潜在的な市場ニーズを
製品化・サービス化する「デザイン経営」
特許庁

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2020年9月号

 

 

顧客に真に必要とされる企業になるために有効な手法として注目されている「デザイン経営」。デザイン経営とは何か、どんな効果が生まれるのか、キーパーソンに聞いた。

 

 

【図表1】「デザイン経営」の役割

出所:経済産業省・特許庁 産業競争力とデザインを考える研究会報告書「『デザイン経営』宣言」(2018年5月23日)

 

 

フロントにデザイン責任者を配置する

 

GAFA(ガーファ)をはじめ、従来の製品やサービスとはまったく異なるものを提供する企業の出現で、ビジネスの在り方や人々の生活は大きく変わった。新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けてそのスピードはさらに加速し、あらゆる産業は従来の常識や経験が通用しない大変革期を迎えようとしている。IoTやAIを活用した技術革新による第4次産業革命、日本が提唱する未来型社会の「Societyソサエティー5.0」など、これまでとは異なる世界が目前まで迫っている。そんな中、2018年5月に「『デザイン経営』宣言」が経済産業省・特許庁の「産業競争力とデザインを考える研究会」から発表された。

 

「今後、成長する企業は、社会やユーザーが何を求めているのかを探り、その解決策を提示できる企業です。その課題解決を図るために不可欠なのが『デザイン力』。デザインと言えば狭義の意味での意匠をイメージしがちですが、『社会や市場にまだ見えない形で存在する課題を抽出し、解決していくこと』と位置付けています。このデザイン力を生かした経営がデザイン経営で、日本の産業競争力を高めるため発足したのが『産業競争力とデザインを考える研究会』です。そして、この研究会で1年間議論を続けて出来上がったのが『デザイン経営』宣言です」

 

そう説明するのは特許庁デザイン経営プロジェクトのCDO補佐官、西垣淳子氏だ。経済産業省に在籍時、デザイン経営を提唱する有識者や経営者などを招へいし、同研究会を立ち上げたキーパーソンである。

 

「デザイン経営」宣言では、デザイン経営が果たす役割やその定義、実践の在り方などが紹介されている。デザイン経営の効果として挙げられているのがブランド力とイノベーション力の向上によって、企業競争力を高められることだ。企業が大切にしている価値や、それを実現しようとする意志を表現するデザインは、ブランド構築に寄与できる。また、人々が気付かないニーズを堀り起こして事業化していく営みでもあることから、イノベーションの実現にもつながる。(【図表1】)

 

では、デザイン経営はどのように実践していけばよいのだろうか。宣言では二つの定義を設けている。それが「経営チームにデザイン責任者がいること」と「事業戦略構築の最上流からデザインが関与すること」。商品開発を例にとると、商品が開発された後に商品デザインを考える従来型の開発ではなく、顕在化していないニーズを探り、それを解決するための商品を考える時点からデザイン責任者が関与していくスタイルである。

 

重要なのは、デザイン経営を推進する部門やチームをどのように位置付けるのかだ。

 

「デザイン責任者とは、製品・サービス・事業を顧客起点で考えることができ、それを実現するために業務プロセスまで具体的に構想できるスキルを持った人材を指します。デザイン責任者が役員クラスの企業もあれば、社長直轄の組織を新たに設置するケースもあります。また、中小企業の中には、経営者自らがデザイン責任者を兼任するケースや、信頼できる外部の人材をデザイン責任者として起用しているところもあります。いずれにしても企業のフロントにデザイン責任者がいて、デザインの取り組みを主導していくことが重要なポイントです」(西垣氏、【図表2】)

 

 

※「『デザイン経営』宣言

 

 

【図表2】「デザイン経営」のための具体的な取り組み

出所:経済産業省・特許庁 産業競争力とデザインを考える研究会報告書「『デザイン経営』宣言」(2018年5月23日)

 

 

 

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