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今週のひとこと

顧客に役立つ情報をリアルタイムで
発信しよう。顧客創造につながる良い
情報は、質の高い情報発信によって
入手できる。

☆ 無駄なノベルティを作っていませんか?!

 「販促物やノベルティをなぜ配るのですか?」筆者がクライアントにこの質問をすると、「毎年配っているから」という意見が多く、営業パーソンであれば「何かお渡しできるものが無いとお客さまの所に行きづらいから」、展示会に出展する企業であれば、「ブースに人が来ないから」といった答えが返ってきます。

 販促物やノベルティの活用にあたり、まず、自社の事業や商品戦略をきちんと理解した上で、実現のために販促物やノベルティをどのような視点で選定するのか。そして、それを活用することでどのような成果をあげることができるのかを考えることが必要です。
 ノベルティを使用する場面もさまざまで、例えばキャンペーンや展示会、限られたプレミアム顧客への配付、不特定多数の顧客への配布など、用途に応じてその商品を選ぶ理由をコンセプトやキーワードをあげてよく考えなければいけません。コンセプトやキーワードを出す方法はさまざまですが、ペルソナ(商品・サービスを利用する顧客の中で最も重要な人物モデル)を設定するとよいでしょう。

 筆者が販促キャンペーンのコンサルティングを行ったゴルフ用品メーカーA社の実例です。ゴルフをする女性が増えてきており、A社ではターゲットを女性に絞った商品開発、販促戦略に力を入れていました。そこでA社が設定したペルソナは、
  1.年齢:30代
  2.所得:約500万円
  3.ゴルフ歴:3年以上
  4.キャリアを積んでいて仕事ができる
  5.練習場には月に2回程通い、ゴルフ場には3ヵ月に1回行っている
  6.ゴルフをする際のファッションにもこだわっていて、お金をかける
―という人物像でした。

 ペルソナへのノベルティとして、海外の高級文具メーカー製のノートにそのメーカーのロゴを大きく入れ、ビジュアル的に目立つ仕様で差別化したものを採用・配付しました。結果として商品キャンペーン期間中、店舗への来店客数の増加や商品の認知度向上に寄与しました。

 貴社では、「毎年配っているから」という理由だけで販促物やノベルティを作っていませんか。

SPコンサルティング本部
部長代理
池谷 滋

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人間教育を軸に、社会に貢献できる総合環境サービス業へ

産業廃棄物処理業から総合環境サービス業へ

沖縄県南城市に本社を置く街クリーングループは、1994年に産業廃棄物最終処分場として創業。その後、時代の変化や法改正に対応しながら建設分野や農業分野、エネルギー分野へと事業を広げ、総合環境サービス企業へと進化を遂げてきた。 陣頭指揮を執る代表の赤嶺太介氏が会社を引き継いだのは2000年。当時、8名だった社員数が19年の間に127名へと増加する中、求心力の源となっていたのが経営理念の存在だ。「総合環境サービスの提供を通じ、自然との調和の取れた人類社会を創造すること」「永続的に力強く成長発展する会社をつくり、全従業員の夢・目標を実現すること」「地域の支えに深く感謝すると同時に、誇りとされ、愛される人と会社であること」という3つからなる経営理念は、赤嶺氏自身が2年の歳月をかけて考案したものだ。 その背景を赤嶺氏は、「社員が増える中、意思の統一を図るものが必要だと感じていました。事業ですから収益を上げないといけませんが、産業廃棄物処理は社会インフラでもある大事な仕事。また、社員の夢の追求や地域に必要とされる会社になることなど、常に私の頭の中にある考えを文書化して伝えたいと思いました」と振り返る。さらに、7カ条からなる社訓を社員の行動指針として明確化。これによって日常業務の品質向上につながっている。

