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今週のひとこと

優秀な人材は、魅力ある経営者のもと
に集まる。経営者は夢を語ろう。

☆ 採用したい人材に、自社の魅力が伝わっていますか?!
  「採用を成功させるための3つの力」

 筆者がセールスプロモーションや、コーポレートブランディングといったテーマのコンサルティングを行う中で、クライアントから相談を受ける機会が多い課題に「採用力強化」があります。特に、中堅・中小企業は深刻で、募集をしても採用面接に来る人は少なく、たとえ採用できたとしても、すぐに退職してしまう、といった悩みを抱えている企業が多いのです。

 人材獲得競争に勝つための採用力を強化するためには、従来の採用ポータルサイトでの募集や、合同説明会といった求人媒体への募集広告の掲載、就活イベントで母集団を形成するといった採用のやり方を見直さなければなりません。中堅・中小企業が取り組むべきは、受け身の採用ではなく、攻めの採用です。来てくれる人を待つのではなく、会社が求める人材をいかに獲得にするかです。

 今回は、「採用を成功させるための3つの力」についてご紹介します。

 まず1つ目は「採用マーケティング力」です。媒体に依存することなく、応募者にとって有益な情報を、いかにして提供するのか、というストーリーを設計する力です。
 そして、2つ目が「採用ブランディング力」です。これまでの「集める」から、「集まる」という採用手法へ転換し、社内・外において採用ブランディングを展開する力です。
 最後、3つ目は「採用推進組織力」です。これは、採用に関わるスタッフの能力を高め、採用活動を組織的に力強く推進する力です。

 採用がうまくいっている企業は、これら3つの力を高めることに注力しており、筆者のクライアント企業でも、応募者が興味を抱くような採用のWebページを作成したり、母集団形成を促すためのWeb広告を出稿したりするといった、いわゆる「採用Webプロモーション」を実施する企業が増えてきました。母集団形成を採用ポータルサイトに任せるのではなく、自社の採用Webページで魅力的な情報発信を行ったり、採用の広告出稿を実施したりすることで、ぜひとも入社して欲しい人材に響く採用活動をしていきましょう。

SPコンサルティング本部
部長代理
安永 信司

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次世代を担うリーダー人材の育成に注力

2020年で創業55周年 「生きるための力」を醸成
 幼稚園や専門学校などを展開する西野学園が、2020年に創業55周年を迎える。ベビーブームの到来で、幼児教育を行う施設が必要とされていた1965年、現理事長・前鼻英蔵氏の父に当たる前鼻時彦氏が、西野桜幼稚園(札幌市)を開園したのが同学園の始まりだ。その後、調理師高等専修学校の開校を経て、1982年に医療系専門学校へ進出。現在は札幌、函館を拠点に、医療福祉専門学校4校、幼稚園2園、学童保育1カ所を運営する。
 創業以来、同学園は学生の「生きるための力」の醸成に一貫して取り組んできた。専門学校では2007年以降、「教育の質の向上」に向けて改革を実施。「わかる授業」を理念に掲げ、学生の立場に立った授業を行うために教授法の見直しを続けてきた。
 一方、幼稚園は近年、定員オーバーが続いている。子育て世代の住むマンション、進学校への進学率が高い中学校と隣接するエリア特性に加え、自律・自立や集中力を養う「モンテッソーリ教育」を求める入園希望者の増加が主な要因だ。そのため両園とも全面改築を行い、2019年、2020年と相次いでクラスを増設。2園で合計約600人(従来比150人増)の園児受け入れ体制を整える。
 そんな西野学園では今、職員の構成が従来から一変している。というのも、先代の時代から勤めた人材が続々と定年を迎えており、現在は勤続年数10年未満の職員が全体の6割を占める。
 「将来を見据えたとき、これからの西野学園を担うリーダー人材を育て、組織力を向上させることが不可欠。特に中間管理職の成長は組織の地力であり、彼ら・彼女らを育てなければ、企業の成長はない」(前鼻氏) 「生きるための力」の醸成に一貫して取り組んできた西野学園。近年は「わかる授業」を追求し、教授法の見直しを図ってきた
「生きるための力」の醸成に一貫して取り組んできた西野学園。近年は「わかる授業」を追求し、教授法の見直しを図ってきた

