COLUMN

2024.03.19

中期経営計画策定後のモニタリング

中期経営計画策定後のモニタリング

中期経営計画の策定状況についてタナベコンサルティングが実施したアンケートでは、実に81.2%の企業が策定していると回答ありました。上場企業に絞ると9割以上の企業が中期経営計画を策定しています。先行きが不透明な経営環境だからこそ、あるべきビジョンを定めその実現に向けた計画を策定してく必要があると考える経営者が増加してきていると考えられます。
本アンケートでは経営者が抱える課題は「策定に関する段階」から、「策定後の推進・モニタリングによる段階」に移行していることが見えてきました。中期経営計画を策定した後、多くの経営者・経営幹部が推進・達成をするための「モニタリング」に頭を悩ませており、策定したが推進がうまくいかない原因が整理出来ていないという現状があります。
その課題に対し、本コラムは下記内容で構成していきます。皆様の一助となれば幸甚です。
1.企業が抱える長期ビジョン・中期経営計画の課題
2.推進における3つのポイント
3.ビジョン・中期経営計画推進に向けたビジョン・ディシジョンマネジメント

企業が抱える長期ビジョン・中期経営計画の課題

「策定するための課題」から「策定後の推進する課題」へ

長期ビジョン・中期を策定する企業が増え、策定後の課題が顕在化

タナベコンサルティングが実施した「長期ビジョン・中期経営計画に関する企業アンケート調査」によると中期経営計画についての策定状況は全体の81.2%の企業が既に策定をしている結果となりました。こちらについては同様の設問を昨年にもアンケートで設けており、そちらにおいて74.0%の企業が作成している結果であったため、昨年と比較して約7ポイント増加しています。
上場/非上場別|中期経営計画(3~5年)の策定状況のグラフを見ると、上場企業は9割以上が中期経営計画を策定していますが、非上場企業では4社に1社が策定できていない状況にあり、結果に開きが見られます。
策定している企業が増加する中、抱えている課題は策定後へと移行しつつあります。「企業が抱える課題に対するアンケート結果は下記の通りです。
「目標数値を掲げているが具体的な戦略が不足している」というものが54.5%、次いで「計画・ビジョンを定めているが推進できていない」というものが34.8%と、打ち手に関する課題が上位に挙がりました。また、「定期的に計画・ビジョンを見直す仕組みがない」が27.1%と、昨年と比較し増加しています。
上場/非上場別の長期ビジョン・中期経営計画の課題に対するアンケート結果を見ると、上場企業は具体的な戦略が特に不足しており、非上場企業は計画が曖昧で、方向性が定まっていないことが課題として挙げられます。
先述の分析から勘案すると、戦略を構築できる専門部署や人材の不足、長期ビジョン・中期経営計画を推進する体制や取り組みに課題があることがうかがえます。

中期経営計画の策定状況

出所:タナベコンサルティング作成

企業が抱える長期ビジョン・中期経営計画の課題

出所:タナベコンサルティング作成

推進に向けた3つのポイント

策定後の推進がうまく進まない要因を解決する3つのポイント

策定後のレビューの仕組みの総点検

自社のレビュー(振り返り)の仕組みが整っているかをチェックしましょう。レビューの仕組みは下記3つで構成されます。

⑴レビューフローの策定・整備
レビューの流れという意味ですが、以下5点が明確になっているかがポイントとなります。

①レビューする頻度は適正か
②レビューする会議体は決まっているか
③レビューするために必要な情報を吸い上げる仕組みがあるか
④フローは全階層に対して繋がっているか(下から上、上から下のPDCAサイクルがあるか)
⑤年間を時系列でレビュースケジュールが整理されているか

多くの企業がレビューする頻度が曖昧であるケースが多いです。目安は四半期の一度が望ましいです。
次いでレビューするための情報(経営判断するためのエビデンス)が不足しているまたは吸い上げる仕組みが整備されていないことがあります。策定した中期経営計画に対し、判断基準となるKPIが定められていないまたはKPIになっていないことが大半です。
そして、レビューフローが一部の役職階層のみで行われており、全社推進・浸透されていないケース。レビューされた内容が経営陣のみの共有に留まり、部門や末端社員に落ちていない「いわゆる一方通行のレビューフロー」になっています。そうすると当然ながら、課題は抽出されても実行力が不十分になります。

