vol.40 商品と店舗の“質”を極める魚屋のファーストコールカンパニー
角上魚類ホールディングス 代表取締役会長兼社長 栁下 浩三 氏 × タナベ経営 若松 孝彦

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2019年12月号

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新潟県発祥の角上魚類ホールディングスは1都6県に鮮魚店を22店舗展開し、売上高は341億4500万円、営業利益率は6%を超える(2019年3月期)。ずば抜けたバイイングパワーと店舗運営で0.05%という驚異的な商品ロス率を実現し、商品と店舗の“質”で日本一を目指す同社の戦略を、代表取締役会長兼社長の栁下浩三氏に伺った。

鮮度・値段・品ぞろえ・態度にこだわる個店主義

若松 角上魚類ホールディングスは、事業会社3社(角上魚類新潟、角上魚類北関、角上魚類)が1都6県(新潟県、群馬県、長野県、埼玉県、千葉県、神奈川県、東京都)で鮮魚店「角上魚類」を22店舗運営されています。1974年の創業以来、売上高は右肩上がりで推移し、2019年3月期に341億4500万円。営業利益率は6%を超え、自己資本比率も70%を超える企業にまで成長されました。まず、栁下会長が鮮魚店を始めたきっかけをお聞かせください。

栁下 今から45年ほど前、スーパーマーケット(以降、スーパー)の台頭に伴って街の魚屋が次々につぶれていきました。そんな折、近所にできたスーパーを見学に行き、初めから切り身にしただけの売り方や、イワシやアジといった名の知れた魚種しか並べない仕入れ方針に違和感を覚えました。

最も驚いたのは、魚の値段の高さです。私は実家の網元を手伝っていたので、魚のだいたいの卸値が分かります。そのスーパーでは卸値の2倍以上で魚を売っていました。そこで、「自分なら、もっとおいしい魚をスーパーの半値以下で売れる。そうしたら、田舎に店を出してもお客さまは車に乗って買いに来るのではないか」という単純な発想でスタートしたわけです。

若松 スーパーの鮮魚が高値になる理由は何だと思われますか。また、「もっと安く売れる」と確信したポイントは何ですか。

栁下 鮮魚は日持ちしない商品だからです。水揚げされた魚はその日に売り切るのが原則で、翌日には大幅に鮮度が落ちてしまいます。つまり、ロスになるリスクの高い商品なのです。

さらに、魚には一定の原価がなく、水揚げ量によって仕入れ値が上下しますし、仕入れる量も限られます。ところが、大手スーパーは水揚げ状況に関係なく、売れ筋の魚を定量獲得しようとするから売値が跳ね上がるのです。

そこで私は、市場へ足を運び、水揚げ量の多い魚を中心に仕入れることがポイントだと考えました。これは安い魚の提供に直結します。また、魚の品ぞろえにも配慮し、旬の魚は積極的に仕入れるようにしました。そして1974年、砂浜を横切る海岸通りに鮮魚直販店を出しました。当時は、「砂漠にポツンと建つ魚屋」といったイメージでした(笑)。

若松 どのような理念や方針で店舗を運営しようとお考えでしたか。

栁下 どうしたら、お客さまがこんな田舎の魚屋までわざわざ車で買い物に来て、「良かった」と思ってくれるのだろうと必死に考えました。その結果、鮮度・値段・品ぞろえ・態度に、徹底的にこだわろうと決めました。「魚の鮮度が良くなくてはならない」「車のガソリン代が負担にならないよう、商品の値段が安くなければならない」「あれこれ選択できるように、豊富な種類の魚がそろっていなければならない」「お客さまには感謝の気持ちを持って接しなければならない」です。これは、今でも当社の店づくりの基本理念になっています。

若松 それは、いわゆるチェーンストア理論とは異なる、個店主義の方針ですね。チェーンストアは、ロス率のリスクが高いため魚の値段は割高で、品ぞろえに変化がなく、顧客一人一人のニーズにまで手が回りません。栁下会長は素直に顧客と向き合い、本質的な商売をやってこられたと言えます。

栁下 当時の私は、「商売はどうあるべきか」が分かりませんでした。「お客さまに喜んでいただきたい」と一心に思っていただけです。店頭に旬の魚をはじめとする多彩な魚を廉価な値付けで並べ、お客さまへ魚の特徴やおいしい食べ方をしっかり伝え、一人一人の要望に合わせて魚をさばく――。そんな昔ながらの魚屋のスタイルが喜ばれて、リピーターが増えていきました。

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