経営理念に基づいたリーダー育成に注力

会社が急成長を遂げる今、同社が特に力を注いでいるのが人材育成だ。「会社を成長させるのは人」と言い切る赤嶺氏だが、社員数が急増する過程では「社員をどうまとめていくか悩んだ時期があった」と打ち明ける。 そこから、同社の社員教育が本格的にスタートした。社員をまとめるリーダーの教育が必要との考えに至った赤嶺氏が、何よりも先に取り組んだのは、社長である自分自身の教育だった。 「当時は私自身がまだ若く、人として未熟な部分がありましたし、経営者としても経験不足でした」(赤嶺氏) リーダーをまとめるリーダーになるべく、率先して人づくりやリーダーシップ、経営について学んだ上で、部長、課長などリーダー層への教育を推進していった。 具体的には、社内プロジェクトの推進や資格取得制度の導入、タナベ経営が主催する「幹部候補生スクール」への派遣、また最近、スタートした計数管理に関する勉強会といった多面的なアプローチからリーダー育成に取り組んでいるが、中でも重視しているのが経営理念の浸透や社訓を通した人間教育の徹底である。 日々の朝礼や会議などで伝えているほか、赤嶺氏自身が定期的に経営理念に基づいて業務が行われているかを確認したり、リーダーと話し合ったりするなど、現場に繰り返し伝える努力を怠らない。「会社経営に数値管理は不可欠ですが、一番大事なのは経営理念です。社員のためになっているか、顧客のためになっているか、社会のためになっているかを常に確認しながら、人の成長につながる数字、社会的課題の解決につながる数字を追求するという軸がぶれないように徹底しています」(赤嶺氏) こうした地道な努力を続けた結果、「リーダーの意識が変わってきた」と赤嶺氏は手応えを感じている。次なる目標は、この変化を会社全体に広げていくこと。今期は社員教育の対象を若手にも広げるほか、今後は体系的な教育システムである社内アカデミーの導入も進めながら充実を図っていく考えだ。

経営理念と社訓のカードを従業員に配布。携帯しやすく、いつでも確認できる

経営理念と社訓のカードを従業員に配布。携帯しやすく、いつでも確認できる

【経営理念】 一、総合環境サービスの提供を通じ、自然との調和の取れた人類社会を創造すること。 一、永続的に力強く成長発展する会社をつくり、全従業員の夢・目標を実現すること。 一、地域の支えに深く感謝すると同時に、誇りとされ、愛される人と会社であること。

街クリーングループ 代表 赤嶺 太介氏

沖縄県内の廃棄物は全て県内で処理したい

産業廃棄物の最終処理業として沖縄県にも大きく貢献している同社だが、赤嶺氏が見据える先にあるのは一歩進んだ街クリーングループの姿だ。 「許可の関係もあり、現状は一部の廃棄物に関しては県外に出していますが、県内で出た廃棄物は全て県内で処理できる沖縄でありたいと私は願っています。その際、単に処理するだけでなく、できる限り資源化、エネルギー化する環境に優しい体制を構築したい。これには他社の協力や地域の理解が欠かせませんが、まずは当社がその体制づくりに取り組んでいこうと考えています。3年以内の実現が目標です」(赤嶺氏) 県内の産業廃棄物を全て処理できる体制づくりは地域や社会に貢献するだけでなく、地産地消型の先行モデルにもなり得る挑戦だ。これが成功すれば、同社に飛躍をもたらすことは間違いないだろう。 だが、狙いはそれだけではない。赤嶺氏が目指すのは、仕事を通した社員の夢の実現だ。「新しい領域に事業を広げながら、各部門の専門性を高めて新しい会社として独立させていくのが理想の形。社員には、仕事を通して今以上にやりがい、生きがいを感じてほしいと願っています。そのための挑戦でもあります」(赤嶺氏) この挑戦にはさまざまな壁が立ちはだかるだろう。しかし、赤嶺氏の目には、現在のリーダーが経営者となり成長していく姿、そして彼ら・彼女らが自社を大きく成長させていく姿がはっきりと映っている。

PROFILE

    • 街クリーングループ
    • 所在地:沖縄県南城市玉城字船越1237-1(営業本部)
    • 創業:1989年
    • 代表者:代表 赤嶺 太介
    • 売上高:20億5000万円(2019年3月期、速報値)
    • 従業員数:127名(2019年4月現在)

タナベ経営より

設立から30年を迎えた街クリーングループ。経営理念として「総合環境サービスの提供を通じ、自然との調和の取れた人類社会を創造する」を掲げ、社会性の高い事業で沖縄経済の発展に貢献している。廃棄物量の増加と県内の建設ラッシュに基づく需要増加を背景に、業績は右肩上がりに成長しているが、要因は環境変化だけではないだろう。赤嶺氏の常に先を見据えた先見力と決断力の根底には、明確なビジョンがある。近年は人材育成と採用を大きなテーマとし、「"個"の成長なくして企業の成長はない」と断言する赤嶺氏の眼は、ビジョン実現を目指し、常に未来に向けられている。

経営コンサルティング本部
部長 チーフコンサルタント
川口 勉

「未来の働き方」を具現化する新本社オフィス

デザイナーのためのワークスペース(上)オフィスの中央に、オープンなカフェスペースを配置(左)オフィスの一室に「座禅スペース」を完備(右)SDGsへの取り組みを社内外に周知し、啓発を図るためのバッジ(下)

