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今週のひとこと

まずは、「こうなりたい」という望みを持とう。
やがてそれが「こうなるんだ」という意志となり、
「必ず実現できる」という強い信念に変わる。

その伝え方で、本当の価値が伝わりますか!?

 A社は、沖縄で定番のかりゆしウエアといえば真っ先に名前の挙がるブランドを展開しています。今から約50年前、沖縄観光連盟がアロハシャツに負けないリゾートウエアを作ろうと「おきなわシャツ」の製作をスタートしたのが始まりです。県外の方にはあまりなじみがないかもしれませんが、沖縄ではホテルや空港、お堅いイメージの銀行や市役所でも、かりゆしウエアをユニフォームとしており、「日常使いしやすい」作りとなっています。また、結婚式にかりゆしウエアで出席する人もいて、沖縄ではカジュアルからフォーマルまでカバーする必須アイテムとなっています。

 A社は今、自社製品のブランド戦略に熱心に取り組んでいます。なぜ、真っ先に名前の挙がるブランドのメーカーがブランディングを強化する必要があるのでしょうか。そもそもブランドとは、ある商品を別の類似した商品から区別するための一連の要素のことで、ブランディングとはそのブランドを消費者に認知させ、市場における自社商品のポジションを明確化する活動です。
 有名なところでは、第3の場所をコンセプトとしているスターバックスがあり、「おしゃれな空間でコーヒーを飲みたい」というときに同社を思い浮かべる方も多いと思います。そのようなブランドの確立を目指す活動がブランディングです。
 かりゆしウエアというアイテム自体が、「南国らしいデザインの柄シャツ」というイメージが確立しており、お客さまからすると他社との差別化が難しい現状があります。日常使いが浸透している沖縄で、「安ければいい」という購買層の方も多く、その中でオンリーワンの価値を見いだしていくことが課題となっているからです。

 ブランディングを展開する上では、「誰に何を伝えるか=どの商品のどんな価値を伝えるのか」を明確にすることが重要です。今後縮小していく国内市場でブランディングの重要性は、ますます高まっていくでしょう。効果的にブランディング戦略を取り入れてみてはいかがでしょうか。

経営コンサルティング本部
コンサルタント
真栄城 美里

CONSULTING METHOD

経営者たちと持続的な成長をコミットする

タナベ経営
経営コンサルティング本部 副本部長
ホールディング経営研究会 リーダー
中須 悟 Satoru Nakasu
「経営者をリードする」ことをモットーに、経営環境が構造転換する中、中堅・中小企業の収益構造や組織体制を全社最適の見地から戦略的に改革するコンサルティングに実績がある。CFPR認定者。著書『ホールディング経営はなぜ事業承継の最強メソッドなのか』(ダイヤモンド社)。

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なぜ、「ホールディング経営」なのか

いま、事業承継を機にホールディング(持ち株会社)経営体制へシフトする企業が増えている。それは、なぜだろうか?

筆者は事業承継を専門にコンサルティングを行っているが、その中核テーマとして、数多くの中堅・中小企業のホールディングス化を手掛けてきた。その取り組みのきっかけとなったのは、そんな純粋な疑問であった。

近年、国内でホールディングス化が進展したのは、直接的には1997年の独占禁止法改正による「純粋持ち株会社の解禁」に起因する。それ以前は1947年施行の独占禁止法により、事業支配力が過度に集中することを防止する目的で禁じられていた。第2次世界大戦後、GHQ(連合国軍総司令部)が財閥解体の流れで当時の持ち株会社を解体したのだ。

逆の見方をすれば、純粋持ち株会社によるホールディング経営モデルは、(多少の誤解を恐れずに言えば)事業支配力を集中させることで飛躍的に成長できるモデルなのである。

ホールディングス化が先行している大手企業はもちろん、成熟経済下で事業が伸び悩む中堅・中小企業にとってこそ、大きく羽ばたく突破口となり得るであろう。

"メリ・デメ思考"では決断できない

ホールディング経営モデルへのトランスフォーメーションを決断する経営者は、まず、間違いなく自社の飛躍的な成長と長期的な存続に明確な意志を持っている。これまでタナベ経営は数多くのホールディングス化を支援してきたが、その背後にはホールディングス化を実現した企業の数倍に及ぶ"検討中の企業"が存在する。言い換えれば、ホールディングス化を決断した企業と、決断できない企業に分かれ、後者の方が圧倒的に多いのである。その分かれ目は何だろうか?

