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今週のひとこと

年度方針は中・長期経営計画と
バランスさせよう。

☆ 意味のあるマーケティングを行っていますか!?

 テレビCMやインターネット広告などの「広告・宣伝」、クーポンやノベルティーグッズの配布といった「販売促進」、プレス発表や会社案内などの「パブリシティー」、他にもサンプリングやダイレクトメールなど、コミュニケーション・ミックスの手法は数多く存在しますが、いずれにせよ顧客の課題の解決策になっていますでしょうか。

 私たちは朝起きてから夜寝るまでの間、さまざまな種類のコミュニケーション手法に触れています。朝テレビをつけるとCMが流れ、会社へ出社する途中で読む新聞には広告が掲載され、電車内のモニターに交通広告が映し出される。そして、会社から帰る途中には街頭インタビューと称したサンプリングやノベルティーの配布など、さまざまなコミュニケーション手法に触れています。こうした状況を踏まえると、まさに「広告戦国時代」と言っても過言ではありません。

 筆者はコンサルティングを行う際、クライアント企業のマーケティング担当者と一緒に仕事をする機会が多くあります。今回は、そこでの実例を二つご紹介します。A製品のテレビCMでは、価格の安さを前面に顧客価値を訴求していたのですが、店頭のPOPでは、作業時間の短縮を訴求していたことがありました。
 また、別のクライアント企業では、B製品のキャッチコピーや製品写真、色、柄のポスターデザインを作成していたのですが、広告出稿の直前で、C製品のキャッチコピーや製品写真も追加したデザインでポスターを作成したいという要望がありました。このようなことでは、製品の価値を十分に伝えることはできません。

 マーケティング担当者自身、広告を出稿することが目的になっていて、"顧客の課題は何か?"、そして"その解決策は何か?"ということを理解できておらず、結果として顧客価値のポイントも認識できていないのです。
 顧客価値を考える上では、
 1.コスト:金銭的・時間的・心理的
 2.ベネフィット:サービス・イメージ
――の二つの軸で考えることが必要です。
 広告戦国時代の中で、顧客価値を統一したコミュニケーション・ミックスで最大限の価値訴求にチャレンジしていきましょう。

SPコンサルティング本部
課長代理
加藤 善介

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未来を具体的にイメージする重要性

2020年7月、約50年ぶりとなる東京オリンピック・パラリンピックが催される。2019年5月から観戦チケットの抽選販売も始まり、すでにワクワク・ドキドキしている人も多いだろう。 振り返ると、2013年9月7日に東京オリンピック・パラリンピック開催が正式決定した際、日本の将来・未来が明るく見えてワクワク・ドキドキし、気持ちが前向きになったことを、私は今でも鮮明に覚えている。 その時、私は「未来(ビジョン)を描き、そのビジョンでフォロワーをワクワク・ドキドキさせること」が紛れもなくリーダーの仕事であると感じ、未来を具体的にイメージすることで、人は物事に前向きに取り組むことができるのだとあらためて実感した。 コンサルティングでお会いする経営者の中には、「ビジョン・中期経営計画は思い通りにならないので作成しない」「考えても分からない未来の経営計画を作ることに価値を感じない」など、ビジョン・中期経営計画策定に対して否定的な意見を持つ向きも多い。経営者の考え方・価値観もそれぞれなので異を唱えるつもりはないが、「ビジョン」を示すことと、会社を「ブランディング」することは、経営者にしかできない、非常に重要な仕事ではないだろうか。

ビジョンで社会をより良くするという意思を示す

ビジョン・中期経営計画とは、あるべき姿(ビジョン)と現状とのギャップを分析し、そこから見える課題を具体的な施策と実行計画に落とし込む(中期経営計画)ことで、現状とのギャップを埋め、組織を持続的に成長させるためのものである。これを設定することにより、進むべき方向が明確になり組織の求心力につながる。 ビジョンを打ち出していない会社は、この重要性を理解していないのかもしれない。 以前、経営者A氏とディスカッションをした際、A氏はビジョン・中期経営計画策定の重要性について、こう述べていた。 「自社よりも小さく、お金がない会社と付き合う企業は少ない。だが、ビジョン・中期経営計画を作り、社員や外部に打ち出すことを継続していくと、それに共感・共鳴してもらえるようになる。すると、自社よりも大きく、お金を持っている会社から、または、社長よりも優秀な人材から、『そのビジョン達成のために働かせてください』と声が掛かる」 これこそがビジョン・中期経営計画の力ではないだろうか。 人も企業も、会社のビジョンや方向性、考え方に共感し、社会をより良くしたい(貢献したい)という流れになってきている。 特に最近はこの傾向が非常に強く、中小企業でもM&A、経営統合、提携などは戦略オプションの一つとなっている。 ぜひ、社員とともにビジョン・中期経営計画を作り、社員がワクワク・ドキドキする会社を目指すという意思を持ってほしい。


