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今週のひとこと

リーダーの責務は部下を育て、組織基盤を
強化することだ。リーダーは「人をつくり、
人を残す」人でなければならない。

 第二の柱の事業を作るべく、多くの企業が「新技術の開発」に取り組んでいます。しかし、何を開発するかを決めないまま、あるいはニーズの存在を確認せずに、自社がいま作ることができそうなものをやみくもに開発してはいないでしょうか。新技術の開発とは、「従来と異なる切り口で、未開拓の市場・技術へ戦略的にアプローチすること」。つまり開発の「質」を追究し、新しい価値を創造する取り組みです。

 昨今の新技術の開発で目立つのが、アライアンスを組んだ共同開発です。産官学で知識や技術、資金を持ちより、世界での競争に勝とうとする取り組みです。中でも、中堅企業が大学などの専門機関と共同で開発を行うケースが増えています。中堅企業ではよほど強力なノウハウと研究開発体制がない限り、世界で主導権を握れるほどの新たな技術は生まれません。
 半面、共同開発先の学術機関だけに頼り過ぎると、世界の技術動向や市場のニーズにマッチしない開発となってしまうリスクがあり、なかなか製品化が難しい。たとえ製品化されたとしても市場に受け入れられず、そのまま撤退している会社が少なくありません。

 一方、中堅企業が産官学で共同開発を行うことにより、世界の最新技術動向や市場を知り、なおかつ大学の知見を活用することで、企業単独では成し得なかった新たな技術開発が進んでいるのも事実です。
 そこで、新技術の開発における三つのポイントをご紹介しましょう。
 一つ目は、「市場調査」。顧客の目線に立ち、ニーズの存在と市場規模を知ることです。
 そして二つ目は、「製品の最適化」です。開発陣の都合ではなく、市場調査を基にした顧客ニーズにマッチする製品を作り込むことです。
 最後三つ目は、「行動計画を立て、PDCAサイクルを回す」ことです。優れた技術者が集い、どんなに緻密な計画を練ったところで、開発はすべてが順調に進むわけではありません。失敗の原因を追究し、対策を立て、軌道修正ができる組織づくりが重要なのです。

 世界の技術開発のスピードは増すばかりで、競争は激化しています。一日も早く新たな市場への可能性を探り、はじめの一歩を踏み出すことをお勧めします。

谷川 大致
経営コンサルティング本部
コンサルタント

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部下・後輩が同じ失敗を繰り返すのはなぜか

私は現在、数社の「企業内大学(アカデミー)」設立支援コンサルティングを行っている。

例えば、建設会社のアカデミーであれば、「実行予算の組み方」「工程表の作成の仕方」「協力業者の手配のポイント」など、実務に即した必要知識・技術の学習ツール(レジュメ)を作成。レジュメに基づいた解説を動画で撮影し、インターネットのクラウド上の通信講座として配信するシステムを構築する。こうした支援を通じ、企業にとって最大の経営資源である人材の育成をお手伝いしている。

このコンサルティングをしていると、上司・先輩が部下・後輩に知識や技術を教えるシーンを見ることが多々ある。一度教えてすぐにマスターできるなら良いが、なかなかそうはいかない。そんなとき、「教え方」について考えさせられる。

何回教えても、部下や後輩が同じ失敗を繰り返すのはなぜなのか。教わる側(部下・後輩)の努力不足という可能性もあるが、教える側(会社や上司・先輩)にも課題があるのではないだろうか。そう考えたとき、要因として挙げられるのは、大きく分けて「教える仕組みの不足」「教える技術の不足」という二つである。

教えるべき内容が体系化されていない

学校教育が「学習指導要領」に基づいて行われるのに対し、多くの会社は教育・指導の基準や計画を作らずに教育を行っている。もちろん会社は教育機関ではないので、学習指導要領に該当するものがないのはやむを得ない。しかし、業務上の必要知識・技術を、難易度の低いものから順に、どういうステップで学習させていくかというガイドラインは、あった方がよい。

教わる側は、「これを学び、できるようになったら、次はこれをマスターすれば良いのだな」と、自分のレベルアップストーリーを明確に持てる。教える側も、教えなければならないことと、その手順が決まっている方が指導しやすい。

この「基準や計画がない」という問題は、教える側(上司・先輩)ではなく、会社の教育・指導の仕組みの課題である。人事制度の能力評価の組み立てなどにも関連することであり、上司・先輩(=個人)に原因を求めるべきではない。

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教える側の教える技術が足りない

もう一つの要因は、教える側(上司・先輩)の教え方が拙いこと、つまり「教える技術」の不足にある。

製造業A社において、5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)に関するレジュメを作成するケースを具体例として解説する。

(1) 目的を伝えているか

製造業の社員なら、5Sが何なのかについては新入社員でも分かる。しかし、なぜ5Sが重要なのか、つまり5Sの「目的」についても、しっかりと伝えられているだろうか。

コンサルティングの現場で、中堅社員が作成したレジュメを見せてもらうと、目的の記載や説明がないことがよくある。普段のOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)においても、指示した業務や教える内容の目的を伝えていないのではないか、という不安を禁じ得ない。

