image1

今週のひとこと

未来が現在の延長線上であれば、
経営者はいらない。
新しい未来をつくろう。

☆ ビジョンを描き、見える形にする

 会社を発展させようと思えば、新たな事業や取組みが必要となってくるでしょう。そうすると、「それを任せることができる人材はいるか」「幹部人材は高齢化してきたし、中堅・若手クラスの人材も足りない」「人材の育成や、人の採用にも注力しなければならない」「彼・彼女たちをきちんと評価できているのだろうか」など、経営者であれば様々なことを考えるでしょう。

 最近、筆者は事業を承継されたのが数年前という後継経営者とディスカッションをする機会が多くあります。どの経営者も、会社を発展させ従業員に誇りを持って働いてもらい、そして、より良い暮らしができるように報いたいという強い思いをお持ちです。だからこそ、冒頭に挙げたような疑問や、やりたいことが次々と頭に浮かんでくるのです。
 半面、どれも必要かつ、やるべきことであるがゆえに、何から手をつけたらよいのか、優先順位を決めることができていないケースも少なくないように見受けられます。

 筆者がコンサルティングで携わったケースでは、まず自社の歴史を創業から振り返り、成長過程や価値判断基準を再確認する中で、「変えずに引継ぐこと」と「変えていくこと」を整理。そこに、後継社長が描く新時代の自社のあるべき姿を付加することで、優先順位を決めるための判断基準が完成しました。現在は、優先順位に沿って社内改革プロジェクトを実施しているところです。
 経営理念や社是に基づき、新たなビジョンを描き、数値を含めた経営計画を策定。そして、優先順位をつけることで各種施策の推進が可能となります。
 社長ご自身の思いをあらためて見つめ直し、それを見える形にして社内に示してみてはいかがでしょうか。

経営コンサルティング本部
チーフコンサルタント
小林 勝

consultant_reviewbanner


 

地銀の過半数が"本業赤字"

 

金融庁の「金融仲介の改善に向けた検討会議」が公表した報告書(「地域金融の課題と競争のあり方」、2018年4月11日)によると、地域銀行(106行)の過半数の54行が2016年度決算で"本業赤字"だったという。本業(貸し出し・手数料ビジネス)の儲けである「コア業務純益」(本業の利益から国債売買など一時的な変動要因を除いたもの)の減少が進んでいるのだ。

 

信用金庫(信金)と信用組合(信組)は業務エリアが決まっており、エリア外への出店はほぼない。第一地方銀行(第一地銀)・第二地方銀行(第二地銀)は株式企業であるため、エリアの制限はないものの、メインエリア以外では隣接する都道府県や全国主要都市への出店にとどまっており、業務エリアが限定しているビジネスである。

 

第一・第二地銀、信金、信組の多くは、本店所在地の都道府県が活性化すれば、連動して自らの業績も増勢傾向になる。地域が盛り上がれば、自分たちも盛り上がるという構図だ。いずれの金融機関も、店舗がある地域から資金(預金)を集め、その地域に資金を貸し出す(融資)からである。

 

勤める行職員もまた、その地域に住居を構える人たちだ。つまり行職員の業務の多くは、地元を支えるために「お金」というインフラを交通整理・整備していることになる。金利というのは、交通整理・整備をするための必要経費であり、お金を地域で循環させる活動資金になっている。その意味で、地域行政と似たような特徴を備えていると言える。

 

 

 

「守りの経営」から「攻めの経営」へ

 

地域金融機関は、経済の血液である資金を循環させるインフラであり、地域経済の心臓部だ。これまでの地域金融機関は、「健全性」を重視したリスクマネジメントに軸足を置いてきた。金融監督庁(現・金融庁)が発足して以降、いわゆる"金融検査マニュアル"を順守し、守りの経営に徹してきた。

 