西野学園 理事長 前鼻 英蔵氏
西野学園 理事長 前鼻 英蔵氏

人事制度改革を実行 "新しい風"が吹きやすい組織へ
 こうした危機感から西野学園では今、次世代を担うリーダー人材(経営人材)育成への取り組みを進めている。
 具体的には、従来の年功序列を改め、能力に応じて学科長などの職位を付与する人事制度へ変更。これにより、教育スキルと、社会人としてのビジネススキルの観点で職員を評価し、昇格(職位)を決める仕組みを整えた。
 「一定以上の能力があれば、誰でも学科長を務めることができるようにしました。さらに、学科長は2年の任期制へ変更。こうした改革で閉塞感やマンネリを打破し、新しい風が吹きやすい組織に変革するのが目的です」と前鼻氏。
 さらに、2015年からは中間管理職層を対象に、リーダー研修を実施。学科全体をマネジメントし、メンバーのモチベーションを高める、いわば学科長に必要とされるスキルを学ぶ研修だ。
 前鼻氏は「入学する学生は毎年違う。教員も自分の能力をどんどん磨き続けて変化し、向上する必要がある」「教育に終わりはない。自分たち次第で学生は変わるという意識を持ってほしい」と、職員の意識改革の必要性を語る。
 人事制度改定や人材育成研修に加え、チームで仕事をする意識を醸成するため、2016年には「N,sシート委員会」を立ち上げた。委員会は、対象を在校生、教職員、卒業生・地域連携の3つに分け、さらにソフト・ハード面に区分した6つの分科会で構成。入職3年以上の職員を組織横断的に配置し、3年間でPDCAを2回以上回す3カ年事業として取り組んでいる。
 委員会の目的は、セクショナリズムを排除し、チーム医療に貢献できる人材を育成すること。「部門の壁を超えて仕事をする癖を身に付けてほしい。組織全体で情報を共有しながら、職員が主体性を持って業務をスムーズに行えるようになってほしい」(前鼻氏)
 研修や人材育成策の成果は、確実に表れ始めている。
 例えば近年、函館や新札幌(札幌市厚別区)で開催した「西野マルシェ」は、教職員が自ら企画・運営し、やり遂げたイベントの好事例と言えよう。小学生たちに医療の仕事を体験してもらいながら、西野学園や医療業界について知ってもらう取り組みである。
 また、N,sシート委員会では年2回、同窓会誌を発行し、卒業生同士の交流やネットワークづくりを促してきた。さらに、55周年を迎える2020年には大規模な同窓会を企画。こうした取り組みのかいもあり、卒業生同士の交流は少しずつ活発化している。

社会的重要性の高まる専門学校の役割
 「専門学校では職業人教育を通じ、社会で活躍する人材を多数育成し、地域の重要な人材を供給していることを周知したい。学校側は、『こういう人材を育成してほしい』という産業界のニーズに柔軟に学校が対応していくことが不可欠です」と前鼻氏。
 社会の変化に応じて、教育も変化する必要があることは言うまでもない。日本の労働生産性を高めるカギも、教育が握ると言えよう。人生100年時代を迎える中、職業人教育を受けられる専門学校は、社会人の学び直しを考える上でも有力な選択肢だろう。ますます社会的重要性の高まる西野学園の今後が期待される。

PROFILE

    • (学)西野学園
    • 所在地:〒060-0004 北海道札幌市中央区北4条西19-1-3
    • 創業:1965年
    • 代表者:理事長 前鼻 英蔵
    • 売上高:31億1982万円(2018年5月期)
    • 教職員数:192名(2018年12月現在、パート含む) https://nishino-g.ac.jp/

タナベ経営より
学校業界は、変化に弱い業界である。世の中の変化に気付きながらも一歩を踏み出せず、行動できない学校は多いのが実態と言える。 そうした中、先進的な取り組みを実施し、全国専門学校のリーダー的存在になっているのが西野学園だ。具体的には、組織戦略改革の一環として、硬直しがちな学校組織にメスを入れ、学校業界には導入が難しいといわれた人事評価制度の展開や、管理職の教職員に向けたマネジメント教育を実施し、成果を上げている。 企業が即戦力人材を求める今、職業人を育てる専門学校が担う役割はますます大きくなる。今後の西野学園の活躍に期待したい。

