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【特集】

企業参謀

経営者の右腕として自社の経営状態を把握し、財務の専門知識を駆使して経営戦略の意思決定を支援する最高財務責任者(CFO=Chief Financial Officer)。業績回復と企業価値向上の財務機能を担う「戦略CFO」 の機能と役割とは。
メソッド2020.05.29

戦略CFOの役割:鈴村 幸宏

経営者のそばで経営管理を統括し、会計の専門知識を駆使して経営戦略に必要な情報を提供。企業活動における最適解を追求するのが、最高財務責任者(CFO:Chief Financial Officer)である。

 

企業価値向上のために必要な戦略CFO組織の機能

 

戦略CFOの役割は、「経営参謀」として、経営者の戦略的意思決定を支援することだ。経営環境が激しく変化する現代において、自社の経営状態を適切に把握し、信頼性の高い情報を基に最適な経営戦略を追求する。必要とあれば、大胆な経営戦略の転換を提言し、その根拠を合理的に示す会計データと問題解決プロセスを明示するなど、経営判断の要となる存在である。

 

戦略CFOには、【図表1】の通り四つの役割があり、パフォーマンス・マネジャーからビジネス・パートナー、オペレーション・マネジャーからオペレーション・デザイナーへのシフトが求められている。

 

【図表1】戦略CFOの四つの役割

※Key Factor for Success(重要成功要因)

 

 

パフォーマンス・マネジャーは、戦略実行の推進が主な役割だが、ビジネス・パートナーの役割は、企業価値向上のための戦略立案に参画し、経営資源をコントロールすることである。ここで重要なのは、事業部門最適ではなく、全社最適による経営戦略を重要視し、現在の業績以上に、将来の業績を向上させる戦略を構築することだ。

 

また、オペレーション・マネジャーは、日常取引処理の効率的な実行が主な役割であるのに対し、オペレーション・デザイナーの役割は、全社的リスクマネジメントや業務改革に向けたルールと仕組みを構築し、コントロールすることである。ここでも重要なのは、現在のリスク以上に、将来のリスクを全社的視点で統制することだ。

 

戦略CFO組織の最大の使命は「企業価値向上」である。企業価値を向上させる戦略立案と推進のためには、従来の経理(会計)部、財務部、IR室、広報室、CSR推進室、人事部、人材開発部および経営企画部(M&A推進、新規事業推進、中期経営計画策定などを担当)を組織横断的に束ね、戦略CFO組織として、【図表2】にあるような機能を発揮することが求められる。

 

【図表2】戦略CFO組織に必要な機能

 

 

企業価値向上のためには、成長分野への投資により、将来の収益とキャッシュフローを最大化しつつ、財務最適化を行う必要がある。そのための機能が、経営資源(ヒト・モノ・カネ)を各部門に配分し、その活用度を測ったり、不足している経営資源(事業や人材)を外部から調達したりしながら、全社をコントロールする機能である。(【図表3】)

 

【図表3】成長投資による将来キャッシュフロー最大化と財務最適化を行うことで企業価値が向上する

 

 

 

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Profile
鈴村 幸宏Yukihiro Suzumura
タナベ経営 経営コンサルティング本部 東京ファンクションコンサルティング本部長 戦略CFO研究会リーダー。「企業を愛し企業繁栄に奉仕する」を信条とし、経営戦略・収益戦略を中心に幅広いコンサルティングを展開。特に成長企業の収益力強化、再建企業の収益構造改革で高い評価を得ている。企業価値向上に向けて中堅企業の投資と財務を研究する「戦略CFO研究会」リーダーとして活躍中。
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