だが、現在は地域に根差した「攻めの経営」を求められるようになった。ある金融機関のトップは「地域にどうやって貢献するのかだけを考える金融機関にしなければ淘汰される。そのために何年も意識改革を続けている」と述べている。いかにして地域活性化に貢献していくかが、今後の大きな課題になっている。

 

そのヒントとして、政府の「まち・ひと・しごと創生本部」がまとめた「地方創生への取組状況に係るモニタリング調査結果」(2018年2月公表)から、金融機関による地域活性化の取り組み事例を2つ紹介しよう。

 

(1)婚活支援から"将来支援"

 

北海道苫小牧市に本店を構える「苫小牧信用金庫」は2013年6月に、「とましん結婚相談所(LLB会)」を設立した。これは、結婚を望む地域の若者を会員組織化して、それぞれの希望条件に合う異性を紹介するものだ。お見合いから交際までを支援し、結婚後もライフステージに応じた相談やアドバイスを行い、各種金融商品の提案・利用につなげる。

 

同庫は「国勢調査」のデータから、営業エリア(1市6町)の20~30歳代人口(約4.6万人)の47.5%が「未婚」であることに着目。晩婚・未婚化の進行に歯止めをかけ、少子高齢化と人口減少の抑制に貢献することが、ひいては地域活性化につながるとして婚活支援事業に取り組んだ。当初、苫小牧商工会議所との共催で婚活パーティーを実施していたが、単に出会いの場をつくるだけでは不十分だったため、効果的な方法がないかと模索し、会員組織の設立にたどり着いた。

 

具体的な取り組み内容は、会員(入会金1万円、有効期間3年)に結婚したい異性の希望条件を聞き、それに沿った相手の写真・プロフィールを紹介。会う承諾を双方から得られれば、同庫本店内の応接室でお見合いを行う(お見合いの他、本店で年齢層別の懇親会なども企画している)。交際が始まると、同庫は最低月1回、双方から報告を受けて、状況確認やアドバイスをする。

 

入籍・結婚に至れば、各種イベントへの招待や、出産時に絵本をプレゼントするなどして、関係を継続する。やがてクルマや住宅購入資金、子どもの教育費、資産運用などライフステージに応じた資金需要が生じれば相談に乗り、会員限定の優遇商品(住宅ローンなど)を提案。婚活支援から"将来支援"へとつなげていく。

 

近隣市町村の自治体・商工会議所と連携協定を締結し、各広報誌に情報を掲載するほか、トヨタや王子製紙など大手企業とも婚活パーティーを共催している。現在(2017年9月末)の会員数は男女合計で463名、紹介件数は917件、うち34組が結婚(準備中を含む)し、3人の子どもが誕生した。「定期積金契約」や住宅ローンの利用のほか、会員親族の事業の設備資金応需につながるなど、本業面での成果も出ているという。

 

(2)中小企業の販路拡大支援

 

大阪市中央区に本店を置く「大阪シティ信用金庫」は、地域の中小製造業が持つ技術を大手企業とマッチングし、新たな事業創出につなげる「シティ信金PLUS事業」を展開している。

 

同庫と取引する中小製造業は、他分野でも生かせる高い技術を有していたが、販路拡大の手立てがないという課題を抱えていた。そこで同庫は、取引先企業の技術を製品化・転用化する仕組みが必要だと考えた。2006年に営業店と連携して取引先製造業をピックアップし、本部の企業支援部が訪問。事業や保有技術・特許などを調査し、画像や資料とセットにしたデータベース(DB)を独自開発した(現在2400社超が登録)。

 

同時に、関西地域に本社を置く大手メーカーと連携して協力体制を構築。併せて同庫内部で新たな体系的教育プログラムを取り入れ、企業支援部職員に研修を実施し、「技術と経営の分かる」人材を養成した。そして大手メーカーが抱える技術課題やライセンス可能な特許、販売可能な半製品、OEM供給などに関する情報を入手し、DBから選び出した取引先中小製造業をマッチングした。

