営業プロセスを改革し、生産性向上へつなげる
~営業プロセスにおけるマーケティングファネルの考え方とその活用法~

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営業プロセスを改革し、生産性向上へつなげる~営業プロセスにおけるマーケティングファネルの考え方とその活用法~
目次

コロナ禍が緩和されつつある昨今ですが、未だ日本市場は明るくないニュースが多い状況であらゆる業種業界に影響を与えています。例えば、少子高齢化による未来の働き手不足や2024年問題などの影響で、図1でもあるように「人手不足」に関連するテーマは中小企業の抱える1つの大きな経営課題にあたることが多い傾向です。
本コラムで取り上げる"BtoBマーケティングファネル"は、上記のような人手不足=限られたリソースの中で、自社の見込み顧客に対してどのようにアプローチし、契約(受注)まで効率的に繋げるためのプロセスを作っていくのかについて述べていきます。

BtoBのマーケティングファネルの目的は、「マーケティング活動を最大効率化に繋げるために見込み顧客の属性とそこに沿った施策を可視化すること」であると言えます。

*図1 (経済産業省『2023年版 中小企業白書・小規模企業白書概要』)
*図1(経済産業省『2023年版 中小企業白書・小規模企業白書概要』)

1.BtoBマーケティングファネルとは?

(1)現在の見込み顧客の状態を正しく知る

貴社では、このような事象は起こっていないでしょうか?

・営業担当者Aさん:自身の担当するお得意先を毎日訪問する積極的な営業活動。
それに対して、
・営業担当者Bさん:自身の担当するお得意先が少なく1週間で2日程度訪問する。そのため、営業担当者Aさんと比較して消極的な営業活動に見える。

上記の営業担当者AさんとBさんの活動状況だけを聞くと、当然Aさんの方が高評価されやすい活動を実施しています。しかし、これはあくまで2人の営業担当者の活動実態"だけ"を見た評価に過ぎないです。
視点を変えて、例えばAさんはお得意先に対して過去に契約・発送した「製品のその後はいかがですか?」と情報交換しているだけかもしれません。例えば、Bさんは訪問候補先が10社ある中で実際にこれから訪問する企業を選定している最中かもしれません。

ここで重要な点は、「現在の見込み顧客の状態を正しく知る」ということです。当然のことですが、商売は顧客と取引を介することで成立するものであり、活動量=受注量と単純な訳ではありません。その時に接触する顧客の状態次第で営業活動の中身は必然と変わってきます。
実際に専門商社であるC社で営業担当者全員にお得意先への営業行動分析アンケートを実施したところ、自社製品シェアの低い企業(=本来注力して狙うにふさわしくない顧客)への訪問をする割合が全体の50%以上という数字を出した事例もあります。
自社の本当に現在求めている顧客属性に対しての見合った活動であるかが重要です。

(2)見込み顧客属性と注力ポイントを可視化するための"ファネル"

「現在の見込み顧客の状態を正しく知る」と述べましたが、見込み顧客の状態を整理する1つの指標として図2のようなBtoBマーケティングファネルを活用することができます。聞き馴染みのない「ファネル」という言葉は「漏斗」という意味で、右側の受注に向けて顧客ターゲットの数が徐々に絞り込まれていく(少数化されていく)様子の例えでよく使われています。
図2の見方として、上部青枠と黒塗り部分は見込み顧客をどのようにしたいのか目指す状態(=目的)を記載しており、その下にはオフライン(黄色)とオンライン(青色)の代表的なマーケティング施策例を記載しています。

*図1 (経済産業省『2023年版 中小企業白書・小規模企業白書概要』)
*図2 タナベコンサルティング作成

(3)各状態の目的に沿った優先順位付けと施策

BtoBマーケティングファネルとは、見込み顧客が認知拡大から製品・サービス受注、そしてリピートファン化に至るまでの一連の流れを図式化したものです。BtoCマーケティングファネルも存在します。BtoCの場合はBtoBに比べて見込み顧客を確認する手段が狭まったり、認知拡大を伸ばすための莫大な広告費がかかりやすいという特徴が考えられます。

見込み顧客と一言で表現しても、その状態は各顧客でそれぞれ異なるため複雑です。見込み顧客の状態によって、自社のとるべき行動パターンを変えていく必要があります。見込み顧客がどのような状況の際に、どのような目的で、どのような接触形態を作ることが適切であるのかを定めるためマーケティングファネルは用いられます。

