COLUMN

2023.03.01

リサイクルの新しいかたち~アップサイクルとは?

捨てるものに新たな付加価値を!SDGsの高まりとともに、今、注目のアップサイクルとは?アップサイクルにより、『企業価値向上・ブランドディング』につなげる取組事例をご紹介!!

アップサイクルとは何か?

アップサイクルの定義、リサイクル・リユースの同義語との違い

アップサイクルとは、不要となった物を元の形状や特徴を活かしつつ、新しいアイディアを加えることで別のモノに生まれ変わらせることです。「不要なモノの価値を高め(アップさせ)宝物に変える」という、サステナブルな考え方です。
リサイクル、リユース、アップサイクルは似ている考え方ですが、それぞれ意味が異なります。リサイクルは廃棄された缶やペットボトルなどを分解・資源化し、新たな製品の"原料"として再利用することです。リユースは、元の状態に戻すなどしながら、アレンジを加えられることなく"そのまま"繰り返し使われることを言います。例えば、着なくなった服をフリーマーケットや古着店で売る、壊れた家電製品は捨てずに修理に出すなどです。アップサイクルは新たな価値を加え、違うものに生まれ変わらせるという点で異なります。

アップサイクルが注目される背景、SDGsとのつながり

近年のSDGsの高まりにより、企業価値向上、企業ブランディング、開発コストダウンの手段の一つとしてアップサイクルへの注目が高まっています。SDGsの開発目標12「持続可能な消費と生産のパターンを確保する」は、より少ないもので、より多くのものを作ることを目指し、生活の質を向上させるために掲げられました。企業評価の基準として、SDGsへの取り組みはもはや当たり前のこととなっており、消費者の意識もエコな消費への意識が高まっています。資源の枯渇とコロナ環境下におけるコストアップが今後さらに想定される中、アップサイクルは一からモノを作ることに比べて、比較的コストがかからずに、新たな商品を開発できるということからも注目されている理由です。例えば、アパレル業界・食品業界・建設業界などにおいては、廃棄物およびCO2排出量の削減は、業界全体の喫緊の課題であり、取り組みが加速しています。企業の取り組み事例を紹介します。

アップサイクルが注目される背景、SDGsとのつながり

アップサイクル取組事例 (食品・建設業界の事例)

食品ロスに新たな価値を!(株)日本フードエコロジーセンター

近年、食品ロス問題は大きくクローズアップされており、SDGs開発目標においても、2030年までに世界全体の一人当たり食品廃棄物を半減させる目標が採択されています。日本全国の自治体のごみ処理費は年間約2兆円、そのうちの約4~5割が食品であり、年間8000億以上の税金が食品を燃やすために費やされています。
(株)日本フードエコロジーセンターは、食品スーパー、食品工場、百貨店等からの食品廃棄物を集め、殺菌・発酵させて加工し、液体状の養豚用の飼料を造る取り組みを行っています。1日約35tの食品廃棄物を受入れ、1日42tのリキッド発酵飼料を製造し、契約養豚生産者と協力して付加価値のある 豚肉を生産し、大手スーパーマーケットでブランド豚として販売しています。「食品ロスに新たな価値を」という企業理念の下、産官学連携により開発した技術により、廃棄物処理×飼料製造の食の循環型モデルを構築しています。まさに、食品廃棄物を資源として活用し、高付加価値商品を開発・販売するアップサイクルモデルと言えます。
参考:日本フードエコロジーセンター(https://www.japan-fec.co.jp/

廃棄建材・端材から環境に配慮したプロダクトを開発!(株)浅沼組

環境省によると、全国の産業廃棄物の総排出量のうち、建設業からの排出量(令和元年度実績)は7,971万トン、全体の20.7%と高い割合を占めています。今後、建設廃棄物の排出量は増加が想定され、まさに建設業界では建設廃棄物の発生抑制、再資源化、再生利用の促進は重要課題となっています。
(株)浅沼組では、GOOD CYCLE PROJECTという建材や端材をプロダクトにするアップサイクルの取り組みを行っています。例えば、ある木造建築物の工事で発生した木の端材(約4,200kg)を加工し、ウッドチップ、木の香りのするアロマオイル、食器などの製品を作り販売しています。杉の香りは、リフレッシュ効果や空気清浄効果があるとされ、仕事に集中したいとき、眠る前のひとときなどに活用されています。プロジェクトでは、「捨てるから活用へ」としてゼネコンの慣習を変えるきっかけにしたいという思いを持って挑戦を続けています。

参考:環境省「産業廃棄物の排出及び処理状況等(令和元年度実績)について」(https://www.env.go.jp/press/110498.html
参考:(株)浅沼組「GOOD CYCLE PROJECT」(https://www.goodcycle.pro/

アップサイクル取組事例(アパレル業界の事例)

ビンテージニットでオリジナル商品を開発!澤田(株)

アパレル業界においては、『大量生産→大量消費→大量廃棄』の流れがより深刻化しています。日本の衣料廃棄物は年間 50 万㌧以上であり、ファストアパレルの台頭により低価格で手軽に購入できるようになったこと、コロナの影響により消費者の外出自粛で大量の売れ残りが発生していることが影響しています。このような中、各社ではリサイクル、アップサイクルの取り組みが進んでいます。
澤田株式会社はニット原糸の開発、ニットウェアのOEM・ODM生産、ニット製品の自社ブランドを展開しています。同社ではニット原糸を販売するために1年で400種類を超えるニット生地を生産しますが、シーズンが終わると見本展示したニット生地は廃棄されていました。しかし、それらを有効活用したいとの思いから、ニット生地をアップサイクルしたブランド「KNOT YET !」(ノットイエット)を立ち上げました。地域の障がい者支援施設に依頼し、残布を活用したマグネット、ピンバッジなどの様々な小物製作を行い、ブランドとして販売するという取り組みです。捨てられるはずだったものを有効活用し、地域と連携した循環型のものづくりを実現しています。
参考:澤田(株) (https://knotyet.jp/

ビンテージニットでオリジナル商品を開発!澤田(株)

アップサイクルは、アイデアや仕組みによって、いかに付加価値をつけることができるかが重要となります。3社の取組事例から以下の点がポイントと言えます。
1点目は、取り組みの社会的意義(ミッション)を明確にするということです。明日の売上を伸ばそうではなく、社会課題をどうやって解決するかを考えることから始め、結果として、新たな製品作り、顧客の開拓につなげるという視点です。
2点目は、地域特性を活かす、地域を巻き込むことです。地域の人々・企業と連携して循環型のモノづくりを実現することで、話題を呼び、応援者が増加し、ブランド価値向上につなげていくことが重要です。
3点目は、WINーWINの関係の構築です。日本フードエコロジーセンターの事例で言うと、同社、食品関連事業者、養豚事業者の3社にとって、開発費のコストダウン、ブランド展開にWINWINでつながっています。
今回はSDGsにおける「アップサイクルの考え方の理解、取組事例、ポイント」をご紹介しました。捨てるものに目を向け、外部連携し技術導入することで、新たな付加価値が生まれる、そのような取り組みを検討していきましょう。

著者

タナベコンサルティング
ストラテジー&ドメインコンサルティング事業部
チーフマネジャー

大裏 宙

前職はBtoC向けサービス事業(外食・教育・介護・保育)を全国展開する上場企業に勤務。経営企画、店舗開発、FC加盟店開発、新規事業立ち上げを経験し、当社へ入社。主に建設業における事業戦略構築、人材育成、働き方改革推進を得意とし、全国で多数の実績を有する。

大裏 宙

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