【図表】プッシュ型セールスとプル型セールスの違い

ブランディングで事前価値を高める

私は、ブランディングとは自社・商品・サービスの事前価値を高める取り組みだと認識している。 「取引して、初めて貴社が良い会社だと知りました」「貴社の商品を使用して良い商品だと分かりました」「貴社に入社して良い会社だと感じました」。確かにうれしい言葉ではあるが、重要なのは取引する前に自社の良さを理解してもらうこと(自社・商品・サービスの事前価値を高めること=ブランディング)である。 企業価値を高めるための取り組みの変化として、ここ20年間で他の機能と比較して最も変わっていなかった「販売・営業」のやり方が大きく変わろうとしている。「プッシュ型セールスからプル型セールスに変える」とかなり前から言われていたが、実際はガチガチのプッシュ型セールスが多く、大きな変化はなかった。 しかし、直近の3?5年を見ると、電話アポイントメントや訪問営業で顧客との接点を作ることにより会社訪問へとつなげ売り上げを獲得するプッシュ型セールスではなく、事前に自社の商品・サービスを知ってもらった上で購入を促すプル型セールスに変わりつつある(【図表】)。インターネットやSNSの浸透により、顧客が商品やサービスを時間をかけて知ったり、選んだりすることが可能になったからだ。 その結果、顧客は商品やサービスについて非常に詳しくなっており、余計な説明(プッシュ型セールス)はかえって不快に感じる。しかし、企業側は「昔のやり方で頑張れば頑張るほど顧客は離れていく」ということに気付いていないケースもある。 企業主体の営業から顧客主体の営業に変わる時代において、経営者や営業責任者は、従来の販売・営業方法を変えていかなければならない。 昔はテレビCMや新聞・雑誌への広告など、非常にコストが高い上に効果も見えにくい媒体が多かった。だが、現在は低予算で効果の高い、自社の顧客ターゲットに絞ったブランディング活動ができるようになっている。これもインターネット・SNSの浸透があってこそだ。これを活用しない手はない。 ビジョンを打ち出し、社員をワクワク・ドキドキさせ、ブランディングで顧客に事前価値を提供し、成長する。経営者にはそういったビジョン策定とブランディング活動に、ぜひ重点的に取り組んでいただきたい。

  • タナベ経営
  • 経営コンサルティング本部
  • 副支社長
  • 番匠 茂
  • Shigeru Banjyo
  • 長年にわたる営業部門での経験を生かし、各企業の経営コンサルティング、幹部人材の育成などで活躍中。トップ・幹部と一体になった実践的な取り組みにより、クライアントへの熱い思いをベースに進化を実現。数多くの成長企業を支えている。

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次世代リーダー候補が活躍 チャレンジ精神あふれる人材を育成

海外拠点も充実した日本屈指の総合分析会社

住化分析センター( 以降、SCAS)は、日本を代表する総合化学メーカー・住友化学の大阪工場の分析部門から独立(1972年7月)した企業だ。資本金200万円、社員数12名、売上高1億円に満たない規模からスタートし、いまや最先端の分析・評価技術と分析装置を有する国内最大規模の総合分析会社へと成長した。また、シンガポール、中国、韓国、台湾、ベルギーにも拠点を広げ、グローバルな分析・評価事業に力を注いでいる。 「世の中の環境変化が激しく、技術革新のスピードも加速しています。その中で勝ち残るには、ビジネスチャンスを的確に捉え、迅速に対応することが求められます」 代表取締役社長の丸山修氏は、SCASの事業環境をこう述べる。環境変化に対応するため、同社は2018年にビジネス領域をそれまでの5事業部(環境、電子、医薬、工業支援、化学品安全)から3事業部(医薬、マテリアル、健康・安全)へドラスチックに再編した。 医薬事業は、製薬会社を主要顧客として生体試料中の薬物濃度測定や品質・安定性試験、微量金属分析などの機能を分担できるパートナー的な立場でサービスを提供。 また、マテリアル事業では有機物や金属、セラミックスなどの原材料・機能材料から、エレクトロニクスやエネルギー、自動運転などに関係する最先端製品に至るまで、分析・評価を通して顧客の課題解決を促す支援サービスに取り組んでいる。 さらに健康・安全事業では、ヘルスケアや環境関係の会社を主要顧客として医療機器や食品・化粧品の初期研究段階の分析、各種申請支援、水・空気・土壌の分析などのサービスを展開している。 「再編によって事業の効率化が図れたと実感しています。今後は、事業部同士がシナジー効果を発揮する関係づくりに取り組みます」(丸山氏)