 

営業店職員には、取引先中小製造業の技術を分かりやすく解説した『技術ハンドブック』(毎年改定)を配布し、これを基にしてDBの登録候補先企業の発掘や課題の発見、解決型提案営業などを実践した。その結果、大手メーカーに約1100案件を提案し、うち共同事業が約500件、製品・商品への採用が約120件に上り、取引先中小製造業の販路が拡大。飛躍的な売り上げの増加、それに伴う資金需要の創出、そして同庫職員の意識改革が進むなど、幅広い成果を得ている。

 

現在は、DBを活用して取引先企業同士のマッチングも行うほか、新たなビジネスモデルの構築支援や行政による各種支援策の活用支援、また大学などとの連携コーディネートを実施し、事業の成長や新事業創出に要する資金支援も実施している。

 

地域金融機関は、営業エリアの特性を認識し、自らの「ヒト・モノ・カネ・情報」を棚卸しして、地域活性化に向けた問題点を明確にする。その上で、「私たちは〇〇で地域に貢献する」と使命の再定義を行うことが重要である。

 

現状の各金融機関は、取り組み方針が横並びである場合が多い。エリアが近いライバルの金融機関よりも、自らの顧客とエリア特性を見つめ、より地域に密着した方針を構築すべきだ。そのためにも、全ての支店で全てのサービスを取り扱うのでなく、「このエリアの顧客のために」、特定サービスに特化する戦略もあり得る。ぜひ、支店・ブロック単位でエリア・顧客特性と問題点を分析し、解決に向けた取り組み方針と実行具体策を打ち出してほしい。

 

 

 

201810_review3_01

  • タナベ経営
  • 経営コンサルティング本部
    チーフコンサルタント
  • 神田 明生
  • Akio Kanda
  • 「顧客視点の本質思考で、企業成長を実現する」が信条。顧客の思いを共有化し、課題解決に向けた、分かりやすい解説を強みとしている。営業・採用・教育を中心に支援を行い、経営者から新入社員まで、幅広い階層から厚い信頼を得ている。

 

 

201903_index_consultaidan
2019年3月号

福岡県広川町(八女郡)に本社を置くオーレックは、年商136億円を誇る農業機械分野のトップメーカーだ。業界初となる画期的な製品を次々と生み出す背景には、70年にわたって蓄積した高い技術力と、農家の不満や細かなニーズに寄り添う超顧客志向がある。

 

 

201903_team_01

 

自走式草刈機の国内シェア40%超

 

平井 オーレックは、自走式小型草刈機において国内シェア40%超を占めるトップメーカーです。まずは創業の経緯やこれまでの事業展開についてお聞かせください。

 

今村 創業は1948年で、2018年に70周年を迎えたところです。父・隆起は戦後のモノ不足の時代に手作りで農業機械の製造を始め、1957年に株式会社化。その後は歯車をメインとする機械製品や耕運機、草刈機へシフトしました。特にチームコンサルティング対談草刈機については、他社に先駆けて業界初の製品を次々と世に送り出し、トップシェアを築くことができました。

 

平井 業界初の製品開発を生み出す秘訣はあるのでしょうか?

 

今村 お客さまのクレームに謙虚に耳を傾けることです。私は入社後に営業担当だったため、お客さまの不満や声を直接お聞きする機会が多く、既存の草刈機では対応できない分野が多くあると気付きました。

 

例えば水田の畔は、機械では通れない細い道の斜面と平面を同時に刈らないといけません。そこで、狭い所でも使える二面あぜ草刈機「ウイングモアー」を開発したところ、累計20万台を超えるヒット商品に成長。果樹園向けの乗用草刈機「ラビットモアー」も業界初でした。それまでは当社も操縦者が機械の後ろを歩いていく手押し式が主流でしたが、腰をかがめて作業しなければならない上、刈った草やほこりが後方に立つ操縦者の方に飛んでくるというデメリットがありました。そこで、車高の低いゴーカート式の草刈機を開発。座ったまま草刈りができ、作業部は自分が乗っている車体の下なのでほこりを吸う心配もありません。お客さまから「遊び感覚で草刈りができる」と好評を得ました。