ホールディングス化を決断できない企業は、ホールディングス化のメリットとデメリットを議論することに終始している場合が多い。このとき、メリットは目指すべき姿、デメリットは"現実的なリスク"として認識される。メリット・デメリットをフラットに議論すれば、どうしても不確実な前者に対し、よりリアルな後者の方が説得力で勝るため、ついに意思決定ができないという結論に陥ってしまうのである。

ホールディングス化を決断した経営者に共通するのは、メリット・デメリットを議論する前に、「ホールディングス化したい」という明確な意志を持っていることだ。その意志は「企業の長期的な存続のための持続的成長」に対する強いコミットであり、「多くの社員を経営者として残したい」という強い思いも含んでいる。

もちろん、メリット・デメリットを具体的に検証するプロセスが不要と言っているわけではない。特にデメリットは、ホールディングス化を推進するに当たって重要な経営リスクである。そのリスクを具体的に認識し、マネジメントレベルで対処しなくてはならない。

つまり、この場合のデメリットとは、メリットを実現するために克服すべき課題であり、決断とは、その課題と対することを「腹決め」することなのである。

事業ポートフォリオで成長する

では、持続的な成長を強く望む多くの経営者にとって、なぜホールディングス化が魅力的に映るのであろうか。

その背景には、成熟化した経営環境がある。成熟化した環境下では、一つの事業にヒト・モノ・カネといった経営資源を集中投下しても、成長に限界がある。ベンチャーなどの新興企業ならともかく、これまで日本経済の成長を支えてきた中堅・中小企業の中核事業の多くは時代とともに陳腐化しており、そのビジネスモデルを変革しなければ今後の成長は望めない。

ただ、簡単に変革と言っても、既存事業を捨て去るわけにはいかない現実がある。その場合、既存事業と新たな事業との組み合わせでイノベーションを創出するという発想が重要になる。

複数の事業の組み合わせでより大きな付加価値を創造し、いわゆるシナジー(相乗効果)を得て成長していく戦略を「事業ポートフォリオ戦略」という。これからの中堅・中小企業が既存事業を見つめ直し、さらなる高みを目指して成長していくためには、この事業ポートフォリオ戦略が不可欠なのである。

多くの中小食品会社でグループを構成する、東証1部上場のヨシムラ・フード・ホールディングス(東京都千代田区)は、食品事業の組み合わせによって持続的な成長を目指す事業ポートフォリオモデルの好例と言える。

現在、地域の中小食品会社の多くが、後継者不足やマーケットの成熟化による競争激化などの理由で伸び悩んでいる。もはや単体では成長を望めない企業も少なからずあろう。

しかしながら、企業を個別に見ると一長一短の個性がある。それらを統合することで各社の強みが連携し、弱みが補完されて、グループとしてのシナジーを発揮する。

同グループを構成する各企業は、全てM&Aにより買収したというユニークな成り立ちであるが、それらは全て長期的なパートナーシップを前提とする友好的なM&Aだ。各社のマネジャーは、優秀であればより広範囲で活躍するステージが与えられ、さらにモチベーションを高めて意欲的に仕事に取り組める。

事業ポートフォリオモデルで成長しようとするホールディングカンパニー(HDC)は、その手段としてM&A戦略をとることが多い。だが、近年はそれに加えてCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)戦略も増加しつつある。

CVCとは、従来型のベンチャーキャピタルと違い、事業会社(ここではHDC)が本業の事業とシナジーのあるベンチャー企業に出資し、共同研究・共同開発などを通じて事業として成長させていくパートナーシップモデルである。これもまた、イノベーション創出の有効な手段となり得るであろう。

多くの経営者人材を育成する

中堅・中小企業が持続的な成長を望むとき、「多くの経営者人材を生み出す」ことが重要な経営課題となる。業容の拡大に伴い、1人の経営者が陣頭指揮を振るうには限界がある。

「企業は社長の器以上に大きくならない」といわれるが、そもそも今は1人の経営者の器に頼って成長していく時代ではない。複数の経営者によるグループ連邦経営をしていくことがホールディング経営モデルの要諦であり、それ自体を目的にホールディングス化を志向する経営者も多い。

