ニューノーマル時代にインナーブランディングが人をつなぐ
平井 克幸

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2020年9月号

 

 

ブランドを体現する行動様式を企業文化に

 

1.ブランドのモデル人材を評価し、称賛する

 

インナーブランディングの第2ステップは「浸透」である。社員の自発的な行動を促すためにも、ブランドへの貢献度を人事評価制度や表彰制度と連動させるべきだろう。一部にブランドを体現するモデル人材が現れてきたら、さらに浸透させるチャンスになる。社内報を復活させる会社も増えているが、そうしたモデル人材をクローズアップする場として活用したい。やっていない人を批判するより、やっている人を称賛する方が効果的だ。

 

また、組織へのブランド浸透を進める前提として、現時点での社員の理解や実践に関する現実を知っておくことをお勧めする。例えば、ブランディングに関するサーベイ(全社員への無記名アンケート調査)などを実施して、ブランドコンセプトから見たあるべき姿と社内のギャップを定量化しておくと良い。定期的にモニタリングを行えば、インナーブランディングによる成果や変化の度合いを測ることもできる。

 

 

2.インナーとアウターをシームレスにつなぐ

 

組織内でブランドを体現する社員が過半数を占めるようになれば、第2ステップは成功したと言える。それを企業文化にまで昇華することが最終的なゴールになる。したがって、インナーブランディングの第3ステップは「定着」である。

 

ブランドに即した考え方や行動は、一朝一夕には身に付かない。日常のコミュニケーションを通じて、徐々に企業文化として根付いていくものだ。そのためには、定期的な情報発信の頻度を増やすと同時に、双方向でのコミュニケーションの仕組みを作りたい。

 

社内向けのインナーブランディングと社外向けのアウターブランディングは決して別物ではなく、つながっていると言える。例えば、リアルやウェブでの広告やホームページ上でのメッセージなど、社外向けにプロモーションを実施する場合は、社員の多くが見ていると考えた方が良い。反対に、インナー向けに策定したブランドブックや社内報を社外にも公開して、ブランドへの思いを顧客と共有するケースも多い。あえてインナーかアウターかを問う必要はない。

 

その点では、ブランディングにおいて内外での言行一致は前提条件になる。社外に発信していることと会社としてやっていること、内部が認識している事実が食い違っていれば、顧客も社員も幻滅することになりかねない。

 

また、会社の将来を担う20歳代から30歳代前半までの若手社員は、2000年以降に成人となったミレニアル世代であり、デジタルネイティブであることも忘れてはならない。彼・彼女らにとって、コミュニケーションの手段がリアルの場面である必要はない。ウェブやSNS、動画などのデジタルメディアを駆使すれば、より多面的な交流が図れる。

 

今後、新型コロナ対策をきっかけにリモートワークが常態化すれば、社員がオフィスに集まる機会が減るため、企業のトップや幹部は組織内の一体感が失われていく不安に見舞われるかもしれない。その場合にも、インナーブランディングで取り組んだコミュニケーションの仕組みが効果を発揮するだろう。ニューノーマル時代に働き方が多様化しても、組織内にブランドエンゲージメントを確立できれば、所属する社員たちの心をつなぐことは決して難しくはない。

 

 

 

タナベ経営 経営コンサルティング本部 副本部長
ナンバーワンブランド研究会 リーダー

平井 克幸
Katsuyuki Hirai

経営者の参謀として、企業のさまざまな課題に精通する戦略コンサルタント。専門分野はブランディングをはじめ開発・マーケティングなど多岐にわたり、これまでに中堅・中小企業の成長支援を数多く手掛けてきた。著書に『ブランディングの本質 100年先につなぐ価値』(ダイヤモンド社)がある。中小企業診断士。

 

ナンバーワンブランド研究会

旬の経営テーマとの融合によるブランディング企業事例から学び、他にはない“突き抜ける”ブランドを実現していきましょう。

 

 

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