変革を起こす「3本の矢」を放ち、「働いてよかった」を実現
熊本市医師会熊本地域医療センター

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2021年1月号

 

 

 

 

人命を預かる医療現場で、看護師が直面する「離職サイクル」。業務過多でスキル・キャリアアップの時間を取れず、ワーク・ライフ・バランスが保てないことを理由に退職が相次ぐ負の循環を脱却し、「働いてよかった!」と実感できる看護現場へと転換させた「3本の矢」の変革を追った。

 

 

「みんなで選んだ」2色のユニフォーム

 

白衣の天使が「彩りある天使」になり、働き方改革に成功――。そんな驚きの舞台となったのが熊本地域医療センターだ。

 

高度・救急医療の急性期病院で地域医療の支援拠点である同センターの名が全国にとどろいたのは2019年冬。きっかけは「看護業務の効率化先進事例アワード」(日本看護協会)で、「『ユニフォーム2色制』と『ポリバレントナース育成』による持続可能な残業削減への取り組み」により最優秀賞を受賞したことだ。

 

表彰式の壇上に立ち、事例発表も務めた看護部長の大平久美氏は「看護現場の課題である離職サイクルを断ち切りたい。みんなが定刻に帰れる病院になりたい。それだけを考えて始まったんですよ」と振り返る。患者の急変や緊急入院による業務過多から退職者が増え、補充した入職者を指導する中堅看護師も業務負担が増えて退職し、スキルと実践力の育った人材が定着しない。そんな負の連鎖が、離職サイクルだ。

 

受賞理由の「ユニフォーム2色制」が始まったのは2014年4月。その胎動は前年末の忘年会にあった。ユニフォームの更新時期が迫っていたことから、大平氏は忘年会で看護師が自らモデルになって行うファッションショーを企画。看護師たちが楽しみながら新ユニフォームを選んだ。

 

「一新するだけでうれしいのですが、もっとみんなでワクワクして、離職サイクルの沈滞ムードを変えたかったのです。それまでのユニフォームはずっと白衣で、部長と副部長が決定していたのですが、『みんなで選ぼう』と。正直、残業削減に役立つことまでは考えていなかったですね」(大平氏)

 

6種類の候補から選ぶユニフォームのファッションショーは大盛況となり、当時の院長が「日勤と夜勤の2色制にしたら?」と提案。最多得票のバーガンディーが日勤、次点のピーコックグリーンが夜勤に決まった。「2種類になれば、管理する業務が増え、コストも倍増する」と悩んだ大平氏だが、その後、購入ではなくリース契約にすることで、管理業務が不要になりコスト削減にもつながると分かった。

 

「安心しましたし、勤務時間で色が違うユニフォームなら、残業がひと目で分かる。スムーズな引き継ぎに使えると直感しました」と大平氏。ユニフォーム2色制に一緒に取り組んだ看護師長の中村絵美氏は「導入時から、みんなワクワクでした。自分が着るユニフォームを、初めて自分たちの投票で選ぶわけで、当然モチベーションは上がります。私たちを尊重してくれるのが分かり、うれしかったですね」と話す。

 

導入後、看護師が互いに時間管理を意識して動き出し、色が違うユニフォームを着たスタッフを見つけると「帰れる?代わるよ」という声が飛び交うようになった。定刻通りに笑顔で帰る看護師が増え、見守る大平氏の心も楽しく晴れやかになっていた。

 

 

※看護単位内での協働のみならず、看護単位を超えた複数のポジションを担える看護師

 

 

 

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