環境設備総合商社のカンサイホールディングス(福岡市博多区)は、グループの年商が300億円に迫る地域のリーディングカンパニーである。これまでは創業者の忍田楢蔵氏、そしてそれを受け継いだ2代目の忍田勉社長がグループをけん引してきた。今後の第3世代はホールディングス体制の下、中核企業であるカンサイもエリアごとで分社化し、それぞれに社長を配してさらなる成長を目指すという。

また、電気設備の設計・施工やITシステム構築などを手掛ける千代田ホールディングス(福岡市中央区)においても、次世代には社員から社長を輩出し、グループでバランスを取りながらさらなる成長を目指している。

ホールディング経営モデルにおいては、グループを構成する複数の事業会社が、それぞれに配置された経営者の下で自律的な経営を展開していくことが望まれる。

では、HDCのトップはどのようなスタンスを取るべきだろうか。それは今の時代の流れからも「サーバントリーダーシップ」が望ましい。

サーバントリーダーシップとは、一般に「部下の能力を肯定し、互いの利益になる信頼関係を築くリーダーシップのスタイル」といわれる。一方的に命令することで動かすスタイルではなく、組織としてのビジョンを示し、部下を信頼することで組織全体の成長を促すのである。

ホールディングス体制においても、HDC のトップはグループとしての中長期ビジョンを示し、それを受けた事業会社の社長がそれぞれの事業を伸ばす成長戦略を立案して実行する、そんな関係性が望ましいだろう。

ヨシムラ・フード・ホールディングス代表取締役CEOの吉村元久氏は「自らは事業プロデューサーの役割に徹している」と語る。映画に例えるなら、現場の監督や役者は社員に任せ、自らはプロデューサーとして支えるスタンスを取るのだ。同社の姿勢は、今後のホールディング経営におけるオーナーシップの発揮の仕方を示唆している。

ホールディング経営研究会

https://www.tanabekeiei.co.jp/t/lab/100management.html

MARKET STATS

進む「経営の担い手」不足
30歳代の後継者育成が急務

日本企業は今後5~10年内に、「大事業承継時代」を迎える。団塊世代」(1947年生まれ)に当たる大量の経営者が、経営交代期に入るためだ。しかし、日本企業の後継者不在率は6.4%(2018年、帝国データバンク調べ)。後継者の選定や育成を先延ばしにしている中小企業が少なくない。

【図表1】経営の担い手の推移
※経営の担い手:会社などの役員または自営業主出典:中小企業庁「中小企業白書(2019年版)」
※経営の担い手:会社などの役員または自営業主
出典:中小企業庁「中小企業白書(2019年版)」

日本では少子高齢化の進展が叫ばれて久しいが、それは企業においても同様だ。「中小企業白書(2019年版)」によると、日本企業の「経営の担い手」(企業などの役員または自営業主)の推移は、59歳以下が1992年から2017年にかけて約45%減少した一方、60歳以上は同期間に約25%増加したという。(【図表1】)

60歳以上の構成比は92年時点で約31%だったが、2017年は約51%と過半数に達し、59歳以下を逆転。経営の担い手の少子高齢化が進んでいる。

とりわけ経営者の高齢化は深刻だ。東京商工リサーチの調べでは、2018年の全国社長の平均年齢は61.73歳と最高齢を更新。年齢分布を見ると、70歳以上の構成比が28%と3割近くに達し、過去最高を記録した。2011年時点では19%と2割以下だったため、ここ数年で一気に高齢化が進んだことが分かる。(【図表2】)

これは、中小企業を中心に事業承継の遅れから新陳代謝が進まず、さらには団塊世代の経営者が古希(70歳)を迎えたことも大きな要因である。社長の平均年齢(2018年)を産業別に見ると、不動産業(63.4歳)、卸売業(62.9歳)、小売業(62.7歳)などの高齢化が目立つ。全10産業のうち、50歳代は情報通信業(56.8歳)だけ。大半の産業の経営者は還暦を越えている。

