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今週のひとこと

目標達成の先にある、すばらしい成果を
教えよう。自分の仕事が世の役に立つと
いうイメージを持てば、仕事へ取り組む
姿勢が変わる。

☆ 経営革新は「明るい自己否定」から

 中堅肌着メーカーA社の経営は実にユニークです。この20年間で肌着市場は縮小基調にあるにもかかわらず、同社の業績は経常利益率10%、自己資本比率60%と好調を維持しています。肌着業界では高品質で差別化をする、あるいは、ハイテク素材を活用したブランディングで付加価値を上げるといった経営手法が一般的ですが、A社の戦略はそれとは一線を画しています。

 顧客が肌着に求める真の価値は何か、中間層の消費者は肌着に高い期待を求めていないのではないかと冷静に分析し、「そこそこ丈夫で、価格が安い肌着」を提供することが自社の存在価値だと定義して、1年間破れないレベルの品質で低価格を追求しているそうです。販路は全国の地方都市の商店街にある小さな衣料品店で、衣料品店や問屋のOEMブランドで販売しているため、顧客はこの肌着メーカーのことをよく知らずに、そこそこ丈夫でリーズナブルな肌着のリピーターになっているのです。

 では、「そこそこ丈夫で低価格」を実現するためにA社は何をしているのでしょうか。それを知ると驚くべきことが分かりました。全国の地方都市の小さな衣料品店をフォローするために全国に六つの営業所を持ち、頻繁に販売現場の要望を聞いていました。次に、原料の糸は、綿花栽培の一大生産地であるインドの糸を使っていました。そして、工場は中国、フィリピン、カンボジアなど東南アジア各地に分散しており、出資している海外子会社は5社に及ぶという、商品コンセプトからは想像もつかないグローバルなサプライチェーンを作り上げていたのです。

 その原点は、取引相手の立場から商売を考えることなのです。例えば、小売店は在庫を極力持ちたくないので、在庫のリスクをA社が肩代わりする。生産会社はラインの稼働率を高めたいのでA社は前倒しで注文をする。そうすることで、A社の製品を優先して生産し、販売にも尽力し長期にわたる取引が続いているのです。相手にまず利益を与えることで自分たちの利益にもつながっているということでしょう。

 このような経営の好循環を生んでいるのは、A社の社長の一つの経営哲学に凝縮されています。「ビジネスモデル革新をしなければならない企業は、今まで何もやってこなかったからだと思っている。うちの会社では、日々の小さな変化を非常に重視している。これを僕は『明るい自己否定』と呼んでいる。常に軽い気持ちで現状を否定して、新しい取り組みができるように、自己否定を悪いと思わない社風をつくっている」 「明るい自己否定の社風づ くり」は、挑戦してみる価値が大いにあるのではないでしょうか。

経営コンサルティング本部
コンサルタント
佐久間 昭光

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学び方改革が必要とされる背景

最近、「働き方改革」「生産性改革」について相談を受けることが多い。このテーマを掘り下げると、働く社員の「学び方改革」が" 待ったなし" であることに直面する。

相談内容は次の三つに大きく分類される。それぞれの背景を整理する。

(1) 後任人材への継承推進

2015年までに定年退職し、再雇用された「団塊の世代」の嘱託社員が、2020年ごろから次々と退職を迎える。その人たちが持つ熟練技術や経験値、人脈などを誰にどう引き継ぐか。計画的な継承推進策が必要となっている。

(2) デジタル技術の導入検討と教育

" 超スマート社会" 実現を目指す政府の基本指針「ソサエティー5.0」が2020年度に最終年度を迎え、デジタル革新が本格化するとみられている。既存業務を見直し、「やめる」「改める」「追加する」ものがないかを検証する。次にAI(人工知能)やRPA(ロボット技術による業務自動化)などデジタル技術を導入し、人間の業務と代替できないか検討する。それが可能ならば、導入教育を行う必要がある。