⑵レビューフォーマット
続いてレビューするための標準化です。部門ごとに属人化したバラバラのフォーマットが運用されていることが多いです。中期経営計画は全社の経営判断・意思決定の場です。部門ごとに形式や項目がバラバラでは当然ながら全社経営判断はできません。レビューフォーマットを標準化し、全部門同じテーブルでレビュー出来ていますでしょうか。戦略テーマの推進担当者と経営幹部だけになっていないでしょうか。フォーマットに明記すべき7項目があります。

①中期経営経営計画の成果目標の明記
②中期目標達成から逆算し設計された直近単年度、四半期単位での成果・目標の明記
③達成基準(定量)
④四半期の振り返り(定性・定量)
⑤達成・未達成要因
⑥翌四半期の取組み(対策)
⑦担当・期限の明確化
⑧全社意思決定依頼事項(投資・推進体制変更、目標変更など)

⑶レビューガイドライン
最後はレビューに対するガイドラインです。レビューフォーマットでもお伝えした通り、属人化すると正しい経営判断を阻害します。一度決めたルールやフォーマットも気づけばそれぞれが良かれと思いカスタマイズしてしまう傾向があります。
そのため、ガイドラインが必要となります。口頭ではなく、明文化することが必要です。推奨はガイドラインブックなどに落とし込みをすることです。加えて、ガイドラインは少なくともレビュー導入期は四半期単位で見直し、ブラッシュアップをかけることが必要です。その後は最低1年に1回は見直し、陳腐化したままレビュー運用をしないよう要注意です。

中期経営計画の策定状況

さいごに 中期・ビジョン推進に向けたトップマネジメント

中期達成には経営判断・意思決定の質と量が問われる

経営判断・意思決定される闊達なマネジメントとは

さいごに長期ビジョン・中期経営計画を推進するためには2つのマネジメントが必要です。
ビジョンマネジメントとディシジョンマネジメントです。
ビジョンマネジメントとはビジョンが社内外に浸透し、社内においては社員一人一人がビジョンを咀嚼(翻訳)できるレベルまで理解させ、日常業務で実践されている状態です。ビジョンはマネジメントなしに達成はありません。ビジョンが浸透しない最大の要因はマネジメント不足であり、マネジメント施策が明確になっていないからです。ビジョン浸透はトップマネジメントであり、かつ社員ひとりひとりと会社を繋ぐ需要なコミュニケーションとも言えます。ビジョンの浸透度合いはトップと社員のコミュニケーションの質と量と比例します。一方的なコミュニケーションだけではなく対話という形式も取りましょう。
そして、2つ目はディシジョンマネジメントです。経営判断・意思決定をするための判断基準をマネジメントすることです。その際にはビジョン・中期経営計画策定時ディシジョンマネジメントにおける判断基準(良し悪しの基準)を策定し、見える化することが必要です。タナベコンサルティングではKGI達成に向けたKPIツリーの策定を推奨しています。そのKPIこそが「良し悪しの基準」であり、策定が曖昧の場合中期的な目標達成は成しえません。短期的な足元に対するいわゆる「業績対策」にとどまり、一向に中期経営計画の達成はされません。

2つのマネジメントについて今一度、現状の課題を把握し「思いのこもったビジョン・中期経営計画」の実現を目指しましょう。

著者

タナベコンサルティング
ストラテジー&ドメインコンサルティング事業部
ゼネラルマネジャー

上原 伸也

アパレル製造小売業で販売・店舗マネジメント、大手旅行情報サービス業で営業・マーケティング業務に従事後、当社へ入社。「地域企業を元気にし、地域経済を活性化させる」を信念に、事業戦略構築、新規事業開発、SDGs経営統合を得意分野とし活躍中。顧客の改善活動をワガゴトとして取り組む真摯な姿勢でのコンサルティング展開で、クライアントから高い信頼を得ている。

上原 伸也

ABOUT

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コンサルティング実績

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