デザイナーのためのワークスペース(上)
オフィスの中央に、オープンなカフェスペースを配置(左)
オフィスの一室に「座禅スペース」を完備(右)
SDGsへの取り組みを社内外に周知し、啓発を図るためのバッジ(下)

国を挙げた「働き方改革」の取り組みが進む中、イトーキでは" 明日の「働く」を、デザインする。" をミッションステートメントに掲げ、自社の働き方の変革に取り組んでいる。中でも、2018年に開設した新本社オフィス「ITOKI TOKYO XORK」では「自由」と「自律」をキーワードに、一人一人の働き方の自律的なデザインに挑戦している。

新しい働き方の提案でSDGsに貢献

現在、先進国のみならず途上国における経済活動が急速に活発化しており、国際社会では「持続可能な開発」が喫緊の課題となっている。国連は2015年に「持続可能な開発のための2030アジェンダ」として、17のゴールと169のターゲットを設定。それらは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」、通称「SDGs」と呼ばれ、普及が進んでいる。すでにSDGsへの取り組み姿勢を投資の判断基準とする考え方も広まっており、国家レベルだけでなく、今や企業にとっても戦略的に取り組むべき経営課題となっている。 こうした中、「人も活き活き、地球も生き生き」を掲げ、持続可能な社会の実現を目指すイトーキグループは、オフィス環境や空間デザインの改革により新しい働き方を提案。同社の取り組みは、働きがいのある仕事と持続可能な経済成長を目指すSDGsの目標にも合致している。同社の考えを体現するのが、2018年に開設された新本社オフィス「XORK」である。

働き方の進化系「XORK」

東京・日本橋に位置するイトーキの本社は「XORK」というコンセプトでつくられた最先端のオフィス。XORKとは、アルファベット順でWの次に来る"X"とWORKをかけ合わせた、「働き方の進化形」を示す造語だ。 XORKは、オフィスにおける働き方を「高集中」「コワーク」「対話」「アイデア出し」など10のタイプに分類し、仕事の目的に沿って自己裁量で適切な場所を選ぶというABW(Activity Based Working=仕事の内容に合わせて働く場所を選ぶ働き方)の考え方を推進した構成である。 ワークスペースはフリーアドレス。社員には個人ロッカーが割り当てられており、どこで仕事をしても構わない。集中したいときは集中ブースや個室、相談するときは対話スペースといった具合に、仕事内容に合わせて最適な場所を選択できる。 長方形のオフィスでは、中央にコミュニケーションスペース、両端に行くほど集中度を高めるスペースが配置されている。また、各フロアにカフェスペースが設けられ、座禅が組める空間や休憩・仮眠できるリラックススペースもある。 XORKの設計に携わった中野健司氏(FMデザイン設計部部長)は「居心地の良さを追求し、より家庭のリビングに近づける発想で設計しました。リラックスしながらパフォーマンスをいかに向上させるかに着目したのです。現在の働き方改革は、『時短』がキーワードとなっていますが、次はオフィスの環境が注目されると考えています」と話す。 同社が東京に分散したオフィスを集約移転し、XORKがオープンしたのは、2018年秋。移転に先駆けて、まず経営幹部が目指すべき働き方・オフィスのコンセプトを提示。次にどういったオフィスにするかを社員がワークショップ形式で検討しながら、具体策へと落とし込んだ。 働き方を変えることに社内の抵抗もあったが、「まずはやってみようと思いました。うまくいかなければ、変えていけばいい。失敗も貴重な経験値となりますから」とCSR推進部部長の原孝章氏。確かに、新しいオフィス空間を提案する同社にとって、自社での取り組みという経験値は失敗も含め、大きな財産になる。 XORKの取り組みは、社内外で大きな反響を呼んだ。広報IR部部長の川島紗恵子氏は「1日20組ほどの見学があり、メディアの取材も数多く依頼があります。実際に来られると、その規模と取り組みの徹底ぶりに驚かれます」と話す。 3フロアに跨るオフィスは中階段で移動でき、全フロアを見学することができる。役員スペースも例外でなく、社長・会長がガラス張りの自室で執務中でも見学できる徹底ぶりだ。 原氏は「最先端のオフィスなので、そのままお客さまのオフィスに当てはめるのは難しい。XORKからヒントを得て、お客さまのオフィスにどのように落とし込むかが重要」と指摘する。

ABWの考え方に基づく「10の活動」

©2018 Veldhoen+Company All Right Reserved.※「10の活動」はオランダのワークスタイルコンサルティング企業VELDHOEN+COMPANY社の研究により作られた考え方。イトーキは同企業とABW(Activity Based Working)のビジネス展開について業務提携を結んでいる

©2018 Veldhoen+Company All Right Reserved.