(3) 早期戦力化への対応

「働き方改革」に伴う休日の増加や残業削減で、OJT(オン・ザ・ジョブトレーニング)を中心とした人材教育時間が縮小している。さらに、2020年(中小企業は2021年)4月1日から「同一労働同一賃金」が施行される。非正規社員(パート・アルバイト、派遣社員など)・正社員にかかわらず、同じ職場で同じ仕事に従事する人の待遇差・賃金格差を解消することが求められる。若手や非正規社員の早期戦力化への取り組みが必要となる。 私はこのうち、(3) の早期戦力化について多くの企業から相談を受ける。このテーマの成功ポイントは「背景・目的・手段」を共有化することだ。次に、事例と留意点を挙げていく。

背景・目的・手段の流れで共有化する

(1) 「背景」の共有化

製造業A社で現場(生産、営業)の学び方改革が始まった。当初、ある部門長は改革に消極的だった。「なぜ今、この改革が必要なのか」という背景の理解がなく、目先の業績や自部門の都合しか見えない近視眼的な状況に陥っていたことが原因だった。

そこで部門長以下、現場のリーダーを集め、A社を取り巻く経営環境の現況と今後の理想の働き方について、「学び方改革」の進め方意見交換を行った。その上で、理想の実現のために何が必要かを考えてもらい、学び方改革に取り組む必要性を共有化した。

(2)「目的」の共有化

次に、早期戦力化を行う目的を共有した。まず、「自社の存在価値は?」「どのような顧客に、商品・サービスを通じていかにお役に立つか」「そのために必要な取り組みは何か」を踏まえ、その上で自社の経営理念や年度方針を再検証した。そして、「今後どうしたいのか」という未来志向と、「自分たちに何ができるか」という当事者意識を共有した。

改革の意義を自分たちで考え、目的への理解を深めることで、「やらされ仕事」ではなく主体的に取り組む姿勢をつくることができる。

(3)「手段」の共有化

手段については、他社の成功事例を学び、どのような取り組みが自社に適しているかを検討した。内容の他に進め方や期待される効果についても意見交換し、実施内容をスケジュール化。プロジェクトメンバーの役割などを決めた。

この後、仕組みと運用ルールを設計するため、教育体系の現状確認と改善策の立案を行った。その過程で出てきた課題と取り組みを次に整理したので、生産性向上のポイントとして確認をいただきたい。

【図表】 一人前基準(入社~6カ月)の例 201910_review2_01

ギャップの明確化と解消

まず、あらわになったのが上司と新入・若手社員の" 要望のギャップ" である。上司の要望は、「配属されるまでに、なるべく多くの知識をインプットし、現場ですぐに仕事を任せられる即戦力になってほしい」こと。戦力になるまでの間は、手間のかかる仕事や基本的な作業を新入・若手社員に任せるパターンが多かった。

一方、新入・若手社員からは、「聞くに聞けない状況を何とかしてほしい」との要望があった。配属前に基本業務を教わっても、現場でのやり方が分からない。質問しようにも、先輩や上司が忙しそうで近づきにくい。勇気を出して聞いても、「一度習っただろう」「何度言わせるんだ」と返されると、もう次は聞けない。

仕方なく新入・若手社員同士で相談し、想像力を働かせながら仕事を行う。結果、間違ったやり方でミスをする。または、時間がかかり過ぎて叱られる。そんなことを繰り返すうち、いつしか前向きに物事を考えられない、「言われたことしかしない、できない」状態に陥っていた。

このギャップを解消するには、次の三つの取り組みが有効だ。

(1) 一人前にするための基準づくり

【図表】のように、いつまでに、何ができればよいのか。習得すべき「知識」「技術」「経験」を期間ごとに明確化した。

(2) 学び方の標準化

学習は、「誰から学ぶか」も重要である。そこで、誰もが話を聞きたがる、手本となる先輩や上司を講師に起用。座談会形式の講義の他、1テーマ5分以内の動画を収録し、いつでもどこでも視聴できるようにして、学び方の標準化を図った。

