COLUMN

2023.07.28

ホールディングス・グループ経営における
マネジメントとガバナンスのポイント

  • ホールディング経営

ホールディングス・グループ経営におけるマネジメントとガバナンスのポイント

ホールディングスへの注目度が高まり、多数の事業会社を保有する企業が増加する中では、グループ全体をひとつにして推進する「グループ本社機能の構築」が欠かせません。事業の拡大・事業会社の増加のみが先立ってしまうと、放任経営に陥ってしまい、グループとしての存在意義が薄れかねない事態に陥ります。事業の拡大・事業会社の増加を支えるためには、「お金」や「人材」など、様々な要素が必要になります。本コラムでは、グループの拡大に合わせて強化していくべきマネジメント・ガバナンス機能について解説します。

マネジメントのポイント

グループ経営におけるマネジメントとは、「グループ企業(事業会社)をモニタリングし、評価する」仕組みのことです。マネジメントといっても幅広い要素があり、4つの論点で整理します。

1.方針マネジメント

方針マネジメントとは、経営のバックボーンが整備されているかという着眼点です。
例えば、ホールディングスのパーパス・ミッション・ビジョン・バリューなどをもとに事業会社の経営の方向性や方針が策定されているかどうか、あるいはグループ全体の中期経営計画と各事業会社の中期経営計画や年度方針が連動しているのかといった点がポイントになります。
下図で示しているように、価値判断システムの一貫性がホールディングスと事業会社で取れていることが重要であり、そのためには事業会社の予算を組む編成のプロセスを、ホールディングスと連動させて設計していく必要があります。

2.業績マネジメント

業績マネジメントには、管理会計と財務会計の二軸が存在します。

(1)管理会計
事業会社の業績を評価し、改善させていく仕組みのことです。本来、業績責任は事業会社が持つべきものであり、事業会社内に業績マネジメントの仕組みを確立することが重要ですが、ホールディングスでも業績を把握した上で事業会社を評価していく仕組みが必要になります。
具体的には、BIツールなどを念頭に、定期的かつ高頻度で業績を把握できる管理会計ルールやモニタリングできる仕組みを導入した上で、グループ経営会議などホールディングス・事業会社間でのコミュニケーションパイプ(会議体)を設計することにより、タイムリーに業績を把握し、問題が大きくなる前に対処する仕組みを構築することが重要です。

(2)財務会計
グループの経営判断を行うためには、事業会社単体の決算だけでなく、グループ全体の真の収益状況を把握しなければなりません。グループ全体でいくら収益を上げることができたのか、ここが明確になってはじめて打つべき手が見えてきます。
そのためには、事業会社ごとの決算策定プロセスの把握と、それを集約する部門や機能をホールディングスに構築することが必要になります。

3.人材マネジメント

グループ全体で効率的に人材を採用→育成→活躍→定着させる仕組みのことです。実装させるためにはまず事業会社ごとでの採用・人事制度・教育体系の違いを把握することが重要です。
次のステップでは集約できる部分をホールディングスの機能に集約し、効率的かつ効果的に運営を行います。具体的には、グループのブランド力を活用したグループ一括での採用や、グループ社員を対象とした研修などが挙げられます。また、グループに在籍する個々のスキルや経験などをタレントマネジメントシステムを用いて可視化し、人材交流や新設会社立ち上げ時に人材を派遣することも有効です。
「グループ全体最適の視点」で人材を管理することにより効果的に採用から定着までを行うことが重要です。

4.キャシュマネジメント

お金を一元管理する仕組みです。言い換えるとグループの財布を一つにすることです。金融機関の窓口をホールディングスのみとし、事業会社は原則金融機関から資金調達を行わず、ホールディングスからの貸付で対応する形になります。メリット・デメリットは以下の通りです。

メリット
(1)グループ全体の信用力や一括した借入になるため金利低減が期待できる。
(2)事業会社から余剰資金を吸い上げる仕組みを同時に構築することで、グループ全体の資金の遊びがなくなる。
(3)資金管理業務の効率化を図ることができる。

デメリット
(1)事業会社から資金繰りの業務を放す(好きなだけホールディングスから借りられる状態)にすると、事業会社社長の資金管理能力が弱まる。
(2)システム導入を行う場合はコストがかかる。

経営のバックボーンシステム 図:タナベコンサルティング作成

ガバナンスのポイント

グループ経営における事業会社へのガバナンスとは、「グループ企業(事業会社)をグリップする」仕組みのことです。こちらも3つの論点で整理します。

1.決裁権限

ホールディングスから事業会社に委譲する権限や責任を明確にしていく必要があります。これが整備されていない場合、ホールディングスの決定事項が増加したり、あるいは危うい事項が事業会社で決定されることになりかねません。また決裁権限が無い場合は基本的には事業会社の社長が判断するケースが多くなるため、属人的な状態に陥り引き継ぎが困難になるケースも存在します。

2.監査体制の構築

事業会社に対して、ホールディングスの監査部門が監査を行う体制の構築が必要です。同じ会社であるときと異なり、法人が変わると目が行き届かなる部分が増加するため、第三者的な視点で監査を行うことが重要です。
また監査体制については、「3線ディフェンス」を目指すことが重要です。

(1)第1線
事業会社の現場部署によるセルフチェック

(2)第2線
ホールディングスの部門によるチェック

(3)第3線
監査部門によるチェック

3.コンプライアンス・リスクマネジメント

事業会社におけるコンプライアンスやリスクマネジメントの意識向上・対策の実施を行うことはグループの価値を守る上で重要なポイントです。しかし、買収先の状況や企業の規模感により意識は全く異なり、0からのスタートとなることも多いです。そういった場合に早期に対策していくためには、ホールディングス内にグループ全体のコンプライアンスやリスクマネジメントを統括し、実装支援を行う統括機能を構築することが重要になります。ホールディングスが起点となり、各社の動きを支援することで早期にリスクヘッジを行います。

事業の拡大のみを志向するのではなく、それを支える土台であり「守りの要」であるマネジメント・ガバナンスのあり方についてもぜひ強化推進を図って頂ければと思います。

図:タナベコンサルティング作成

グループ経営に向けて

グループ経営の仕組みを構築していくためにはまずは自グループの現状を正しく認識することが重要です。
タナベコンサルティングが提唱するグループ経営システムは「理念体系」・「グループ経営企画機能」・「グループガバナンス機能」・「グループマネジメント機能」・「シェアドサービスセンター」の5つの観点で整理しており、ぜひチェックリストを用いて現在の状況をご確認いただければと思います。推進力のあるグループ経営を実現するために、ご活用ください。

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