以下は、図2を基に見込み顧客の状態の目安指標になります。

①認知拡大:目的は、自社の製品・サービスを知ってもらうことになります。ここではまだ見込み顧客が潜在的な状態です。持続的活動が求められます。
②見込み顧客獲得:目的は、見込み顧客の顕在化(=見える化)です。よく「リード」と表現されます。見込み顧客獲得の前に予め、どのような見込み顧客を獲得したいのかターゲット像を策定し、逆算した計画と施策立案が求められます。
③見込み顧客育成:目的は、ホットな見込み顧客を手離さずに近づけることです。ここでは、施策も当然ですがリードタイムにも注意する必要があります。
④有望見込み顧客:目的は、高確度となった見込み顧客を他と差別化することです。見込み顧客数が多い企業では特に、この顧客層を明確に定義することで"今"だから集中すべき顧客と中長期的な視点でアプローチする顧客を分ける時間軸を設けることが可能となります。
⑤アポイント・商談:目的は、お客様のニーズを探ることです。見込み顧客がどのようなことを知りたいのかという点を押さえる必要があり、現場での専門性が問われますのでその事前準備が必要です。
⑥商談:目的は、見込み顧客のニーズに応えることを正確に伝えることです。また、個客の状況によってはこの商談後にいったん見込み顧客育成の状態にまで戻すことなども考えられます。
⑦受注:目的は、その名の通り受注です。見込み顧客と直接会う機会の多い営業マンは自社の「製品」とも呼べます。事前準備として、受注率を上げるための社内教育なども求められます。
⑧リピートファン化:目的は、自社製品・サービスのシェアを継続的にアップさせることです。そのためには継続的な既存顧客とのコミュニケーションと営業マンとしてのブランド力が問われます。

2.マーケティングファネル活用のためにすべきこと

(1)マーケティング機能を運用できる組織体制を作る

属人的なマーケティング体制では、継続的な成果創出は非常に難しいと考えられます。なぜなら、見込み顧客の状態は時間経過と共に変化し、1人では正確なタイミングで活動することに限界が生じるためです。ここで重要なことは、企業としてそれぞれ目的に応じて運用できる役割(機能)体制を明確にすることです。

例えば、インサイドセールスチームを5名程度で新設し、目的は「見込み顧客獲得から育成」、求める成果は「見込み顧客の個人情報入手とその情報をフィールドセールスチームへトスすること」とします。施策例として、自社サイト活用やメルマガ配信といった社内での活動に重きを置くような形をとります。
このような目的と求める成果を明確にすることで、必要な施策が変わります。例えば、インサイドセールスチームは既存顧客の情報を基に強いニーズと考えられるコンテンツの作成と発信など具体的にすべきアクションが見えてきます。

上記はあくまで理想論となり、インサイドセールスチーム以外からすると成果の見えない活動と見られることが予想されます。そこで必要になってくることは社長や経営幹部メンバーから正式に職務として任命し、社内で活動しやすい環境を整備することです。事例として、建設土木企業D社では"社長直下型"のインサイドセールスチームを設立し、今ではそのチームの貢献が全社として無視できない形にまでなっています。

(2)自社で強化すべきポイントを優先順位づける

マーケティングファネルは複雑で流動的なものであり、最初から全てのファネルの状態強化に着手すると中途半端な成果に陥りがちになります。着手前に以下のポイントを予め正しく理解することを推奨します。

①現状の自社の見込み顧客数を理解できているか
②どの状態の見込み顧客層が多いのか
③どの状態の見込み顧客層が少ないのか(増やすべきか)
④事業戦略実行にあたって、優先的に強化すべき見込み顧客層はどこか

まずは自社の現状のマーケティングファネルの全体像を知り、強化ポイントを絞ることが重要です。

3.まとめ

リソースが限られることは決して悲観的なことではありません。自社の現状を正しく理解した上で、全ファネルの改善や強化ではなく、現状の自社状況に即した改善や強化活動を進めていきましょう。

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AUTHOR著者
デジタルコンサルティング事業部
コンサルタント
大石 和輝

企業のブランディング・プロモーションなど、戦略立案から実行支援、クリエイティブ制作までワンストップの支援に携わる。Webプロモーションを活用したリアル×デジタルの顧客育成を得意とし、建設土木企業の採用ブランディング・プロモーション支援の実績を持つ。常にクライアントの心情を考えたコンサルティングを心掛けている。

大石 和輝
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