【図表2】全国社長の年齢分布
出典:東京商工リサーチ「全国社長の年齢調査(各年)」
出典:東京商工リサーチ「全国社長の年齢調査(各年)」

ところで、経営者の年齢と企業の業績は一定の相関性があるといわれている。実際にはどうなのだろうか。

社長の年齢別に業績状況を比較すると、経営者が70歳代以上の企業は「減収」「赤字」が最も多い。「連続赤字」も唯一の2桁台(10.65%)で、経営者の高齢化に伴うマイナスの影響が強く出ている。(次頁【図表3】)

【図表3】社長年齢別の業績状況(単位:%)
※着色部は最高値を示す出典:東京商工リサーチ「全国社長の年齢調査(2018年)」(2019年2月14日)
※着色部は最高値を示す
出典:東京商工リサーチ「全国社長の年齢調査(2018年)」(2019年2月14日)

その結果、休廃業・解散企業が急増している。2018年に全国で休廃業・解散に至った企業は4万6724件(前年比14.2%増)と、同年の倒産企業件数の5.7倍に達した。倒産件数は10年連続で前年を下回っているのに、休廃業・解散企業は確実に増えているのだ。(【図表4】)

なお、休廃業・解散企業の経営者の年齢分布は70歳代以上が過半数(54.7%)を占めており、事業承継の遅れによる高齢化が原因なのは明らかである。

【図表4】休廃業・解散企業件数の年次推移(カッコ内は前年比、▲は減)
出典:東京商工リサーチ「2018年『休廃業・解散企業』動向調査」(2019年1月21日)
出典:東京商工リサーチ「2018年『休廃業・解散企業』動向調査」(2019年1月21日)

2018年に休廃業・解散した企業の従業員数は合計13万3815人(前年比24.1%増、東京商工リサーチ調べ)。もし、円滑に事業承継がなされていれば、13万人超もの人々が失業や離職を余儀なくされることはなかったはずだ。

企業の事業承継に関して、東京商工会議所が2018年1月に「事業承継の実態に関するアンケート調査報告書」を公表した。その中で同所は、事業承継の準備・対策を進めるためには"後継候補者"ではなく後継者を早期に決定すること、そして後継者の年齢は30歳代が望ましいと指摘している。

なぜ、30歳代なのだろうか。報告書によると、30歳代で事業を引き継いだ経営者は、承継後に業況を好転させる割合が高いという。バブル崩壊後の1993年以降に事業を継いだ経営者895名に対して承継後の業況を尋ねたところ、「良くなった」と答えた割合が最も高かった年代は30歳代(57%)だった。(【図表5】)

【図表5】承継後の業況(年代別)
※バブル崩壊後の1993年以降に事業を引き継いだ経営者895名が回答出典:東京商工会議所「事業承継の実態に関するアンケート調査報告書」(2018年1月25日)
※バブル崩壊後の1993年以降に事業を引き継いだ経営者895名が回答
出典:東京商工会議所「事業承継の実態に関するアンケート調査報告書」(2018年1月25日)

一方、40歳代以降は年代が上がるにつれて「ほぼ横ばい」の割合が増える傾向が見られた。20歳代は「悪くなった」の割合が他の年代よりも高かった。

また、承継後の取り組みを聞いたところ、「新たな販路開拓」を行う経営者は20~50歳代が多い。「新商品・新サービスの開発」を行ったのは30歳代の経営者が最多だった。(【図表6】)

【図表6】事業承継後の新たな取り組み(年代別)
※バブル崩壊後の1993年以降に事業を引き継いだ経営者895名が回答出典:東京商工会議所「事業承継の実態に関するアンケート調査報告書」(2018年1月25日)
※バブル崩壊後の1993年以降に事業を引き継いだ経営者895名が回答
出典:東京商工会議所「事業承継の実態に関するアンケート調査報告書」(2018年1月25日)

マネジメント面についても、中期計画の策定や経営の見える化、経営理念の明確化などへ積極的に取り組むのは、20~40歳代前半の経営者の方が多かった。

同報告書によると、「後継者候補はいる」企業は、後継者を誰にも周知していないケースが多いという。そのため経営者が高齢となり、候補者に承継の意向を伝えて難色を示された場合、時間的猶予が残されていないため廃業に直結する危険性が大きいと指摘している。

円滑な事業承継を進めるためにも、経営者は自身の年齢で承継を判断するのではなく、早期に30歳代の後継者を決定し、経営の承継を検討すべきだとしている。

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