(3) カリキュラムの設計

動画は、見るだけだと効果が低い。知識を定着させるため、ウェブ上で個人別の理解度の履歴が残る「理解度テスト」を受けてもらう設計にする。結果は上司が管理し、適切なフォローを行う仕組みが有効である。

なお、この早期戦力化カリキュラムの運用面として期待されるのが、採用への波及効果だ。就活生(入社予備軍)に向け、入社後のキャリアプランを描く取り組みとして、合同説明会やインターンシップの場面で紹介する。成長意欲の高い学生ほど、自社に魅力を感じて応募してくれる。また、専門学校や大学などの就職課担当者から、「新入社員と向き合う姿勢が魅力的な会社」として認知されれば、学生の紹介や就職相談の機会も増える。

これからは、インターンシップから内定式、内定後フォローまでの連動が不可欠になる。この機会に「" 学び方目線" の人づくりストーリー」を検討いただきたい。

  • タナベ経営
  • 経営コンサルティング本部
  • 部長 戦略コンサルタント
  • 影本 陽一
  • Yoichi Kagemoto
  • 成長ビジョン・戦略構築から人事制度構築、人材育成まで幅広い実績を持つ。事業・組織のブランド化、組織活性化に向け、クライアントと一体となった熱いコンサルティング展開が持ち味。現在は、医療・介護を中心とするヘルスケアビジネス成長戦略研究会のサブリーダーとしても活躍中。

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熊本県熊本市に本社を置く総合住宅メーカーのアネシスグループ。複数のブランド展開によって事業基盤を固める一方、2019年のホールディングス化によって社員が活躍できる組織づくりに力を注いでいる。

素材感、ミニマルデザインにこだわった注文住宅ブランド「ホームパーティ」のモデルハウス「リーフ」。玄関を開けると、木のぬくもりが感じられる開放的な空間が広がる
素材感、ミニマルデザインにこだわった注文住宅ブランド「ホームパーティ」のモデルハウス「リーフ」。玄関を開けると、木のぬくもりが感じられる開放的な空間が広がる

「お客さまを幸せにする家づくり」を目指して

中須 アネシスグループは、熊本市に本社を置く総合住宅メーカーです。2019年にアネシスホールディングスを設立し、グループ6社を加えたホールディングス組織に移行されました。まずは企業概要からお聞かせください。

薮内 当社の創業は1994年、今年(2019年)で25年目を迎えます。創業者で代表取締役を務める加藤龍也が「お客さまを幸せにする家づくりをしたい」「社員が誇れる会社をつくりたい」という思いで会社を起こしたのが始まりです。当初は分譲住宅の施工販売からスタートしましたが、現在は注文住宅やリノベーション、リフォームまで取り扱う総合住宅メーカーとして事業を展開しています。

中須 "アネシス"という社名にはどのような意味が込められているのでしょうか?

薮内 アネシスはギリシャ語で「安心」という意味。社名には「家に住み始めた後も安心して暮らしていただきたい」という願いを込めており、当初から"アフターメンテナンス日本一"を目指して事業を行ってきました。

中須 住宅購入時だけでなく、購入後の暮らしに着目されたことでお客さまの支持を集めました。

薮内 創業時から当社が大切にしてきたのが「人間尊重」の経営です。社員やお客さま、取引先企業を大事にする考え方が社内に浸透しており、これが家の品質向上や会社の強みになっています。また、新しいことにチャレンジする社風が当社の特長ですが、これも人間尊重から生まれたもの。社員の挑戦を応援する加藤の姿勢が社風となり、新規事業が増えていきました。

中須 人間尊重の考え方は「人財を育成し幸せを形にする」というグループ理念にも表れています。顧客満足などお客さま視点を入れる企業はたくさんありますが、社員視点で作られた企業理念は珍しいように思います。