 

平井 ユーザー目線の問題点が把握できるのは、現場を大事にされているからに他なりません。現場でしか見えてこない意見やニーズは数多くあります。

 

今村 おっしゃる通りです。乗用草刈機を発売した年、全国のお客さまの元を回りました。不具合などをお聞きして製品に反映するためでしたが、福島県のある農家を訪れた時のこと、「今までで一番の親孝行の機械」と褒めていただきました。その方は、中学生の息子さんに週末に草刈りを手伝うように言っておくと、土曜日の朝早くから息子さんの姿が見えなくなっていたとのこと。草刈りは大変な作業ですから、親に見つからないうちに出掛けてしまうわけです。仕方なく、少しでも楽に草が刈れるように当社の乗用草刈機を購入し、「さあ、草刈りをしよう」と納屋に行くと草刈機がない。辺りを探すと、なんと息子さんが草を刈ってくれていたそうです。さらに、「息子が『面白いから、これからずっと草刈りをする』と言ってくれた」と、大変喜ばれていました。この時、仕事の本当のやりがいとはお客さまに喜んでいただくことであり、そのためにものづくりをしていると、あらためて痛感しました。

 

平井 お客さまの視点に立った斬新な製品開発がオーレックの成功要因であることは間違いありません。今村社長が売上高を「貢献高」と呼ばれるのも、お客さまへの貢献が売り上げにつながるとのお考えからでしょうか。

 

今村 売り上げを目標にすると、どうしても無理に売るケースが出てきます。ですが、そういった売り方は長続きしませんよ。お客さまに喜んでいただく製品、世の中の役に立つ事業でないと続きません。言い換えれば、世の中に貢献した分が売上高になる。その金額だから貢献高。ずいぶん前から使っており、社内の共通言語になっています。

 

 

オーレック 代表取締役社長 今村 健二氏1952年福岡県久留米市生まれ。明治大学工学部機械科卒。半年間の米国留学を経て、1976年、父が創業した大橋農機株式会社(現・株式会社オーレック)に入社し営業部にて東日本を開拓。1988年、社長に就任し社名を変更。独創的な製品づくりで社長就任当時30億円だった売上高を現在の136億円へ成長させた。座右の銘は「百見は一感に如かず」。

オーレック 代表取締役社長 今村 健二氏
1952年福岡県久留米市生まれ。明治大学工学部機械科卒。半年間の米国留学を経て、1976年、父が創業した大橋農機株式会社(現・株式会社オーレック)に入社し営業部にて東日本を開拓。1988年、社長に就任し社名を変更。独創的な製品づくりで社長就任当時30億円だった売上高を現在の136億円へ成長させた。座右の銘は「百見は一感に如かず」。

 

 

オーレック ブランディング広報グループ 課長 関 雅文氏1974年福岡県福岡市生まれ。久留米工業高等専門学校機械工学科卒。1995年入社。営業部にて2010 年岡山営業所所長、2013年福岡営業所所長を経て2015年より現職。2016年のブランドリニューアルを手掛け、コーポレートブランディングの他、広報、採用、教育など経営戦略部門を担う。

オーレック ブランディング広報グループ 課長 関 雅文氏
1974年福岡県福岡市生まれ。久留米工業高等専門学校機械工学科卒。1995年入社。営業部にて2010 年岡山営業所所長、2013年福岡営業所所長を経て2015年より現職。2016年のブランドリニューアルを手掛け、コーポレートブランディングの他、広報、採用、教育など経営戦略部門を担う。

 

 

体系的に人材育成するオーレックアカデミー

 

小林 次世代経営者を育成するジュニアボードを導入されています。1年目は計画を作ってプレゼンテーションを行い、一部の提案は中長期計画に組み込んでいただきました。2年目に当たる今期は計画を実行する段階に入っていますが、社内や人材の変化を感じていますか?

