製造業における営業DXの導入で得られるメリット

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製造業における営業DXの導入で得られるメリット
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製造業における現状と課題

多くの中堅・中小製造業において営業面での大きな課題の一つに新規開拓があります。大手企業からの発注に依存し、このままでは先がないとわかっていながらも人手不足、営業パーソンの意識・レベルの低さ、業界のしがらみなど様々な要因で新規開拓が出来ていません。「卵を一つのカゴに盛るな」という言葉がありますが、リスク分散の重要性を説いた言葉であり、タナベコンサルティングの創業者である田辺昇一もよく提言していました。財務面においてのリスク管理もそうですが、技術面や価格の高騰など目まぐるしく環境が変わる昨今において、たとえクライアントが大手企業といえども、少ない顧客に依存する営業体質からの脱却は業界を問わず急務となっています。

営業DXとは何か

製造業における営業DXは、一つに営業の業績と生産性の向上、二つ目に営業における情報の承継にあると考えます。一つ目の業績・生産性向上においてはMA(マーケティングオートメーション)ツールを用いたリード情報の獲得やメールマガジンの発信等により新規開拓の効率化が図れます。またSFA(セールスフォースオートメーション)ツールを用いることで業績のマネジメントや、先行での数値管理等が可能となります。二つ目の営業情報の承継はあまり聞きなじみのない言葉かもしれませんが、実は多くの企業において直面している課題であるにも関わらず見て見ぬふりをされています。承継と聞くと多くの方は事業承継、すなわち経営者の交代や事業の継続、または製造部門における技術承継などがイメージされるかもしれません。対して営業の承継というのはほとんどイメージできず、意識されていないにも関わらず、多くの企業で営業パーソンの高齢化や突然の退職などに悩まされています。製造部門において技術が生命線であるのと同様に営業部門においての情報はその企業にとっての財産であることはいうまでもありません。特に中堅中小企業においてはマーケティング部門を持たない企業もあり、そういった企業においてはベテラン営業パーソンの持っている情報は自社の生命線なのにも関わらず、ブラックボックス化されているのが現状です。この営業パーソンの持っている情報を、個人ではなくいかに会社のデータとして蓄積し分析することが出来るか、未来へとつなげていくことが出来るかが非常に重要なポイントとなっています。DX化の進んでいない多くの企業はこのことを甘く見ているか、または気が付いておらず対策されていないため、手を打たれていません。

製造業における営業DXの具体的な導入方法

多くの営業支援ツールがありますが、自社の経営戦略、営業方針、営業のレベル、クライアントの状況など様々なポイントを考慮し導入することが必要です。ここでは代表的なツールであるMAツールとSFA・CRMツールにおいて具体的な導入方法と注意点をご紹介します。

(1)MAツール

新規開拓のために入れるのであれば、新規、休眠関わらず顧客担当者のメールアドレス数(MAツールはメールアドレスをもとに個人のWEBでの動きを計測していきます)と新規商談の決定率の割合も重要な検討材料となります。決定率が低ければ、より多くの顧客数が必要であり、決定率が高くとも顧客数が少なければ導入のメリットは出ません。事前にこのような数値や目標の設定を行い、ツール選定のヒントにしていきます。

(2)SFA・CRMツール

筆者の考える必要なポイントは扱いやすさです。多くのクライアントでツールの導入や運用支援を実施してきましたが、いくらツールの性能や機能が良くても営業に使ってもらえないと宝の持ち腐れとなってしまいます。デモ画面の見やすさはもちろん、カスタマイズはどこまで可能なのか、項目は増やせるのかなど自社レベルに合った内容でスタートが出来て、運用のレベルが上がった時にさらなる分析を行えるようカスタマイズしていくことも前提にツールを検討します。