薮内 「人財の育成」は当社の核となる考え方。「幸せを形にする」とは、お客さまが求める家族の幸せの形を指すと同時に、社員の幸せも含まれています。

加藤は日頃から「人としてのステージを上げなさい」と社員に伝えています。はたから見れば同じことをしているようでも、ステージが上がるにつれて見える景色は変わっていく。その繰り返しが自己実現へと導き、社員の幸せが実現されると私は解釈しています。その結果として事業の幅が広がり、会社は発展していくのだと思います。

アネシスホールディングス 企画本部 経営企画部 部長 兼 アネシス 取締役 兼 ホームパーティ 取締役薮内 真由美氏2004年九州芸術工科大学大学院芸術工学専攻修了後、アネシス入社。営業部、エス・バイ・エル事業部営業課、同設計課を経て、2012年オーガニックハウス事業部で営業設計を担当、事業責任者に。2017年経営企画室室長および総務部次長、2019年アネシスホールディングス企画本部経営企画部部長、アネシス取締役新外支店支店長、ホームパーティ取締役本部長。一級建築士、宅地建物取引士。
アネシスホールディングス
企画本部 経営企画部 部長 兼 アネシス 取締役 兼 ホームパーティ 取締役
薮内 真由美氏
2004年九州芸術工科大学大学院芸術工学専攻修了後、アネシス入社。営業部、エス・バイ・エル事業部営業課、同設計課を経て、2012年オーガニックハウス事業部で営業設計を担当、事業責任者に。2017年経営企画室室長および総務部次長、2019年アネシスホールディングス企画本部経営企画部部長、アネシス取締役新外支店支店長、ホームパーティ取締役本部長。一級建築士、宅地建物取引士。

モデルハウス「リーフ」外観
モデルハウス「リーフ」外観

ホールディングス化で社員が活躍できる組織へ

中須 社員が各社の経営を担うホールディングス組織は、社員にとって人としてのステージを上げるチャンスを増やします。

薮内 ホールディングス体制への移行には事業承継も大きく関係していますが、社員の活躍の場を広げることができるのも魅力でした。当然、複数のニッチ分野でナンバーワン事業を持つという事業戦略上の狙いもありましたが、事業承継と事業戦略の両面から見てホールディングス体制が最適でした。

古田 薮内部長は経営企画室長としてホールディングス化に向けて奔走されていました。新体制移行の発表を聞いた社員の反応はいかがでしたか?

薮内 ホールディングス化に伴う最大の変化は、各事業が独立採算で経営する点です。まずは事業を経営できる人材の育成が急務でしたが、当初は不安を感じる事業責任者もいました。ただ、幹部メンバーと話し合いを重ねるうちに、同じ方向を目指すチームになった手応えを十分に感じることができました。

古田 メンバーのベクトルを合わせるポイントはありますか?

薮内 当社の場合、ホールディングス化の約2年前から次世代リーダーが集まって会社のビジョンを考えるインフォーマルな会がありました。会社の指示ではなく、社員が自発的に集まって、アネシスの歴史や理念を学び、どのような会社にしたいかというビジョンについて語り合う会です。ビジョンを行動指針に落とし込んだり、新たな人事考課の仕組みを検討したりしていましたが、そのメンバーが中心となって中期経営計画やホールディングス組織を推進していきました。 

そのような経緯もあって、非常に主体的に取り組んでくれましたし、タナベ経営にご協力いただくことで当初の不安が消え、前向きな雰囲気が広がっていったように思います。

古田 社員が会社の将来について主体的に考える土壌ができていたことは大きいと思います。

薮内 大変なことはあったものの、その分、横のつながりが強くなりましたし、みんなで作ったという思いが残っています。この経験はきっと会社の将来にとって大きな財産になると確信しています。

タナベ経営 経営コンサルティング本部 副本部長 中須 悟「経営者をリードする」ことをモットーに、経営環境が構造転換する中、中堅・中小企業の収益構造や組織体制を全社最適の見地から戦略的に改革するコンサルティングに実績がある。CFPR認定者。著書に『ホールディング経営はなぜ事業承継の最強メソッドなのか』(ダイヤモンド社)。
タナベ経営 経営コンサルティング本部 副本部長 中須 悟
「経営者をリードする」ことをモットーに、経営環境が構造転換する中、中堅・中小企業の収益構造や組織体制を全社最適の見地から戦略的に改革するコンサルティングに実績がある。CFPR認定者。著書に『ホールディング経営はなぜ事業承継の最強メソッドなのか』(ダイヤモンド社)。

