ウィズ/アフターコロナの戦略提言
今こそ、経営者リーダーシップの発揮を
〈日本経済編II〉
国と地域のトランスフォーメーション
タナベ経営 若松 孝彦

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2020年9月号

 

 

6.リージョン経済圏への権限委譲と投資

 

コロナショックで国と地域の役割分担の不整合が露呈した。それは今も続いている。企業経営におけるホールディング会社(持ち株会社)やグループ組織といった経営システムの技術が、国や地域の経営に必要になっている。

 

このグループ経営では、傘下企業各社へできるだけ権限委譲し、各社が決めるべきことと、ホールディングやグループ本社(コーポレート)が決めるべきことを明確にする。経営理念、事業領域の策定、ポートフォリオ、取締役や経営職の人事、グループ業績連結会計、戦略投資判断、人材育成(共通と各社専門領域)などはコーポレート本社が担う。戦術や戦闘に当たる経営活動の細部に関しては各社に権限委譲し、グループ全体として成長することである。

 

国家経営をグループ経営に例えると、国がなすことを明確にし、後は各リージョンに任せる自由度が大切だ。国防、金融(税金)、国土、災害、宇宙科学、教育、デジタル通信、そして労働厚生(感染対策を含む)など、国の戦略に関わる領域を定め、それ以外(交通、メディア、物流、学校、病院など)はリージョン経済圏に任せる行政スタイルのデザインである。

 

例えば、大阪府が「都」になって東京都と首都機能の分散を図るのも、その一策だろう。賛否の問題ではなく、国や地域の経営解題として、例えば、東京都が感染拡大や自然災害、紛争などで一時的に機能しなくなっても国家経営ができるような「戦略的分散投資」が必要である。同様に、九州圏の福岡県や中部圏の愛知県を中心にリージョン経済圏をデザインし、首都機能の中核役割以外の権限を委譲していく。

 

要するに、地域のトランスフォーメーションが必要なのだ。グローバル市場に対して、自立・自走できる経済圏を一つの単位としてデザインすることが急務である。国内総生産(GDP)が減少するということは、それらを構成する従来の地域経済も縮むという意味であり、コロナショックで人口減少はさらに加速する。市場規模が減少していく中で、47の子会社(都道府県)は多すぎる。47の子会社をなくすのではなく、束ねてくくり直す。全ての都道府県を束ねるのではなく、中核リージョン圏から束ねることがポイントである。

 

タナベ経営が日本全国を10のリージョン圏に区分して拠点を置いていることは冒頭で説明した。コンサルティングの際に全国展開している会社の組織を経営分析すると、規模にかかわらず、同様の地域に中核拠点を持つ組織は多い。

 

これからやって来る「染後復興」の社会へ備える必要がある。万一、現在のような“迷走”が続けば、消費税率を20%台にまで引き上げても、日本と地域経済が構造的な危機に陥る可能性は高い。リージョン経済圏が自立・自走できる制度設計(都市機能のデザイン)が必要となる。戦略的分散投資で国と地域の形をトランスフォーメーションすべきだ。

 

 

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