 

今村 若い世代の経営者意識をどう高めるかについては、常に意識してきました。ジュニアボードは、次世代幹部の育成と若い世代のアウトプットを経営に活用できる一石二鳥の仕組みと思い導入を決めました。

 

効果としては、メンバーの意識の変化を実感しています。社員の視点はこれまで担当業務に偏りがちでしたが、ジュニアボードを通して会社全体を見る視点が養われています。例えば、決算書のベースを理解したことで、メンバーは決算書を見て会社で起こっている事象や今後の展開へひもづけられるようになってきました。

 

小林 オーレックは300名以上いるスタッフ全員が正社員ですね。人をとても大切にされており、人材育成にも力を注いでおられます。体系的な教育の中核を担うのが「オーレックアカデミー」ですが、アカデミーにおいて最も大事にされている点をお聞かせください。

 

今村 創業理念は、「世の中に役立つものを誰よりも先に創る」。これが業界初の製品開発を生み出し、お客さまに喜んでいただいた結果が貢献高となり、会社を成長させてきました。逆を言えば、他社と同じものを作っていては価格競争に陥り、尻すぼみになっていくということ。ここはオーレックアカデミーの根幹となる考え方です。

 

ただ、口で言うのは簡単ですが、実行するのは難しい。なぜなら、製品開発は何百もの失敗の上にようやく成り立つものですが、人間は本能的に失敗を避けようとします。それでも、お客さまの困り事の解決や満足のために、あえて挑戦する社員を育てていかないとお客さまに貢献できません。当社が目指すのは「超顧客志向」。今の時代、顧客志向はどの企業でも掲げていますが、同業者がやっているのと同程度で満足しているのは業界志向です。それに対し、お客さまの声に謙虚に耳を傾けるのが超顧客志向。超顧客志向でないと良い製品は開発できないことを、私自身の経験を踏まえてアカデミーで伝えています。

 

小林 超顧客志向に意識を変えるプログラムとは、どのようなものでしょうか?

 

今村 例えば、農業体験ですね。私も含め、昔は社員の大半が農家の子だったので、農家の状況や気持ちがよく分かりました。しかし、今では入社する社員で農家の子がほとんどいないので、農家にご協力をいただいて育ててもらっています。

 

小林 オーレックアカデミーやジュニアボードへの参加条件はあるのでしょうか?

 

 アカデミーにはさまざまな階層、部署の人材を選んでおり、これまでに約70名が受講済みです。その中から、ジュニアボードや新規開発プロジェクト、教育委員会などのメンバーを選び、次の段階に進んでもらっています。教育委員会は社内の教育の仕組みを考える委員会であり、教える側になってもらいます。実際に教えてみると、考えが整理されたり、新たな気づきがあったりと良い影響が出ていますよ。

 

平井 上司や人事の指示ではなく、実際に受講したメンバーからの推薦なら本人のモチベーションも上がるでしょうし、アカデミーを必要とする人材を選べる点からも非常に良い仕組みです。

 

 

 

ショールーム機能を備えたブランド発信拠点「OREC green lab」を全国に展開。製品の展示だけでなく、農業や食に関するイベントやセミナー、交流会を開催(左)

ショールーム機能を備えたブランド発信拠点「OREC green lab」を全国に展開。製品の展示だけでなく、農業や食に関するイベントやセミナー、交流会を開催(左)"食""環境""IT""健康"の4つのセグメントで新規事業を展開(写真右は『薩摩の濃緑青汁』)

 

 

4つのセグメントで新規事業を推進

 

中島 新規事業については10年以上前から取り組んでおられます。きっかけや苦労した点、狙いなどについてお聞かせください。

 

