昆虫食の普及を推進する大学発ベンチャー
コオロギパウダーが商品の未来化をサポート
FUTURENAUT × タナベ経営

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2020年10月号

 

 

 

 

世界的な食料不足の警鐘が響く中、代替タンパク源として昆虫食が注目されている。日本に昆虫食を根付かせようと奮闘するベンチャー企業の取り組みを聞いた。

 

 

“食料危機の救世主”と期待される昆虫食

 

小山田 欧米では動物肉の代替タンパク源として、「昆虫食」への注目度が高まりを見せています。日本においても昆虫食を普及させるビジネスが胎動を始めました。高崎経済大学発のベンチャー企業、FUTURENAUT(フューチャーノート)は、その代表的な存在です。まず、昆虫食ビジネスに着目した背景をお聞かせください。

 

飯島 私の研究室は環境問題の解明に取り組み、その根底にある人間の行動を変容させるための多様なアプローチを探っています。研究の延長線上にはフードロスなどの食料問題もあります。

 

私たちのタンパク源は牛肉・豚肉・鶏肉といった家畜が主体ですが、環境学者いわく「環境負荷がとても大きなタンパク源」。例えば、牛肉の可食部1kgを生産するためには、25kgの穀物と22tの水が必要です。世界的な人口増加などによって動物性タンパク質の需要が急増し、家畜の生産増や過度の放牧が進行すると、環境汚染や森林の減少につながりかねません。世界中で慢性的なタンパク不足に陥る恐れもあります。

 

こうした状況に基づいてFAO(国連食糧農業機関)が2013年に発表した報告書が、世界に大きなインパクトを与えました。「2050年までに世界人口は90億人に増え、食料が不足するため、栄養価の高い昆虫の利用可能性を真剣に考えるべき」と訴求したのです。

 

昆虫は家畜と比べて狭小な土地で育てられ、道具類や高度なノウハウも不要なので、養殖施設を建造する初期投資が抑えられ、貧困層でも起業できるチャンスがあると報告されています。さらに、排出する温室効果ガスも抑えられるなど環境負荷も低い。こうして昆虫食は動物肉の代替タンパク源として注目されるようになりました。

 

小山田 世界人口の25%を超える約20億人が1900種類以上の昆虫を食べているそうですが、心理的なハードルの高い国も多いのでは?

 

飯島 日本でもイナゴやハチの子を食べる食文化はありますが、市場に多様なタンパク源が出回る中で昆虫を選択する人は極めて少ないし、めったに販売されないのが現実です。タンパク源として昆虫をアピールしても、そう簡単に受け入れられないでしょう。しかし、受け入れられるように行動を変容できたら、食料やタンパク源の状況はドラスティックに変わるのではないかと考えました。

 

そこで櫻井を中心に研究プロジェクトを立ち上げ、2019年2月にタイへ視察に出掛けたのです。

 

櫻井 タイでは昆虫を食用にする文化が浸透し、街の屋台では揚げたコオロギなどがスナック菓子のように販売されています。タイ東北部にあるコンケン大学の農学部のラボは、食用コオロギの養殖技術を確立して周辺農家へ普及させました。多額の設備投資は不要で、卵が孵化してから45日ほどで出荷できるので生産効率が良く、貧困層が多い農家の貴重な収入源になっています。今では欧米や日本の商社が多数買い付けに訪れ、昆虫由来タンパク源の争奪戦が水面下で本格化しているという印象を持ちました。

 

帰国後、コオロギの養殖技術と流通は高い次元で確立されており、昆虫タンパクの市場も大きな成長が期待できるものの、消費者の間に「昆虫食への嫌悪感」という心理的なボトルネックが存在していると分析。そのボトルネックを広げるようなビジネスを見いだし、さまざまな国の地域活性化に昆虫の養殖技術を生かしたいと思い、2019年にFUTURENAUTを起業しました。

 

小山田 自社の一番の強みは何だと思いますか。

 

櫻井 やはり、研究室のバックアップです。研究ベースに基づいた商品開発やコンセプト設計などができるのが大きな強みだと思います。市場分析において複雑な統計を使えることは、消費者の感度測定や販売予測を立てる上で大変有効だと実感しています。

 

 

※国連食糧農業機関(FAO)『食用昆虫:食料と飼料の安全保障に向けた将来展望』

 

 

FUTURENAUT合同会社
代表業務執行社員 CEO 櫻井 蓮氏
新潟県出身。2016年高崎経済大学入学後、「昆虫食に対する心理の分析」について研究。2019年ドイツ・ポツダムでの昆虫食の学会(INSECTA2019)にて発表。現在、高崎経済大学大学院地域政策研究科博士前期課程、飯島研究室所属。専門分野は昆虫食研究(主に心理面での研究)。

 

 

FUTURENAUT合同会社
業務執行社員 CTO 飯島 明宏
群馬県出身。中央大学大学院理工学研究科博士(工学)修了。群馬県衛生環境研究所・研究員を経て、2010年より高崎経済大学に着任。専門分野は環境データサイエンス(大量のデータから環境問題の解決・改善に有益な知見を導き出す手法の総称)。群馬県環境審議会委員、高崎市環境審議会委員、Asian Journal of Atmospheric Environment vice editor-in-chief。現在、人の環境配慮行動と環境情報戦略の関係性に関心を持っている。

 

 

 

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