目的が不明瞭なまま教育・指導をすると、「毎日掃除はしているが、業務効率はいっこうに上がらない」という状況が生まれてしまう。「なぜそれをやるのか」まで落とし込んで教える必要がある。

(2) 定義・ルールを明確にしているか

「教える側(上司・先輩)が、定義・ルールを正しく理解しているか」という問題である。

例えば、5Sが「整理、整頓、清掃、清潔、しつけ」であることは教えていても、「整理とは何か」「整頓とは何か」まで教えているだろうか。

整理(必要なものと不要なものを分ける)と整頓(整える、片付ける)の違いを教えずに「5Sを徹底しろ」と言ったところで、不要なものだらけの職場では、3定管理(定められた場所に、定められたものを、定められた量だけ置く)もままならない。当然、業務効率も上がらない。

(3) 丁寧に説明しているか

日常の教育・指導シーンにおいては、「説明しなくても、このくらいのことは分かるでしょう」といった教え方になってしまうことが往々にしてある。私がレジュメを監修する際も、「もうちょっと丁寧に説明・解説しないと、理解されないだろうな」と感じるケースは多い。

例えば、清掃についてなら、清掃する場所ごとに「どのような用具を使い、どのような仕方で、どのような状態にするのか」を伝えているだろうか。この説明が不十分だと、教える側が期待する仕事の成果は得られない。

(4) 分かりやすく説明されているか

分かりやすい説明とは、一言で表すと「要約」と「ビジュアル化」だ。詳し過ぎたり、冗長だったりして、「要するにどういうことなのか」が分からない説明では相手に伝わらない。

言葉を並べるよりも、「こんなふうにして」と写真やイラストで示した方が、直感的に伝わることは多い。5S であれば、ビフォー・アフターを写真で示すのが一番分かりやすい。逆に言うと、それがなければ成果のイメージは湧きにくい。

業務遂行の技量と教える技量は別物

学校の先生は、教員免許を取得する際に学習指導案を作成したり、教育実習で先輩教師から教え方についての指導・アドバイスを受けたりする。また、実務に就いてからも、研修や勉強会に参加することができる。

しかし、一般企業では、社員のほぼ全員がそのうち" 先生" を務めることになるにもかかわらず、教え方についての指導・アドバイスを受ける機会はほとんどない。

また、特に技術系の職種の方は、教えるより前の段階で、そもそも人と話すことが苦手というケースも多い。技能伝承の難しさは、こういうところにも要因があるのだろう。

業務の知識・技術を十分に持っていても、それを伝え、教える技術とは別物だ。教えることについて、社内でもっと指導・アドバイスし合える状況をつくることが大切である。

指導・教育の仕組みがあるか。「教える技術を教える」ことができているか。人材育成が進まない原因は、そこにあるかもしれない。いま一度、自社を見つめ直していただきたい。

  • タナベ経営
  • 経営コンサルティング本部
  • 支社長代理 戦略コンサルタント
  • 山内 一成
  • Kazunari Yamauchi
  • タナベ経営入社後、社員教育の企画・運営や研修教材の開発・制作などに従事。現在は、経営管理システムの構築から人材制度の構築まで幅広くコンサルティング活動を展開。特に人材教育で数多くの実績があり、体制構築、研修実施、フォローまでのきめ細かい展開で高い評価を得ている。

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TWINBIRDアカデミーで若きイノベーターの輩出へ
 
 
社員同士が教え合い、学び合うポリシーに共感
 
日本屈指の"ものづくりの街"、新潟県の燕三条に本社を置き、独創的なヒット商品を生み出してきたツインバード工業。3代目の代表取締役社長・野水重明氏は、ゼロの状態から革新的な一歩を踏み出せる"ゼロイチ人材"の育成に向けた社員教育のパートナーに、タナベ経営を選んだ。
 
そのきっかけとなったのは、野水氏が毎年参加しているタナベ経営のセミナーだった。
 
「そこでタナベ経営が提唱するFCCアカデミー(企業内大学)を紹介され、社員同士が教え合い、学び合うというポリシーと、いつでもどこでも好きな時間に学べるシステムに共感しました。しっかりした原理原則の教育も必要なので、タナベ経営が最適と判断しました」と野水氏は振り返る。
 
そこで、同社は企業内大学として"TWINBIRDアカデミー"を2019年に開校した。全社員を教育対象としているが、若手社員の早期戦力化を優先して、まずは新入社員向けのカリキュラムづくりに取り組んできた。業務多忙な時期のスタートになったが、担当を務めることになった社員のモチベーションは非常に高かった。
 
「私は講師を務めました。このような役割を与えてもらうことで、他部門のことも含めた学びの絶好のチャンスになると思いました。人に分かりやすく伝える創意工夫の大切さも実感できました」と管理本部管理部の関矢有来子氏は成果を述べる。
 