地域にとって「なくてはならない企業」へ

古田 創業者から社員に経営をバトンタッチする上で大事なのは、創業の志や理念を受け継いでいくことです。次世代リーダーの会がまとめたビジョンは、大事なツールになるはずです。

薮内 ビジョンにまとめた内容は、朝礼などの場で従来から共有されているものです。明文化されたことで、しっかりと守っていこうという気持ちがいっそう強くなりました。自分で読み返すだけでなく、月に1度は必ず唱和しています。唱和はタナベ経営の提案でしたが、実際に声に出してみると理解が深まりますし、全体に浸透していく様子を実感できます。今後は自分の言葉に変えて、若い世代に分かりやすく伝えていくことが大事だと考えています。

古田 ホールディングス体制に移行して半年ほどたちましたが、今の課題についてはどのように考えておられますか?

薮内 何より、やりきる文化をつくることです。中期経営計画と現状のギャップを把握し、改善に向けた対策を真摯に追い求める体制づくりが課題です。会議を見直したり、先行管理を導入したりする中、ようやく「計画を達成するにはどうすればよいか?」「どのような手を打つべきか?」といった前向きで活発な議論が出てきています。組織の活性化が始まったと受け止めており、これが続いていけば企業風土として定着し、強い組織になるだろうと期待しています。

古田 ここ数年は福岡市や久留米市にも事業所を開設されるなど活躍の場を広げておられます。今後は「九州ナンバーワン」を目標に置かれていますが、住宅業界を取り巻く経営環境についてはどのように考えておられますか?

薮内 事業環境は楽観視できるものではありません。国内は人口減少が進んでいますし、新築住宅市場は縮小傾向が続いています。ただ、住宅業界の特徴は、参入障壁が低くプレーヤーの数が多いこと。ライバルは多いものの、本当の意味でお客さまに価値を提供できる企業はより強くなっていくと捉えています。

中長期的には、九州のお客さまにとってアネシスが本当に価値ある企業になることが成長の条件になるでしょう。街の活性化に貢献できる企業、より良い暮らし方を提案できる企業など、地域にとってなくてはならない企業になれれば未来は明るいと考えています。

タナベ経営 経営コンサルティング本部 部長代理 チーフコンサルタント 古田 勝久自動車部品メーカー、食品メーカーの人事部門にて採用・人材育成・人事労務に従事。タナベ経営入社後は、現場で培ったノウハウをもとに、経営的視点から人と組織にアプローチし、九州の中堅・中小企業の成長を支援している。
タナベ経営 経営コンサルティング本部 部長代理 チーフコンサルタント
古田 勝久
自動車部品メーカー、食品メーカーの人事部門にて採用・人材育成・人事労務に従事。タナベ経営入社後は、現場で培ったノウハウをもとに、経営的視点から人と組織にアプローチし、九州の中堅・中小企業の成長を支援している。

アネシスグループでは、創業時から「人間尊重」の経営を大切にしてきた(アネシス本社(写真左))次世代リーダーが集まり、アネシスグループの中期経営計画を策定(写真右)
アネシスグループでは、創業時から「人間尊重」の経営を大切にしてきた(アネシス本社・写真左)
次世代リーダーが集まり、アネシスグループの中期経営計画を策定(写真右)

成長の背景にあるみんなが挑戦できる組織

古田 ホールディングス化に伴い、薮内部長はアネシスグループ初の女性役員に抜擢されました。これまでどのようなキャリアを積まれてきたのでしょうか?