住化分析センター大分ラボラトリーに掲げるコーポレートスローガン

同社では数少ないが分析機器も開発・販売。写真は食品・飼料・肥料・土壌・化学品等用の燃焼法全窒素(たんぱく質)・全炭素測定装置

住化分析センター 代表取締役社長 丸山 修氏

住化分析センター 取締役 総務管理室長 新名 清澄氏

住化分析センター 取締役 総務管理室長 新名 清澄氏

中期経営計画策定は次世代リーダー育成研修の実践の場

SCAS の事業活動を支える経営理念は、「分析および関連技術を基盤として、お客様の求める新しい価値を継続的に創造します」「価値ある商品・サービスをお客様、社会に提供することによって人と社会の発展に貢献します」「人を大切にし、活力溢れる企業風土を醸成し、お客様、社会から信頼される企業として持続的に発展します」―である。

また、「すべては分析に始まる 輝かしい 未来の設計のために 最高の分析技術を通じて 人類と社会に貢献する」というコーポレートスローガンも定めている。「『すべては分析に始まる』という言葉が分析技術者の心をグッと捉えるようで、新卒採用に応募する学生からも『この言葉に惹かれた』という声がよく聞かれます」と丸山氏は笑顔を見せる。 こうした経営方針との関連付けを重視した第8期中期3カ年経営計画「SKK-8(エスケイケイエイト)」が現在、進行中だ。「目標は収益性の向上です」と丸山氏は述べる。 SKK-8の策定に大きな力を発揮したのが、次世代リーダー育成研修の修了生たちである。SCASは第6期中期経営計画(SKK-6)の実施時に、タナベ経営による次世代リーダー育成研修をスタート。1期生(2013年・2014年研修)10名、2期生(2016年・2017年研修)10名を輩出。2019年8月からの第3期は13名が受講する。同社と同等の規模で33名の幹部候補生を有する企業は希少だ。まさに「未来への投資に長けた企業」と言えよう。 次世代リーダー育成研修を始めた理由を聞くと、「住友化学から出向してくる経営幹部が少なくなること。さらに、定期採用の総合職入社組が経営幹部の候補者になり得る年齢に差し掛かってきたことです。研修を受けた社員の中から、数年後には事業部長・ラボラトリー所長が誕生することを目的にしました」と、取締役総務管理室長の新名清澄氏は振り返る。その期待に応えるように、1 期生の中から事業部長、中国子会社の董事長兼総経理、ラボラトリー所長が誕生した。 「SKK-8はタナベ経営の協力を得て策定したのですが、各部署に在籍する次世代リーダー育成研修の修了生が中核になって、スピーディーかつ的確に作業を進めてくれました。まさに次世代リーダー育成研修の実践の場だと感じました」と新名氏は語る。

変化を生み出す人材を育てる風土づくりが必要

丸山氏は、タナベ経営が提唱する"ファーストコールカンパニー"に強く共鳴していると言う。 「商品群が多い半面、一つの商品群の売り上げがそれほど多くないことが当社の課題です。この課題を克服するには、各商品群で"ファーストコール"となる商品をそろえることが必要。一方、お客さまの事業領域の境界はなくなりつつあり、連携や協業を積極的に行うようになりました。連携や協業のキーカンパニーとなれる強みをつくり、研磨しなければなりません」 その着地点は、50年先にある。「当社は2022年7月に創立50周年を迎えます。100年企業を目指し、次の50年は" 人"が事業ベースになります。自ら考え、提案し、実行する人材が必要。環境の変化に対応するだけでなく、当社自体が変化を生み出すような、チャレンジ精神あふれた人材を育てる風土づくりが求められます」。チャレンジャーを育てる土壌づくりに向けたチャレンジが、丸山氏に課せられた使命だ。

PROFILE

    • ㈱住化分析センター
    • 所在地:大阪府大阪市中央区高麗橋4-6-17 住化不動産横堀ビル(大阪本社)
    • 設立:1972年
    • 代表者:代表取締役社長 丸山 修
    • 売上高:180億円(2019年3月期)
    • 従業員数:1150名(2019年3月現在)

タナベ経営より

住化分析センターは現在、中期3カ年経営計画「SKK-8」を進行中だ。分析企業の鍵を握る優秀な技術者集団を統率し、経営のかじ取りができるバランス感覚の良い人材を育成するために次世代リーダー育成研修も充実させている。同研修は、部門経営者を育成する「経営センス編」と事業戦略を全社視点で構築する「事業センス編」で構成され、現在第3期生が学びをスタートさせている。SKK-8は研修の修了生が中核メンバーとして参画し、策定したものだ。ファーストコールカンパニーを目指す同社には、「企業は人なり」を実践する風土があり、それらを下支えする経営システムが機能している。次の50年を約束する楽しみな企業である。

経営コンサルティング本部
本部長代理 戦略コンサルタント
松本 宗家

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    担当:タナベコンサルティング 戦略総合研究所