今村 1988年に社名を大橋農機からオーレックに変更し、私が代表取締役社長に就任しました。ちょうど創業から40年を迎え、創業者からは「業態を変えてもよい」と言われていましたが、それまでの強みを生かして草刈機事業を強化し、安全・安心な農作業の実現に貢献する道を目指しました。ただ、いつかは農業周辺で新規事業を立ち上げ、貢献できるフィールドを広げたいとも考えていました。

 

社長就任からしばらくは本業で手いっぱいでしたが、15年目を過ぎたころから新規事業をスタート。第1号として青汁の販売を事業化しました。現在までに種なしスイカ花粉や畜産消臭システム、IT、健康食品と、事業を広げています。

 

平井 農業の周辺産業は多岐にわたりますが、進出分野はどのように決めているのでしょうか?

 

今村 全体を4つのセグメントに分けて進めています。1つ目は"食"。有機栽培を支援する機械開発や、生産・加工・販売までを視野に入れた6次化の支援です。

 

2つ目が"環境"。これは畜産消臭システム「Dr.MIST」です。事業としては初期段階ですが、畜産の糞尿による環境汚染を改善し、畜産農家の経営改善を支援したいと考えています。

 

3つ目が"IT"。家庭菜園向けポータルサイト「菜園ナビ」には2万人のお客さまにご登録いただいており、家庭菜園を営む方や農家の方にもご利用いただいています。

 

4つ目が"健康"。青汁などの健康食品やその素材を使った美容石けんなどを製造販売しています。

 

中島 新規事業については、若手人材を中心とした6カ月コースの新規事業プロジェクトをスタートされています。成果について、どのようにお感じでしょうか?

 

今村 メンバーにとっても初めての経験ですから、すぐに事業化したり、アウトプットすることは難しいでしょう。ですが、考え続けることに期待しています。やはり、ベースは超顧客志向。アイデアを出して終わりではなく、顧客を巻き込んで試してみるなど、実際に行動につなげていくことに大いに期待しています。

 

インターネットには情報があふれていますが、実体験に基づく事業こそ本物です。聞いたり、調べて得た情報をうのみにするのではなく、それが本当なのか実際に自分で体験してみる。そうした行動力が新規事業には大事だと思います。

 

 新規事業プロジェクトで興味深かったのは、ソフトをテーマとするアイデアが多かったこと。当社はものづくり企業ですが、ソフト面の発想が出てきたのはオーレックアカデミーで培った力が生かされていると思いましたし、今後の可能性を感じました。アカデミーでは発想力の強化に力を入れていますから。ただ、アイデアをどう肉付けしていくかが重要です。アカデミーで学ぶ数値管理も生かしながら、今後はアイデアと数字を結び付けて具体化してほしいと期待しています。

 

 

太平洋周辺エリアで海外事業を展開

 

平井 2016年に掲げた「草と共に生きる」というブランドコンセプトに込められた思いについて、お聞かせください。

 

今村 安全・安心な農産物づくりを支援し、持続可能な社会に貢献する企業という気持ちを込めています。「安全・安心な農業」とは、例えば有機栽培や草生栽培ですね。環境や健康といった事業分野も全て、このコンセプトに基づいています。

 

平井 草とうまく付き合いながら安全・安心な農産物を支援するオーレックの事業を的確に表しつつ、より幅広い展開が期待できる良いコンセプトですね。今後はどのような展開を目指しているのでしょうか?

 

今村 デジタル化や無人化など、農業機械は転換期を迎えています。そういった流れに対応しながら既存事業を超えるトランスフォーメーションを目指すことになるでしょう。

 

国内は新規事業を広げていきます。また海外は農園規模の違いから、農業機械よりも緑化機械の需要が高く、特に雑草分野では、プロのガーデナーが使う機械として重宝されています。一方で、シャンパーニュやボルドーなどの高級ワイン産地のぶどう園では、その地域の栽培条件に合わせて開発した機械が広まっており、ブランドも浸透してきました。今後はさらに活躍できるフィールドを広げられると期待しています。

 

平井 ヨーロッパ以外の海外展開についてはいかがでしょうか?