※「10の活動」はオランダのワークスタイルコンサルティング企業VELDHOEN+COMPANY社の研究により作られた考え方。イトーキは同企業とABW(Activity Based Working)のビジネス展開について業務提携を結んでいる

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「人を優先させる」ポリシーの具現化

XORKは、働く人の健康・快適性に焦点を当てた建物・室内環境評価システム「WELL認証」に基づいている。WELL認証は、①空気、②水、③食物、④光、⑤フィットネス、⑥快適性、⑦こころの7カテゴリー、約100項目の基準で評価される。イトーキは予備認証(ゴールドレベル)を達成しており、2019年度中に本認証を取得する見通しだ。 中野氏は「WELL認証の取得により社員の健康と生産性を向上させるという観点だけでなく、認証を取得したオフィスであることが新たな付加価値になります」と話す。オフィス環境の整備により、「人を優先させる」という企業のポリシーを伝えられるのである。実際、こうした働き方改革への取り組みは、人材採用にもプラス効果をもたらしている。 「働き方の改革に際し、最初は社内の抵抗もありましたが、例えば『書類ってそんなに必要ない』など、社員の価値観も徐々に変わり始めています。次の段階として、こうした自社の取り組みによる成果を、お客さまへ還元していきたい」(川島氏)

社会課題の解決が事業の持続性を生む

XORKやWELL認証の取り組みは、いずれも「社会課題を解決する」という経営方針に基づくものだ。「お客さまの課題は、社会の課題でもある。お客さまの課題に対してイトーキができることは何かを考えることが、社会課題の解決につながるのです」と原氏。さらに、「お客さまの課題を解決するパートナーであり、社会課題を解決できる企業として、私たち自身がCSRの最先端を行き、ESGの評価を上げられる会社になることが大事」と原氏は続ける。SDGsの全項目を一企業が解決するのは難しいが、オフィスで働く人のマインドを持続的に高める環境とは何かを考えることは可能だ。 タナベ経営では、働き方改革をはじめとする同社のSDGsへの取り組みを対外的に周知し、社内への啓発を図るため、胸につけるバッジの製作などでサポートをしている。今後も多方面へのネットワークを活用しながら、同社のオフィス改革への取り組みや、次号で紹介する工場におけるオフィス改革を広くアピールするサポート役を担う考えである。 働きやすいオフィスを提供することを事業領域としてきたイトーキ。今後は、「働くこととは何か」を追求し、付加価値を探ることに重点を置くと言う。原氏は「新卒採用においても、『社会に役立つ仕事』が評価基準となっています。社会の価値観が変わっており、顧客満足(CS)や従業員満足(ES)という経営課題に取り組まない企業は持続しないと考えられています」と指摘する。

※米国で開発された居住環境評価システム。第三者審査機関のGBCIが評価し、レベルに応じてプラチナ、ゴールド、シルバーの認証が付与される

イトーキ 管理本部 CSR推進部 部長 原 孝章氏(左)
イトーキ 営業本部FMデザイン統括部 FMデザイン設計部 部長 中野 健司氏(中央)
イトーキ 管理本部 広報IR部 部長 川島 紗恵子氏(右)

PROFILE

  • ㈱イトーキ
  • 所在地:東京都中央区日本橋2-5-1 日本橋髙島屋三井ビルディング
  • 創業 : 1890年
  • 代表者:代表取締役社長 平井 嘉朗
  • 売上高:1187億円 (連結、2018年12月期)
  • 従業員数:2007名(2018年12月末現在)
  • 問い合わせ先 : itk-ir@itoki.jp

多くの企業が取り組んでいる「働き方改革」には、さまざまなアプローチが見られる。イトーキの場合、「働き手の能力を最大限に発揮できる環境をつくる」というアプローチを行っている。特筆すべき点は、自社の現場を改善した上で、成功体験や失敗談を、知見としてクライアントに提供する姿勢である。

知見が各社に広がることで、多くの企業の働き手は能力を最大限に発揮できる環境で、「働きがい」を感じながら働く。それこそが、SDGs に対する同社の貢献の形と考えられる。これからも企業や働き手に価値を提供し続けるイトーキの活動に注目したい。

戦略総合研究所
デザインラボ 副本部長
貞弘 羊子

SPコンサルティング本部 課長代理 
SPチーフコンサルタント
田付 航

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