薮内 新卒入社後、住宅営業からスタートしました。アネシス初の女性営業職であり、周囲から「女性には無理だ」という声も聞こえましたが、やるからにはトップセールスになろうと決意。実際、入社3年目にトップセールスを達成できました。その後、産休・育休中に家庭と仕事の両立を目指して一級建築士資格の勉強に励み、復職後は設計部門へ異動。2年ほど設計を経験した後、新規事業の「オーガニックハウス」の立ち上げに営業設計として参画しました。

古田 子育てをしながら資格取得の勉強もするのは大変です。さらに新規事業の立ち上げや設計営業と業務が広がる中、仕事と子育ての両立は簡単なことではありません。

薮内 これまでも、注文住宅やエス・バイ・エルの代理販売といった新規事業に携わってきたため、不安はありませんでした。むしろ、新規事業の立ち上げから関わってみたいという気持ちがありましたし、設計営業としてより深くお客さまに関わることに魅力を感じていました。その後、第2子の産休・育休期間中にMBAを取得。復職後は経営企画室と総務部の責任者を兼任しましたが、この2年間の経験で視点が大きく変わりました。

古田 今やアネシスグループの約半数は女性社員です。薮内部長がキャリアアップと家庭を両立させるロールモデルになったのではないでしょうか?

薮内 ロールモデルになれているかは分かりませんが、周囲が初めから「女性はできない」と決めつけない環境づくりに、少しは貢献できているのかもしれませんね。ただ、私はもともと不器用な人間です。壁に当たった時、当時の上司から多くの気付きを与えていただきましたし、社長の加藤は大きな気持ちで見守ってくれました。周囲のサポートなど安心してチャレンジする環境があったからこそ、思い切って挑戦してこられたと思います。本当に感謝しています。

古田 見守ることは、実は一番難しいものです。優秀な人材が多いことも納得できます。

薮内 当社にはチャレンジしたい社員を、性別に関係なく応援する社風があります。実際、私以外にも事業長、設計課長、積算課長の女性管理職がおり、それぞれの立場で活躍しています。年齢や性別にかかわらず同じ土俵に立って新規事業を立ち上げられる環境に魅力を感じて、優秀な人材が集まっている側面はあると思います。

街づくりに事業を広げ新しいアネシスへ

中須 アネシスが成長を続ける理由が見えてきました。ホールディングス組織への移行という大きな転機を迎えましたが、今後の展望についてお聞かせください。

薮内 ホールディングス化によって、今後は社員がアネシスグループを引き継いでいくことになります。創業者の志を守りながらも、新しいアネシスをつくっていくことが重要です。

中須 新しいアネシス像について具体的なイメージはお持ちですか?

薮内 中長期的な視点で言えば、アネシスグループが九州にとってなくてはならない企業になること。それには地域を活性化する事業、企業をつくる必要があります。例えば、街づくりや地域づくりの視点で新規事業を考えていくことが重要です。これは私個人のビジョンとも重なるためしっかりと進めていきたいと思います。

中須 仕事と個人のビジョンが重ねられる人生は幸せです。仕事と自己実現を一致できる社員が1人でも多く出てくると、企業は活性化して成長していきます。

薮内 当社が今日のような多事業展開に至った背景には、自律的に行動する社員の存在に加えて、チャレンジを応援する風土、体制が大きく関係しています。誰でも挑戦する素地はすでにあるため、これからもオーナーシップを持って挑戦してほしいと思います。

新規事業の選択肢が広がり、より大きなチャレンジができるように、企業体力や人材力を高めていくことが、今の経営幹部の役割だと考えています。

中須 アネシスグループが、九州にとってなくてはならない会社になれるようタナベ経営も全力でサポートさせていただきます。本日はありがとうございました。

PROFILE

  • ㈱アネシス
  • 所在地:熊本県熊本市東区長嶺南8-8-55
  • 設立:1994年
  • 代表者:代表取締役 加藤 龍也
  • 売上高:71億3500万円(グループ計、2019年1月期)
  • 従業員数:148名(グループ計、2019年6月現在)

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    担当:タナベコンサルティング 戦略総合研究所