COLUMN

2022.11.22

日本企業のグローバル戦略とクロスボーダーM&A
<グローバル戦略フォーラム>

本コラムはタナベコンサルティングのTCG REVIEWにて掲載している記事を転載したものです。
※登壇者の所属・役職などは開催当時のものです。

「現状維持」の企業は減少傾向

日本企業の海外進出に対する意識は、コロナ禍の影響で一時的に減少したものの2021年には回復し、2022年に入ってからはクロスボーダーM&Aの案件が着実に増えています。
海外進出の目的は企業によりさまざまだが、主に、【図表1】の4パターンが挙げられます。

【図表1】海外進出の類型

表1

その多くは国内を中心に構築してきた事業モデルを海外にどう水平展開していくかがポイントになります。最大の懸念は、海外の独特な市場環境を正しく認識しないまま、進出の意思決定をしてしまっている企業があることです。

「日本での成功モデル」を前提にするのは危険

過去20年間もマイナス成長が続き、人件費や物価がほぼ横ばいの日本と、1年単位で大きく変化している海外の国々では、事業環境が異なります。特に意思決定や行動を起こすまでのスピード感覚は、日本とかなりギャップがあると認識しなければなりません。

海外事業を始める際に検討すべき特殊性として、【図表2】の3つが挙げられます。

【図表2】海外事業展開の3つのポイント

表2

まず、国ごとの制度や文化の違いを十分に理解することが重要です。次に、事業環境の綿密な調査・分析も重要となります。また、基本的な経済成長率のギャップから、パートナー候補のバリュエーション(企業価値評価)が高めに算出されることも珍しくありません。海外ならではの事業環境をしっかりと調査・分析した上でパートナー候補を絞り込んでいくことが大切です。

国内M&Aとは違って、海外事業は買収後も常に親会社のコミットメントが不可欠です。そのため、買収を検討し始めた段階から買収後の経営モニタリング手法を十分に検討しておく必要があります。しっかりとしたロードマップを策定しておけば、地に足のついたグローバル展開が期待できます。

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    著者

    グローウィン・パートナーズ

    田内 恒治

    JETRO(現 日本貿易振興機構)入社。米国駐在、内閣官房出向などを経て、Hotta Liesenberg Saito LLP 東京事務所(現 HLSグローバル)にて会計アドバイザリーに従事。三菱UFJリサーチ&コンサルティングに入社後、日本企業の海外戦略立案、実行支援コンサルティングを多数実施。自社の東南アジアの事業拡大にも関与し、コンサルティングの傍らホーチミン事務所長を兼任。アジア欧米の幅広いネットワークと知見を活用した海外戦略立案、パートナー探索からクロスボーダーM&A、戦略的資本提携の実施に至る一気通貫のアドバイス業務に従事。2021年当社入社、2022年海外FA部部長職。クロスボーダーM&A、海外戦略立案コンサルティング案件を多数指揮している。

    田内 恒治

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