COLUMN

2023.02.27

日本企業のM&Aによるアジア進出の現状と今後
~国際会議参加レポートinタイ~

M&Aワールドワイド※主催の国際会議「Bangkok Convention」(2022年11月23~25日)に、タナベコンサルティンググループのグローウィン・パートナーズが参加しました。ポストコロナを見据え今年の5月に開催されたコペンハーゲンに続きリアルで開催されたこの国際会議では、最新のM&A情報が交換され、日本企業の海外展開に役立つアジアの案件情報も交換されました。
※世界各国のM&Aブティックが加盟するグローバルM&Aネットワーク

本稿ではその会議参加の印象と日本企業のアジアビジネスについて、本会議傘下に際しバンコクを訪問した印象を述べてみたいと思います。

タイはポストコロナ時代の国際会議開催で盛況

タイの首都バンコクにて、M&Aワールドワイドによる国際会議「Bangkok Convention」が11月23~25日の3日間にわたり開催されました。2年間、コロナ感染拡大によりオンライン開催となっていた同会議ですが、5月のデンマークの首都コペンハーゲンでの開催に続き年二回開催の通常通りの体制に戻り、約30カ国より50名が参加し、タイ及びベトナムから多数のコーポレートゲストが招かれ盛大な会となりました。

M&Aワールドワイドとしては今回で38回目の開催となった本会議。参加メンバーとの交流に加え今回はホストファームPYIの幅広いネットワークで、M&Aニーズを持つタイ及びベトナムのコーポレートゲストが多数招かれ、活発なM&A情報の交換がなされました。

本会議で、今年に入り3度目の海外出張となりますが、バンコクはすでに多くの外国人が戻り、コロナ前の状況を取り戻しつつある空気を感じました。特に、本会議の開催前週にはAPEC首脳会議が開催された関係で、その関連イベント等も多数催されており、主要ホテルの会議室などは同様のグローバルな会議やコーポレートイベントで人の出入りが頻繁である様子でした。

タイ経済において、観光産業は重要なセクターの一つであり、MICE(Meeting(会議)、Incentive tour(招待旅行)、Convention (国際会議)、Exhibition(展示会)の頭文字をとった造語)の誘致にも力をいれています。成功裏に終わったAPEC首脳会議の開催は、世界に向けてMICEの復活を強く印象付ける事となったでしょう。

タイ政府は、APECの開催にあたり、バンコク中心部の国際会議場クイーンシリキットナショナルコンベンションセンターをリノベーションし、会議開催のシンボルにふさわしい外観と周辺整備を行いました。

タイはポストコロナ時代の国際会議開催で盛況

日本からのアクセスと利便性の良さで日本企業が多数進出

タイは日本企業のASEAN(アセアン)進出の中心的な地位を占め、多数の日本企業が拠点を構える国です。外務省の海外進出日系企業拠点数調査によれば米国、中国に次いで日系企業が多い国です。日本との時差も2時間、フライトは6時間程度であり製造業のみならずサービス業の進出も盛んです。

コンベンションの中でもエコノミストからのプレゼンテーションがありましたが、近年の中国の地政学リスクも踏まえ、サプライチェーンの分散化の観点からもタイへの生産移管の動きもあるようでした。日系製造業はタイにはすでに出尽くした感もあるものの、製造拠点としてのタイの位置づけは今後まだまだ重要であり続けるという印象を持ちました。

日系ホテルの進出も盛んであり、滞在環境は良好なうえ、金融機関、会計法律などの日系ビジネスサービスも日系企業の活動を支えるビジネスインフラとして整備されており、海外事業経験の少ない企業でも安心して進出できることがタイの魅力でもあります。

アジア進出の課題はローカライゼーション

日本企業関連の訪問の中で、日本企業の海外進出にあたりローカライゼーション(現地化)の重要性を改めて気付きました。昨今のタイやアセアンにおける日本企業のM&Aニーズは現地市場や調達ルートを取り込む観点からの物が多いと感じています。これらの案件を取得した後も如何に現地のやり方の良いところを取り入れて、更に日本企業の強みを活かして伸ばしていくか、ローカライゼーションが非常に重要であるとの声を多数聞きました。

日本からのアクセスも良く、駐在の環境としても良好なタイでは日本人駐在員が経営管理にあたることも容易です。他方、言語の問題、日本文化への理解も高いが故に、日本流を押し通してしまいがちな環境でもあります。郷に入っては郷に従えとの教えもある通り、現地の雇用者との融合と教育を上手くやっている企業には経営好調な企業も多いとの声も聞かれました。

M&Aを活用するならばPMI(M&A後に行われる統合プロセス。Post Merger Integration(ポスト・マージャー・インテグレーション))が重要であることを再認識しました。

今後期待されるM&Aでのアセアン進出

今回の会議を通じて、タイ企業にとっても海外企業とのM&Aは徐々に一般的なものとなっているという印象を受けました。大手企業は買い手として、M&Aを通じた海外進出もすでに行っており、日本企業の中小規模のM&A機会もタイ及びアセアンで今後さらに拡大していくでしょう。

こうしたチャンスを活かしてアジアの成長を日本企業の成長に活かされていく事を期待したいと思います。

著者

グローウィン・パートナーズ

田内 恒治

JETRO(現 日本貿易振興機構)入社。米国駐在、内閣官房出向などを経て、Hotta Liesenberg Saito LLP 東京事務所(現 HLSグローバル)にて会計アドバイザリーに従事。三菱UFJリサーチ&コンサルティングに入社後、日本企業の海外戦略立案、実行支援コンサルティングを多数実施。自社の東南アジアの事業拡大にも関与し、コンサルティングの傍らホーチミン事務所長を兼任。アジア欧米の幅広いネットワークと知見を活用した海外戦略立案、パートナー探索からクロスボーダーM&A、戦略的資本提携の実施に至る一気通貫のアドバイス業務に従事。2021年当社入社、2022年海外FA部部長職。クロスボーダーM&A、海外戦略立案コンサルティング案件を多数指揮している。

田内 恒治

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