vol.35 ワーナー ブラザース ジャパン合同会社 × タナベ経営 SPコンサルティング本部
2018年8月号
激動する映画プロモーション
Web動画とSNSの活用に注目
Web動画やSNSが映画プロモーションの主流に
2016年6月、米調査会社が発表したあるランキングに注目が集まった。TwitterなどのSNS上で話題になった長編映画ランキングで、『ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー』(ディズニー)や『スター・トレック BEYOND』(パラマウント)などを抑えて、ワーナー・ブラザースの『スーサイド・スクワッド』が1位になったのだ。
その2カ月後に全米公開された同作品は、オープニング興行成績歴代1位を獲得して大ヒット。同年末に米Googleが発表した「検索で振り返る2016年」(年間を通じて最も検索された言葉のランキング)でも、『スーサイド・スクワッド』は米映画部門で1位となった。
従来の映画プロモーションと言えば劇場予告やテレビCMが主流だったが、近年はITの進展とモバイル通信データの需要拡大に伴い、大きな変化を遂げている。最大の変化は、スマートフォンやタブレット端末向けのプロモーションの増加だ。実際、TwitterやInstagram、YouTubeなどを使ったプロモーション比率は年々上昇し、そこから火が付いてヒット作になるケースも多い。
日本でのワーナー作品配給を手掛けるワーナー ブラザース ジャパン合同会社も、プロモーションをWeb動画やSNSなどで積極的に展開し、大きな成果を上げているという。
例えば、2017年に公開された米ホラー映画『IT/イット“それ”が見えたら、終わり。』が好例だ。同作品は1990年公開の『IT』のリメーク版だが、今の10代、20代の若年層は前作のリアルタイム世代ではなく、なじみが薄い。そこで同社は、YouTubeなどの動画サイトに印象的なシーンの予告編(ティザー映像)を投稿し、作品への関心をかき立てることで若年層を劇場へ呼び込むことに成功した。
同社がプロモーションの露出をSNSで増やしているのは、映画鑑賞率が高い世代は男女とも10代、20代※1であり、SNSの中心ユーザーと重なるからだ。特にTwitterは他のSNSよりも映画との親和性が高い。作品を見た人がすぐに感想をつぶやくと、他のファンが一緒に盛り上がることも多々あり、口コミが一気に広がりやすい。
※1 NTTコム リサーチ「第6回『映画館での映画鑑賞』に関する調査」(2017年6月28日)
そのため、同社では積極的にTwitterで情報を発信している。フォロワーからリツイート数を獲得し、ネットニュースで継続的に取り上げられて広告宣伝につながるよう、最新情報の配信やファンの心理をかき立てる巧みな投稿を行っている。