 

今村 太平洋周辺の開拓に注力していきます。現在は海外向けが貢献高(売上高)の2割を占めていますが、エリアを拡大することでさらに伸ばせると思います。

 

アジアにも進出済みですが、いまだに雑草などを燃やしてしまう地域も少なくありません。ただ、環境意識も高まっており、経済成長に伴って草刈機の需要は拡大すると予測しています。また、ニュージーランドやオーストラリアも開拓中です。農業機械以外の新規事業についても、国内の成功事例の海外展開は十分にあり得ます。

 

平井 これまで培った高い技術力と超顧客志向の両輪で社会に貢献するオーレックが、ますますご活躍されることを祈念しております。本日はありがとうございました。

 

 

タナベ経営 経営コンサルティング本部 副本部長 平井 克幸経営者の参謀として、企業のさまざまな課題に精通する戦略コンサルタント。専門分野はブランディングをはじめ開発・マーケティングなど多岐にわたり、これまでに中堅・中小企業の成長支援を数多く手掛けてきた。著書に『ブランディングの本質 100年先につなぐ価値』(ダイヤモンド社)がある。中小企業診断士。

タナベ経営 経営コンサルティング本部 副本部長 平井 克幸
経営者の参謀として、企業のさまざまな課題に精通する戦略コンサルタント。専門分野はブランディングをはじめ開発・マーケティングなど多岐にわたり、これまでに中堅・中小企業の成長支援を数多く手掛けてきた。著書に『ブランディングの本質 100年先につなぐ価値』(ダイヤモンド社)がある。中小企業診断士。

 

 

タナベ経営 経営コンサルティング本部 部長代理 チーフコンサルタント 中島 望大手地方銀行にて実務経験を積んだ後、タナベ経営入社。きめ細やかな分析力と経営者へ一歩踏み込んだ提案には定評がある。ファミリービジネスチームメンバーとして、ホールディング経営体制支援や事業承継コンサルティングを中心に活動。

タナベ経営 経営コンサルティング本部 部長代理 チーフコンサルタント 中島 望
大手地方銀行にて実務経験を積んだ後、タナベ経営入社。きめ細やかな分析力と経営者へ一歩踏み込んだ提案には定評がある。ファミリービジネスチームメンバーとして、ホールディング経営体制支援や事業承継コンサルティングを中心に活動。

 

 

タナベ経営 経営コンサルティング本部 チーフコンサルタント 小林 宏輝「人の成長を通じて企業の成長を支援する」ことを信条とし、人材開発コンサルティング部のリーダーとして、多くの企業の人材成長を支援。経営コンサルティング部へ異動後も、次世代経営幹部~若手社員の研修で幅広く活躍中。また、人事制度構築、5S・見える化による企業体質改善などでも評価が高い。

タナベ経営 経営コンサルティング本部 チーフコンサルタント 小林 宏輝
「人の成長を通じて企業の成長を支援する」ことを信条とし、人材開発コンサルティング部のリーダーとして、多くの企業の人材成長を支援。経営コンサルティング部へ異動後も、次世代経営幹部~若手社員の研修で幅広く活躍中。また、人事制度構築、5S・見える化による企業体質改善などでも評価が高い。

 

 

PROFILE

  • ㈱オーレック
  • 所在地:〒834-0111 福岡県八女郡広川町日吉548-22
  • 創業:1948年
  • 代表者:代表取締役社長 今村 健二
  • 売上高:136億円(2018年6月期)
  • 従業員数:318名(2018年6月現在)
  • https://www.orec-jp.com/
  • お問合せ・資料請求
  • お電話でのお問合せ・資料請求
    06-7177-4008
    担当:タナベコンサルティング 戦略総合研究所