CASE

丸ス産業株式会社

建設・土木業における中長期ビジョン策定のポイント

建設業界を巡る主な現状の課題として、就業者、特に技能者の高齢化の進行、建設資材価格の高騰、時間外労働の上限規制への対応、i-Constructionの推進等による生産性の向上、などが挙げられます。中期経営計画の策定においては、これら諸課題に自社としてどう対応していくのか、また、建築物の老朽化対策や災害対策、高速道路などの大規模な建築プロジェクト、など、今後も伸びが予測される建築需要をどう自社に取り込んでいくかがポイントとなります。

建設・土木業を取り巻く課題、伸長していく建設需要に対応した長期ビジョン策定事例

丸ス産業様は東海エリアの山間部地域に本社を置く、法(のり)面補強、道路舗装、一般土木、橋梁再生等を行う土木工事事業者であり、地域のライフラインを守る企業として、長年地域の暮らしと産業を支え続けています。また、関連会社に建設機械用アタッチメントの新品・中古販売リース、及び油圧ブレーカー等の修理を行う会社、東濃ひのきでの家づくりを行う建築会社があり、関連会社と連携することでより高い工事品質を提供しています。
近年は、政府・自治体で進められている「国土強靭化」施策に対応し業績を拡大しています。昨今の自然災害の激甚化は、同地域のような山間部の地形にとっては対岸の火事ではありません。ライフラインを守るミッションを持つ丸ス産業様も、政府・自治体で進められている「国土強靭化」施策に対応。地区上位を誇る土工工事業者としての実績も手伝い、コンスタントに受注を確保、2021年に過去最高の売上高を計上するなど、順調に業績を伸ばしています。 関連会社である建築会社においても、著名建築家とのタイアップによる住宅ブランドを開発、SNSを活用した集客効果も手伝い順調に成長、当地区の住宅産業に新たな価値を吹き込む企業として、存在感の発揮が期待されます。

成長の陰で表面化した課題

地域になくてはならない企業として益々存在感を発揮する一方、丸ス産業様において、近年経営課題として表面化してきたのが「次世代へのノウハウ継承・次世代人材の採用と育成」でした。
高齢化が進む現場での「仕事の仕方は目で見て盗め」と言われてきた世代と、効率重視で最初にやり方を教えてもらってきた若手世代との働き方に対する考え方のギャップにより、離職を選ぶ若手も多くいました。
また、東京五輪に続き大阪万博など、大型プロジェクトに沸く建設業。その活況の一方で、深刻な労働力不足が懸念されています。2025年問題を受け、全産業規模で若手人材の採用が難しくなる中、丸ス産業様においても例に漏れず、その問題は自社の将来を脅かすものとして注視されるようになってきました。

次世代リーダー候補者で自社の将来を設計

このような状況の中、経営者・経営幹部の人脈を生かした不足人材の獲得を行いながら、プロパー人材の強化・育成がわが社の成長の軸となる、との方針が経営者により打ち出されました。
半年間の次世代リーダー研修の後、次世代メンバーからの要望もあり、自社の長期ビジョンの次世代メンバーによる策定を断行、経営者、役員メンバーのサポートのもと1年の策定期間を経て、同社では初めてとなる長期ビジョン「ビジョン2030」が完成。今後は主に次世代メンバーがリーダーシップを発揮し、グループ一体となってビジョンを推進していくフェーズへと移行します。
ビジョンの主な項目としては、

1.新たな特殊工法・特殊技術の情報収集と導入をボトムアップで行える仕組み作り
2.地元の官公庁だけでなく、国や民間企業との取引も狙う営業体制の構築
3.グループ企業とのタイアップによる新規造成事業の開発
4.自社ブランド開発のロードマップ策定
5.ベテラン人材からのノウハウ継承、管理職のマネジメント向上のための企業内大学の設立
6.採用強化全社プロジェクトの発足
7.働き方改革を目的とした業務フローの見直し、組織編制の見直し、ICTへの対応など

といった内容が掲げられています。
建設・土木業の魅力向上と建設現場の生産性向上が求められる業界の課題に対して、丸ス産業様は次世代リーダーによるこれまでにない発想、着眼を自社の将来ビジョンに移植、ビジョン推進と次世代リーダー強化を同時進行で行っていくことで、永続と更なる成長・発展に向け舵を切りました。

次世代リーダー候補者で自社の将来を設計

出典:タナベコンサルティング作成

次世代人材によるビジョン策定により解決される課題と期待される効果

長期ビジョン・中期経営計画の策定および推進には、強い改革意識・トップの想いや志が全社員に浸透すること、より多くの人材が関わり作り上げることが必要です。 日本企業の経営課題に関する調査データは種々存在しますが、「管理職層のマネジメント能力」については常に課題感が残る結果となっています。中でも近年は「次世代経営層の発掘・育成」が上位に食い込んできています。
下記の図をご覧いただいても分かる通り、依然としてマネージャー人材の育成は課題となっており、建設業界においても例外ではありません。この傾向は今後も続く見通しであり、各社はその対策に対する断行が求められます。

次世代人材によるビジョン策定により解決される課題と期待される効果

出典:タナベコンサルティング作成

次世代リーダーによる中期経営計画、長期ビジョン策定がもたらす効果として、事業承継、経営幹部としてのマネジメントノウハウの習得、経営意識の向上、また、新しい発想や現場からの発想などに基づく提言が経営判断に新しい価値をもたらしたり、策定メンバーの経営者的な感覚・行動を育むことで次世代幹部登用の登竜門となる、起業家精神の育成が期待される、など様々挙げられますが、わが社の未来をこの層に委ねることへの経営者の英断も必要となって参ります。しかしながら、現経営者・経営幹部の才覚による成長ビジョンにはマンネリと限界が付き物です。VUCAの時代となり、社会やビジネスにとって、未来の予測がより難しい状況になっています。そんなすさまじい市場の変化には、より次代を知り、次代を占う人材に投資する、そのようなエンパワーメント(権限移譲)を発揮できるかが、業界の常識を破り、他社に先駆け自社の未来を約束できるきっかけとなるのです。

会社プロフィール

丸ス産業株式会社

[ 所在地 ]
岐阜県加茂郡白川町三川1270

所在地 岐阜県加茂郡白川町三川1270
設立 1952年9月1日
代表取締役社長 藤井紳二
売上高 3,347百万円(2022年7月期)
従業員数 80名

コンサルタント紹介

山本 剛史
タナベコンサルティング
取締役
ストラテジー&ドメインコンサルティング事業部山本 剛史
村上 幸一
タナベコンサルティング
取締役
ストラテジー&ドメインコンサルティング事業部村上 幸一
高島 健二
タナベコンサルティング
上席執行役員
九州本部長高島 健二
土井 大輔
タナベコンサルティング
執行役員
ストラテジー&ドメインコンサルティング事業部土井 大輔

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ABOUT

タナベコンサルティンググループは
「日本には企業を救う仕事が必要だ」という
志を掲げた1957年の創業以来、
66年間で大企業から中堅企業まで約200業種、
17,000社以上に経営コンサルティングを実施してまいりました。

企業を救い、元気にする。
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コンサルティング実績

創業66
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