。

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内田鍛工 専務取締役 内田 圭士郎氏

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内田鍛工 総務部総務課 山下 理恵氏

 

 

鉄は熱いうちに"叩け" 若手社員研修が充実

 

「高い加技術力とそれを受け継ぐ人を育て、社員全員で夫し、日本の業の基礎を支える」。そんな思いを込めて、社名は鍛造ではなく、あえて鍛の字を当てた経緯があるという。

社名の由来の通り、長い歴史の中で同社は継続して人材育成に力を入れ、日本の産業発展を支えてきた。中でも創業者の提唱した「鉄は熱いうちに"叩け"」、つまり若いうちにさまざまな機会を与えるべき、という教育理念は今も脈々と受け継がれている。

特に近年、同社はグループ全体で入社1~3年目の若手社員教育を強化している。例えば、入社1年目は報告・連絡・相談など基本的なビジネススキル、2年目になるとコミュニケーションスキル、3年目には問題の発見・解決といった具合に、年次ごとにテーマを設定し、順次習得できるよう体系的な研修をグループ3社合同で実施。この若手社員の教育研修プログラムは「CONNECT(コネクト)、未来につなげる」をテーマに、タナベ経営と共に構築したものである。

研修の成果もあり、若手社員の成長は目覚ましく、定着率も向上しているという。一方、若手社員の育成が進むにつれ、「彼らの上司も学び、変わっていく必要がある」といった新たな課題も浮上。内田社長の意向もあり、2018年から30歳代の若手社員を中心に人生観や仕事観などをテーマにした新たな研修を開始している。

専務の内田圭士郎氏は「社員や会社の成長につなげるために、社員一人一人の能力を高めていくことが大切。学びの機会も活用しながら徳を高めてもらい、豊かな人生を送ってもらいたい」と語る。同社ではこの他にも、一般研修、マシニング研修、幹部研修、経営管理研修など、社員のレベルに応じた研修を実施し、ステップアップを図りやすいよう支援している。

 

 

200年企業を見据えた人材育成、働き方を追求

 

新卒採用を継続している内田鍛工は近年、インターンシップを実施しており、2018年冬も大学3年生のインターン生を受け入れた。「職場の雰囲気や社員の様子も含めて自社を知ってもらい、ミスマッチを防ぐことで採用後の定着・活躍を促したい」(総務部総務課の山下理恵氏)との考えだ。

また、新卒採用時にはタナベ経営の「性格能力判定」を実施。社員一人一人の特性を把握し、採用した人材の育成や指導に生かすことが目的である。

「無難な人材だけでなく、ユニークでエッジの効いた人材、思考性や創造性の高い人材も積極的に採用したい。そうした人材を見極める評価ツールとしても性格能力判定は最適。また、こうした人材を採用したとき、当社で育てられる環境を整えることも必要」と内田専務。同社では採用以外にも、昇格時のスキルチェック機能としての活用なども検討していきたいという。

内田専務は今後、多様な働き方にも柔軟に対応する考えを示す。企業の人手不足が深刻化する中、従業員の多様な働き方に対応できるかどうかが、人材の獲得・定着の成否を握るからだ。「例えば、全員が同じ時刻に出社し、同じ時刻に帰る働き方が本当に必要だろうか?そもそも会社に来る必要があるのか?今後も今の営業スタイルでよいのか?など、今までの常識や手法にとらわれず、根本的に働き方を見直すことも必要になる。社員によってそれぞれ都合や事情も異なるので、多様な働き方に柔軟に対応できる組織づくりを進めて、よい人材の確保につなげていきたい」(内田専務)

「企業は人なり」といわれる通り、企業にとって最大の資産は「人」である。同社が創業150年、200年を迎えるためにも、人づくりへの継続的な取り組みが必要不可欠であることは言うまでもない。同社の未来を担う社員に向けて、内田専務は「失敗を恐れず、とにかくチャレンジしてほしい。世の中に常に必要とされ続けるために、自分たち自身が常に変化し、進化していく集団でありたい」と熱いエールを送る。

PROFILE

  • 内田鍛工㈱
  • 所在地:〒512-8062 三重県四日市市黄金町58
  • 創業:1877年
  • 代表者:代表取締役社長 内田 洋一郎
  • 売上高:31億1982万円(2018年5月期)
  • 従業員数:138名(2018年5月現在)
  • http://www.utk.jp/

  • 北海道内田鍛工㈱
  • 所在地:〒069-1507 北海道夕張郡栗山町字旭台23-81
  • 代表者:代表取締役社長 内田 圭士郎
  • 九州内田鍛工㈱
  • 所在地:〒848-0146 佐賀県伊万里市黒川町黒塩字分崎2098-1/li>
  • 代表者:代表取締役社長 内田 洋一郎

タナベ経営より

内田鍛工グループは三重県をはじめ北海道、佐賀県に子会社を展開。創業以来140年以上、鉄を加工する匠(たくみ)の技をベースに、電力会社向けの架線金物を主力商品として飛躍してきた。固有技術を活用し、電力分野以外にも情報通信、建築、交通、電気機器、農業・水産など多様な分野へ事業を展開している。

「昨日より今日、今日より明日へ」。新しく便利な暮らし創造の一翼を担うことを喜びとし、同社はさらに新分野の開拓に向かっている。「未来を拓く企業力を高めるためには、社員一人一人の能力向上が必要」との考えから、次世代を担う人材育成への投資も積極的だ。グループの今後の進化が楽しみである。

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経営コンサルティング本部
チーフコンサルタント
水谷 好伸

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    担当:タナベコンサルティング 戦略総合研究所