TCG REVIEW logo

100年先も一番に
選ばれる会社へ、「決断」を。
【特集】

建設テック

「Construction(建設)×Technology(技術)」の融合で、建設業の生産性向上と技術革新を図る動きが活発だ。AI 活用やドローン 3D測量、XRなどの最新技術を建設現場に全面導入し、土木・建築・設計の常識を覆しつつある事例を紹介する。
2020.01.31

設計業務が効率化できる建材情報のプラットフォームを構築:トラス

 

さまざまな条件での建材検索(無料)が可能なプラットフォーム。仕上げ表をウェブ上で記録・共有することもできる。仕上げ表は一部ユーザー(ゼネコン、設計事務所)の利用に限られるが、間もなく公開予定だ

 

 

ウェブ仕上げ表作成で建材を一括管理できる

 

建材検索サイトとしてスタートし、多くの設計者が登録するtruss は今、さらなる進化を遂げている。建材を選べるだけでなく、ウェブ上で「仕上げ表」(内外装の建材を使用箇所や間取りごとで表にまとめた仕様書)の作成機能を付加した。これにより、設計者が選んだ建材を仕上げ表に登録して、一元管理ができるようになる。

 

具体的には、1階、2階などのフロアごと、またフロアやロビー、ラウンジ、トイレなどスペースごとに選んだ建材を、候補品として仕上げ表に貼り付けることができる。作成した仕上げ表は設計者だけでなく、施主、積算担当者、現場監督、購買担当者、現場作業員などと情報共有できるため、仕上げ表を見ながら意見交換をして使用建材の更新・決定が可能だ。

 

「仕上げ表の建材の品番から、色や柄などを製品カタログのデータベースで画像として確認できます。施主確認画面で実際に選んだ各部屋の建材の画像を一覧表示でき、部屋のイメージと指定した品番が合致しているか共同で確認できます。設計者と施主の意思疎通もスムーズになることは間違いありません。現在、大手ハウスメーカーやゼネコンと共同開発を進めており、近々、公開できると思います」と久保田氏は言う。

 

建材画像の自動生成機能を備えたtrussは、全ての登録者が利用できるようになる。設計初期段階で建材の詳細な検討・品番指定が行えることで、施工段階でよく起こりがちな建材変更の負担を削減できる(フロントローディング)。設計現場での業務効率化から関係者との情報共有に至るまで、大きな力を発揮することが期待されている。

 

また、作成した仕上げ表は、建物のデジタル3D(3次元)モデルにコストや管理情報などを一元管理できるBIM ※2(ビルディング・インフォメーション・モデリング)へ、属性データを入力するための有効なインターフェース(伝達方法)となる。

 

そのため、現在はBIMとの連携を想定し、開発を進めている。trussで作成したウェブ仕上げ表の製品画像や属性情報をBIMの仕上げ表に自動反映できれば、3D設計図面上で室内環境への効果なども割り出すことができる。例えば、どの部屋でどういった断熱材を用いれば、断熱効果によってどの程度の出力のエアコンを導入すべきなのかといった設備機器の選び方も容易になる。

 

このように建材の属性データを活用できれば、従来の設計の在り方を大きく変えることにつながる。

 

 

建築法規が検索可能なシステムの開発も視野

 

trussの建材検索サービスは、会員登録をすると無料で利用できる。そのためトラスの現時点での収益源は、建材メーカーからの製品掲載料のみだ。今後は仕上げ表機能の利用料を検討しているほか、将来的にサイト内での建材販売なども視野に入れているという。

 

また、trussは建材検索に特化したシステムだが、設計者の周辺業務の負担軽減を図る考えから、今後は建築法規の「遵法性調査」(法令・条例と建物の適合性調査)業務を軽減するシステムづくりに着手する予定だ。

 

「建築物は法律でさまざまな規制がされていて、それに沿って建設されています。国の建築基準法だけでなく、地方自治体による条例もあります。分厚い法規関連の書籍から該当する項目を見つけて、それを読み込んで法律に沿った形で設計しています。この業務も建材選びと同様にかなりの労力を要するため、すぐに調べたい法律が検索できるシステムをつくり、設計者の業務軽減を図りたい。設計業務に携わる人たちの長時間労働の軽減など、働き方改革にも貢献できるはずです」(久保田氏)

 

設計者を取り巻く作業環境の改善とともに、建築物で使用する建材データが一元管理されることで、耐久性などの品質も見える化できる。これは建築物の質的向上にもつながる。

 

「現在の不動産価値は、駅からの距離、築年数、木造やRC造(鉄筋コンクリート造)、S造(鉄骨造)などの構造で決まっています。しかし、どういう材料で作られた建築物であるのかが分かれば、不動産価値の評価も変わるはずです。耐久性に優れた高品質の建材が使用されている建物であれば、何十年経過しても価値が維持され売買しやすくなる。より良い材料を使った質の高い建物が高評価を受けられるようになれば、建築物1件当たりの費用も高くなる。そうなれば、建設に関わる設計者や施工する職人の給料も上がるはず。そんな好循環サイクルの変化を期待しています」(久保田氏)

 

かつて待遇面の悪さに嫌気が差し、建設業界から距離を置いた久保田氏だったが、今は建築現場の就労環境や不動産業界の価値基準を変えるという壮大なゴールに向かって走り始めている。これからのtrussは、どのような役割を果たしていくのか。建設系スタートアップの旗手として大いに注目される。

 

※2 バーチャルな建物をコンピューター上で構築し、設計・施工のミスや工数の削減を図るシステム。建材の仕様・費用・施工時間など詳細なデータを入力でき、シミュレーションが可能

 

 

今後は建築法規の「遵法性調査」業務を
軽減するシステムづくりに着手する予定です

 

PROFILE

  • ㈱トラス
  • 所在地 : 東京都品川区東五反田1-11-7 三ツ星ビル1号館5A
  • 設立 : 2014年
  • 代表者 : 代表取締役 久保田 修司
  • 従業員数 : 10名(2019年12月現在、社外協力スタッフを含む)
1 2
建設テック一覧へ特集一覧へ特集一覧へ

関連記事Related article

TCG REVIEW logo