「開校に向けた社内説明会で『TWINBIRDアカデミーの紹介です』とアナウンスして、講師を担当する社員に一人ずつコメントを述べてもらいました。みんなが楽しそうに自信を持って話す姿を目の当たりにして、『盛り上がっているな』と思いました」。そう話す野水氏も顔をほころばせる。
 
一説によれば、一方的に教えを受けた場合の学習定着度は5%程度だが、他人に教えることもできる場合の定着率は95%に達するとのことだ。ツインバード工業の社員たちはアカデミーの準備を進める中で、講師になってセミナーに参画すると自分も飛躍的に成長できると感じたのだろう。
 
また、同社では新卒の採用活動でもTWINBIRDアカデミーを取り上げ、社員教育にかける熱意を学生へアピールしている。
 
「会社説明会などでTWINBIRDアカデミーを紹介すると、入社してから自分の目指すべき姿や、習得すべき知識・スキルといったキャリアビジョンが明確になると好評を得ています」(関矢氏)
 
 

ツインバード工業 代表取締役社長 野水 重明氏

ツインバード工業 代表取締役社長 野水 重明氏



 
 
 

仕事に熱狂できるゼロイチ人材に期待
 
ツインバード工業が育成に努めるゼロイチ人材は、「仕事に熱狂できる人材」でもある。
 
「当社の『こんな未来を切り開きたい』というベクトルに共鳴して入社した若者たちへ、各人の『こんなことがやりたい』という夢を後押しできる教育とマネジメントを提供できたら、仕事を熱狂的にこなしていくでしょう。
 
大企業では役割分担が細分化され、専門性を持った優秀な人材を採用して役割ごとに配置するため、業務や部署の枠を超越した発想がなかなかできません。ところが当社では、営業担当者が企画やデザインに関わったり、エンジニアとコミュニケーションを交わしたりしながら業務をこなすので、枠にとらわれない大胆な発想ができる環境が整っていると言えます。仕事の熱狂度は、大企業を大きく上回るはずです」と、野水氏は若手社員に大きな期待をかける。
 
「自分はこの仕事が大好きだ!」という熱い思いが醸成できる教育と大胆な発想を促すマネジメントを施せば、ゼロイチ人材は率先してツインバード工業にイノベーションを巻き起こすに違いない。
 
 
業界の垣根を越えたオープンイノベーションへ
 
「ブランディング&ダイレクトマーケティング」と「海外事業の推進」、そして完全脱フロンの画期的な冷却システム「FPSC(フリーピストン・スターリング方式冷凍機)事業の推進」が、ツインバードの推進する"三本の矢"の成長戦略である。
 
顧客と一体になって付加価値を創造するブランディング活動を通して、ダイレクトマーケティングのウエートを高めながら国内での収益性を向上させていく。その収益によって、中国を中心とした東南アジア圏の販路拡大とFPSCの事業展開を目指す戦略である。
 
「今後は家電を製造・販売する事業だけでは、成長が難しくなります。家電業界以外のリソースを持っている企業と、業界の垣根を越えて積極的にオープンイノベーションを進めていきたい」と野水氏は意欲を見せる。
 
昭和の世に創業し、カリスマ経営者の下で急成長を遂げたツインバード工業。平成の世には一時失速したものの、事業承継した野水氏による価値共創企業への転換でV字回復を果たした。
 
そして、幕を開けた令和の世。TWINBIRDアカデミーから社運を握るゼロイチ人材が台頭し、新たなビジネスを創出してくれることを期待したい。
 
 

ツインバード工業 管理本部 管理部  関矢 有来子氏

ツインバード工業 管理本部 管理部 関矢 有来子氏


 
 

PROFILE

    • ツインバード工業㈱
    • 所在地:新潟県燕市吉田西太田2084-2
    • 創業:1951年
    • 代表者:代表取締役社長 野水 重明
    • 売上高:116億2500万円(連結、2019年2月期)
    • 従業員数:303名(2019年2月現在)

 
タナベ経営より
 
ツインバード工業は今、TWINBIRDアカデミーを立ち上げ、これまで以上に人材育成のスピードを上げている。アカデミー立ち上げの際、本当に忙しい中であったにもかかわらず、社員の方々のモチベーションは高く、積極的に参画いただいた。それは野水社長の狙い通り、若手にも教える機会を与えることで、教える側と教わる側が互いに刺激を受けながら取り組むことができたからであろう。
 
今後はアカデミーを通してゼロイチ人材を多く育てると同時に、TWINBIRDアカデミーそのものを育て上げ、持続的な企業成長につなげていくことを期待してやまない。
 

経営コンサルティング本部 チーフコンサルタント 清水 哲也

経営コンサルティング本部
チーフコンサルタント
清水 哲也


 
 
 

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    担当:タナベコンサルティング 戦略総合研究所