両ツールとも様々な商品が出ていますが、自社のレベルと運用開始後のイメージを持ちながらベンダー企業に相談が出来るツールを選ぶことが重要です。運用後において営業個人の意識が変わり、生産性向上が見込めるイメージができるのであれば問題ありません。多くの企業はベテラン営業のみなさんの力によって成り立っています。ですが中にはSFAというような言葉を聞いただけで身構えてしまうような方もいることでしょう。「何か数字や商談の管理が厳しくなるのでは?」「手間ばかり増えてしまうのではないだろうか」などマイナスイメージだけを持ち、ツール導入における本当の目的や意味を理解されないままの導入となってしまえば営業の協力は仰げません。SFAツールに入力したからといって営業の個人の売上数字や業績が上がるわけではないので、営業の方々のおっしゃることももっともです。ツールの必要性と運用後のイメージをしっかりと共有し、導入することが必要となります。

製造業における営業DXの成功事例

最後にDXツール導入による成功事例をご紹介します。健康器具などを製造販売しているA社では、メインの顧客は数社で構成されていますが、新商品発売の際は全てのクライアントへと提案を行っています。ですが商品のジャンルも多岐にわたるため、その都度営業による新規開拓や休眠顧客の掘り起こしが必要となります。タナベコンサルティングと共に手を打ったのは(1)MAツールの導入とリード情報の獲得、(2)営業個人が持っている様々な顧客情報の集約と蓄積、(3)集まった情報の分析と営業へのフィードバックをDXプロジェクトとして実施してきました。

(1)MAツール導入とリード情報の獲得

A社では商品情報が掲載されたホームページを運用しており、毎月グーグルアナリティクスによる分析とサイトの修正は行っておりました。綺麗で見やすいサイトでしたが、作って満足、分析しているから活用も出来ているという認識です。せっかくのサイトをさらに活用することが出来れば営業活動の効率化を図れるのではないかとMAツールの導入を実施。現在ではいつ、だれが、どのようにホームページへ流入してきたかが可視化され担当営業に共有されています。

(2)営業個人が持っている様々な顧客情報の集約と蓄積

ベテランの営業パーソンに頼りっきりという営業組織であり、SFAツールを導入しているものの日報を記入するだけという活用レベルとなっていました。各営業の意見も聞きながら記入内容の精査、具体的には案件情報のランク基準の再設定や見込み金額の記入、次回TODO情報の記入など営業の負担とならず、出来る限り多くの重要な情報や数値が記入できるよう入力ルールを再設定しました。新入社員や中途採用者が入社してきたときに、前担当がいなくても各クライアントの情報や案件の情報が一人ですぐに分かり、商談に臨むことが出来るということを一つの目標として制定しました。

(3)集まった情報の分析と営業へのフィードバック

上記プロジェクトのもと、マネジメント層においては会議資料集約の簡素化が実現。また営業には新規開拓に必要なリード情報をMAツールの分析結果と合わせて提出。今までは営業個人が見込み先のリストを時間と手間をかけて提出していましたが、商品ジャンルや規模、売上実績など様々な切り口でアタックリストをすぐに作成することが可能となりました。またこの情報は生産や商品企画のメンバーにも共有され、新たな商品開発や生産予測にも活かされています。

営業情報の承継は技術承継と同様、非常に重要なポイントです。また情報の蓄積は早ければ早いほど多くの情報が蓄積し様々な切り口での分析が可能となり、新規顧客開拓など成果に繋がります。「物は作れても売れない」ということにならないように様々なツールを活用しながら成長していきましょう。

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AUTHOR著者
デジタルコンサルティング事業部
マーケティングDX チーフコンサルタント
波田 恵一朗

経営課題や戦略に基づき、トレンドを掴み、リアル・デジタル問わず様々なマーケティング手法を駆使し、ブランディング・プロモーション戦略に携わる。
「業績アップに貢献し、同時に人も成長出来るプロモーション」を信条にリアル・WEBを問わず、本当に必要なプロモーションをクライアントと共に実践している。

波田 恵一朗
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