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今問われる製造業におけるブランディングの必要性とその手法について

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近年その重要性が広まっているブランディングですが、企業に対してサービスを提供しているBtoB企業は、ブランディングという経営活動に対して必要性や緊急性を感じていない企業も多いです。今回は、BtoB領域さらには製造業にフォーカスし、ブランディングの必要性と成功のために取り組むべきことを詳解します。

ブランド / ブランディングとは何か

そもそもブランドとは「ステークホルダーが頭の中で思い描くイメージ」のことを指します。そしてブランディングとは、自社が目指すブランドビジョンをステークホルダーに思い描いてもらうためのあらゆる企業活動のことを指します。ブランディングを広告宣伝活動と考えている方もいらっしゃるかもしれませんが、あくまでそれはブランディングのごく一部の手段であり、他には事業戦略やパーパスの策定、社員の振る舞い、CSRやSDGsの取り組みなど企業活動のほぼすべてがブランディングに関わっています。

ではなぜブランディングが今必要とされ、世界各国の企業が強く推進しているのでしょうか。それは、企業や団体が競争優位性を確立し、長期に渡ってステークホルダーに選ばれ続けるためです。価格競争や何らかのキャンペーンなどで一時的な優位を生み出すことはできても、長期的な目線で競争優位を保ち続けることは非常に難しいことです。そのため、自社が保有するコアコンピタンスや、業界・市場でのポジショニングを理解し、ブランドビジョンを描き、ステークホルダーに認識してもらうブランディングが必要になります。

製造業におけるブランディングの重要性

ブランディングがなぜ必要なのかについて前述させていただきましたが、これはもちろん製造業においても同様のことが言えます。製造業の取引先の多くは商社や最終財へと加工・組み上げを行うメーカーであり、これまで関係を築いてきた特定の取引先であるケースが多く見受けられます。このような場合、安定的で堅実な経営を実現できる反面、世の中の変化に対応し切れないというリスクも併せ持っています。製造業を取り巻く環境は、今3つの変化により大きく変化しています。

変化①:顧客の意思決定までのプロセスが変化
これまでは、既存の取引先と対面で商談を行い、ニーズを引き出し、自社で提供できる製品やサービスを提案するというのが基本でしたが、オンライン化が進み、商談に至るまでに企業や製品に関する情報収集が完了している場合が一般的となりました。どれだけ技術力や独自性があったとしてもブランド力がなければ検討の段階で候補に入りにくい市場になったと言えます。

変化②:優秀な人材の奪い合いが激化
製造業において人手不足は深刻な状況であり、「2023年版ものづくり白書」※1によれば全産業に占める製造業の就業者割合は年々減少傾向にあり2002年には19.0%を占めていた就業者割合も2022年には15.5%まで減少しています。優秀な技術者がより魅力的な企業へと流出するケースも増加しており、新卒採用に関してもエンドユーザー(生活者)との接点を持てないものづくり企業においては、知名度で不利な立場に置かれることも多くあります。コーポレートブランドを社内外へと指し示し、社員には会社に対するエンゲージメントを高め定着と育成を行い、社外(学生やキャリア)に対してはブランド理解によって企業の魅力を伝え、採用力の強化を行います。

変化③:社会や環境に対する貢献価値の重要性が高まっている
良いモノ・サービスを作れば売れる高度成長の時代から消費者志向のマーケティングが主流の時代を経て、現代ではサービスの良し悪しや、売り方の良し悪しだけでなく、社会や環境に対する企業としての貢献価値が重要視される時代となりました。こうした企業としてのあり方や価値訴求もステークホルダーから選び続けてもらうための重要項目となっています。

※1:経済産業省 2023年版ものづくり白書(ものづくり基盤技術振興基本法第8条に基づく年次報告)

製造業におけるブランド戦略とは

ブランド戦略は、現状認識フェーズ→戦略策定フェーズ→実行推進フェーズの3フェーズで行います。

1.現状認識フェーズ
現状認識フェーズでは、自社が保有する様々な資産の棚卸を行います。製造業において特に重要なのは設備や技術者に紐づく技術・ノウハウをしっかりと把握し、競合他社との違いを明確にすることです。難しい加工を可能にする技術・高品質を担保する管理技術・短納期を実現する技術など様々ありますが、他社と比べて自社の技術が優れているところ・劣っているところを明確にしましょう。現状を把握した上で、長期的な目線で確立したいブランドビジョンを描きます。

2.戦略策定フェーズ
戦略策定フェーズでは、既存の取引先だけでなく、見込み客やエンドユーザー、将来の社員になり得る学生、地域や社会に暮らす生活者までを想定しアウター・インナーの両軸で施策を組み上げます。

(1)アウター施策
アウター施策では上記のようなターゲットの解像度をさらに上げ、ペルソナに落とし込みます。自社のブランドを必要とするであろうユーザーはどんな企業(人)なのか、自社が欲している人材はどんな特徴があるか、逆に働きたいと思ってくれる人材はどんな人なのか等、それぞれ解像度を高めることが重要になります。そして、設定したターゲットとのタッチポイントを設定し、細かい手段に落とし込んでいきます。

(2)インナー施策
インナー施策は、ブランドビジョンを実現するために必要不可欠な人的資本を形成するために欠かせない取り組みです。自社のブランドを社員全員が正しく理解することで、アウターに向けたブランディングの説得力が増すだけでなく、社員の会社に対するエンゲージメントの増加にもつながり、離職率の低下や採用力の向上にもつながります。部署横断型のワークショップの実施や社員向けのクレドブック作成等、コーポレートブランドを作り上げる過程で積極的に社員が参画する体制をとりましょう。

3.実行推進フェーズ
実行推進フェーズでは、策定した戦略を推進していきます。ブランディング戦略全体と、それぞれの取り組み一つ一つに目標(KPI)を設定し、実行の中で効果検証を行いながら改善を繰り返し行うことが重要になります。

製造業ブランディング まとめ

これまで、製造業におけるブランディングの重要性と必要性について記載させていただきました。いかがでしたでしょうか。「我々はものづくりの会社で取引先も決まっているからブランディングは必要ない」というお考えをお持ちの企業もまだたくさんいらっしゃるかと思います。
前述した、

①取引先選定のプロセスの変化
②採用環境の変化
③企業に求められる価値の変化

に対応し、これから先何十年とステークホルダーに選ばれ続ける企業になるために、少しでもブランディングに前向きにお考えいただければ幸いです。

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AUTHOR著者

タナベコンサルティング
ブランド&PRコンサルティング事業部

彦坂 俊樹

テレビ放送局営業部にてカーディーラー、ハウスメーカー、製造業、物流業、行政団体等、様々な業界へTVCM枠や番組枠を活用したプロモーション支援を行った後、当社に入社。メディア媒体を活用した効果的なプロモーション施策の設計や、アニメーション・実写問わず目的に沿った動画コンテンツの作成を強みとし、誰に何を伝えたいかを見極めた上で適したプロモーション支援を行う。

彦坂 俊樹
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