経営コンサルティング本部部長 戦略コンサルタント細江 一樹
経営コンサルティング本部
部長 戦略コンサルタント
細江 一樹

Webプロモーションの強化で 新たな顧客や人材との接点を拡大


コストパフォーマンスの高い戸建て賃貸住宅「コダテックス」


顧客の細かい要望に応えながら賃貸マンションを建築・管理


リノベーション事業「リノシス」を通じて、デザイン性あふれる空間へのリノベーションが可能

賃貸物件の維持管理におけるパイオニア・貝沼建設。徹底した地域密着主義で支持を集める同社は近年、Webを使った広報・プロモーションを見直す中で、着実に進化を遂げている。

徹底した地域密着が高い信頼感を生み出す

 土地所有者にとって、相続は大きなリスクである。実際、「いかに相続税で資産を減らすことなく次の代に引き継ぐか」という悩みを、多くの土地所有者が抱えている。それを解決する有力な手段の一つが、賃貸住宅の建設・維持管理による土地・建物の有効活用だ。
 貝沼建設は1969年、全国に先駆けた新ビジネスとして建物リース事業をスタート。貸工場のあっせんから始まり、現在は賃貸住宅を中心に、土地・建物の有効活用に関するトータルサポート企業へと成長を遂げている。
 同社の最大の強みは、長年にわたり培ってきたノウハウと、徹底した地元密着志向にある。現在、名古屋市の本社を拠点に、同市内に6支店を構える。事業規模の拡大を追求し、展開エリアを全国へと広げる同業者も多い中、顧客とじっくり付き合い、二人三脚で信頼関係を作り上げ、地域の顧客の要望にもきめ細かく応えることに重点を置いている。
 「オーナーにとって、土地は命の次に大切な財産。その土地を有効に活用するために、『建物を建てて終わり』ではなく、オーナーが事業として成功するよう『いかに管理するか』を重視しています」と語るのは、総務部部長の土井裕之氏。
 というのも、賃貸事業には専門的なノウハウが必要だが、そうした知識を最初から持ち合わせているオーナーは多くない。そこで同社が不動産管理ノウハウを提案・提供し、サポートすることで、長期間にわたるオーナーとの信頼関係を構築しているのだ。
 オーナーから信頼される一つの目安として、賃貸物件の空室率がある。名古屋市の平均空室率は16%程度といわれるが、同社が管理する賃貸物件は4%台を維持している。総務部主任の市川剛氏は「入居率の高さという目に見える指標により、オーナーに安心して任せていただけます」と話す。
 賃貸物件のオーナーで組織する「ひまわり会」が活発なことも、オーナーとの強い信頼関係を表していると言えるだろう。ひまわり会では、法律や税務に関する勉強会を定期的に開催。また、2年に一度開催される総会を兼ねたバス旅行は、オーナー同士の情報交換や交流を深める良い機会になっている。

賃貸物件のオーナーで組織する「ひまわり会」。総会を兼ねたバス旅行などを通じ、オーナー同士の交流を深めている
賃貸物件のオーナーで組織する「ひまわり会」。総会を兼ねたバス旅行などを通じ、オーナー同士の交流を深めている

Webサイトリニューアルで問い合わせ件数が増加

 企業が成長するためには、新たな顧客との出会いが必須である。知名度向上に向け、貝沼建設はこれまでラジオコマーシャルやチラシ、看板などを広報・プロモーションに活用してきた。近年はホームページ(HP)の活用にも取り組んできたが、ページビュー(PV)はいまひとつ伸び悩んでいたという。
 「2年くらい前にリニューアルしたところ、逆にPVが大幅に減少してしまいました。『なんとかしなければ』と思い、コンサルティングで長年お付き合いのあったタナベ経営に相談したのです」(総務部主任の水戸みどり氏)
 実は、同社のHPには従来から「税務講座」などPVを稼ぐコンテンツがあった。しかし、地元密着型の企業であるだけに、他地域の人がたくさん閲覧しても取引にはつながらない。そこで、サイトの狙いやターゲットを明確化させる目的でリニューアルを行ったところ、予想に反してPVが激減してしまったのだ。
 総務部総務課の加藤純貴氏は「目的がはっきりしないまま手を加え、リニューアルで目的・ターゲットを定めたつもりが、結果的に間違っていたのだと思います。サイト同士の関連性も微妙でしたし、社員に分析力など専門知識がなかったのも課題でした」と当時を振り返る。
 タナベ経営と最初に取り組んだのが、サイトの目的の再設定だ。自社の本質的な強みは何か、今後の方向性はどうか、それらに対してサイト制作上で何が必要か、などを徹底して議論し、そこでたどり着いた項目を、サイト上へ実際に反映していった。またコーポレートサイト、各ブランディングサイト、物件紹介サイトの関係性を見直しながら、会社側が「伝えたいこと」ではなく、顧客視点でWebページの構築を進めていった。
 例えば、物件リノベーション事業「リノシス」のサイトは、目的を「リノシスのブランディング」、命題を「入居見込み顧客の獲得」に設定。それに合わせて、「本格的なリノベーション」「施工が丁寧」「入居率の高さ」などの訴求ポイントを明確化し、サイト上へ落とし込んだ。同様にコーポレートサイトや物件紹介サイトでも、より具体的な言葉で表現し、ページコンテンツ作成の指針とした。また、自社で運営できるようWebノウハウや知識の習得にも取り組んだ。
 PDCAを回しながら、約1年をかけてリニューアルを実施。その結果、建築の問い合わせ件数が増加するという"目に見える成果"に結び付いている。
 「リニューアルから数カ月で、取引につながる建築問い合わせの件数が急速に伸びました。以前は月1件のペースだったものが、今では週1件に増加しています」と水戸氏。
 成約につながる問い合わせが増えると、HPの役割は向上し、当然、手掛ける社員のモチベーションアップにもつながる。加藤氏は「問い合わせ件数が増えれば、HPに対する社内の認識が変わり、営業や支店の協力も得やすくなる」と話す。


左から3人目より貝沼建設 市川氏、土井氏、水戸氏、加藤氏

採用サイトを充実させ人材採用につなげる

 売り上げ拡大に向けたプロモーション戦略としてWeb活用を推進してきた貝沼建設は、現在、採用プロモーションにおいてもWebの活用推進に向けて取り組んでいる。
 これまで同社の採用は、社員の出身大学や部活などとのつながりを活用したり、紹介会社へ依頼するといったアナログな活動が中心。有名な大手求人サイトでは、掲載企業が多すぎて自社が埋没してしまうため、あえて掲載してこなかったという。ただ、学生は多くの情報をインターネットから得るため、いかに採用ページを充実させて学生に訴えることができるかが、人材採用戦略の鍵になる。
 現在、タナベ経営と共に自社の本質的な強みを洗い出し、「事業基盤の安定性」「仕事の力を伸ばすキャリアプラン」「ワークライフバランス」など、学生が着目するポイントで"刺さる言葉"を提示できるよう検討している。
 水戸氏は「HP作成のために『わが社の強みは?』といった議論をしていると、就職セミナーなどでも、学生に体系的で明確な説明ができるようになりました」と、Web活用推進プロジェクトの副次的な効果についても言及する。
 現在は総務部がHPの運用をはじめWeb活用を進めているが、「今後は、会社全体を巻き込んだ体制を整えたい」と市川氏。全社で一丸となり、"攻めのツール"としてWebを活用することで、同社のさらなる成長へとつながっていくに違いない。

貝沼建設 総務部 総務課 主任 市川 剛氏
貝沼建設 総務部 総務課 主任 市川 剛氏

貝沼建設 総務部 総務課 加藤 純貴氏
貝沼建設 総務部 総務課 加藤 純貴氏

PROFILE

  • 貝沼建設㈱
  • 所在地:〒460-0008 愛知県名古屋市中区栄5-7-14
  • 設立:1969年
  • 代表者:代表取締役 宇山 公一郎
  • 売上高:96億4000万円(2018年7月期)
  • 従業員数:133名(2018年8月現在)
  • http://www.kainuma.co.jp/

 現在のマーケティングにおいて、営業主体のプッシュ型戦略と顧客の行動を促すプル型戦略の両立が非常に重要となっている。その中でプル型戦略の中核を担うのがWebである。 同社ではWebの最適なターゲットと提供価値を設定するために、自社の提供価値を徹底的に追求した。これにより同社にとっての「Web活用のあるべき姿」を描くことができた。 また、この取り組みによって明確となった「本質的な強み」を生かすことで、Web以外の活動においてもこれまで以上の効果が期待できるだろう。 経営環境が急激なスピードで変化する中、自社を根底から見つめ直した同社のさらなる活躍に注目していきたい。


SPコンサルティング本部
中山 敬寛


SPコンサルティング本部
中井 慎吾

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    担当:タナベコンサルティング 戦略総合研究所